ラテン音楽の有名な曲を保育現場で活かす方法とジャンル別ガイド
「ラテン音楽はリズムが複雑すぎて子どもには向かない」と思っているなら、それは損をしています。
ラテン音楽の有名な曲の種類とジャンル別の特徴を知ろう
「ラテン音楽」という言葉は広大なジャンルの総称です。一言でまとめてしまいがちですが、実は出身地や時代によって音楽のスタイルはまったく異なります。
ラテン音楽とは、主にスペイン・ポルトガル語圏の中南米各国から生まれた音楽の総称です。その起源はスペインやポルトガルによる植民地支配の時代にさかのぼり、ヨーロッパの旋律とアフリカから連行された奴隷たちのリズムが融合することで誕生したと言われています。つまり複数の文化のクロスオーバーが、あの独特のリズム感の源になっているということですね。
保育現場でよく使われる代表的なジャンルは、サルサ、サンバ、マンボ、ボサノバ、チャチャチャ、タンゴなど多岐にわたります。それぞれの特徴を簡単に整理すると、以下の通りです。
| ジャンル | 発祥 | リズムの特徴 | 有名な曲の例 |
|---|---|---|---|
| サルサ | キューバ・プエルトリコ→NY | 8ビート基調、クラーベが核 | Marc Anthonyの楽曲群 |
| サンバ | ブラジル | 2/4拍子、躍動感が強い | Samba de Janeiro(ベリーニ) |
| マンボ | キューバ | 力強いビート、シンコペーション | マンボNo.5(ルー・ベガ) |
| ボサノバ | ブラジル | 穏やか、サンバ+ジャズ融合 | Mas que nada(セルジオ・メンデス) |
| チャチャチャ | キューバ | 4/4拍子、刻みが明瞭 | リズム遊びの定番曲 |
| レゲトン | プエルトリコ→全世界 | デムボウ(ドンドンチャ)リズム | デスパシート(ルイス・フォンシ) |
保育士として知っておきたいのは、チャチャチャやサンバが特に子どもの身体活動と相性がよいという点です。近畿大学豊岡短期大学の論文(2014年)によれば、「ラテンのリズムは♩♩♩♩と軽く音が続きアクセントが変わっていくのが特徴で、リズム感が身についていない時期でも有効な曲種である」とされています。アクセントの位置が変わるラテンのリズムは、子どもが自然に体を動かしやすい構造になっているのです。これは使えそうです。
リズムに難しいイメージを持ってしまう方もいますが、「チャチャチャ」は4分の4拍子で、子どもが日常的に聞くJ-POPの多くと同じ拍子感です。入門として非常に取り組みやすいジャンルです。ジャンルの違いを知れば選曲がしやすくなる、というのが基本です。
参考資料(幼児期の音楽教育とラテン系楽曲の活用について)。
近畿大学豊岡短期大学 — 「幼児期における音楽教育に関する一考察」(PDF)
ラテン音楽の有名な曲ランキング:保育士が知るべき名曲10選
実際に子どもたちの前で使いやすい、知名度と使い勝手を兼ね備えたラテン音楽の有名な曲を厳選しました。選曲の基準は「リズムが明快であること」「テンポが極端に速くないこと」「保護者にも馴染みがあること」の3点です。
- 🎵 恋のマカレナ(Macarena)/ ロス・デル・リオ(1993年)― 手の動きが決まっているダンスが世界中に広まった。子どもでも真似しやすいフリが特徴で、運動会・発表会の定番候補。
- 🎵 マンボNo.5 / ルー・ベガ(1999年)― ペレス・プラードのキューバ原曲(1949年)をドイツ人ミュージシャンが英語詞でリメイクしてヨーロッパ中でヒット。テンポが一定でリズム遊びに最適。
- 🎵 ラ・バンバ(La Bamba)/ ロス・ロボス(1987年)― メキシコ民謡をロックアレンジ。世界で最も知られるスペイン語曲のひとつで、聴いたことがある人が非常に多い。
- 🎵 リビング・ラ・ビダ・ロカ / リッキー・マーティン(1999年)― 郷ひろみが「GOLDFINGER ’99」として日本語カバーして大ヒット。「アチチ」のサビで知っている保護者世代が多い。
- 🎵 デスパシート(Despacito)/ ルイス・フォンシ(2017年)― YouTube歴代2位、約88億3000万再生。スペイン語の響きが心地よく、BGMとして流すだけで空間の雰囲気が一変する。
