きりぎりす歌の意味とわらべうたを保育で活かす方法
「きりぎりす」の歌を子どもに教えているとき、実はコオロギの話をしていると知らずに伝えると子どもの疑問に答えられなくなります。
きりぎりす歌「きりすちょん」の歌詞と基本的な遊び方
わらべうた「きりすちょん」は、「きーりすちょん こどもにとられて あほらしちょん」というたった一文だけの、非常にシンプルな歌です。シンプルだからこそ、保育士が覚えやすく、子どもがすぐに口ずさめるのが最大の強みといえます。
「きりすちょん」とは、キリギリスの鳴き声「チョンギース」の「チョン」からきた言葉とされています。キリギリスが「ギーッチョン」「チョンギース」と鳴くことを考えると、この語感の由来がよく伝わりますね。「きりすちょん=きりぎりす」という対応関係は、保育現場でもよく説明されます。
遊び方は年齢によって使い分けるのが基本です。
- 乳児(0〜2歳)向け:保育士が子どもをひざの上にのせ、「きりすちょん」に合わせてぴょんぴょんと弾ませます。だっこやおんぶでも楽しめます。スキンシップを通じた愛着形成が主なねらいになります。
- 幼児(3〜5歳)向け:複数人で輪になって歌い、輪の中の子が両足跳びをしながらキリギリスになりきります。歌の終わりで目の前の子にタッチして、次の子にバトンタッチしていきます。
「つまり、年齢に合わせてルールを変えるのが基本です。」同じ歌でも遊び方を変えることで、乳児から5歳児まで幅広い場面で活躍します。
肩を組んで輪になる遊び方や、友だちと手をつないでジャンプするアレンジも広く行われています。保育雑誌「PriPri」2020年9月号でも取り上げられたほど、現場への普及度が高いわらべうたです。
金城学院大学KIDSセンター|わらべうたあそび「きーりすちょん」の遊び方詳細
きりぎりす歌「虫のこえ」の歌詞に隠された意外な事実
「虫のこえ」の2番に登場する「きりぎりす」は、実は現在のキリギリスではありません。これが知らないと子どもの「なんで?」に詰まってしまうポイントです。
文部省唱歌「虫のこえ」は、1910年(明治43年)に『尋常小学読本唱歌』で初めて発表されました。初出時の2番の歌詞は「きりきりきりきり きりぎりす」でした。しかし1932年(昭和7年)の『新訂尋常小学唱歌』で、この「きりぎりす」が「こほろぎや(コオロギ)」へと改訂されています。
改訂の理由は3つあります。
- 古語の「きりぎりす」はコオロギを意味する言葉だったこと
- 「きりきり」という擬音はキリギリスではなくコオロギの鳴き声を表していたこと
- 秋の虫をテーマにした歌なのに、キリギリスは夏に鳴く虫であり季節がずれていたこと
意外ですね。現在子どもたちが歌っている「虫のこえ」には、もともと「きりぎりす」という言葉が存在していたのです。改訂によって歌詞は科学的に正確になりましたが、「きりきり きりきり きりぎりす」という語呂の良い韻は失われてしまいました。
また、「虫のこえ」には5種類の虫が登場します。1番のマツムシとスズムシ、2番のコオロギ(旧・きりぎりす)、クツワムシ、ウマオイです。これら2番の3種はすべて「キリギリス類(キリギリス亜目)」に分類される点も面白い豆知識です。
保育士としてこの話を子どもに伝えるときは、「昔の人はコオロギのことをきりぎりすって呼んでたんだよ」と一言添えると、言葉の歴史に自然と触れることができます。言葉の変化そのものが、子どもの語彙の広がりにつながります。
Wikipedia「蟲のこゑ」|歌詞の改変と歴史的背景の詳細
きりぎりす歌を保育に取り入れる年齢別のねらいと導入のコツ
「虫のこえ」は、保育現場での適切な対象年齢が3歳以上とされています。歌詞には複数の虫の名前と擬音語が次々と出てくるため、想像力と表現力がある程度育った時期に取り組むのが効果的です。
年齢別のねらいを整理すると次の通りです。
| 年齢 | ねらい | 導入のポイント |
|---|---|---|
| 3歳児 | 鳴き声のリズムへの親しみ・模倣 | 「ちんちろりん」を一緒に真似してみよう!と声かけ |
| 4歳児 | 擬音の変化を声と体で表現する | 「大きい声、小さい声で歌ってみよう」と問いかける |
| 5歳児 | 自分だけの虫の鳴き声を創作する | 「あなたの虫を考えて鳴き声を作ってみて」と創作へ誘導 |
