ありのうた歌を保育で活かす振り付きと年齢別の使い方
「ありのうた」を大きな声で歌うと、子どもたちの集中力がかえって下がることがあります。
ありのうた「おつかいありさん」の歌詞と誕生した背景
「おつかいありさん」は1950年(昭和25年)、NHKのラジオ番組『幼児の時間』のために作られた日本の童謡です。作詞は当時私鉄の駅員だった関根榮一、作曲は後に『ぞうさん』や『やぎさんゆうびん』も生み出す作曲家・團伊玖磨が担当しました。
知られていない事実があります。関根は童謡作家でも音楽家でもなく、まったくの一般人として詩の依頼を受けたのです。「幼児に北原白秋のような難しい詩は理解できない」と考えた彼は、アリが日常の中で見せるしぐさをそのまま見たままに描くことにしました。促音(っ)を多用した歌詞が独特のリズムを生み出し、幼い子どもにも親しみやすい言葉となっています。
歌詞の内容はこうです。急ぎすぎたありさんとありさんがコツンとぶつかってしまい(「こっつんこ」)、痛くてごめんねと謝ったひょうしに、おつかいの内容を忘れてしまう、というユーモラスなストーリーです。短くシンプルながら、ストーリー仕立てで子どもを引き込む構成になっています。
なお、科学的な観点からすると、実際のアリは「衝突回避能力に優れた生物」で、仲間同士でぶつかることはほとんどありません。この点はあくまで童話的な表現です。しかしそれ以外のアリの描写(働き者で行列をつくる習性など)は、生物学的にも正確とされています。
2014年の保育士実技試験で課題曲として採用されたことで、保育学生にとっても特別な存在になりました。現在でも試験対策として練習する保育士志望者が多く、合わせてピアノ弾き歌いの参考書にも必ずといっていいほど掲載されています。
歌詞と童謡の背景について詳しい解説はこちら。
ありのうた「ありさんのおはなし」との違いと使い分け
「ありのうた」として保育現場でよく使われる曲は、実は2種類あります。混同しやすい2曲ですが、内容も雰囲気もまったく異なります。保育士として両方を区別して使えると、活動の幅が広がります。
1つ目が先述の「おつかいありさん」(作詞:関根榮一 / 作曲:團伊玖磨)で、急いでぶつかってしまうアリのコミカルなエピソードを歌った明るいテンポの曲です。
2つ目は「ありさんのおはなし」(作詞:都築益世 / 作曲:渡辺茂)です。こちらは3拍子のゆったりとした曲で、「ありさんのおはなし きいたかね ちいさなこえだが きこえたよ おいしいおかしを みつけたよ となりのおうちの おにわだよ」という、アリが仲間とこっそり相談している様子を描いた歌です。「ありさんのおはなし」は、春に活動をはじめるアリが目に入る4〜5月の保育で特に人気があります。
| 曲名 | 作詞 | 作曲 | 拍子 | 雰囲気 | 向いている年齢 |
|---|---|---|---|---|---|
| おつかいありさん | 関根榮一 | 團伊玖磨 | 4拍子 | コミカル・明るい | 1〜5歳(幅広く) |
| ありさんのおはなし | 都築益世 | 渡辺茂 | 3拍子 | ゆったり・かわいい | 2〜4歳 |
3拍子の「ありさんのおはなし」は、リズムをとる練習にもなります。2〜3歳の子どもたちがちょうどリズム感を身につけていく時期に重なるため、4〜5月の保育計画に盛り込みやすい曲です。
「おつかいありさん」は保育士試験の課題曲にもなった実績がある分、保育士自身が弾き歌いしやすいという強みもあります。2曲を季節や活動の目的で使い分けると、より豊かな保育が実現します。
ありのうた歌の振り付き・手遊びのやり方を年齢別で解説
「おつかいありさん」の手遊びは、基本的に人差し指だけで表現します。シンプルな動きなので1〜2歳の乳児クラスでも楽しめます。これが基本です。
〈基本の振り付き〉
- 「あんまり いそいで こっつんこ」→ 両手の人差し指を立てて前に出し、指先同士をコツンとぶつける
- 「ありさんと ありさんと こっつんこ」→ 同じ動きをくり返す
- 「あっちいって ちょん ちょん」→ 右の人差し指を右に向け、2回ちょんとつつく動き
- 「こっちきて ちょん」→ 左の人差し指を左に向け、1回ちょんとつつく動き
- 「あいたた ごめんよ そのひょうし」→ 指でおでこを押さえるしぐさをしたあと、両手を合わせる
- 「わすれた わすれた おつかいを」→ 頭に手を当てて首をかしげる
🐜 年齢別の活用ポイント:
- 0〜1歳(乳児): 保育士が赤ちゃんの手を持って動かしてあげる「ふれあい遊び」としても使えます。保育士の足の上に子どもを座らせ、「こっつんこ」の部分で子どもの両手をやさしくつき合わせてあげます。スキンシップと発達を同時に促せます。
- 1〜2歳: 人差し指のみを使う動きなので、指先の発達途上にある子どもでも無理なく参加できます。保育士の動きを見よう見まねで真似するだけでもOKです。
- 3〜4歳: 歌詞の意味が理解できるようになるため、ストーリーを楽しみながら表情も加えて演じることができます。「あいたた!」の部分で大げさに痛そうな顔をすると子どもたちが大喜びします。
