自然音が勉強の効果に与える影響と保育士向け実践活用法
静かな部屋で勉強するほど、集中力は下がっていきます。
自然音が勉強の集中力を高める仕組み|1/fゆらぎとマスキング効果
「自然音を流せば集中できる」と漠然と信じている人は多いですが、実際にどんな仕組みで集中力が上がるのかを知っている人は意外と少ないものです。仕組みを理解しておくことで、場面に合わせた活用の精度が上がります。
自然音が集中を助ける理由として、まず押さえておきたいのが「1/fゆらぎ」です。1/fゆらぎとは、波の音や川のせせらぎ、風に揺れる木の葉の音などに含まれる、規則性と意外性が程よく混じり合った特殊な音のリズムのこと。物理学者・武者利光氏の研究によると、人間の心臓の鼓動もこの1/fゆらぎのリズムを持っており、外から同じリズムを受け取ることで身体が共鳴し、リラックスした状態が促されると考えられています。
東京法経学院のコラムでも引用されている池田妙子氏の論文「音響刺激による集中性効果と時間の過小評価について」(日本心理学会誌)では、「音の周波数が1/fゆらぎに近いほど、課題遂行への集中が進んだと考えられる」と明記されています。つまり1/fゆらぎが含まれる自然音を流すと、脳が落ち着いた集中状態に入りやすくなるわけです。
もうひとつの重要な仕組みが「マスキング効果」です。音響工学の研究者・辻村壮平氏によると、マスキング効果とは「音同士が互いにかき消し合う現象」のこと。完全な無音の空間では、誰かのキー打ちや遠くから聞こえるドアの音など、ちょっとした物音でも注意が途切れてしまいます。
三井住友建設技術開発センターが2010年に報告した実験でも、波音や川のせせらぎをオフィスで流したところ、完全な無音状態と比べて話し声が気になりにくくなったという結果が得られています。自然音は「気になる騒音を消しながら、耳に心地よいBGMとしても機能する」という二重の役割を果たすのです。これは使えそうです。
さらに、脳波の観点でも注目の研究があります。三菱鉛筆・芝浦工業大学・ストーリア株式会社の共同実証実験(FNNプライムオンライン、2024年1月)では、PASATというストレステストを使い、「川のせせらぎ」を集中力が落ちたタイミングで流すと、集中力を表す脳波が有意に上昇したことが確認されました。注目すべきは、同じ実験でホワイトノイズとクラシック音楽(ショパンのNocturne Op.9, No.2)では正答率が下がったという点です。「クラシックなら何でもOK」ではない、ということですね。
自然音がもたらすリラックス効果についても国際的な研究が蓄積されています。2021年にRachel T.Buxtonらが発表した研究(アメリカ国立公園68か所、221地点のフィールドデータを分析)では、自然音に触れることでストレスホルモン(コルチゾール)・心拍数・血圧が低下し、健康状態が改善されることが確認されています。特に水の音は健康改善に、鳥のさえずりはストレス軽減に最も効果的という結論も出ています。
自然音には複数の科学的根拠があります。単なる「気分転換のBGM」ではなく、脳の集中状態を整える有効なツールとして位置づけることが大切です。
自然音の集中力向上と科学的メカニズムについて詳しい参考情報はこちら。
波の音で勉強がはかどる理由(STUDY HACKER)|マスキング効果と1/fゆらぎについて詳しく解説
自然音の種類と勉強への効果|波音・川音・鳥のさえずりを比較
「自然音なら何でもいい」と思っていると、せっかくの効果を引き出せないことがあります。自然音にも種類があり、勉強内容との相性によって効果が変わります。
まず代表的な自然音の種類と特徴を整理しておきましょう。
| 自然音の種類 | 特徴・効果 | 向いている勉強シーン |
|---|---|---|
| 🌊 波の音 | 規則的かつゆらぎがある。1/fゆらぎを豊富に含みリラックス効果が高い | 読解・記述・長時間の集中 |
