ぞうさんとあり歌の魅力と保育での活かし方
「ぞうさん」の歌は、子どもが喜ぶシンプルな童謡に見えますが、実は作詞者まど・みちお本人が「間違えて広まった歌詞で今の名曲が生まれた」と告白しています。
ぞうさんとあり歌の誕生秘話:知られざる作詞・作曲の経緯
「ぞうさん」の歌詞は、まど・みちおが昭和26年(1951年)6月10日の夜、一気に書き上げた6篇の童謡のうちの1つです。音感教育者・酒田冨治から「保育用曲集に収録する童謡を書いてほしい」と依頼を受け、翌朝ハガキに清書して送ったという、じつに即興的な誕生エピソードがあります。
注目すべきは、今私たちが知っている「おはながながいのね」という歌詞は、元の詩ではなかったという事実です。まど・みちおが書いた原作は「おはなが ながいね」というシンプルな形でした。これに不満を持った詩人の佐藤義美が、まど・みちおに無断で「ながいのね」に改作し、NHKに持ち込みました。NHKはこの詩を当時の新進作曲家・團伊玖磨(だん いくま)に回し、昭和27年12月22日に三拍子の美しいメロディで初放送されたのです。
つまり、「ぞうさん」は他者による無断改変がきっかけで生まれた名曲です。意外ですね。
初放送後は月曜から金曜まで5日連続で「うたのおけいこ」という番組で流れ続け、全国に一気に広まりました。もし佐藤義美が改作していなければ、今の三拍子の「ぞうさん」は存在しなかったかもしれません。この経緯を知ることで、子どもたちに歌を伝える際の言葉の重みと、ちょっとした変化が生む大きな違いを実感できます。
保育の場で「ぞうさん」を歌う前に、こうした背景を頭に入れておくと、歌への向き合い方が変わってくるはずです。
一方、「おつかいありさん」は昭和25年(1950年)にNHKラジオ番組「幼児の時間」向けに制作されました。作詞は関根栄一、作曲は同じく團伊玖磨です。急ぎすぎてありさん同士がぶつかり、おつかいの用事を忘れてしまうというユーモラスなストーリーが、子どもたちの笑いを誘います。
| 曲名 | 作詞 | 作曲 | 初放送年 |
|---|---|---|---|
| おつかいありさん | 関根栄一 | 團伊玖磨 | 昭和25年(1950年) |
| ぞうさん | まど・みちお | 團伊玖磨 | 昭和27年(1952年) |
| やぎさんゆうびん | まど・みちお | 團伊玖磨 | 昭和28年(1953年)頃 |
「ぞうさん」「おつかいありさん」「やぎさんゆうびん」はすべて同じ作曲家・團伊玖磨の手によるもので、保育の場でとくに定着した「〇〇さんシリーズ」を形成しています。これが基本です。
「おつかいありさん」と「ぞうさん」を合わせて「ぞうさんとあり歌」として捉え、セットで保育に取り入れることで、リズム感と言語感覚を同時に育てられるという実践的メリットがあります。
世界の民謡・童謡:おつかいありさんの歌詞解説と作曲家・團伊玖磨の童謡シリーズについての詳細情報
ぞうさんとあり歌の歌詞が持つ深い意味:保育で自己肯定感を育てる
「ぞうさん」の歌詞を表面だけ見ると、ただのほほんとした動物の歌に思えます。ところが、まど・みちお自身はこの詩について、「ゾウに生まれてうれしいゾウの歌」だと語っています。この言葉の奥には、保育士として押さえておきたい重要なメッセージが詰まっています。
まど・みちおの言葉を引くと、「おはなが ながいのね」と言われた子ゾウは、本来ならばからかいと受け取っても不思議ではありません。しかし子ゾウは「そうよ かあさんも ながいのよ」と誇らしげに答えます。これは「大好きなお母さんと同じである自分は素晴らしい」という、子どもの自然な自己肯定感の表れです。
この視点は、令和の保育で重視される「自己肯定感の育成」と完全に一致しています。つまり「ぞうさん」は、昭和26年に書かれた詩でありながら、現代の保育理念に直結する内容を持っているのです。
