かえるの子の歌で広がる保育の音楽あそび完全ガイド

かえるの子の歌を保育で活かす全知識

「かえるの合唱」の日本語歌詞は、岡本敏明が「作詞」ではなく「訳詞」と明記しており、JASRACの登録も「訳詞」です。

🐸 この記事でわかること
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「かえるの子」の歌の2種類と由来

「かえるの合唱」と「おたまじゃくしはかえるのこ」、それぞれの原曲・歴史・歌詞の意味をわかりやすく解説します。

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年齢別のねらいと保育での使い方

乳児・幼児クラス別の活用ポイントや輪唱・手遊びの導入タイミングをまとめました。

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歌詞の地域差と保育現場での対処法

「ケロケロ」vs「ゲロゲロ」問題など、歌詞バリエーションが生まれた理由と、子どもが混乱しない教え方をご紹介します。

かえるの子の歌「かえるの合唱」の由来と歌詞の意味

 

保育の現場で「かえるの合唱」を歌うとき、この曲が19世紀ドイツ生まれだと知っている先生は意外と少ないものです。原曲のタイトルは「Froschgesang(フロシュ・ゲサング)」といい、ドイツ語で「カエルの歌」を意味します。「ぶんぶんぶん」や「かっこう」なども同じくドイツ民謡が原曲であることを考えると、日本の保育現場はドイツの音楽文化に深く親しんでいることがわかります。

日本語歌詞が生まれたのは昭和の時代です。1930年(昭和5年)に玉川学園を訪れたスイスの教育者ヴェルナー・チンメルマン氏が、この曲を岡本敏明に紹介したのがきっかけでした。岡本敏明は当時の玉川大学の教員で、その後日本語歌詞(訳詞)を作り上げます。楽譜として確認できる最古の記録は1942年(昭和17年)の玉川大学出版部の愛吟集です。

1947年(昭和22年)には国定教科書に採択され、1949年から全国の小学校で使われるようになりました。つまり、この歌が全国区になったのは戦後のことで、まだ80年も経っていない歌ということですね。

歌詞の前半「かえるのうたが きこえてくるよ」はシンプルですが、後半の鳴き声部分に注目してください。原曲ドイツ語では「quak, quak, quak, quak, kä kä kä kä kä kä, quak, quak, quak」と記載されています。「kä(ケ)」という表記が日本語に移し替えられる過程で「ケケケケ」という歌詞になりました。この事実を知っておくと、後述する歌詞の地域差問題を子どもたちにも説明しやすくなります。

また、一般的な楽譜には「作詞:岡本敏明/作曲:ドイツ民謡」と記載されていますが、岡本敏明本人は「訳詞」と表現していました。JASRACへの登録も「訳詞」です。つまり、完全にゼロから作った歌詞ではなく、ドイツ語の原詩をもとに日本語に意訳した作品であることがわかります。

保育での活用という観点では、この歌の歴史的背景を簡単に伝えるだけで、子どもたちの「この歌ってどこから来たの?」という知的好奇心を刺激できます。5歳児クラスで「実はドイツというはるか遠い国の歌なんだよ」と伝えると、目をキラキラさせながら聴いてくれます。これは使えそうです。

Wikipedia「かえるの合唱」──原曲・作詞者・国定教科書採択の年代など基本情報を確認できます

かえるの子の歌「おたまじゃくしはかえるのこ」の歌詞と手遊び

「かえるの子」にまつわる童謡は、「かえるの合唱」だけではありません。保育現場でよく歌われるもう一曲が「おたまじゃくしはかえるのこ」です。

この歌の歌詞は1番だけが有名ですが、実は4番まであります。内容を確認しておきましょう。

主な内容 オチ
1番 おたまじゃくしはかえるの子、なまずの孫ではない やがて手が出る・足が出る
2番 でんでんむしはかたつむり、さざえの孫ではない 壷焼きしようにもふたがない
3番 かぜにゆらゆらすすきのほ、ほうきの孫ではない すすきでどらねこ どやされぬ
4番 たこ入道はやっつあし、いかのあにきではない いかにはちまきできやせぬ

2番以降は子どもたちがあまり知らないことが多く、「実は続きがあるんだよ」と教えると大きな反応が期待できます。2番のかたつむりや3番のすすきなど、季節の生き物とつなげながら話を広げるのに向いています。

