ワルツ・ダンス・舞踏会を保育の発表会に取り入れる方法
ワルツはもともと「農民の不道徳なダンス」として教会から禁止令を出された踊りです。
ワルツの歴史と舞踏会の起源を保育士が知っておくべき理由
ワルツは18世紀よりはるか昔、13世紀の南ドイツやオーストリアの農村から生まれたダンスです。その当時は「レントラー」と呼ばれ、男女が体を密着させて激しく回転するその動きは、カトリック教会から「不道徳の極み」と批判され、地域の当局から何度も禁止令が出されました。それでも農民たちは踊りをやめませんでした。
このルーツを保育士が知っておくことには、実は大きな意味があります。子どもたちに「なぜくるくる回るの?」と聞かれたとき、「昔のヨーロッパの農村で生まれたんだよ」と答えられるだけで、遊びが一気に「体験する歴史」に変わるからです。
その後、ワルツは貴族社会へと広がっていきます。1814年〜1815年にかけてウィーンで開催された「ウィーン会議」では、オーストリア宰相メッテルニヒが各国代表を引き込むために毎夜のように舞踏会を開き、ウィンナ・ワルツを踊らせました。これが「ワルツが世界の教養になった瞬間」とも言われています。難解な外交交渉を円滑に進めるための「外交ツール」として、ワルツは活用されたのです。
つまり、ワルツとは「農民の遊び → 禁止された踊り → 貴族の娯楽 → 全ヨーロッパの文化」という劇的な変遷を経たダンスです。そのドラマチックな背景を知れば、発表会前の導入活動として子どもたちに語りかけるだけで、ぐっとテーマへの関心が高まります。
ウィーンでは現在も、謝肉祭シーズンの約6週間に毎年500件以上の舞踏会が開催されており、ウィーン国立歌劇場で行われる「オペラ座舞踏会」はその象徴的存在です。入場券は一人あたり最低でも約37,000円(295ユーロ相当)からという高額なイベントですが、国営放送が4時間生中継するほど国民的な行事になっています。これほど長く愛され続けてきたダンス文化を、子どもたちの発表会に取り入れることの価値は計り知れません。
つまり「舞踏会=特別な場所」というイメージが原則です。
参考:ウィーンの舞踏会文化の歴史と成り立ちについて詳しく解説されています。
ワルツのダンス・3拍子のリズム感を子どもに身につけさせる指導法
日本の童謡には「ぞうさん」「赤とんぼ」「うみ」「こいのぼり」など、実は多くの3拍子の曲が含まれています。ところが、日本では4拍子の音楽のほうが圧倒的に多く、子どもたちが3拍子に「体で慣れる」機会は驚くほど少ないのが現状です。
ここが重要なポイントです。3拍子が苦手な子どもを「リズム感がない」と判断してはいけません。そもそも環境的に接していないだけです。ワルツのリズムは「ズン・チャッ・チャッ」という1拍目を強調した3拍子で、1拍目を踏み込み、2・3拍目を軽やかに浮かせる感覚が大切です。
実際の指導では、最初にメロディなしで「1・2・3、1・2・3」と声に出しながら足踏みさせることから始めるのが効果的です。1歩目だけ大きく踏み込み、2歩目・3歩目を小さく軽く踏む練習を繰り返すことで、体がリズムを覚えていきます。
| 年齢 | 指導のポイント | おすすめ練習方法 |
|---|---|---|
| 2〜3歳児 | 「揺れる」感覚を楽しむ | 先生と手をつないで左右に揺れる |
| 4歳児 | 「1・2・3」を声に出す | 足踏みしながらカウントを言う |
| 5〜6歳児(年長) | 強弱のある踏み込みを体得 | 「ドン・タン・タン」のオノマトペで覚える |
ダンスのプロ集団PETIPAが全国17,000人以上の保育士に研修を行ってきた中で、最も有効とされる指導法の一つが「音楽のフレーズと振り付けを必ず一致させること」です。Aメロの部分には必ずAの振り付け、Bメロには必ずBの振り付けを割り当てることで、耳で覚えた音楽が自然に体の動きと結びつき、子どもたちが格段に覚えやすくなります。これは使えそうです。
また、振り付けの一部分だけ繰り返し練習するのではなく、「できない箇所の前後8小節をセットで練習する」という「汽車ぽっぽ練習法」も非常に効果的です。A→B→C という振り付けのBだけを単独で練習してもうまくいかないのは、前後のつながりが体に入っていないからです。この原則が基本です。
ワルツ特有の「くるくる回る」動作について言えば、子どもに「コマみたいに回ろう!」と伝えるだけで自然とイメージが湧きやすくなります。初めは足を小さく動かしてその場でゆっくり回る練習から始め、徐々に移動しながら回るステップへと発展させると無理がありません。
3拍子の童謡を保育の中に積極的に取り入れることで、ワルツへの準備ができます。
参考:保育士向けのダンス指導のお悩みや解決法が網羅的にまとめられています。
幼稚園・保育園の先生必見!園児のダンス指導のお悩み解決 – PETIPA
舞踏会テーマの発表会に使えるワルツ曲と振り付けアイデア
発表会の「舞踏会テーマ」でワルツのダンスを組み立てる際、曲選びは最重要です。難しすぎず、かつ子どもたちがときめけるような曲を選ぶことが成功の鍵になります。
まず保育士に特におすすめなのが「ゆきの中でワルツダンス」(童謡「ゆき」のワルツアレンジ版)です。NHKの番組でも取り上げられたこの曲は、礼儀正しいお辞儀の振り付けから始まり、雪が降る様子や雪だるまを作る仕草をイメージした振り付けが組み込まれており、年少・年中児でも無理なく覚えられます。
