子どもの声うるさい問題を保育士が正しく理解し対処する方法

子どもの声うるさい問題を保育士が知っておくべき原因と対策

大声で注意するほど、子どもの声はさらに大きくなります。

この記事でわかること
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なぜ子どもの声は「うるさい」と感じるのか

子どもの声は2,000〜4,000Hzという人間の耳が最も敏感な周波数帯にあります。「うるさい」と感じるのは生物学的に自然な反応です。

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保育士が大声を出すと逆効果になる理由

「ロンバード効果」により、保育士が声を張ると子どももつられて声が大きくなります。静かにさせたいなら、まず保育士が声を落とすことが基本です。

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近隣クレームに備えて保育士ができること

約3割の保育園が近隣から苦情を受けた経験あり。日頃の近隣コミュニケーションや園庭使用ルールの工夫が、クレームを未然に防ぐ鍵です。

子どもの声がうるさく感じる科学的な理由とは

 

「なんでこんなに耳につくんだろう」と感じる保育士は少なくありません。これは気のせいでも心の余裕がないせいでもなく、きちんとした生物学的な根拠があります。

子どもの声の周波数は、おおよそ2,000〜4,000Hzの範囲に集中しています。じつはこの帯域こそ、人間の耳が進化の過程で最も敏感に反応するよう設計された周波数帯です。一般的な成人の会話音域(400〜1,000Hz前後)と比べると、はるかに高く、耳への刺激も強くなります。イメージとしては、工場の機械音(低音域)より、緊急アラームや赤ちゃんの泣き声(高音域)のほうが「刺さる」と感じるのと同じ仕組みです。

つまり、子どもの声がうるさく感じるのが原則です。

さらに、子どもの声は「散乱しやすい性質」を持っています。高周波数の音は直進性が低く、部屋の壁や天井に反射・拡散しやすいため、狭い保育室の中では反響が重なって体感音量が実際より大きくなります。このことは日本経済新聞の取材記事でも専門家が「音が響きすぎるため言葉が聞き取りづらく、ますます大声を出すようになる」と指摘しており、保育室の音響環境そのものが子どもの声量をさらに引き上げる悪循環を生んでいると言えます。

これは使えそうです。

では保育士はどうすればよいか。まず「うるさい」と感じること自体は正常な反応だと理解するのが出発点です。対策としては、保育室に吸音パネルや吸音カーテンを設置するだけで反響が減り、体感騒音レベルを数デシベル単位で下げられます。コストが気になる場合、厚手のカーテンやコルクマットの活用から始めるのが現実的です。

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子どもの声がうるさい時に大声で注意するとさらに悪化する

「静かにして!」と声を張り上げた直後、逆に部屋がさらにざわついた経験はないでしょうか。これはあなたの指示が伝わっていないのではなく、人間の脳が持つ「ロンバード効果」という生理的メカニズムが原因です。

ロンバード効果とは、周囲の騒音が増すと、話者が無意識に自分の声量を上げてしまう現象です。フランスの耳鼻咽喉科医エティエンヌ・ロンバード(Étienne Lombard)が発見したもので、人間だけでなく多くの哺乳類にも確認されています。保育士の声が大きくなれば「音環境のうるささ」が増し、子どもたちもそれに反応して声を張り上げます。大声で注意すると、悪循環のループが始まるということです。

保育現場でも同じ現象が確認されており、関連研究論文(聖和短期大学紀要、2018年)でも「保育者が大声で話せば、子どもも声を大きくすることが経験から認識されている」と明記されています。また別の論文では、「先生の声掛けが大声だと→子どもたちも負けじと声が大きくなる」という連鎖が具体的に記されています。

逆効果ですね。

では、どう対応すればよいのか。保育のベテランが実践しているのは「声を下げる」アプローチです。騒がしい場面で保育士が急に静かに話し始めると、子どもたちは「あれ、何を言っているんだろう?」と自然に耳を傾けるようになります。声を落とすことで子どもの「聞こうとする行動」を引き出すのがポイントです。

合わせて使えるのが「合図サイン」の活用です。手をゆっくり叩く、特定のリズムを使うなど、保育士が決まったシグナルを出すことで、言語指示なしに子どもを落ち着かせられます。音量を使わない静音コントロールが、結果として「子どもの声がうるさい」状況そのものを減らす近道です。

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子どもの声うるさい問題が保育士の健康を脅かす音声障害リスク

「声が枯れやすい」「喉がすぐ痛くなる」という悩みを抱えている保育士は珍しくありません。痛いですね。

保育士は声帯ポリープや声帯結節が発症しやすい職業の代表格として医学的に認識されています。声帯結節とは、声帯の中央部分に生じる小さな隆起(コブ)で、慢性的な声帯の酷使によって起こります。日本気管食道科学会も「声帯結節はすべての病気の中で最も職業性が強い」と指摘しており、その対象として保育士・幼稚園教諭を明記しています。

