国際バカロレアのメリット・デメリットを保育士が解説

国際バカロレアのメリット・デメリットを保育士目線で徹底解説

英語を頑張るほど、子どもの日本語が崩れていきます。

📋 この記事でわかること
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国際バカロレア(IB)とは何か

スイスに本部を置く国際的な教育プログラム。PYP・MYP・DPの3段階があり、3歳から19歳をカバー。日本でも認定校が増加中。

保育士が知っておくべきメリット

探究心・思考力・英語力の育成、世界基準の学びの質、キャリアアップにつながるIB認定園への転職など現場で役立つ情報を紹介。

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見落としがちなデメリットと対策

年間100万円超の費用、日本語力低下リスク、認定校の地域偏在など、保護者への説明・対応で保育士が知っておくべきデメリットも解説。

国際バカロレアとは何か?保育士が理解しておきたい基礎知識

 

国際バカロレア(International Baccalaureate、通称IB)は、1968年にスイス・ジュネーブに設立された非営利の国際教育機関「IB機構(IBO)」が提供する教育プログラムです。「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する」という理念を掲げており、現在、世界160か国以上・約5,600校でこのプログラムが導入されています。

重要なのは、IBが単なる「英語教育プログラム」ではないという点です。つまり、思考力・探究心・自己表現力を育てることが本質です。保育士として保護者や子どもと関わる際、この根本の違いを押さえておくことが、現場での対応力を高めます。

IBには年齢段階に応じた3つの主要プログラムがあります。

プログラム名 対象年齢 主な特徴
PYP(プライマリー・イヤーズ) 3〜12歳 探究ベース、遊びを通じた学び、6つのテーマ
MYP(ミドル・イヤーズ) 11〜16歳 教科横断的な思考力、プロジェクト型学習
DP(ディプロマ) 16〜19歳 大学進学向け、論文・TOK・CAS必修

保育士として特に関わりが深いのがPYP(初等教育プログラム)です。3歳から始まるため、幼稚園・認定こども園・保育園での導入が広がっています。文部科学省のIB教育促進コンソーシアムによると、2024年6月末時点でPYPの認定校は65校、候補校は48校に上ります。

PYPでは「自己の表現」「他者との共有」「自然界との関わり」「社会の構造」「時間と場所」「人間の創造物」という6つの教科横断的なテーマを軸に、子どもが自ら問いを立て、調べ、発表する学びを繰り返します。先生が一方的に教えるのではなく、子どもの「なぜ?」を出発点にする探究型学習が核心です。これは従来の日本の保育観とはかなり異なるアプローチで、保育士にとっても新たな視点をもたらしてくれます。

参考:文部科学省 IB教育促進コンソーシアム「PYP(Primary Years Programme)」

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国際バカロレアのメリット3選:子どもの成長に直結する力

IB教育には、多くの保護者が期待するメリットが確かに存在します。ここでは特に保育士が保護者との会話や日常の保育実践で役立つ、代表的な3つのメリットを掘り下げます。

① 探究心と思考力が育つ

IB PYPの最大の強みは、「自分で考える力」を幼少期から育てる点です。一般的な保育では「先生が教え、子どもが覚える」という流れが主軸になりがちですが、PYPでは子ども自身が疑問を持ち、仮説を立て、検証するプロセスを繰り返します。

茨城県のつくばインターナショナルスクールでは、5歳児クラスが国立環境研究所と連携して「水の分析」を実施しました。臭い・味覚・色・触覚を使って水とスポーツドリンクや砂糖水を判別するという、科学的な探究活動です。これは大学の出前授業レベルの内容を、保育年齢の子どもたちが体験した事例です。これは使えそうです。IB教育を受けた子どもは批判的思考力と問題解決能力が自然と向上していく、という研究成果も報告されています。

② 多言語・多文化への対応力が上がる

IB認定園では、英語やほかの言語を日常的に使用する環境が整っています。群馬県のぐんま国際アカデミーでは、授業の約70%を英語で行う「英語イマージョン教育」を実施。同校の小学6年生(12歳)が2023年に英検1級(大学上級程度)に合格した実績があります。一般的な保育・小学校教育と比べると、語学習得の効果は桁違いです。ただし、これはあくまで言語習得が副産物であり、本来の目的は「国際的視野を持つ人材育成」にあることを忘れないようにしましょう。

③ 世界基準の大学進学資格として通用する

DPを修了してIBディプロマを取得した場合、世界160か国以上の大学入学資格として認定されます。特に英語圏の大学では、IBスコアに基づいた入学基準が設けられており、アメリカ・イギリスなどの大学では入学後の単位認定を行うケースもあります。国内でも、総合型選抜(旧AO入試)や推薦型選抜でIB取得が強みになる大学が増加しており、国内外を問わず進路の幅が広がります。

参考:IB公式サイト「国際バカロレア(IB)の教育とは?」

https://www.ibo.org/contentassets/76d2b6d4731f44ff800d0d06d371a892/what-is-an-ib-education-2017-ja.pdf

国際バカロレアのデメリット:保育士が保護者に伝えるべき現実

国際バカロレアには魅力的な側面が多い一方で、保育士が保護者に正直に伝えるべきデメリットも存在します。ここを曖昧にしたまま入園・入学を勧めると、後からトラブルになるケースがあります。デメリットを把握するのが原則です。

① 費用負担が大きい

最初に直面するのが費用の問題です。インターナショナルスクール系のIB認定校では年間150万〜300万円程度、一条校(学校教育法第1条に基づく学校)でも年間100万〜250万円程度が相場です。東京都内のセント・メアリーズ高校の場合、年間授業料が約285万円で、申込料・メンテナンス費を含めると年間300万円を超えます。

