山の魔王の宮殿にて ピアノ楽譜の選び方と弾き方ガイド
無料楽譜だけで練習すると、保育現場で子どもの集中が2分以内に途切れやすくなります。
山の魔王の宮殿にての作曲背景と保育活動での位置づけ
「山の魔王の宮殿にて」は、ノルウェーの作曲家エドヴァルド・グリーグ(1843〜1907)が1875年に書いた劇音楽「ペール・ギュント」の中の1曲です。もとはノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンの戯曲のために作られた付随音楽であり、グリーグが31歳のときにイプセン本人から依頼を受けて作曲しました。
この曲が保育士にとって特別な意味を持つのは、小学校4年生の音楽教科書にも採用されている鑑賞教材だからです。令和6年度〜令和9年度版の教科書にも掲載が続いており、子どもたちが就学前から「聴いたことがある曲」として出会うきっかけを保育士が作れるという点で、非常に価値の高い1曲です。つまり、保育現場で使うことが子どもの音楽的素地づくりに直結するということです。
🏰 曲の物語について子どもに伝えるときのポイントをまとめます。
| 場面 | 物語の内容 | 音楽の変化 |
|---|---|---|
| 冒頭 | 魔王の宮殿に迷い込む | ppでこっそり歩くような静かな出だし |
| 中盤 | トロールたちに追いかけられる | poco a poco crescendo(だんだん大きく) |
| 終盤 | 命からがら脱出しようとする | ffまで音量が上がり、速度も最大に |
「山の魔王」とは、物語の中でペールが出会う妖精「トロール」の王のことです。ノルウェーでは今でもトロールの存在が日常に根づいており、物が消えたときに「トロールのいたずら」と言うほどです。この異文化の豆知識を添えるだけで、年長クラスの子どもたちの目がきらっと輝くことも少なくありません。これは使えそうです。
「山の魔王の宮殿にて」は変奏曲の形式で構成されており、同じメロディーが繰り返されるたびに音量と速度が上がっていきます。全部で88小節あり、第1変奏・第2変奏・第3変奏とコーダに分かれています。この「だんだん盛り上がっていく」構造が、子どもが「どんどんこわくなってきた!」と感じやすい要因です。保育士が弾く際にも、この「変化」を意識して演奏するだけで、子どもの反応が大きく変わります。
また、グリーグは「北欧のショパン」と呼ばれるほどピアノ曲の名手でもあり、この曲はもともとピアノ用の原譜が存在します。ピアノ編曲版ではなくグリーグ自身がピアノのために書いた曲である、という点は意外と知られていません。意外ですね。
参考:この曲の音楽的・物語的な背景をさらに深く知りたい方には、以下のページが参考になります。
山の魔王の宮殿にて|世界の民謡・童謡(グリーグとペール・ギュントの解説)
山の魔王の宮殿にてのピアノ楽譜の難易度別おすすめ
この曲の楽譜には「入門」「初〜中級」「中級」「中上級」「上級」と幅広いグレードのものが販売・配布されています。保育士として選ぶ際に重要なのは、「自分のピアノレベルに合っているか」「子どもの前で自信をもって弾けるか」という2点です。難易度が自分に合っていれば問題ありません。
各レベルの特徴と入手先を以下にまとめます。
- 🟢 入門〜初級:黒鍵を極力避けたアレンジ版。片手から練習できる構成で、1〜2ページに収まっているものが多い。MuseScoreやmucome.netで無料〜数百円で入手可能。とくに「mucome(ミューカム)」では初心者〜初級グレードの楽譜が数百円から入手できます。
- 🟡 初〜中級:メロディーラインを右手で、シンプルな伴奏を左手で担当する構成。ヤマハ「ぷりんと楽譜」では350〜470円でダウンロード可能。コンビニ印刷にも対応しており、急いでいるときにも便利です。
