全音階と全音音階の違いを保育士が押さえるポイント

全音階・全音音階の違いと保育現場での活かし方

「ドレミ」は7音だけど「全音音階」は6音しかない──知らずに説明すると子どもが混乱します。

この記事でわかること
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全音階とは何か

7つの音で1オクターブを構成する「全全半全全全半」のパターンを持つ音階。長音階・短音階を含む幅広い概念で、保育士試験にも頻出です。

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全音音階とは何か

すべての音程が「全音」だけで成り立つ6音構成の音階(ホールトーンスケール)。ドビュッシーが多用した「ふわふわ感」「宇宙感」が特徴です。

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保育現場での使い分け

日常の保育ソングはほぼ全音階(長音階)ベース。全音音階は「不思議・宇宙・夢の中」などのイメージ演出に活用できる特別な音階です。

全音階の全音音階の基本定義と音の数の違い

 

「全音階」と「全音音階」は名前が1文字しか変わりませんが、その意味はまったく別物です。まずここを混同しないことが、音楽理論の土台になります。

全音階(ぜんおんかい) は英語で “diatonic scale”(ダイアトニック・スケール)と呼ばれ、1オクターブの中に7つの音を使う七音音階の一種です。音と音の間隔は「全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音」の順番で配置されています。つまり全音が5つ、半音が2つという組み合わせです。私たちが日常的に歌う「ドレミファソラシド」がまさにこの全音階であり、「きらきら星」「おかあさん」などの保育ソングはすべてこの全音階(長音階)を土台にしています。

一方、全音音階(ぜんおんおんかい) は英語で “whole tone scale”(ホールトーン・スケール)と呼ばれ、構成音がすべて「全音」の間隔で並んでいる音階です。1オクターブを全音だけで均等に分割すると音が6つしか入らないため、6音構成になります。たとえば「ド・レ・ミ・ファ♯・ソ♯・ラ♯・(ド)」という並びがその一例です。半音がひとつも含まれない点が最大の特徴です。

つまり要点はこうです。

項目 全音階 全音音階
英語名 diatonic scale whole tone scale
音の数 7音 6音
音程の構成 全音5つ+半音2つ 全音のみ6つ
半音の有無 あり なし
代表例 ドレミファソラシド(ハ長調 ド・レ・ミ・ファ♯・ソ♯・ラ♯
雰囲気 明るい・暗いなど多様 ふわふわ・宇宙・幻想的

名前が似ているせいで保育士試験でも混同しやすいポイントです。「全音階=7音」「全音音階=6音」と数字で覚えるのがいちばんシンプルな方法です。

全音階のほうが広い概念である点も押さえておきましょう。長音階も短音階も、どちらも全音階のカテゴリに入ります。「全音階の中に長音階・短音階がある」というイメージです。

参考:全音階と全音音階の違いについて、Yahoo!知恵袋でのわかりやすいQ&A解説です。

全音階と全音音階の違いはなんですか? – Yahoo!知恵袋

全音音階の全音音階の構造と「ふわふわ感」の正体

全音音階が持つ独特の「ふわふわ感」や「宇宙感」は、音楽的な構造から生まれています。これは感覚的な話ではなく、理論的に説明できることです。

普通の長音階には「ミとファ」「シとド」という2か所の半音が存在します。この半音の存在が「解決したい」「主音に戻りたい」という音の引力を生み出し、音楽に緊張と弛緩のドラマを生み出します。これが「主音感」や「調性感」と呼ばれるものです。ハ長調の「シ→ド」の動きを聴くと落ち着いた感覚を覚えるのは、この半音の解決力が働いているからです。

全音音階にはその半音がまったくありません。すべての音が均等に全音で並んでいるため、「どの音が主音か」がはっきりしません。1オクターブを機械的に6等分した構造であるため、どの音から始めても同じような響きが返ってきます。これが「宙に浮いたような」「重力がないような」感覚を生み出す正体です。

重要な特性がもうひとつあります。全音音階は世界中に無数の音階が存在するにもかかわらず、主音をどこに置いても「2種類しか存在しない」のです。「ド・レ・ミ・ファ♯・ソ♯・ラ♯」の系列と、「ド♯・レ♯・ファ・ソ・ラ・シ」の系列のたった2パターン。長音階なら12の調があるのと対照的です。フランスの作曲家メシアンはこの性質を「移調の限られた旋法(第1番)」として1944年の理論書で定義しました。

