青少年のための管弦楽入門と吹奏楽で子どもの感性が育つ

青少年のための管弦楽入門を吹奏楽で活かす保育士のための完全解説

吹奏楽の本番演奏を聴かせると、子どもが泣き止むどころか30分間じっと集中することが報告されています。

🎺 この記事でわかること
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曲の成り立ちと構造

ブリテン作曲「青少年のための管弦楽入門」が1945年にBBC教育映画のために作られた経緯と、13種類以上の楽器を順番に紹介する変奏・フーガの構成を解説します。

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吹奏楽版の特徴と活用法

グレード5の高難度ながらコンクール自由曲として全国金賞団体も演奏。保育士がCD・動画で活用できる具体的な方法を紹介します。

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子どもの発達と音楽の関係

吹奏楽鑑賞が子どもの脳の広範囲を刺激し、認知機能・社会性・情緒の安定に効果をもたらすことが研究によって明らかになっています。

青少年のための管弦楽入門とはどんな吹奏楽・管弦楽作品か

 

「青少年のための管弦楽入門」は、イギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテンが1945年12月に作曲した管弦楽曲で、正式名称は「パーセルの主題による変奏曲とフーガ 作品34(Op.34)」です。英国放送協会(BBC)が制作した音楽教育映画「Instruments of the Orchestra(オーケストラの楽器)」のために書かれた作品であり、映画は翌1946年11月29日に公開されました。初演はその映画公開に先立つ同年10月15日、マルコム・サージェント指揮のリヴァプール・フィルハーモニック管弦楽団によって行われています。

この作品の最大の特徴は、「楽器紹介」そのものを音楽に組み込んだ構造にあります。17世紀の作曲家ヘンリー・パーセルが劇付随音楽『アブデラザール』の中で書いた「ロンド」の主題を素材として用い、その主題をオーケストラ全体→木管→金管→弦楽→打楽器の順で提示したあと、フルートとピッコロ、オーボエクラリネットファゴット、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスハープホルントランペットトロンボーンチューバ、そして打楽器群へと次々と主題を引き渡し、それぞれの楽器の音色を生き生きと伝えていきます。演奏時間はナレーションなしで約15〜20分とまとまっており、飽きのこない長さです。

つまり、曲を聴くだけで楽器の名前と音色が自然にわかる仕組みです。

プロコフィエフの「ピーターと狼」と並び、世界中で子どもたちへのオーケストラ入門曲として長年愛され続けてきました。日本語版のナレーションには栗原小巻、小澤征爾、三枝成彰らが起用されており、幅広い形で親しまれています。

参考:青少年のための管弦楽入門の詳細な曲目構成と編成について確認できます。

青少年のための管弦楽入門 – Wikipedia

青少年のための管弦楽入門の吹奏楽版の特徴とコンクールでの活躍

オーケストラ作品として書かれた「青少年のための管弦楽入門」は、吹奏楽のための編曲版が複数存在します。なかでもよく知られているのが、アメリカの作曲家・編曲家リチャード・ソーセード(Richard Saucedo)による吹奏楽編曲版「主題とフーガ『青少年のための管弦楽入門』より」です。この楽譜はBoosey & Hawkes社から出版されており、ロケットミュージック(gakufu.co.jp)では税込約39,930円(グレード5・中上級)という本格的な価格設定がされています。

グレード5というのは、吹奏楽の楽譜としては最難関レベルです。

2025年の全日本吹奏楽コンクールでは、川越奏和奏友会吹奏楽団がブリテン「パーセルの主題による変奏曲とフーガ」(青少年のための管弦楽入門)を自由曲として演奏し、全国大会で金賞を受賞したことが大きな話題を呼びました。フーガのパートを「過去イチのテンポで攻めた」という演奏者のコメントが残されており、高い技術力なしには挑めない作品であることがわかります。

吹奏楽版の演奏は、弦楽器パートを木管・金管・打楽器の組み合わせで代替することで、オリジナルのオーケストラ版とはまた異なる響きの厚みが生まれます。コントラバスのパートをチューバやバリトンサックスが担い、ヴァイオリンの輝きをフルートやオーボエが受け持つ構造です。これは使えそうです。

特に保育士の方にとって関心を持ちやすいポイントは、吹奏楽版でも「楽器が一つずつ順番に登場する」という教育的な構造が変わらないという点です。子どもに「次はどの楽器が出てくるかな?」と問いかけながら聴くことができ、インタラクティブな鑑賞活動へと発展させやすい素材です。

参考:ソーセード編曲による吹奏楽楽譜の詳細情報と価格を確認できます。

「青少年のための管弦楽入門」より主題とフーガ(ブリテン) 吹奏楽譜 – ロケットミュージック

吹奏楽鑑賞が子どもの脳と発達に与える科学的な効果

保育現場で「青少年のための管弦楽入門」のような吹奏楽作品を活用する根拠は、音楽と子どもの発達に関する研究の積み重ねにあります。音楽を聴いたり、演奏にあわせて体を動かしたりする経験は、脳の神経回路を強化し、新たなシナプス(神経のつながり)を形成することが知られています。音の「高い低い」とリズムは脳の異なる領域で処理されるため、音楽は脳の広い範囲を一度に活性化できる、いわば「脳のマルチトレーニング」です。

認知機能・情緒・社会性が同時に育まれます。

具体的な効果としては、注意力・記憶力・実行機能の改善、言語能力や数学的思考の向上、感情の表現と共感性の発達、リズム感や協調運動能力の向上などが研究によって明らかになっています(Schellenberg 2004、Hyde et al. 2009 など)。「青少年のための管弦楽入門」では1曲の中で13種類以上の楽器が登場するため、子どもが音色の違いを感知し、聴き分ける聴覚識別能力を育てる素材としても非常に適しています。

