全音楽譜出版社の楽譜を保育士が選ぶ方法と活用術
全音楽譜出版社の楽譜は、難易度が高い曲ばかりではなく初級1課程(バイエル前半レベル)からでも保育士試験の合格ラインに届きます。
全音楽譜出版社の楽譜が保育現場で選ばれる理由
全音楽譜出版社は、1941年創業の日本を代表する楽譜出版社です。クラシックからポピュラー、幼児教育用まで「数千点」に及ぶラインナップを誇り、保育士や幼稚園教諭向けの専門教材を長年にわたって発行してきた実績があります。楽器店の棚で青い表紙の「標準バイエルピアノ教則本」を見たことがある人は多いはずですが、あれも全音楽譜出版社の看板商品のひとつです。
保育現場で全音楽譜が支持される最大の理由は「信頼性」と「幅広さ」にあります。楽曲の著作権管理もあわせて行っているため、曲の選定や編曲において適切な権利処理がなされており、安心して使えるという安心感が現場の先生たちに根づいています。また、バイエル終了程度の初級者向けから専門演奏家向けの上級曲まで同じシリーズとして体系化されているため、自分のレベルに合わせた一冊を探しやすいのが実用的なメリットです。
保育士が全音楽譜を活用する場面は、大きく3つに分かれます。
- 保育士試験の実技対策:課題曲が全音楽譜出版社から提供・配信されているケースが多い
- 現場での日常保育:朝の会・帰りの会・季節行事など毎日の弾き歌いに使える曲集
- 音楽的スキルアップ:バイエル・ハノンなどの教本でピアノ技術を継続的に伸ばす
つまり全音楽譜は「入門→試験合格→現場活用」という保育士のライフサイクルすべてに関わっています。
全音楽譜出版社コーポレートサイト|会社概要・出版物の全体像を確認できます
全音楽譜出版社の楽譜の難易度6段階と保育士に適したレベルの目安
全音楽譜出版社の楽譜には独自の6段階難易度分類があります。これは「初級・中級・上級」をそれぞれさらに2段階に分けた体系で、各課程は次のように対応しています。
| 課程 | レベル | ピアノの目安 |
|---|---|---|
| 第1課程(初級下) | 初級 | バイエル前半(~60番程度) |
| 第2課程(初級上) | 初級 | バイエル後半(61番~修了) |
| 第3課程(中級下) | 中級 | ブルグミュラー~ソナチネ |
| 第4課程(中級上) | 中級 | ソナチネ完了程度 |
| 第5課程(上級下) | 上級 | ソナタ・ショパン小品 |
| 第6課程(上級上) | 上級 | 演奏会レベル |
保育士として実務で使う楽譜は、第1〜第3課程が中心になります。多くの保育園や幼稚園の採用基準が「バイエル修了程度」に設定されているため、第2課程(初級上)がクリアできていれば、日常の弾き歌いには十分対応できます。
ただし、実技試験で加点を狙うなら第3課程(中級下)相当のアレンジ楽譜を使うことも有効です。保育士試験の音楽実技は50点満点中30点が合格ラインですが、ブルグミュラー程度の伴奏アレンジを使えば演奏の豊かさが評価されやすくなります。つまり第3課程が上限の目安です。
ピアノレッスンのヒント〜楽曲と教材〜楽譜の難易度について|全音難易度表の詳細解説ページ
全音楽譜出版社の保育士試験課題曲楽譜の種類と選び方
保育士試験の音楽実技では「課題曲は指定されているが、楽譜は指定されていない」というルールがあります。これが意外な盲点で、全音楽譜出版社の公式サイトや楽譜配信サービス「アット・エリーゼ」などから、同じ課題曲でも複数の難易度・調性・スタイルの楽譜が選べます。
令和7年度(2025年)の課題曲「ハッピー・バースデー・トゥ・ユー」と「証城寺の狸囃子」については、全音楽譜出版社提供の楽譜が1曲220円からダウンロード購入できます。コンビニ印刷にも対応しており、書店や楽器店に行かなくても手元に届く手軽さが現代の保育士受験生に支持されています。
楽譜選びでは次の3点を確認することが大切です。
- 声域に合った調性かどうか:課題曲は「移調してもよい」とされているため、自分が歌いやすいキーの楽譜を選ぶことが歌の評価を高める
- 伴奏のアレンジ難易度:初級・中級・上級の3ライン程度が用意されていることが多く、ミスが少なく弾けるレベルを選ぶのが合格への近道
- 歌詞・指番号の有無:初心者ほど指番号付きの楽譜を選ぶと練習効率が大幅に上がる