この曲の原曲はアメリカ民謡「リパブリック讃歌」です。歌詞は、灰田勝彦が1940年(昭和15年)にリリースしたハワイアン・コミックソング「お玉杓子は蛙の子」が元ネタで、作詞は東辰三と永田哲夫です。戦後、歌詞はそのままにメロディが童謡「ごんべさんの赤ちゃん」に載せ替えられて広まったという、かなり複雑な経緯があります。

手遊びとしての活用では、1番の「やがて手が出る足が出る」という歌詞に合わせて、体の各部位を使った動きが自然に組み込めます。具体的には、グーにした両手を胸の前に当てておき(おたまじゃくし)、「手が出る」で片腕を横に伸ばし、「足が出る」でジャンプするという動きが定番です。

また、この歌は「発語を促す手遊び歌」として療育の現場でも注目されています。言葉の習得に課題のある子どもに向けて、「楽しく発語につなげる」ことを目的とした活用例が療育専門機関からも紹介されているほどです。繰り返しのリズムと短い言葉のフレーズが特徴で、言葉を覚えはじめたばかりの子どもたちの口を動かすきっかけになります。

1歳児・2歳児クラスでも十分楽しめる歌ですが、歌詞の意味理解という観点では3歳以上が効果的です。

世界の民謡・童謡「おたまじゃくしはカエルの子」──元ネタ・原曲・歌詞の全番解説が確認できます

かえるの子の歌の歌詞「ケロケロ・ゲロゲロ」地域差の正体と保育での対処法

「かえるの合唱」を指導するとき、必ずといっていいほど直面するのが「家で覚えてきた歌詞と園の歌詞が違う」問題です。「ケケケケ」「ケロケロ」「ゲロゲロ」「ゲゲゲゲ」……全国的に見ると、後半の鳴き声パートのバリエーションは実に豊富です。

なぜこんなに違いが生まれたのでしょうか?

先述のとおり、原曲ドイツ語の鳴き声は「quak, quak, quak, quak(クヮッ×4)」と「kä kä kä kä kä kä(ケ×6)」の2種類です。「ケケケケ」は「kä」を直訳したもので、国定教科書に採用された際の正式表記に近いとされます。

しかし、日本語の仮名に変換する過程でズレが発生しました。「ケ」と「ゲ」は字の形が似ており、手書きやコピーを繰り返す中で混同されやすいのです。さらに、保護者が子どもに教えるときには「ゲロゲロ」のほうがカエルらしく聞こえるという感覚的な理由から、口伝えで「ゲロゲロ」派が広まっていきました。地域によっては「ゲロッゲロッゲロッゲロッ」という独自のリズムが定着しているケースもあります。

これは厳しいところですね。正解を教えようとすると「お家ではゲロゲロって習った!」とトラブルになることもあります。

保育現場で困らないための対処法としては、導入時に一言添えるのが最も効果的です。「かえるさんは地域によっていろんな鳴き声で鳴くんだよ。今日のお部屋ではケロケロって鳴いてみよう」と声かけすると、子どもたちは自分の知っている歌詞を否定されることなく、園でのバージョンを自然に受け入れます。

大切なのは「どれが正解か」の議論より、輪唱をするときに音の粒を揃えることです。鳴き声パートで母音がバラバラになると輪唱が崩れやすくなります。「口を大きく開けてケッケッと短く切ってみよう」のように、発音のコツを具体的に伝えましょう。

grape「地方ごとに鳴き声の違う『カエルの合唱』正式な歌詞に驚き」──全国各地の歌詞バリエーションの具体例が紹介されています

かえるの子の歌を使った輪唱の導入ステップと年齢別のねらい

「かえるの合唱」が保育の音楽活動で特に重宝されるのは、輪唱(カノン)に適した教材だからです。輪唱とは、同じメロディを時間差で複数のグループが追いかけるように歌う歌い方です。

輪唱は何歳から導入できるかというと、目安は5歳児(年長クラス)です。保育者養成校の研究論文(有明教育芸術短期大学)でも、「かえるの合唱を輪唱してみよう!(5歳児)──歌を歌うことの楽しさを味わい、複数人で重なった時の面白さを知る」という活動例が示されています。4歳でも難しくはありませんが、自分のパートを維持しながら別のパートを聞く「二重注意」が必要なため、認知発達が整った5歳以降が成功体験を積みやすいです。

