たきび歌の歌詞と意味を保育士が子どもに伝える方法

たきび歌の歌詞と意味を保育士が子どもに伝える方法

「たきび」の著作権は2072年まで有効で、保育園のSNS投稿に使うと著作権侵害になります。

この記事のポイント
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歌詞と誕生の背景

「たきび」は1941年(昭和16年)に東京・中野区で生まれた童謡。作詞の巽聖歌が近所の「ケヤキ屋敷」の風景を散歩しながら書いた作品で、戦時中に一度放送禁止になった数奇な歴史があります。

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保育現場での使い方

11〜12月の季節導入にぴったり。落ち葉拾いや秋の自然遊びと組み合わせることで、子どもの感性をより豊かに育てることができます。

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著作権への注意点

「たきび」はJASRAC管理楽曲であり、著作権は現在も有効です。保育園の発表会DVD配布やSNS動画投稿には別途手続きが必要な場合があります。

たきび歌の誕生と歴史:戦時中に放送禁止になった理由

 

「たきび」は1941年(昭和16年)12月、NHKラジオ番組「幼児の時間」で初めて放送された童謡です。作詞は岩手県出身の児童文学者・巽聖歌(たつみ せいか)、作曲は渡辺茂が担当しました。

歌の舞台は、東京都中野区上高田3丁目。巽聖歌は当時、その近辺に住んでおり、自宅そばにあった樹齢300年を超えるケヤキが6本もある「ケヤキ屋敷」の垣根と落ち葉焚きの光景を散歩しながら見て、歌詞を完成させたといわれています。実際に現地には中野区役所が設置した「たきびの歌発祥の地」という説明板が今も残っており、当時の垣根の面影を感じることができます。

驚くべきことに、この歌は発表直後に放送禁止になっています。理由は2つありました。1つ目は軍当局から「焚き火は敵機(爆撃機)の攻撃目標になる」というクレーム。2つ目は「落ち葉は風呂を炊く貴重な燃料資源だからもったいない」という批判です。太平洋戦争が開戦した翌日(昭和16年12月9日)に初回放送が流れ、わずか数日で放送が中止になりました。

戦後のことです。1949年(昭和24年)にNHKラジオ「うたのおばさん」で再び放送されると、全国の幼稚園・保育園・小学校に一気に広まりました。1952年(昭和27年)からは小学1年生の音楽教科書にも掲載されるようになります。ただしこのとき、消防庁から「町角の焚き火は危険」と別のクレームが入り、教科書の挿絵に火消し用バケツが描き加えられるという珍しい経緯があります。2007年には「日本の歌百選」に選出され、現在でも保育現場の秋〜冬の定番曲として愛されています。

つまり、ほのぼのとした童謡の裏に、2度のクレームと放送禁止という数奇な歴史があったのです。

保育士として子どもにこの歌を教えるとき、「この歌ね、昔は歌えない時期があったんだよ」と一言添えるだけで、子どもたちの目が輝くことがあります。歌の「背景」を伝えることが、歌への興味と豊かな感性を引き出すきっかけになります。

参考:「たきび」誕生から戦時中の放送禁止の詳細について

たきび – Wikipedia(作品の来歴・発禁経緯)

たきび歌の歌詞の意味:「さざんか」「こがらし」「ぴいぷう」を子どもにわかりやすく説明するコツ

「たきび」の歌詞には、現代の子どもたちには少し馴染みにくい言葉がいくつか登場します。保育士がその意味をきちんと理解しておくことで、子どもへの説明がスムーズになります。これは準備が大切です。

まず「かきね(垣根)」は、家と道路の境にある植物で作られた自然の囲いのこと。今はコンクリートブロックが多いですが、昔はサザンカや竹を植えて垣根にしていました。歌詞のモデルになったケヤキ屋敷の垣根も、当時はサザンカとお茶の木の生け垣だったとされています。

次に「さざんか(山茶花)」。ツバキ科の常緑樹で、秋の終わりから冬の初め(11〜12月)にかけて赤・白・ピンクの花を咲かせます。子どもに説明するときは「冬でも頑張って咲く花だよ」とひと言添えると、歌の情景がイメージしやすくなります。

「こがらし(木枯らし)」は、秋の終わりから冬の初めに吹く強く冷たい北風のことです。気象庁の定義では、10〜11月に吹く最大風速毎秒8メートル以上の北風を指します。「木も枯れちゃいそうなくらい冷たい風」という表現が子どもには伝わりやすいです。