PYP認定の幼稚園・保育園でも、たとえば東京都内の一部施設では保育料(37,000円/月)にIB教育費(16,000円/月)が加算される例もあります。年換算すると授業料だけで60万円以上になる計算です。一般的な認可保育所の保育料と比較すると数倍の差があり、費用面での検討は不可欠です。痛いですね。

② 日本語力が低下するリスクがある

英語イマージョン環境で学ぶことで、母語である日本語の発達が遅れる可能性があります。特に幼児期は言語の基盤を作る大切な時期です。日常の会話から思考まで英語中心になると、日本語の語彙・読解力・作文力の育成が後回しになりがちです。

ただし、IB機構自身も母語保護の重要性を認識しており、日本国内のIB校の約半数では「日本語DP」として主要科目を日本語で履修できる仕組みが導入されています。仙台育英学園・秀光中等教育学校(宮城県)などでは、日本語と英語のデュアルランゲージ方式を採用し、母語力と英語力のバランスを保つ工夫がされています。日本語と英語の両立に注意すれば大丈夫です。

③ 認定校が地域によって偏在している

2025年6月末時点で日本国内のIB認定校・候補校は合計約268校ですが、東京・神奈川・大阪などの都市圏に集中しています。鳥取県・高知県・山梨県など地方では認定校が少なく、通学が難しいケースもあります。地方在住の保護者が「うちの子にIB教育を受けさせたい」と相談してきた場合、まず近隣の認定校の有無を確認することが大切です。

参考:IBアカデミー「国際バカロレアのデメリット7つと乗り越え方」

国際バカロレアのデメリット7つと乗り越え方|家庭でできるサポートも解説 | 国際バカロレア(IB)専門のオンライン塾・家庭教師
・国際バカロレアって、そもそもどんな教育なの? ・どんなデメリットがあるか、その乗り越え方を知りたい! ・ついていけるか不安… 国際バカロレアで学べることは多いですが、全体像が分かりにくいため不安ですよね。 この記事では、国際バカロレアの特

国際バカロレアの認定校で働く保育士のキャリアメリット

IB教育は子どもへのメリット・デメリットだけでなく、保育士自身のキャリアにも大きく関わります。これが保育士読者にとって意外と見落とされているポイントです。

IB認定の幼稚園・インターナショナルスクールで働く保育士の給与水準は、一般の保育士より高い傾向があります。求人データによると、IB認定园での正社員保育士の月給は22万〜34万円、年収では300万〜600万円程度のレンジが報告されています。中にはバイリンガル保育士として月給34万円以上の求人も存在し、一般の保育士平均(年収約250万〜280万円)と比較すると収入面での優位性は明らかです。

また、IB認定校で働くためには「IBワークショップ(IB教員研修)」への参加が求められます。このワークショップは国際バカロレア機構が主催する公式の教員研修で、通常3日間の対面形式またはオンライン形式で実施されます。参加すると研修参加認定証が授与され、IB教育実践者としての専門性が証明されます。つまりキャリアの差別化が可能です。

保育士養成校でもIB-PYPによるバイリンガル保育を行える保育者の養成ニーズが高まっており(常葉大学・鈴木克義氏の研究より)、今後この分野は成長が続くと見込まれます。IB認定園で経験を積むことで、国内だけでなく海外のIB認定校への転職・活躍の場も広がります。キャリアアップを考えるなら、早めにIBワークショップへ参加することが選択肢のひとつになります。

参考:文部科学省 IB教育促進コンソーシアム「IBワークショップ(IB教員研修)」

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国際バカロレア導入園を選ぶ際に保育士が確認すべきポイント【独自視点】

IB認定園・候補校を選ぶ際、保護者は「英語が使える」「グローバルな教育を受けられる」という印象に引っ張られがちです。しかし、現場を知る保育士の視点では、もう一段階深い確認が必要です。

確認ポイント①:PYP「認定校」と「候補校」は別物

「IB導入」をうたっていても、IBO(国際バカロレア機構)から正式に認定された「認定校」と、認定申請中の「候補校」では、教育の成熟度に大きな差があります。候補校はまだIBのカリキュラムを整備中の段階であり、保護者へ案内する際にはこの違いを丁寧に説明することが重要です。認定校か候補校かが条件です。

確認ポイント②:保育士・教員のIBワークショップ参加状況

IB認定校の質は、スタッフ全員がIBの理念と実践を理解しているかどうかで大きく変わります。広島県のつきのひかり国際保育園では、全職員が2日間・朝8時半〜夕方16時半のIBワークショップを受講した事例が公開されています。このような徹底した研修体制を持つ園かどうかは、見学時に確認するとよいポイントです。

確認ポイント③:日本語・母語への配慮が明示されているか

英語教育に特化するあまり、日本語力の育成がおろそかになっている園も存在します。PYP認定校の場合、言語ポリシー(Language Policy)の公開を義務付けられていますが、実際にどの程度日本語教育に時間を割いているかは園によって異なります。

たとえば東京都の町田こばと幼稚園では「子どもが転んだり友達とけんかしたりする経験の中に気づきがある」という考え方を言語化した教育内容を公開しています。このように教育方針が明文化・公開されている園は、IB理念の実践度が高いと判断できます。

以上3点を確認するだけで、IB認定の名前だけを掲げた園と、本物のIB教育を実践している園の違いを見分けやすくなります。保護者への説明に自信が持てるようになります。

参考:国際バカロレアPYP認定校 町田こばと幼稚園「教育内容」

https://www.m-kobato.ed.jp/education_childcare/#a02

バカロレアの哲学 「思考の型」で自ら考え、書く