クラシック系では、ヨハン・シュトラウス2世の「美しく青きドナウ」や、チャイコフスキーのバレエ音楽に含まれるワルツ(「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」)が有名です。これらは保護者にも馴染みのある曲であり、「知っている曲で子どもたちが踊っている」という感動を生み出しやすい点でメリットがあります。
🎵 舞踏会テーマ発表会のための曲リスト(年齢別目安)
- 2〜3歳児向け:ゆきの中でワルツダンス、やまのワルツ
- 4歳児向け:くるみ割り人形より「花のワルツ」(ゆっくりアレンジ版)、ウィンナーワルツ(ギロック作曲・ピアノ)
- 5〜6歳児(年長)向け:美しく青きドナウ(シュトラウス)、眠れる森の美女のワルツ(チャイコフスキー)、異世界混合大舞踏会(星野源)
「異世界混合大舞踏会」(星野源)は近年の運動会・発表会で人気急上昇中のアップテンポ曲で、ワルツ系というよりポップなアレンジですが、「舞踏会」というテーマ性を持ちながら子どもたちが楽しみやすく、年長児に特に向いています。
振り付けを作る際のポイントは3つです。まず①クライマックスに「全員でくるくる回る」動きを入れること、次に②お辞儀やお手を取る仕草など「舞踏会らしい動き」を随所に入れること、そして③体の大きな動き(腕を広げる、ジャンプする、しゃがんで立つ)と小さな動き(指先を揃える、ゆっくり歩く)のコントラストをつけることです。小さくなってから大きく広がる動きの幅が、観ている人に一番感動を与えます。
振り付けの幅を大きくする。これが条件です。
舞踏会ダンスを盛り上げる衣装・小道具の手作りアイデア
舞踏会テーマの発表会で子どもたちが最も喜ぶのは、やはり衣装です。しかし、全員分の衣装を外注すると1着あたり3,000〜8,000円の費用がかかることも珍しくなく、クラス全体では数十万円規模になることもあります。保育園の予算には当然限界があります。
コスト面のリスクを避けながら舞踏会の世界観を演出するためには、「全体の雰囲気を決めるパーツ」だけを手作りするのが最も効率的な方法です。フルコスチュームではなく、頭につけるもの+首元や手元のワンポイントだけで、見た目の印象は大きく変わります。
💡 低コストで舞踏会の雰囲気を出す手作りアイデア
- ティアラ・王冠(女の子):画用紙・アルミホイル・モール・100均のラインストーンシールで作成。1個あたりの材料費は約50〜100円。
- 王冠・ローブの飾り(男の子):金色の画用紙で作る王冠と、ケープ風のスカーフを首元に巻くだけで王子様に変身。
- 手袋風アームカバー:白い不織布やフェルトを腕に巻いて両面テープで留めるだけ。本格的な「白手袋」の雰囲気が出ます。
- チュチュスカート:チュール生地(100均でも購入可)をゴムひもに結ぶだけで作れる超簡単スカート。縫い目が不要で初心者でも1枚30分以内に完成します。
- ポンポン付きステッキ(小道具):割り箸にカラーのモールやリボンを巻き、先端にアルミホイルを丸めた玉をつけるだけ。振り付けのクライマックスでキラキラ光ります。
衣装を手作りする最大のメリットは、子どもたちと一緒に作れることです。年中・年長クラスであれば、「自分のティアラを自分で飾ろう」という製作活動を取り入れることで、発表会への期待感が大きく高まります。「自分が作ったものを身につけて踊る」という経験は、子どもの自己肯定感にもつながる非常に重要な場面です。
衣装と小道具が揃えばあとは踊るだけです。
参考:運動会・発表会で使える手作り小道具・衣装のアイデアが豊富に紹介されています。
生活発表会や運動会の小道具・手具・衣装のアイデア – PETIPA保育研修
保育士だけが知る!舞踏会ダンスが子どもの発達に与える意外な効果
ワルツや舞踏会テーマのダンスを保育に取り入れることの教育的価値は、「楽しかった」という思い出だけにとどまりません。実は、3拍子のリズムに乗って踊ることは、子どもの脳と体の発達に独自の刺激を与えることが研究によって示唆されています。
ある保育者・小学校教諭養成に関する研究論文(椙山女学園大学)によると、「子どもへの身体表現のリズム伴奏や歌唱曲には3拍子の曲が多く含まれており、3拍子のリズム感を養うことが重要」と指摘されています。4拍子の日常リズムとは異なるパターンで体を動かすことで、より多様な神経回路が刺激されると考えられています。意外ですね。
ダンスが子どもの発達にもたらす主な効果は次の通りです。
- 💪 体幹・バランス感覚の発達:くるくる回るワルツの動きは、体の中心軸を意識しながらバランスをとる必要があります。陀螺(こま)のように自分軸で回転する動作は、体幹強化に直結します。
- 😊 自己表現力・自己肯定感の向上:大勢の前で踊りやり遂げる経験は、「自分はできる」という感覚につながります。特に発表会という大舞台での成功体験は、その後の子どもの自信を育てる重要なきっかけになります。
さらに見落とされがちな点として、ワルツ系のクラシック音楽を保育の中に日常的にかけるだけで、情操教育の効果が期待できます。練習が始まる前から給食の時間やお昼寝の導入に使用する曲として流しておくことで、子どもたちは「知っている曲」として親しみを持ち、振り付けの習得が早まるという効果もあります。
これが保育士だけが使える時間の活かし方です。
参考:保育における音楽・リズム活動のねらいと発達への影響について解説されています。
保育園でのリズム遊びのねらいとは?年齢別のリズム遊びを保育士が紹介! – ほいくポケット

早川工業(Hayakawa Kougyou) ワルツホーキ M