最も独特なのが「ぴいぷう」という擬音です。北風を表す表現には「ピューピュー」「ヒューヒュー」などがありますが、「ぴいぷう」は「たきび」だけで使われる巽聖歌独自の表現です。「ぱ行」の音を使うことで、歌詞全体がやわらかくて丸みのある印象になり、子どもが歌いやすくなっています。岩手県出身の巽聖歌が、北国で肌で感じた北風の音から思いついた表現だといわれています。

保育でこれらの言葉を教えるときは、一度に全部説明しようとしなくて大丈夫です。たとえば初回は「垣根」と「焚き火」だけ絵で見せて、2回目に「さざんか」の花の写真を見せる、という段階的な導入が効果的です。絵カードや写真を1枚手元に用意しておくと、言葉の説明がぐっと具体的になります。

たきび歌の保育での導入と季節のねらい:落ち葉拾いとの組み合わせ方

「たきび」は11月〜12月の保育に取り入れやすい、秋から冬への季節の移り変わりを感じられる一曲です。この時期は落ち葉が舞い、子どもたちが自然と足元の葉に興味を示す季節でもあります。

保育で「たきび」を歌う主なねらいとしては、冬の到来を感覚的に味わうこと、歌詞を通じて季節の語彙(さざんか・こがらし・しもやけなど)に親しむこと、友達と声を合わせる一体感を楽しむことが挙げられます。特に4・5歳児クラスでは、「あたろうか」「あたろうよ」の掛け合いをパート分けして歌うことで、会話のやりとりを楽しむこともできます。

導入として効果的なのが、園庭の落ち葉集め活動との連動です。実際に落ち葉を拾ってきた後、「みんなが集めた葉っぱで、昔は焚き火をしたんだよ」と伝えながら歌に入ると、歌詞の情景が子どもたちの体験とつながります。歌と体験を結びつけると記憶に残りやすいですね。

また、サザンカの花の写真や実物を見せてから歌うと、2番の「さざんか さざんか さいたみち」という歌詞のイメージが鮮明になります。園庭や近所の公園にサザンカが咲いていれば、散歩の際に立ち寄って「この花が歌に出てくるよ」と紹介するだけで十分な導入になります。

1〜2歳児の乳児クラスで取り入れる場合は、「ぴいぷう」の部分で両手を口元に当てて吹くまねをする、「あたろうか」で手を出す動作をつける、など簡単な動きを加えると楽しみやすくなります。これは使えそうです。

3歳以上の幼児クラスでは、全3番を通しで歌い、それぞれの情景(垣根の角・さざんかの道・木枯らしの寒い道)をイラストや紙芝居で見せながら進めると、物語として歌の世界観を楽しめます。

たきび歌のピアノ弾き歌いポイント:保育士が押さえたい音域と伴奏の注意点

「たきび」は保育現場での弾き歌いでよく使われる曲のひとつですが、見た目以上に少し気をつけるべきポイントがあります。

まず音域についてです。「たきび」の旋律は、子どもの声域を考慮してやや低めに設定されていますが、右手の音域がやや広め(低いドから高いレ付近まで)で、フレーズの途中で手の位置を変える必要があります。保育士向けの無料楽譜でドレミ付きのものも多数公開されていますが、「左手は比較的シンプルで覚えやすい」一方、「右手は手の移動が複数回あるため、部分練習が必要」という特徴があります。

調性はハ長調(C major)が一般的で、黒鍵を使わずに弾けることが多く、初級〜中級レベルの保育士でも取り組みやすい曲です。ただし、簡易伴奏版と標準伴奏版では左手の難易度が大きく異なります。初めて取り組む場合は、左手を全音符や2分音符でルートを押さえるだけのアレンジから始め、慣れたら音を増やしていくのが現実的です。

歌いながら弾く「弾き歌い」を意識するなら、テンポを♩=72〜80程度のゆったりとした速さに設定するのが基本です。子どもが歌詞を聞き取れるよう、声は前に出す意識で。ピアノの音量は歌声の「添え物」くらいのボリュームにすると、子どもが一緒に歌いやすくなります。

音楽の実技が不安な保育士には、YouTubeに「保育ピアノ伴奏・手元映像つき」の動画が複数公開されています。動画を見ながら練習できる環境が整っているので、繰り返し視聴してパターンを覚える方法が効率的です。練習に役立てましょう。