| 🏞️ 川のせせらぎ | 実証実験で脳波への集中効果が確認済み。穏やかで耳に馴染みやすい | 暗記の下読み・復習・集中が切れたタイミング |
| 🐦 鳥のさえずり | 高周波を含み脳を活性化。ストレス軽減効果も高い | 朝の勉強開始時・軽い確認作業 |
| 🔥 焚き火の音 | 大阪府立貢中高校の研究(2021年)で最も集中力を維持できると判明 | 長時間のまとめ作業・書き物 |
| 🌧️ 雨の音 | 単調で安定した音質。眠気を誘いやすい面もあるが、マスキング効果は高い | 低負荷な作業・アイデア整理 |
特に興味深いのが焚き火の音です。大阪府立貢中高校が2021年に発表した研究「学習効率をあげるには〜ヒーリング・ミュージックを用いて考える〜」では、波音・川音・雨音・鳥のさえずり・焚き火の音を比較した結果、「焚き火」の音を聞くことで最も集中力が維持できたという結果が得られました。非日常感や特別感を感じさせる音が、脳の覚醒水準を適切に保つ効果があると考えられています。意外ですね。
一方で、保育士試験の受験勉強スクール「サンライズアカデミー」のブログ(2024年7月)でも、試験勉強中の気分転換と集中維持のために自然音・環境音が推奨されています。実際の資格勉強の現場でも、自然音は「勉強効率を支える音環境」として取り入れられています。
鳥のさえずりについては、音に高周波が含まれるため脳を活性化させる効果が期待できるものの、種によっては音が不規則で気が散ることもあります。YouTubeなどで試し聴きをして、自分がリラックスできるものを選ぶことが大切です。
川のせせらぎは前述の実証実験で効果が確認されていますが、この実験のポイントは「集中力が落ちたタイミングで流す」という点にあります。最初から流し続けると効果があるかどうかは実験されていないと三菱鉛筆の担当者も述べており、「集中の切れ目に投入する」使い方が有効という示唆があります。これも自然音の活用で押さえておきたい知識です。
音の種類が分かれば選択が楽になります。目的に合った自然音を選ぶことが基本です。
自然音の勉強への効果が下がるNG使い方と音量の最適解
自然音は「ただ流しておけばいい」というものではありません。使い方を間違えると、効果がゼロになるどころか逆に勉強の邪魔になることがあります。
最も多いNGパターンが「音量の大きすぎ」です。スカイ予備校(2024年11月)が整理した研究結果によると、勉強時の適切な音量レベルは次のようになっています。
- 📌 50〜60デシベル:集中力の維持に最適(図書館の静かな会話レベル)
- 📌 60〜70デシベル:創造的な作業・記述系に適している(カフェの環境音レベル)
- 📌 70デシベル以上:認知負荷が高まり、学習効率が下がる可能性がある
特にリラックス効果を最大限に引き出したい場合は、40デシベル以下(図書館の館内音レベル)が推奨されています。これはiPhoneでいうと音量25%前後、PCのボリューム設定ならおよそ30〜33程度に相当します(環境や機種によって異なります)。つまり「聞こえるか聞こえないか」という小さめの音量が正解です。
次に多いNGパターンが「歌詞のある音楽と混同すること」です。自然音の大きな強みは、歌詞や旋律のような「言語処理を必要とする情報」が含まれていない点にあります。脳は聴いている言葉を無意識に処理しようとするため、歌詞のある音楽を流すと、読解・暗記系の勉強では情報処理の競合が起きて集中力が落ちます。厳しいところですね。
また、「暗記作業中に自然音を流す」こと自体は問題ありませんが、音量が大きいと耳から入る情報が記憶の定着を妨げる可能性があります。暗記系の勉強をするときは、音量をさらに小さくするか、まったくの無音で行い、まとめや書き直しのような軽い作業に切り替えるタイミングで自然音を入れる流れが効果的です。
さらに見落としがちなNGが「依存のしすぎ」です。自然音がないと集中できなくなってしまうと、試験本番のような静かな会場では逆に実力を発揮しにくくなるリスクがあります。あくまでも自然音は「集中の補助ツール」として位置づけ、無音でも集中できる状態も日頃から作っておくことが重要です。