- 4〜5歳: ペープサート(紙人形劇)やパネルシアターと組み合わせることで、さらに表現豊かな活動に発展させられます。子ども同士でペアになって、一方がアリ役・もう一方がナレーター役を担う創作遊びにも展開できます。
速度を変えると面白さが増します。最初はゆっくり、2回目は少し早く、3回目はものすごく速く歌うと、子どもたちは大笑いします。保育のすきま時間にも活用しやすい、保育士にとってもコスパ最高の手遊びです。
ふれあい遊びとしての「おつかいありさん」の詳しい遊び方はこちら。
ありのうた歌が子どもの発達に与える科学的な効果
「ありのうた」のような手遊び歌を保育に取り入れることには、子どもの発達に対して複数の効果があることが研究で示されています。感覚的に「楽しいから歌う」ではなく、発達上のねらいを持って取り入れることで、保育の質が格段に上がります。
まず、脳の発達への効果があります。手は「外部の脳」と呼ばれるほど脳と密接に関係しています。手を動かすことで脳への血流が約10%上昇するという研究結果があり、普段しないような複雑な指の動きは脳を特に刺激します。
次に、言語発達への貢献です。手遊び歌では歌詞にあわせて手を動かすため、言葉とその意味・感覚が身体で結びつきます。「こっつんこ」「ちょんちょん」など擬音語・擬態語が多い「おつかいありさん」は、語彙力の発達に特に役立ちます。繰り返し歌うことで自然に言葉を覚え、発語を促す効果も確認されています。
さらに、運動機能と集中力の発達も見込めます。指先を細かく動かす経験が積み重なることで手先の器用さ(巧緻性)が育ち、後の文字の書き方や工作への土台になります。鹿児島大学の研究では「指先を使うことで知能の発達に有効」であることが示されており、保育現場での手遊び活動の有用性が裏付けられています。
加えて、「おつかいありさん」のような季節に合った歌(春〜初夏)を取り入れることは、季節感と自然への興味を養う効果もあります。実際に園庭や散歩でアリを見つけた際に「おつかいありさんみたいだ!」と気づく子どもの観察力は、こうした歌の積み重ねから育まれます。
手遊び歌と発達効果の関連について詳しい解説はこちら。
鹿児島大学「幼稚園における手遊び歌に関する実践的研究」(PDF)
保育士だけが知るありのうた歌の独自活用法と季節の組み合わせ
多くの保育士は「おつかいありさん」を春の定番曲として使いますが、実は通年活用できる曲です。また、ありのうたを単独で使うだけでなく、他の活動と組み合わせることで保育の効果が何倍にもなります。
🌸 春(4〜5月)の活用: アリが地面を活発に動き回り始める時期です。「今日散歩でアリを見つけたね。あのアリさん、おつかいに行ってたのかな?」と歌に繋げると、自然観察と音楽活動が自然に結びつきます。
☀️ 夏・秋の活用: 「おつかいありさん」はテンポが良く、室内遊びが増える梅雨時期や夏の活動にも向いています。速度を変えて歌う「スピードチャレンジ」は4〜5歳クラスで非常に盛り上がります。
❄️ 冬の活用: 冬は実際のアリが冬眠しているため、「アリさんたちは今どこにいるかな?」と問いかけながら歌うことで、生き物の冬眠・季節変化への興味を引き出せます。
また、音楽活動だけでなく絵本・製作との組み合わせも効果的です。手作りのアリのお面やペープサートを先に製作してから歌に臨むと、子どもたちの表現意欲と歌への関心が格段に高まります。製作の際はトイレットペーパーの芯3本を連結してアリの胴体を作るシンプルな工作が、2〜3歳クラスでも取り組みやすくおすすめです。
さらに、発語・コミュニケーションに課題がある子どもへの配慮として、「おつかいありさん」の擬態語・擬音語の多さは非常に有利に働きます。言葉が出にくい子どもでも「こっつんこ」「ちょんちょん」という音のリズムに引き込まれやすく、歌への参加がきっかけで発語が増えるケースが保育現場で報告されています。
一方、「ありさんのおはなし」(3拍子)は4月の入園・進級時期に活用すると特に映えます。ゆったりとした3拍子のリズムで不安な気持ちをほぐしながら、仲間を見つけて相談する歌の内容が「友達を作る」という新年度のテーマにぴったりと重なります。
| 活用シーン | おすすめの曲 | ポイント |
|---|---|---|
| 春の自然観察とセット | おつかいありさん | 園庭のアリを観察した後に歌う |
| 新年度・入園期 | ありさんのおはなし | 3拍子のゆったりリズムで安心感を |
| 大集団・活動導入 | おつかいありさん | 速さを変えて盛り上げる |
| 乳児ふれあい遊び | おつかいありさん | 保育士の膝の上でスキンシップ |
| ペープサート・絵本連携 | おつかいありさん | 製作→歌→劇ごっこへ発展 |
保育活動での季節の歌の使い方については下記も参考になります。
保育士バンクコラム「保育園で楽しめる5月の歌まとめ」

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