- 🎵 ワカワカ(Waka Waka)/ シャキーラ(2010年)― 2010年FIFAワールドカップ公式テーマ曲。コロンビア出身の歌姫によるアフロビート×ラテンポップの融合曲。スポーツ活動との相性が抜群。
- 🎵 マシュ・ケ・ナダ / セルジオ・メンデス(1966年)― サンバをロックアレンジ。トヨタ「シエンタ」CMソングにも使用された耳馴染みのよいボサノバ系の名曲。
- 🎵 ボラーレ(Volare)/ ジプシー・キングス(1989年)― フラメンコギターが特徴的なスペイン語曲。キリンビール「淡麗〈生〉」CMで日本でも浸透しており保護者世代の認知度が高い。
- 🎵 サンバ・デ・ジャネイロ / ベリーニ(1997年)― サンバとユーロハウスをミックスしたドイツのグループによるポルトガル語曲。テンポよく盛り上がれるため体を動かすイベントにぴったり。
- 🎵 ランバダ / カオマ(1989年)― バブル時代に日本で空前の大ヒット。石井明美がカバーし老若男女に知られる曲。保護者世代が思わず反応する一曲。
注目したいのは「デスパシート」の記録的な数字です。2017年のリリースからわずか半年で全ストリーミングサービスの累計再生46億回を突破しており、スペイン語の曲が英語圏を席巻したという意味でも歴史的な出来事でした。BGMとして選択肢に入れておくと、保護者からの反応も期待できます。
参考資料(デスパシートの記録について)。
uDiscoverMusic Japan — ルイス・フォンシ「Despacito」世界的ラテンムーブメントの先駆け
ラテン音楽の有名な曲が子どもの発達に与える効果とは
ラテン音楽を保育現場に取り入れることには、見た目の楽しさ以上の発達的な意義があります。単なるエンターテインメントではありません。
まず、リズム感と言語発達の関係を押さえておく必要があります。複数の研究で「リズム感がよい子どもは言語の発達も早い傾向がある」「リズム遊びをすると言葉の聞き取りや発音がスムーズになる」ということが報告されています。リトミックの考案者であるダルクローズは「音楽は人間の運動の習慣をあらゆるテンポと空間に適合させる」と語っており、身体とリズムの結びつきを重視していました。
ラテン音楽が特に優れているのは、「シンコペーション(裏拍のアクセント)」という構造を持つ点です。通常の4拍子の曲では1・3拍が強拍ですが、ラテン曲では2・4拍や「クラーベ」と呼ばれる独自の5拍リズムパターンが中心になります。このずれのあるリズムを体で感じることで、子どもの聴覚処理能力と集中力が刺激されると考えられています。
また、南カリフォルニア大学が2012年から行った研究では、音楽教育が子どもの頭脳形成や決断力の強化に有効であることが示されています。楽器演奏が脳内ホルモンの「ドーパミン」「セロトニン」「エンドルフィン」の分泌を活性化させ、快感・幸福感・集中力向上などの効果をもたらすことも報告されています。つまり音楽を楽しく聴かせるだけでも、脳への好影響は期待できるということです。
保育現場でのおすすめの活用シーンとして、以下が挙げられます。
- 🌟 朝の会・自由遊びのBGM:テンポが適度なボサノバ(マシュ・ケ・ナダなど)を流すことで穏やかな気分の切り替えを促す。
- 🌟 体操・リズム遊び:チャチャチャやサンバ系の曲は4拍子が基本なので、クラップ(手拍子)やマラカスを使った打楽器遊びにそのまま活用できる。
- 🌟 発表会・運動会:マカレナのようにダンスが定番化している曲は、子どもが覚えやすく練習の負担も少ない。
- 🌟 給食・昼寝前のリラックス時間:ギターが主体のフラメンコ系曲やゆっくりめのバチャータ曲は、穏やかなBGMとして機能する。
参考資料(音楽教育と子どもの脳発達について)。
エル・システマジャパン — 音楽教育は子どもの脳発達に好影響
ラテン音楽の有名な曲を保育で使うときの独自視点:「歌詞の意味」問題とその対処法
これは検索上位記事にはほとんど書かれていない話ですが、保育の現場で実際に問題になることがあります。大切な視点です。