まとめると、自然音の活用には「音量・タイミング・依存度」の3点に注意が必要ということです。
保育士試験勉強中の気分転換に自然音が活用されているスクールの情報はこちら。
試験勉強のおすすめ気分転換法(サンライズアカデミー)|保育士試験対策スクールが推奨する自然音の活用法
保育士試験の勉強に自然音を活かすシーン別活用術
保育士試験は筆記9科目と実技試験から構成される、範囲の広い国家資格です。仕事をしながら勉強している保育士・保育士志望の方にとって、限られた時間をいかに集中力高く使えるかは、合否を左右する重要なポイントになります。
自然音は、勉強シーンごとに使い方を変えることで、より大きな効果を得られます。
📚 テキスト精読・内容理解のとき
保育の原理や子どもの保健など、内容をしっかり読み込む科目では、川のせせらぎや波の音を音量35〜40デシベルで流すのが効果的です。静かすぎる部屋では少しの物音でも気が散りやすいため、マスキング効果で周囲の雑音を軽減しながら、長時間の集中を維持できます。1/fゆらぎによってリラックスした状態を保ちながら読めるため、内容が頭に入りやすくなります。
📝 暗記作業のとき(法律・制度・数値の暗記)
社会福祉・社会的養護・教育原理など、数字や名称の暗記が多い科目では、音量をさらに下げるか、無音で行うのが原則です。その後、暗記した内容を見返す「復習フェーズ」に切り替わったら、自然音を小さく流しながら確認していく使い方が合っています。つまり「暗記は無音→復習は自然音」が条件です。
✍️ まとめノート・書き物のとき
テキストの内容をノートにまとめたり、過去問の解説を整理したりする作業は、比較的負荷が低めのため自然音との相性が良いシーンです。前述の研究で「焚き火の音が最も集中力を維持できた」という結果も、こうした書き物系の作業に活きてきます。焚き火・川音・雨音などをゆったりと流しながら手を動かすと、作業の疲れを感じにくくなります。
😴 休憩からの切り替えのとき
仕事終わりに勉強を始めようとしても、なかなかエンジンがかからないことはよくあります。そのようなとき、鳥のさえずりを5分ほど流してから勉強を始めると、脳が穏やかに覚醒モードへ切り替わりやすくなります。高周波を含む鳥の声は、脳の活性化効果があるとされており、スタートのハードルを下げる効果が期待できます。これは使えそうです。
📱 自然音を手軽に使う方法
- 🎵 YouTube:「川のせせらぎ 勉強用」「波の音 2時間」などで検索。無料で長時間流せる動画が多数あります。
- 🎵 Spotify:「自然音」「environment sound」で検索するとプレイリストが豊富。広告が気になる場合はBraveブラウザ経由の利用を検討。
- 📱 スマホアプリ:「波音アプリ」(iOS/Android対応)、「Wildfulness」(iOS)などにはスリープタイマーも搭載されており、入眠時にも活用できます。
自然音の活用は特別な準備なくすぐに始められます。今日の勉強から取り入れてみてください。
保育現場でも応用できる!子どもの集中と自然音の意外な関係
保育士として働く上で、この自然音の知識は自分の勉強だけに留まりません。実は、保育の現場における子どもの集中行動にも、音環境は大きく関係しています。これは、保育士試験の勉強を超えた「現場で使える知識」です。
九州産業大学・田中研究室がまとめた2025年の研究(「日本保育環境学会誌」掲載)によると、保育施設内の音環境と子どもの集中行動の関連を観察・録音データで分析した結果、自然音や人の声などポジティブな音は集中を妨げにくいのに対し、突発的で大きな騒音は注意を途切れさせる強い要因となることが分かっています。また、物理的に静かな環境を整えるだけでなく、「音の種類と質」に配慮することが子どもの集中を促すためには必要だという点も示されています。