- 🟠 中級〜中上級:原曲に近いテンポとダイナミクス変化を再現したアレンジ。全音出版社やヤマハ出版のものは解説コメント付きで練習の指針を得やすい。ピアソコア(Piascore)では550円前後で入手できます。
- 🔴 上級:オリジナルに忠実な版や、ジャズアレンジ版など。フェアリーやcanon-scoreなどで360〜594円で購入可能。グリーグ監修に基づいた全音版が特に評価が高い。
楽譜選びでよく起こりがちなのが、「どうせ弾くなら原曲に近いものを」と難易度を高めに選んでしまうミスです。しかし保育現場では、子どもを引きつけながら安定して弾けることがもっとも重要です。自分が8割の余裕で弾けるレベルの楽譜が原則です。
なお、MuseScoreでは複数のピアノ編曲版(easy・ソロ・連弾など)が無料公開されています。最初に試し弾きをしてから有料楽譜を購入するという流れがおすすめです。楽譜の選択に迷ったら、まずMuseScoreで曲のイメージを確認しましょう。
参考:レベル別の楽譜一覧と詳細は以下のページで確認できます。
山の魔王の宮殿にて 楽譜一覧|ヤマハ「ぷりんと楽譜」(難易度・アレンジから選べる)
山の魔王の宮殿にてのピアノ練習でつまずきやすいスタッカートのコツ
この曲を練習すると最初に壁となるのが、冒頭から続く「sempre staccato e pp(常にスタッカートで、ピアニッシモ)」という指示です。スタッカートで音を短く切りながら、さらに弱音で弾くという組み合わせは、ピアノ経験者でも難しいと感じる部分です。厳しいところですね。
一般的な「指を上に持ち上げてスタッカートを出す」練習では、ここではうまくいきません。代わりに効果的なのが「指先を手前に引っかくように動かす」奏法です。仕組みはこうです。
- 指をまっすぐ鍵盤の上に置いた状態からスタートする
- 指先を手前(手首側)に向けて回転させるようにして鍵盤を押し下げる
- 指先が鍵盤の端を通り過ぎることで自然にキーが離れる
この動きにより、指を上に持ち上げる動作が不要になります。回転の速さで音量をコントロールできるため、ppの弱音も出しやすくなるのが特徴です。上下の運動が必要ないということです。鍵盤の上で指がほぼ横に動くイメージで練習すると、体で覚えやすくなります。
テンポに関しては「Alla marcia e molto marcato ♩=138」という指示がありますが、最初からこのテンポで練習するのは得策ではありません。まずは♩=60〜70程度のゆっくりとしたテンポで、スタッカートの均一さだけに集中する段階を設けましょう。曲全体が「だんだん速くなる」構造なので、序盤を意識的にゆっくり始める余裕を持つことも重要です。テンポ設計が仕上がりのカギです。
第2変奏(26小節目〜)からは「poco a poco cresc. e stretto(少しずつ音量と速度を上げる)」という指示が入ります。ここでペダルを踏む箇所がありますが、スタッカートを意識しているうちはペダルは控えめにするのが原則です。ペダルで音がつながってしまうと、せっかくのスタッカートの効果が消えてしまいます。
保育士が子どもの前でこの曲を弾くとき、完全な原曲テンポよりも「ゆっくり始めてしっかり速くなる」流れを重視した方が、子どもの反応は明らかによくなります。子どもは「変化」を体感することが好きだからです。音楽の変化を体で感じさせることが大切です。
山の魔王の宮殿にてのピアノを使った保育・音楽活動への活かし方
「山の魔王の宮殿にて」は発表会の演奏曲としての活用だけでなく、保育の日常活動にも幅広く取り入れられます。小学校4年生の鑑賞教材として長年採用されてきた曲なので、子どもたちは「聴いて体で反応する」という体験に向いた曲です。いいことですね。
🎭 音楽鑑賞・リトミック活動への活用
「山の魔王の宮殿にて」は曲が進むにつれて音量・速度ともに上昇する変奏曲構造を持っているため、子どもたちが音楽の変化を体全体で感じるリトミック的な活動と相性が良いです。たとえば次のような使い方が実践されています。