ラテン音楽の有名な曲のかなりの部分は、成人向けの恋愛・性的な表現を含むスペイン語の歌詞で構成されています。「デスパシート」はスペイン語で「ゆっくり」を意味するタイトルで、歌詞の内容は非常に官能的な恋愛描写です。「恋のマカレナ」も、スペイン語の歌詞をそのまま訳すとコミカルながら大人向けの内容になっています。
日本語に訳して聴く人は少ないため表面上は問題が顕在化しにくいのですが、保護者や園の方針次第では「子どもに聴かせる曲としてどうなのか」という指摘が出ることも考えられます。
対処法として有効なのは、以下の3点です。
- ✅ インストゥルメンタル版(演奏のみ)を使用する:歌詞なしのカバー演奏はSpotify・YouTube Music・Apple Musicなどで多数配信されており、無料で検索できます。
- ✅ 日本語カバー版を選ぶ:「GOLDFINGER ’99(郷ひろみ版)」のように内容が日本語で確認できるカバー曲は、保護者への説明もしやすいです。
- ✅ 著作権フリーのラテン系BGMを活用する:「DOVA-SYNDROME」「NCS(No Copyright Sounds)」などのサイトに無料ラテン系楽曲が多数あります。商用・保育利用可のものを確認した上で使用するのが安全です。
音楽の楽しさをそのままに、トラブルのリスクを下げるのが大切なポイントです。インストゥルメンタル版かどうかを確認するだけで使いやすさが大幅に変わります。確認する、たった1アクションで安心が得られます。
また、使用楽曲について保護者に事前にお知らせの中で触れておくことも、信頼関係の構築という観点から有効です。音楽活動の説明を一行添えるだけで、保護者から「どんな曲ですか?」という質問に余裕を持って答えられます。
ラテン音楽の有名な曲のジャンル別アーティスト紹介:保育士が覚えておきたい代表的な顔ぶれ
ラテン音楽を選曲するとき、「どのアーティストを基準に探せばいいか分からない」という声をよく聞きます。入口となる代表的なアーティストを知っておくと、自分で関連曲を広げていけます。
まず外せないのがシャキーラです。コロンビア出身で、アフリカの歌手ゾジという曲をもとにしたワカワカ(2010年)はFIFAワールドカップ公式テーマとなり、世界中に広まりました。ベリーダンスを融合させた独創的なダンスが特徴で、「ヒップス・ドント・ライ(2005年)」ではウィクレフ・ジョン(フージーズ)と共演し大ヒットしています。子どもたちが身体を動かしやすいテンポの曲が多く、非常に扱いやすいアーティストです。
次にリッキー・マーティンです。プエルトリコ出身の彼は1999年に「リビング・ラ・ビダ・ロカ」で世界的ブレイクを果たし、「ラテン音楽ブーム」の先駆けとなりました。日本では郷ひろみのカバーで爆発的に知られた曲です。FIFAワールドカップのテーマ「カップ・オブ・ライフ(1998年)」も手がけています。
そしてサンタナも重要な存在です。メキシコ出身のギタリストで、彼の率いるサンタナというバンドは1999年の「スムース(Smooth feat. Rob Thomas)」で全米12週連続1位を達成し、グラミー賞の最優秀楽曲賞も受賞しています。キューバのリズムとロックを融合させた「ラテンロック」というジャンルを確立した先駆者です。
ブラジル系のアーティストとしてはセルジオ・メンデスが代表格です。サンバとジャズを融合させたボサノバを世界に広めた一人で、1966年の「マシュ・ケ・ナダ」はトヨタCMにも使われた耳馴染みのある名曲です。落ち着いた雰囲気のBGMを選びたい場面に向いています。意外ですね。
2010年代以降ではルイス・フォンシとカミラ・カベロに注目です。フォンシの「デスパシート」はレゲトン×ポップスという組み合わせで一世を風靡し、カベロの「ハバナ(Havana, 2017年)」はキューバへのオマージュが詰まった洗練された曲構成で世界中の音楽プレイリストに並んでいます。2020年代のラテン音楽の入口としてどちらも最適です。
これらのアーティスト名を覚えておくだけで、定額制音楽サービス(Spotify、Apple Musicなど)でリコメンドされる関連曲を通じて選曲の幅がぐっと広がります。アーティスト名を知ることが選曲の近道です。
参考資料(ラテンポップスの有名アーティストと曲まとめ)。
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