また、課題曲以外にも「前奏・後奏を追加してもよい」というルールがあります。前奏を2〜4小節追加するだけで演奏に安定感が増し、採点者への印象も向上します。全音楽譜出版社の楽譜には前奏付きアレンジが収録されているバージョンもあるため、試験直前期に確認する価値があります。これは使えそうです。
楽譜@ELISE(アットエリーゼ)|令和7年度保育士試験課題曲楽譜一覧・全音提供楽譜を確認できます
保育の現場で役立つ全音楽譜出版社の実用曲集ラインナップ
試験が終わった後も、保育士の「弾き歌い」は毎日続きます。現場では季節の歌・行事の歌・朝のお集まりで歌う定番曲など、幅広いレパートリーが求められます。全音楽譜出版社はこうした現場ニーズに応える実用曲集を複数発行しています。代表的なものを紹介します。
🎶 「幼児の四季とみんなの歌 第2版」(2,300円)
幼稚園でのアンケート結果をもとに「現在よく歌われる曲」と「歌い継ぎたい曲」を厳選した一冊です。「うれしいひなまつり」「さんぽ」「ぞうさん」など110曲が季節・行事・動物・食物などのテーマ別に整理されており、「あの行事には何の曲?」という場面で一発検索できる利便性があります。オリジナル伴奏と簡易伴奏の両方を収録している点も現場向けです。
🎶 「保育用ピアノマーチ集」(1,200円)
1968年発行のロングセラーで、バイエル修了程度に編曲されたマーチ曲が50曲以上収録されています。運動会・お遊戯会の入退場曲として今も現役で使われており、「アビニョンの橋の上で」「幼稚園行進曲」「むすんでひらいて」など名曲が並びます。1,200円でこれだけのボリュームは現場コスパが高い一冊です。
🎶 「集まれ〜!みんなピアノだい好き!」
保育士・幼稚園教諭・小学校教諭を目指す人向けに、ピアノの基礎から「子どもの歌のコード伴奏」「音楽づくり」「即興のコツ」まで網羅した教則テキストです。コード伴奏を身に付けることで、楽譜に頼らず臨機応変に対応できる保育士としての音楽力が鍛えられます。これが原則です。
現場に出てから気づくことですが、楽譜通りに弾くことよりも「音を落とさず歌い続けながら弾く」スキルの方が実用価値は高いといえます。コード伴奏を習得しておくと、子どもが突然違う歌を歌いたがった時にも即対応できます。そういう場面こそ、子どもの心がのびのび育つ瞬間です。
全音オンラインショップ|幼児の四季とみんなの歌 第2版・収録曲リストを確認できます
保育士が見落としがちな全音楽譜活用の独自視点:移調と弾き歌いの関係
多くの保育士受験生は「全音楽譜出版社の楽譜=書かれた通りの音で弾くもの」と思い込んでいます。しかし、保育士試験のルールには「移調してもよい」という一文があります。これが活用できているかどうかで、試験当日の歌の出来栄えが大きく変わります。
たとえば「証城寺の狸囃子」は原曲がニ短調です。女性の平均的な音域からすると、少し高い音域に感じる方も少なくありません。ニ短調からハ短調に移調するだけで約1音下がり、歌いやすくなりつつも伴奏のコードが単純化されます。移調譜は現在、全音楽譜出版社を含む複数の出版社から別売りとして入手できるほか、「アット・エリーゼ」のような配信サービスでは原調・移調を選んでダウンロード購入ができます。
もうひとつ見落とされがちなのが「バイエルのアレンジと弾き歌いの相性」です。全音版の標準バイエルは、ピアノ技術の習得を主眼に置いた楽譜であり、両手で動き回るデザインになっています。弾き歌いでは歌声のコントロールに神経を使う分、ピアノの伴奏はできるだけシンプルな方が有利です。バイエル系の複雑な両手伴奏をそのまま採用すると、歌が止まったり音程が不安定になるリスクがあります。
この点を解決するのがコード伴奏型の楽譜です。たとえば、左手は和音(Cのコードなら「ド・ミ・ソ」)を1拍ずつ鳴らすだけのシンプルな形にすることで、歌に集中しやすくなります。全音楽譜出版社の保育士向け楽譜集には、こうした「コードを参考に編曲してよい」という記載のあるものも含まれており、試験規定でも認められています。歌が安定することが条件です。
実際に現場の保育士に聞くと「子どもと歌う場面では、完璧な伴奏より笑顔の方が10倍大事」という声が多く聞かれます。楽譜はあくまでも歌と子どもをつなぐツールであり、それ以上でも以下でもありません。そうした感覚を持ちながら楽譜を選ぶと、自分に合った一冊が見えてきます。