保育士が歌を歌うとき、ただ音楽として流すのと、この背景を意識して歌うのでは、子どもたちへの伝わり方が変わってきます。「自分であることを誇りに思っていいんだよ」というメッセージを込めて歌うことで、子どもたちは無意識のうちに安心感と肯定感を受け取ります。
「おつかいありさん」も同様に深いメッセージを持っています。急ぎすぎてぶつかってしまうありさんの姿は、失敗しても笑えるという体験を子どもに与えます。「失敗しても大丈夫」という気持ちは、幼児期に形成される「挑戦する心」の土台です。
- 🐘「ぞうさん」の「そうよ かあさんも ながいのよ」:自分の個性をお母さんと結びつけて肯定する自己肯定感の表現
- 🐜「おつかいありさん」の「わすれた わすれた おつかいを」:失敗をユーモラスに受け入れる精神的な柔軟性の育成
- 🎵 どちらの曲も繰り返しフレーズが多く、子どもが主体的に参加できる構造になっている
自己肯定感が低いと感じている子どもに対して、この2曲を意識的に使うことは一つの実践的アプローチになります。歌詞の意味を保護者にも伝えることで、家庭での歌い方にも変化が生まれ、保育と家庭が連携した成長支援につながります。
歌詞の意味を深く理解することが大切です。
ぞうさん歌詞の深い意味:自己肯定感と「ありのまま」のメッセージを詳しく解説した記事
ぞうさんとあり歌を使った集団遊び「ぞうさんとくものす」の遊び方とねらい
「ぞうさんとくものす」は「ぞうさん」の曲とは別に、「ひとりのぞうさん くもの巣に かかって遊んで おりました」という歌詞を使った、保育現場で長く愛されてきた集団遊びです。2歳児から4歳児まで幅広く対応でき、室内遊びとして天候に左右されない点も保育士にとって重宝されています。
遊び方はシンプルです。
- 🟡 ゾウさん役を1人決め、他の子は部屋の中に自由に座って待つ
- 🟡 歌に合わせてゾウさん役の子が歩き回り、「もひとりおいでと よびました」のフレーズで友だちの名前を1人呼ぶ
- 🟡 呼ばれた子は肩を持って後ろにつながり、電車ごっこのように一緒に歩く
- 🟡 2番、3番と繰り返してどんどん列を伸ばし、全員つながったら最後は「ぱちんとくものす きれました」でごろんと寝転がる
この遊びのねらいは主に2つあります。1つは「友だちと一緒に遊ぶ楽しさを知る」こと、もう1つは「簡単なルールを理解する」ことです。お友だちの名前を呼ぶという行為を通じて、子ども同士の意識的なつながりが生まれます。とくに2〜3歳児は他児に興味を持ち始める時期であり、初めての集団遊びとして最適です。
人数が多いクラスでは、20人規模になると最後の子が呼ばれるまでに10分近くかかることがあります。東京ドームのグラウンド1周を100人で歩くイメージと同じで、待ち時間が長くなると集中が切れやすくなります。そうした場合は列を2つ・3つに分けて同時進行させると、待ち時間が半分以下に短縮できます。これは使えそうです。
注意したいのは、肩を触られるのを嫌がる子どもへの対応です。無理に同じ方法に合わせず、腰に手を当てる・服の裾を持つといった代替方法をあらかじめ伝えておくと、個々の感覚の違いへの配慮ができます。また、最後に全員で寝転がる場面では、お友だちとぶつかりやすいため周囲への声がけが必須です。
歌い方のバリエーションも保育現場によって異なるため、複数の先生が担当するクラスでは事前に歌い方を合わせておくことが大切です。
終わりのフレーズには以下のような例があります。
- 🎵「ぞうさん あんまりふえたので いとが ぷつりと きれました」
- 🎵「あんまりおおくなったので おうちにかえろと いいました」
保育記録として指導案に落とし込む場合は、「コミュニケーション能力の向上」「簡単なルールの理解」を月案のねらいに位置づけることで、活動の意図が明確になります。
ぞうさんとあり歌を使ったシアター活用法:手袋・スケッチブック別の実践アイデア
「ぞうさんとくものす」の歌はストーリー性が高いため、手袋シアターやスケッチブックシアターとしても非常に相性がよい素材です。1番から10番まで数が増えていく構成なので、絵を1枚ずつめくるスケッチブックシアターの構造と自