保育の視点で言えば、全音音階は「お化け屋敷のBGM」「宇宙に飛び立つ場面」「魔法をかける瞬間」のような場面に使うとイメージがぐっと広がります。音楽の仕組みを知っていると、保育の音楽活動の引き出しが格段に増えます。これは使えそうです。

参考:全音音階の構造・歴史・使用例が詳しくまとめられているWikipedia記事です。

全音音階 – Wikipedia

全音階の長音階・短音階との関係と保育士試験での出題パターン

保育士試験の「保育実習理論」で音楽問題が出題されるとき、最も頻出するのが「調号」と「音階」に関する問題です。試験本番でよく問われる構造を整理しておきます。

全音階には大きく分けて「長音階」と「短音階」という2種類があります。長音階は「全全半全全全半」の並びで、「ドレミファソラシド」がその代表です。明るく活発な雰囲気の曲に使われ、保育ソングの大半がこの長音階で書かれています。短音階は「全半全全半全全」の並びで、同じ全音階の仲間ですが、半音の位置が異なるため暗くしっとりとした響きになります。

保育士試験では「ハ長調・ト長調・ニ長調・イ長調・ヘ長調・変ロ長調・変ホ長調」の7つの長調が主な出題範囲とされています。短音階は過去問でほぼ出題されていないため、試験対策としては長音階の7つに絞るのが効率的です。

覚え方のポイントを整理すると次のようになります。

  • ♯系の調:「ト長調(♯1つ)→ニ長調(♯2つ)→イ長調(♯3つ)」→「ト・ニ・イ」と唱える
  • ♭系の調:「ヘ長調(♭1つ)→変ロ長調(♭2つ)→変ホ長調(♭3つ)」→「ヘ・ロ・ホ」と唱える
  • ♯がつく音の順番:「ファ→ド→ソ」
  • ♭がつく音の順番:「シ→ミ→ラ」

「全音音階」は保育士試験には直接ほぼ出題されません。しかし「全音階」の構造、とくに長音階・短音階の違いや調号は試験問題で毎回のように登場します。全音階が試験の本命、全音音階は保育の表現活動で役立つ知識という位置づけで覚えると整理しやすくなります。

「全音音階=試験に出る」と思い込んでいると、勉強の方向が狂います。これは注意が必要です。

参考:保育士試験「保育実習理論」における音階と調の解説がわかりやすくまとめられています。

捨てない!保育実習理論 音楽【ゼロから覚える】徹底講座⑧

全音音階の歴史とドビュッシー以外の使用例という意外な事実

「全音音階=ドビュッシー」というイメージを持っている方は多いでしょう。しかし実は全音音階の使用はドビュッシーよりずっと前から始まっていました。音楽史の視点から見ると、保育の音楽活動を子どもに伝える際の「豆知識」としても興味深い事実です。

音楽学者リチャード・タラスキンの研究によれば、全音音階を意図的に使用した最初期の例はフランツ・シューベルトの『ミサ曲変ホ長調 D950』(1824年)にさかのぼります。さらにロシアの作曲家ミハイル・グリンカが1842年のオペラ『ルスランとリュドミラ』で悪の魔法使い「チェルノモール」の主題として全音音階を大々的に使用し、「悪役・魔物・異界」のイメージと結びついた使い方を定着させました。

ドビュッシーがパリ万博(1889年)でインドネシアのジャワ島の音楽「ララス・スレンドロ」(5音平均律)に衝撃を受け、それが全音音階の多用につながったとされています。均等に分割された音階という共通点が、ドビュッシーの感性に響いたのです。

日本でも全音音階は意外なほど身近なところに登場しています。

  • 🚀「鉄腕アトム」オープニング曲(高井達雄作曲、第1作)のイントロ
  • 🔮「美少女戦士セーラームーン」の必殺技「ムーン・ヒーリング・エスカレーション」
  • ☀️スティーヴィー・ワンダー「You Are The Sunshine of My Life」のイントロ
  • 🎮ポケットモンスター スカーレット・バイオレットの「テラスタル」使用時の効果音

「鉄腕アトム」のイントロが全音音階だったとは、意外ですね。子どもたちがよく知っているアニメの音楽例を使って説明すると、全音音階の「ふわふわ感・未来感」が直感的に伝わります。保育の音楽活動で子どもたちに音の不思議を体感させるとき、こういった具体例は非常に役立ちます。