つまり、保育の現場でも「無音が最良」ではなく、自然音のような穏やかな音を背景に流すことで、子どもが落ち着いて活動しやすい環境が生まれるということです。これは大人の勉強に効果的なメカニズムと本質的に同じ話です。
具体的には、室内活動の時間帯に川のせせらぎや鳥のさえずりをBGMとして小さく流すことで、子どもたちが落ち着いて製作や絵本の読み聞かせに集中する環境を作れる可能性があります。また、午睡の導入として雨音や波の音を使う保育施設もあります。
実際、USEN(ユーセン)のビジネスBGMサービスのレポート(2019年4月)でも、「自律神経のバランスを整える効果が保育施設での音楽活用により徐々に明らかになっている」という報告があります。保育現場における音環境への関心は、研究・現場の両面で高まっています。
自分の勉強の質を上げながら、保育の現場でも応用できる知識として自然音を捉え直すと、その価値はさらに広がっていきます。
保育現場の音環境と子どもの集中行動に関する研究はこちら。
保育施設に音楽が良いワケとは?(USEN)|音楽と脳・自律神経の関係について保育現場向けに解説
自然音を使った勉強の効果を最大化する4つの実践ポイント
ここまでの内容を踏まえて、今すぐ実践できる形で整理しておきます。自然音は「何となく流す」から「意図的に活用する」へ意識を切り替えることで、効果が大きく変わってきます。
① 音量は「図書館レベル」を守る
自然音を勉強BGMとして最大限に活かすには、音量を40デシベル以下(図書館の静けさに近いレベル)に保つことが重要です。これはiPhoneなら音量25%前後、PCのスピーカーならボリューム30〜33程度が目安になります。音量が大きいと、自然音本来のリラックス・集中効果が失われてしまいます。40デシベルが条件です。
また、ヘッドフォンやイヤホンを使用する場合は、スピーカーよりも直接耳に届くため、さらに少し音量を下げた設定が適切です。長時間使用する際は、耳への負担にも注意しましょう。
② 勉強の種類で「自然音あり・なし」を切り替える
自然音は「読む・書く・まとめる」という出力系の作業に向いています。一方で、法律名や制度の数字、専門用語を新たに暗記する「インプット系の作業」は、できるだけ無音か非常に小さい音量で行う方が記憶の定着率が高まります。
保育士試験でいえば、社会的養護・教育原理・子どもの食と栄養などの暗記科目は無音で、保育原理の読解・過去問の解き直しなどは自然音ありで、というメリハリをつけるのが理想的な使い方です。
③ 集中が切れたタイミングで「川のせせらぎ」を投入する
三菱鉛筆の実証実験が示したように、自然音のなかでも川のせせらぎは「集中力が落ちたタイミングに流すと脳波が上昇する」という効果が確認されています。最初から流しっぱなしにするよりも、「集中が切れてきた」と感じたときに意識的に流し始めるというトリガー的な使い方が効果的な可能性があります。
勉強中に「あ、ちょっとぼーっとしてきたな」と感じたら、川のせせらぎを1〜2分流してみてください。それだけで脳が再起動されたような感覚が得られることがあります。
④ 自然音アプリを1つ決めておく
勉強を始めるたびに「どの自然音にしようかな」と選ぶ時間が発生すると、それ自体が集中の妨げになります。Spotify・YouTube・スマホアプリの中から、自分が一番使いやすいものを1つ決めて、毎回同じプレイリストや動画を流すようにしましょう。
同じ音を繰り返し使うと、脳がその音を「集中の合図」として認識するようになるという条件づけ効果も期待できます。これは勉強の継続習慣にも繋がる重要なポイントです。
自然音を賢く使う4つのポイント、ぜひ今日の勉強から実践してみてください。
1/fゆらぎと勉強効率の関係についてさらに詳しく知りたい方はこちら。
1/fゆらぎで勉強の効率アップ!(東京法経学院)|資格試験勉強への1/fゆらぎの具体的な活かし方を解説

高原の朝 自然音 ヒーリングミュージック CD 睡眠 耳鳴り せせらぎ 自律神経 朝に聴きたい音楽 さわやかな朝に聴く音楽 森林浴