実際、聖和短期大学の研究によると、保育者の音声障害自覚者に見られる症状は「嗄声(しわがれ声)」が25.1%、「大きな声が出せない」が21.7%、「喉の痛み」が21.2%と続き、多くの保育者が何らかの形で声のトラブルを経験していることが明らかになっています。これは保育士全体で見ると深刻な割合と言えます。

声帯結節の治療は軽症なら音声治療(発声のリハビリ)で改善できますが、重症化すると手術が必要になるケースもあります。手術後も発声訓練が必要で、数週間の声の安静期間が求められることがあります。その間、保育士として働くことが著しく制限される可能性があり、職場への影響も大きいです。

子どもの声がうるさい環境に毎日いるだけで、保育士の喉は消耗し続けているということです。予防策として最も手軽なのは「こまめな水分補給」と「加湿器の活用」です。乾燥は声帯へのダメージを加速させます。また、声を長時間使い続ける前にハチミツ入りのお湯を飲む、休憩中は意識的に声を出さないなどの習慣も有効です。

保育者の音声障害と音環境(聖和短期大学紀要 第5号)

子どもの声うるさいと感じる近隣クレームへの保育士の対応策

「子どもの声がうるさい」という苦情は、近隣住民から保育園に寄せられる最も多いクレームのひとつです。2016年には千葉県市川市で、騒音を懸念した近隣住民のクレームが原因で保育園が開園中止に追い込まれた事例があります。また、練馬区や神戸市では訴訟に発展したケースも記録されており、近隣トラブルを「対岸の火事」とは思えない状況が続いています。

保育士向けの調査(保育士しごとナビ、2015年)では、回答した保育士・幼稚園教諭のうち、保育中の音が原因のクレームを受けた経験があると答えた割合は約30%に達していました。3人に1人近くがクレームを経験しているのです。東京都の自治体調査でも、約7割の区市町村が子どもの声に関する苦情を受けていると報告しています。

クレームへの対応が遅れると、住民側が損害賠償請求や行政への申し立てにエスカレートするリスクがあります。法律の観点からは、騒音が「一般社会生活上受忍すべき程度を超えるか否か」が判断基準となるため(民法不法行為:709条)、対策を講じていない園は法的に不利な立場に立たされる可能性があります。

具体的な対策は以下の通りです。

  • 🔇 物理的対策:防音パネルや二重サッシの設置、遮音ネットの活用で外部への音漏れを抑える
  • 📅 ルール化:園庭遊びをクラスごとのローテーション制にし、特定の時間帯に音が集中しないよう管理する
  • 📢 事前告知運動会発表会など音量の大きい行事の前に近隣へ文書でお知らせし、理解を求める
  • 🤝 関係構築:日頃から挨拶を大切にし、行事への招待など交流の機会を設けて「地域全体で子育てを支える」雰囲気を育む

クレームが来てから動くのではなく、日頃の積み重ねが条件です。

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子どもの声がうるさい場面での保育士による声量コントロールの実践法

「静かにして!」と言っても、次の5分後にはまたざわついている。そういう経験を繰り返している保育士は、アプローチそのものを見直す価値があります。

まず基本として、子どもの声量は保育士の声量と環境に大きく依存します。これはすでに述べたロンバード効果のとおりです。したがって「静かな空間をつくること」が先決で、怒鳴ることや繰り返しの言語指示は根本的な解決になりません。

実践的な方法をいくつか紹介します。

テクニック やり方 効果のポイント
👁 アイコンタクト法 子ども一人ひとりと目を合わせてうなずく 「見られている」という安心感から自然と落ち着く
👏 合図リズム法 決まったリズムで手を叩く(例:タン・タン・タタン) 音の刺激で注意が集まり、気づいた子から伝播する
🤫 小声モデル法 ひそひそ声で話しかけ始める 「何か言っている」という好奇心が静粛を生む
🌡 空間温度調整法 活動内容を切り替えて場の興奮を下げる 興奮状態を作っている活動そのものを変える

特に重要なのが「空間温度調整法」です。子どもの声が大きくなる場面の多くは、活動自体の興奮度が高いことが原因です。鬼ごっこや自由遊びの直後に着席や制作活動へ急に移ろうとしても、興奮状態はすぐには収まりません。そのため、「小走り→歩き→落ち着いて座る」というクールダウンのステップを意識的に挟むと効果的です。

結論は「声で制圧しない」です。

保育士自身が落ち着いた空気をまとうこと、子どもが「静かにする理由」を感じ取れる環境をつくることが、長期的に子どもの声量を適切に保つ鍵です。技術的に不安な方は、職場の先輩保育士のやり方を観察し、1つだけ試してみるところから始めてみましょう。

保育中に声がかれてしまい、子どもへの指示が通らなくなってしまいます(小学館の保育専門誌)

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