- 🚶 冒頭(pp・ゆっくり):こっそり歩くトロールになりきってそっと歩く
- 🏃 中盤(crescendo):音が大きくなるにつれて歩くスピードを上げる
- 💨 クライマックス(ff・速い):両手を使って走る・飛び跳ねる・逃げる表現をする
実際に小学1〜4年生を対象とした「プラスティックアニメ(リトミックの表現手法のひとつ)」の授業でも、この曲の音量変化・速度変化を体の動きで表現する実践が報告されています。年長〜小学校低学年を担当する保育士にとって、すぐに使えるアクティビティです。これは使えそうです。
🎪 ハロウィンやファンタジー系の行事での演出
TikTokやSNSでも「ハロウィンの時期に合う曲」としてこの曲を弾く保育者の投稿が多く見られます。実際、「魔王」「宮殿」「妖精トロール」という世界観はハロウィンの雰囲気と相性がよく、劇ごっこや仮装を伴うイベントのBGMとしても効果的です。10月のイベント前に1曲仕上げておく候補として有力です。
🎹 ピアノ発表会・連弾での活用
中学1年生〜大人まで幅広い年齢層がピアノ発表会で弾いている記録が多く残っており、連弾バージョンの楽譜も540〜590円程度で入手できます。保育士が園内の発表会で弾く「見せ場」を作りたい場合や、ピアノが得意な子どもと連弾で仕上げたい場合にも活用できます。連弾は子どもとの共演の場になります。
参考:授業活用・鑑賞教材としての詳しい情報はこちら。
小学校音楽「朝の気分」「山の魔王の宮殿にて」の鑑賞授業教材(note)
保育士が知らずに損している山の魔王の宮殿にて楽譜の入手方法
「山の魔王の宮殿にての楽譜はどこで買えばいいのか」と迷う保育士は多いですが、選択肢が整理できていないと、不要に高い楽譜を買ったり、逆に難易度の合わない無料楽譜を使ってしまうことがあります。入手先ごとの特徴を把握することが条件です。
📥 無料で入手できる楽譜
MuseScore(musescore.com)では、ピアノソロ・easy版・連弾などの楽譜が複数公開されており、PDF形式またはMIDI形式で無料ダウンロードが可能です。編曲者はプロ奏者から一般ユーザーまでさまざまですが、試し弾き用として非常に便利です。グリーグの原曲自体は著作権が消滅しているため(没後70年超)、編曲者の表記・利用規約を確認した上でダウンロードすれば問題ありません。
「everyonepiano(エブリワンピアノ)」でも6ページの五線譜が無料公開されています。楽譜が無料でも使い方のルールは守る必要があります。
📦 有料・ダウンロード購入の楽譜
有料楽譜を購入する場合、以下の3サービスがとくに使いやすいです。
- 🎵 ぷりんと楽譜(ヤマハ):12種類以上の楽譜を取り扱い。350〜600円程度。コンビニ印刷に対応しており、自宅にプリンターがなくても問題なし。難易度表記が明確で選びやすい。
- 🎵 楽譜@ELISE(アットエリーゼ):1曲110円からのダウンロードが可能。グリーグ・ペールギュント組曲の楽譜を複数取り扱っており、絶版楽譜も見つかることがある。
- 🎵 Piascore(ピアソコア):スマートフォンやタブレットで楽譜を表示・再生できるアプリ連携型の楽譜ストア。550〜600円程度。タブレットで見ながら弾く場合に向いている。
保育士として覚えておきたい重要な点があります。職場の保育室やホールに据え置きのピアノがある場合でも、「個人で購入した楽譜を職場で使うこと」は問題ありませんが、楽譜をコピーして同僚に渡すことは著作権法上の問題になる場合があります。購入した楽譜は1名分として扱うのが原則です。
有料楽譜のほとんどは演奏のコメント付きで、「スタッカートの長さを揃えること」「後半のaccel.は息を合わせること」など、具体的な演奏ヒントが書いてあります。無料楽譜と有料楽譜の差はこういうところに出てきます。
参考:楽譜ダウンロードサービスの比較についてはこちらが参考になります。