「3歳から段階的に深めていくのが原則です。」いきなり全員で歌わせるのではなく、保育士がまず擬音を強調して歌い、子どもたちが自然に耳を澄ませるよう誘うことが大切です。
導入前に実際の虫の鳴き声を音源で聴かせるのも有効な方法です。図鑑やイラストを見せながら「これがマツムシだよ。どんな音がするかな?」と問いかけると、子どもの好奇心が高まり、歌への集中度が上がります。
秋の自然散策や公園での虫探しのあとに「虫のこえ」を歌うと、体験と歌詞がつながり学びが深まります。10〜11月が特におすすめの時期です。
ほいくnote|「虫のこえ」の年齢別ねらい・導入方法の実践ガイド
きりぎりす歌の「アリとキリギリス」を保育劇や発表会に使うポイント
「アリとキリギリス」はイソップ物語の中でも保育劇の定番です。キリギリスが「夏に歌って過ごした」という物語設定が、歌と劇を自然に組み合わせやすい理由のひとつです。
3歳児クラスの劇では、タンバリンや鈴といった簡単な楽器遊びやダンスを組み合わせることが多く、台詞が少なくても体全体で表現できる構成にするのがポイントです。
5歳児クラスでは、クワガタやチョウなど他の昆虫キャラクターを追加してキャスト数を増やしたり、子どもたち自身が登場シーンや振り付けを考えたりするアレンジも広く行われています。
発表会に取り組む際には、次の3点を意識すると準備がスムーズです。
- 選曲:劇中歌は「夏らしい曲」「冬の寒さを感じさせる曲」でコントラストをつけると効果的です。
- 台詞の分量:3歳児は短くシンプルに、5歳児は感情表現や言葉を工夫できる余地を残した台本にします。
- 楽器あそびとの連携:リズム打ちや鈴・タンバリンを使うことで、歌だけでなく音楽的な表現の幅が広がります。
これは使えそうです。また「アリとキリギリス」は「働くことの大切さ」をテーマにした作品ですが、現代の保育ではキリギリスを一方的に悪者にせず、「好きなことを楽しむ大切さ」とのバランスを持たせた解釈で子どもに伝えている園も増えています。画一的な道徳観を押しつけない配慮が求められる場面です。
保育士バンク|年齢別・劇遊びの題材10選「アリとキリギリス」の実践例
きりぎりす歌がもたらす発達効果と保育士が見落としがちな視点
わらべうたや唱歌を通じた「きりぎりす」の歌は、複数の発達領域に同時に働きかける点で、保育の質を高める重要な素材です。これが見落とされやすい理由は、楽しい遊びに見えるあまり、ねらいの設定が曖昧になりやすいからです。
「きりすちょん」のようなわらべうたが育てる力は、大きく4つのカテゴリーに整理できます。
① 音楽的発達(リズム感・音程感・自立的歌唱)
わらべうたは子どもの声域に合わせたシンプルな音域で作られており、無理のない発声が自然に育ちます。音楽研究者の調査によると、保育現場でのわらべうた活動は音楽的発達のみならず言語能力・社会性・自立心にも影響するとされています。
② 身体発達(全身運動・手指の発達)
「きりすちょん」での両足跳びや、乳児向けのひざ弾ませ遊びは、全身の筋力や体幹のバランス感覚を自然な遊びの中で育てます。
③ 社会性・愛着形成
スキンシップを伴うわらべうたは、保育士と子どもの間の愛着を深める効果があります。特に0〜2歳の乳児期には、「触れられる・弾ませてもらう」という体験が安心感の土台になります。
④ 言語・語彙の発達
「あほらしちょん」のような日常会話では出てこない古い言葉や方言、擬音語に触れることで、語彙の幅が広がります。
「リズム感の土台は、3歳までに形成されるが基本です。」名古屋短期大学保育科の山下直樹教授は、わらべうたが「気になる子」の発達支援においても有効なアプローチであることを指摘しており、月刊クーヨンでの連載でも「きりすちょん」を具体的な教材として取り上げています。
保育士としての実践スキルを深めるためには、わらべうたの専門書を手元に置いておくのが心強いです。山下直樹著『「気になる子」のわらべうた』(クレヨンハウス刊)は、現場ですぐに使えるわらべうたの活用例が豊富に収録されています。実際の子どもの発達段階と照らし合わせながら読むと、より具体的な保育実践につなげやすくなります。
マイナビ保育士|山下直樹教授インタビュー「わらべうたが子どもの発達を左右する」
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