年齢別のねらいをまとめると、次のように整理できます。

  • 🐣 1〜2歳児(乳児):メロディを耳で楽しむ、先生の動きを真似してリズムに乗る(ピョンピョン跳ねるなど)
  • 🐸 3〜4歳児(幼児前期):歌詞を覚えて一緒に歌う、カエルになりきった動き遊び、手遊びとの組み合わせ
  • 🎵 5歳児(幼児後期)輪唱に挑戦、自分のパートを意識して歌う、合奏(鍵盤ハーモニカ等)への展開

輪唱の導入ステップは、無理なく3段階で進めると子どもたちが混乱しません。

まずステップ1では、全員で斉唱を十分に練習します。歌詞もメロディも体に入っている状態が前提です。ここが基本です。

次にステップ2では、先生が少し遅れて追いかける「おいかけっこ」を試します。子どもたちが歌っている最中に先生が1フレーズ遅れて歌い始め、「あ、ずれてる!」という驚きと面白さを体験させます。「先生が後から来るよ」と予告するだけで子どもたちの集中度が格段に上がります。

最後のステップ3では、クラスを2グループに分けて子ども同士で輪唱に挑戦します。最初はグループAが「かえるのうたが」まで歌ったところでグループBが「かえるのうたが」から歌い始める、という1フレーズ差の輪唱から始めると成功しやすいです。

輪唱で重なったとき、子どもたちが「わあ、きれい!」「面白い!」と声を上げる瞬間があります。その感動が、音楽的な感性を育てる最大のチャンスです。教えこまず、まず体験させることが原則です。

有明教育芸術短期大学「保育者養成校における表現指導についての研究」──年齢別の音楽活動の具体例(かえるの合唱の輪唱含む)が記載されています

かえるの子の歌を6月の保育に活かす独自アイデア──生き物の変態を「見えるかえる活動」に変える

これは保育の教科書にはあまり載っていない視点ですが、「かえるの子の歌」は6月の自然観察・生き物学習と組み合わせたとき、その教育効果が大幅に高まります。

ポイントは、「おたまじゃくしはかえるのこ」の歌詞を「体験を言語化するツール」として使うことです。

実際にプランターや小さな水槽でおたまじゃくしを飼育している保育園では、子どもたちがおたまじゃくしの変化を毎日観察します。後ろ足が出てきた日、前足が出てきた日、しっぽが縮んでいく様子……これらの変化の瞬間に「おたまじゃくしはかえるのこ」を歌うと、「あ!今、歌の通りになった!」という強烈な実感が生まれます。

自然では、ヤマアカガエルという種類で約2万個の卵のうち大人になれるのは約20匹という調査データがあります(えどがわ環境財団)。卵が2万個あってカエルになれるのは20匹、つまり生存率は約0.1%です。この数字を園児向けにかみ砕いて伝えると(「クラス全員×100人くらいいて、大人になれるのはそのうちたった1人だよ」)、命の大切さという保育のねらいにも自然につながります。

さらに、「かえるの合唱」で輪唱しながらカエルになりきって動く活動を組み合わせると、音楽・自然・身体表現が一度に楽しめます。おたまじゃくしポーズ(ちいさく丸まる)→後ろ足が生えたポーズ(足を伸ばす)→前足が生えたポーズ(腕を広げる)→カエルのポーズ(両手両足を使ってジャンプ)という一連の動きを輪唱に合わせて行うと、「変態の順番」も体で覚えられます。

また、6月の壁面製作として「おたまじゃくし→かえる」の成長絵巻を子どもたちと一緒に作り、完成したら「おたまじゃくしはかえるのこ」を歌いながら発表するという活動も、製作・歌・発表が連動した充実した保育時間になります。

季節の歌は「歌うだけ」で終わりにしないことが大切です。歌を入口にして、感触・観察・製作・身体表現を広げていく視点を持つと、1曲の歌から一週間分の活動が生まれます。これが条件です。

えどがわ環境財団「自然動物園ぶろぐ」──ヤマアカガエルの生存率(卵2万個→成体20匹)のデータが確認できます

もも子、かえるの歌がきこえるよ。