また、集団での音楽鑑賞には情緒の安定をもたらす効果もあります。G Kreutzらの研究では、集団で歌を歌ったり音楽を共に聴いたりすると、「絆ホルモン」と呼ばれるオキシトシンの分泌量が増加し、幸福感が向上することが確認されています。さらに、好きな音楽を聴くことでドーパミンが放出されることも示されており、音楽活動そのものが子どもに喜びと情緒の安定をもたらします。

ASD(自閉症スペクトラム障害)やADHD傾向のある子どもに対しても、音楽がコミュニケーション能力や集中力、衝動性コントロールの改善に寄与するという報告が複数あります(Geretsegger et al. 2014、Rickson 2006など)。保育士としてこの事実を知っておくと、さまざまな特性を持つ子どもへのアプローチに幅が生まれます。

参考:音楽が保育現場の子どもの発達に与える効果について、研究データをもとに詳しく解説されています。

【特性のある子供にも】音楽の力で発達を促す!保育現場における音楽の可能性 – After Reha

青少年のための管弦楽入門を吹奏楽CDや動画で保育活動に使う方法

保育士が「青少年のための管弦楽入門」を実際の保育活動に取り入れる際、わざわけ生演奏を手配しなくてもCDや動画を活用することで十分な効果が得られます。活用の仕方は場面や子どもの年齢によって柔軟に変えることがポイントです。

まず「楽器当てゲーム」という形式が子どもの集中を引き出しやすい方法のひとつです。曲の冒頭で全楽器のトゥッティ(全体合奏)が流れ、次に木管楽器群・金管楽器群・弦楽器群・打楽器群の順で主題が演奏される構成を利用します。「今聞こえるのはフルートかな?トランペットかな?」とナレーションがわりに声をかけながら聴くことで、子どもが主体的に音色を聴き分けようとする姿勢が生まれます。これは使えそうです。

年齢別の活用目安としては以下のような方法が考えられます。

年齢 活用シーン ポイント
0〜1歳 お昼寝前・授乳中のBGM 主題提示部の穏やかな弦楽セクションを使う
2〜3歳 朝の会や自由あそびの背景音 ティンパニやシロフォンのパートで体を動かす
4〜5歳 楽器絵カードを使った鑑賞活動 音が聞こえたら該当の楽器カードを上げるゲーム
5〜6歳 発表会前の鑑賞教育 フーガのパートで「全員合わさると迫力が増す」ことを体感させる

楽器絵カードを事前に手作りしておくのが原則です。フルート・トランペット・太鼓などのイラストを描いたA5サイズ(はがきの2枚分程度)のカードを用意するだけで、鑑賞活動が一気に視覚的・参加型になります。YouTubeで公開されている「青少年のための管弦楽入門」の解説入り演奏動画(洗足学園音楽大学 江原陽子氏のナレーション版など)は、字幕や解説が付いているためそのまま保育の補助教材として使える質の高いコンテンツです。活用の際は著作権の確認を忘れずに行いましょう。

参考:保育現場での楽器導入と子どもの音楽活動の進め方について、東京藝術大学が公開している実践的な資料です。

子どもの心を育む音楽活動 – 東京藝術大学

保育士だからこそ知りたい「青少年のための管弦楽入門」吹奏楽版の独自視点:ナレーションなし演奏が保育活動に向いているワケ

一般的に「青少年のための管弦楽入門」はナレーター(解説者)付きで演奏されるイメージが強いですが、ブリテン自身がナレーションありとなしの両方で演奏できるよう作品を設計しています。これは保育活動において見逃せないポイントです。

ナレーションなし演奏の方が保育に向いています。

その理由は「子どもの想像力を奪わない」という点にあります。ナレーターが「次はフルートです」と教えてしまうと、子どもは「答え合わせをするだけ」の受動的な聴き方になりがちです。一方でナレーションなし版を流しながら保育士が「さっきと音が変わったね、何が聞こえた?」と問いかけると、子どもは自分の感覚を頼りに音色を探し始めます。これがまさに感覚識別能力と自己表現力を同時に育てる保育活動のスタートになります。

また、吹奏楽版では弦楽器パートが木管・金管に置き換わっているため、オーケストラ版と聴き比べると「同じ曲なのに違う!」という驚きが子どもにとって新鮮な体験になります。たとえば、オーケストラ版のヴァイオリン変奏の部分を吹奏楽版と聴き比べることで、「弦と管は違う音がする」という具体的な発見につながります。東京藝術大学が発行している保育向け資料にも「楽器を段階的に提示する」ことの重要性が述べられており、この曲の構造はまさにその手法と合致しています。

さらに、曲の最後に登場するフーガのクライマックスは、楽器が一つずつ増えていき最終的にすべての楽器が重なり合う構造になっています。これは「みんなが揃うと大きな音になる」という体験として、運動会や発表会の「みんなで力を合わせる」という保育のテーマとも自然に連動します。「全員揃ったらすごいパワーが出る」というメッセージを、言葉ではなく音楽で直感的に伝えられる点が、この作品が保育教材として持つ独自の強みです。

吹奏楽のCD選びでは、ナレーションなし版かどうかを事前に確認するのが条件です。川越奏和奏友会吹奏楽団の2025年全日本吹奏楽コンクール金賞演奏はYouTubeでも一部確認でき、子どもへの鑑賞素材として非常にクオリティが高いのでチェックしてみる価値があります。

参考:保育における音楽活動のねらいや、段階的な楽器提示の方法を解説した東京藝術大学の資料です。

子どもの心を育む音楽活動 – 東京藝術大学

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