参考:全音音階の歴史・有名な使用例が詳しくまとめられているSoundQuestの記事です。

ホールトーンスケール(全音音階)の解説と使い方 – SoundQuest

全音音階を使った保育現場での音楽活動アイデアと子どもへの伝え方

全音音階の特性を理解したら、実際の保育活動にどう活かすかを考えてみましょう。鈴木楽器製作所が発表している「トーンチャイムを使った全音音階の音遊び」の実践例は、保育士が現場で応用しやすい具体的な内容です。

全音音階の構成音(例:ド・レ・ミ・ファ♯・ソ♯・ラ♯の6音)を1音ずつ子どもたちに持たせ、順番に鳴らしたり、自由なタイミングで鳴らしたりするだけで「不思議な音楽」が生まれます。これが可能なのは全音音階の特性によるものです。全音音階はどの音を組み合わせても極端な不協和が生じにくいため、子どもが自由に音を鳴らしても「それらしい雰囲気」になりやすいという性質があります。全音だけで構成されているというのが原則です。

一方、通常の長音階(ドレミファソラシドの全音階)を使った活動では、音の組み合わせによってぶつかりが生じることがあります。全音音階は音楽的な制約が少ないぶん、初めての楽器体験や即興演奏に向いています。

子どもへの伝え方としては「いつものドレミとちょっと違う、ふしぎな音の階段」という表現が伝わりやすいです。年長児(5〜6歳)であれば「魔法使いの音楽」「宇宙船が飛んでいく音」のようなイメージで提示すると、子どもたちが積極的に音で遊び始めます。

保育現場で全音音階を活用する際の簡単なアイデアをまとめると次のようになります。

  • 🎹 絵本の読み聞かせBGM:「不思議な森」「魔法の世界」の場面に全音音階のグリッサンドを添える
  • 🎵 即興演奏コーナー:全音音階の音だけをセットした鍵盤ハーモニカ木琴で自由に演奏させる
  • 🌌 劇の効果音:「変身する場面」「魔法をかける場面」に全音音階の音を使う
  • 🎶 既存の曲を全音音階にアレンジ:「かえるの合唱」を全音音階バージョンに変えて「ふしぎバージョン」として紹介する

鈴木楽器製作所の資料では「かえるの合唱」や「キラキラ星」を全音音階にアレンジするパロディ活動が紹介されており、子どもたちが「あの曲がへんてこになった!」という驚きと笑いの中で音の違いを体感できるとされています。つまり全音音階は遊びの中で音楽教育に活きます。

全音音階を使ったトーンチャイム遊びや保育への応用については、鈴木楽器製作所の公式サイトに詳細な実践事例が掲載されています。

全音音階に親しもう! – 鈴木楽器製作所

全音階と全音音階を混同しやすい場面と正しい使い分けの習慣

「全音階」と「全音音階」の混同は、保育士試験の勉強中だけでなく、保育現場での楽譜の説明や保護者への音楽だよりでも起こりやすいミスです。どんな場面で混同が起きやすいかを知っておくと、事前に防ぐことができます。

よくある混同パターン1:「ドレミは全音音階ですよね?」

これは誤りです。「ドレミファソラシド」は全音と半音を組み合わせた全音階(ダイアトニックスケール)です。全音音階ではありません。「ミ→ファ」と「シ→ド」の2か所に半音が入っていることを思い出せば確認できます。

よくある混同パターン2:「全音階には半音がない」

これも誤りです。半音がないのは全音音階(ホールトーンスケール)のほうです。全音階には半音が2つ含まれています。この思い込みをそのままにすると、試験問題で選択肢を誤る原因になります。

よくある混同パターン3:「全音音階=長音階のこと」

まったくの別物です。長音階は全音階の一種であり、全音音階は別の独立した音階の概念です。両者は「似ている」どころか、構成音の数も音程の並びも異なります。

整理するとシンプルです。

  • 「全音階」 → 日常の保育ソングに使われる7音の音階(長音階・短音階を含む)
  • 「全音音階」 → 特別な表現効果に使う6音の音階(ホールトーンスケール)

混同を防ぐ最も効果的な方法は「音の数を数える習慣」をつけることです。楽譜や音階を確認するとき、まず「何音構成か」を確認する癖をつけると、両者を取り違えるリスクが大幅に減ります。7音なら全音階、6音なら全音音階が基本です。

また保育士試験対策として、過去問で「長音階の構造」「調号の読み方」が出題された際には、「全音音階との混同に注意」という自分へのメモを添えておくと記憶の定着に役立ちます。間違えやすいポイントを自覚するだけで正答率が上がります。

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