参考:たきびの保育向けピアノ楽譜・難易度についての詳細

ピアノ塾「たき火」無料楽譜(難易度別3種類・ドレミ付き)

たきび歌と著作権:保育士が知らないと損するJASRACのルールと注意点

「たきび」は昔から歌われている童謡なので「著作権はもう切れているはず」と思っている保育士は多いです。これは大きな誤解です。

「たきび」はJASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)に「たき火」として登録されており、著作権は現在も有効です。日本の著作権法では、著作権の保護期間は著作者の死後70年とされています。作詞者の巽聖歌は1973年に没、作曲者の渡辺茂は2002年に没しているため、最も遅く亡くなった渡辺茂の没年を基準にすると、著作権は2072年まで有効です。

つまり、あと50年近く「たきび」の著作権は切れません。

では保育現場での利用はどこまで許されるのでしょうか? 著作権法第35条では、営利を目的としない教育機関であれば、授業の過程における音楽の利用(先生が歌って聴かせる・子どもと一緒に歌う)は許可なく行えます。通常の保育活動で子どもたちと一緒に歌う分には問題ありません。

注意が必要なのは次のようなケースです。

  • 🎥 発表会や行事の様子を動画に撮影してDVDに焼き、保護者に配布する→ JASRACへの手続き(または契約業者への依頼)が必要です
  • 📱 保育の様子を動画でSNS(Instagram・TikTokなど)に投稿する際に「たきび」を歌っている場面が含まれる→ プラットフォームによって扱いが異なりますが、基本的に無許可での公開は著作権侵害にあたる可能性があります
  • 🌐 園のホームページやブログに「たきび」の歌詞をそのまま全文掲載する→ 著作権者への許諾が必要です
  • 🖨 楽譜をコピーして配布する→ 手続きが必要です

一方でYouTubeは、JASRACと包括的な利用許諾契約を結んでいるため、個人が自分で歌った動画をYouTubeに投稿すること自体は問題ありません。ただし、保育園の公式チャンネルでの投稿や商用目的の利用は別の話になるため、確認が必要です。

保育現場で「この使い方は大丈夫か」と迷ったときは、JASRACの教育機関向けページで確認するか、JASRAC相談窓口(0570-00-7767)に電話するのが確実です。

参考:教育機関での音楽利用に関する公式情報

JASRAC「学校など教育機関での音楽利用」公式ページ

保育士が見落としがちなたきび歌の独自視点:「結局、火に当たれたの?」という問いかけが子どもの想像力を育てる

「たきび」という歌は、実は1番から3番まで、子どもたちが焚き火にあたれたかどうかが最後まで明かされません。これはどういうことでしょうか?

歌詞を改めて確認すると、1番では「きたかぜぴいぷう ふいている」、2番では「しもやけ おてて がもうかゆい」、3番では「そうだん しながら あるいてく」で終わります。つまり歌い終わりまで、ずっと「あたろうかあたろうよ」と相談しながら歩いているだけで、実際に焚き火に当たるシーンは描かれていないのです。

作曲者の渡辺茂はこの曲を「ほのぼのとした暖かい気持ちになる詞」と評していましたが、研究者の中には「誰かのお屋敷の焚き火に、見知らぬ子どもが勝手に当たりに行くのは躊躇われる」「どっちが声をかけに行く?という子ども同士のやりとりが想像できる」という読み方をする人もいます。焚き火に当たれたかどうかは、聞いた人それぞれの「想像の余白」として残されているわけです。

この「答えが出ない」という歌の構造は、実は保育的にとても価値があります。保育士が子どもに「みんなはどう思う?火に当たれたかな?」と問いかけることで、子どもが自分なりのストーリーを想像し、言葉で表現しようとする力が引き出されます。正解がない問いかけは、子どもの言語発達と想像力を育てるうえで非常に有効です。

5歳児クラスであれば、「もし続きがあったらどんなお話になるかな?」と絵を描いてもらう活動にも展開できます。歌を入口に、「言葉遊び」や「絵本制作」へと広がる可能性があります。これは使えそうです。

「たきび」を単なる冬の季節の歌として流して終わりにするのではなく、子どもとの対話を生む「問いかけのツール」として活用することで、保育のねらいをより深くすることができます。歌の奥行きを活かすことが大切です。


季節の歌:たき火