ピーターと狼のあらすじと保育で使える音楽の魅力
ピーターと狼を「クラシック音楽の難しい話」と思っていると、保育の現場で大きなチャンスを逃します。
ピーターと狼のあらすじ:物語の全体像とストーリーの流れ
「ピーターと狼」は、ロシアの作曲家セルゲイ・プロコフィエフが1936年に作曲した交響的物語です。約35分で演奏される管弦楽と語りのための作品で、子ども向けに書かれたにもかかわらず、世界中のコンサートホールで今も演奏され続けています。
物語の舞台は、ロシアの森に隣接した広い草原です。少年ピーターは祖父と二人で暮らしており、ある朝、祖父の言いつけを無視して柵の外の草原へ出かけます。
物語の主な流れは以下のとおりです。
- 🌅 朝、ピーターが草原に出かけ、アヒル・小鳥・猫と出会う
- 👴 祖父が現れ、「危ない」と叱って家に連れ戻そうとする
- 🐺 狼が森から現れ、アヒルをひと飲みにしてしまう
- 🎯 ピーターは木に登り、小鳥と協力して狼を捕まえる
- 🎉 猟師たちが到着し、狼を動物園へ連れていくことになる
これがシンプルな話のように見えます。しかし重要なのは、ただのお話ではなく「各登場人物が特定の楽器の音色で表現されている」という点です。プロコフィエフは子どもたちにオーケストラの楽器を親しませるために、この作品を意図的に設計しました。
結論はシンプルです。「音で人物を聴き分ける」という体験が、この作品の最大の価値です。
ピーターと狼の登場人物と担当楽器:7つのキャラクター対応表
この作品の最大の特徴は、登場人物それぞれに異なる楽器の「テーマ音楽(モチーフ)」が割り当てられていることです。楽器ごとの音色の違いが、キャラクターの個性を音で表現しています。
| 登場人物 | 担当楽器 | 音の印象 |
|---|---|---|
| ピーター(少年) | 弦楽四重奏 | 明るく活発、勇気ある少年らしさ |
| 小鳥 | フルート | 軽やかで素早い動き |
| アヒル | オーボエ | のどか、少しとぼけた感じ |
| 猫 | クラリネット | しなやかで抜け目のない動き |
| 祖父 | ファゴット | 低く重い、年老いたおじいさんらしさ |
| 狼 | ホルン3本 | 威圧的で不気味な存在感 |
| 猟師たち | ティンパニ・大太鼓 | 銃声のような迫力 |
この対応関係は、保育の現場でとても使いやすいです。楽器の音が鳴ったとき「誰が来た?」と問いかけるだけで、子どもたちは自然に音の違いを聴き分けようとします。
意外ですね。クラシック音楽なのに、聴くだけでゲーム感覚になる作品です。
フルートの「小鳥のテーマ」は特に高音で軽快なため、4歳以上の子どもでも「あ、鳥だ!」と気づきやすいといわれています。一方でホルン3本が重なる「狼のテーマ」は低音の圧迫感があり、子どもが本能的にドキドキする反応を示すことが多いです。
楽器の音色に注目させるのが第一歩です。
ピーターと狼のあらすじ詳細:シーンごとの展開と聴きどころ
物語は大きく5つのシーンに分けて理解すると、読み聞かせや音楽活動で使いやすくなります。
🌤 シーン1:朝の草原(ピーターの登場)
弦楽器の明るいテーマとともに物語が始まります。ピーターは祖父の家の柵のそばで、草原を眺めています。小鳥が飛んできて「あたりはいい天気だ」と歌います(フルートのテーマ)。アヒルもよちよちと草原に出てきて、水たまりで泳ぎ始めます(オーボエのテーマ)。
🐱 シーン2:猫の登場とにらみ合い
猫がこっそりと小鳥に近づきます(クラリネットのテーマ)。ピーターが「危ない!」と木の上に逃がしてやります。猫は獲物を逃し、木の周りをうろうろするだけです。この緊張感の表現が、クラリネットの音色で見事に描かれています。
👴 シーン3:祖父の登場と叱責
ファゴットの重たい音とともに祖父が登場します。「狼が出るから外に出てはいけない!」と叱り、ピーターを連れ戻そうとします。ここでのファゴットの「もったりした」音色が、口うるさいおじいさんのイメージと完全に重なります。子どもたちが笑いやすい場面です。
🐺 シーン4:狼の襲撃(物語のクライマックス)
ホルン3本が重なる不気味なテーマとともに、狼が森から出てきます。猫は素早く木に登って難を逃れます。アヒルは逃げ遅れ、狼にのみ込まれてしまいます。ここは物語の最大の山場です。この場面はオーボエのテーマが突然消えることで「アヒルがいなくなった」ことを音楽だけで表現しています。
つまり音楽だけでドラマが完結するということです。
🎯 シーン5:ピーターの機転と大団円
ピーターは縄を使い、小鳥と協力して狼のしっぽを木に縛りつけることに成功します。そこへ猟師たちが到着し(ティンパニの轟音)、狼を動物園へ連れていくことが決まります。最後は全員が行進するような華やかなテーマで締めくくられます。
狼が「食べてしまった」アヒルはどうなったのか。実は語りのバージョンによっては「狼のお腹の中でまだ生きている」という表現があり、子どもに「アヒルはどうなったと思う?」と問いかける素材にもなります。
ピーターと狼のあらすじを保育で使うとき:読み聞かせと音楽活動の具体的アイデア
実際の保育活動にどう取り入れるかが、現場の保育士にとって一番知りたい部分でしょう。以下に年齢別・活動別の使い方をまとめます。
📖 読み聞かせとして使う(3〜5歳向け)
絵本版の「ピーターと狼」は複数の出版社から出ており、日本語版も手に入りやすいです。代表的なものに、岩波書店から出版されているミゼット判絵本や、福音館書店の大型絵本版があります。読み聞かせの際は「次に誰が来るかな?」と予告クイズを挟むと、子どもの集中が続きます。
🎵 音楽鑑賞活動として使う(4〜6歳向け)
CDや動画でプロコフィエフの原曲を流し、各楽器のテーマが流れたときにキャラクターカードを見せる活動が人気です。カードは手作りでも十分で、動物や人物のイラストを画用紙に描いて使います。子どもが「フルートが鳴ったら小鳥カードを持ち上げる」というゲーム形式にすると、楽器名と音色が自然に定着します。
これは使えそうです。
🎭 劇遊び・ごっこ遊びとして使う(4歳以上)
登場人物が明確で数が限られているため(7キャラクター)、クラス全員で役割分担しやすい作品です。小道具は布や段ボールで作れるので、コストをかけずに準備できます。音楽に合わせて動くだけでも十分な劇遊びになります。
- 🐦 小鳥役:フルートの音で「ひらひら」と走り回る
- 🐺 狼役:ホルンの音で「ゆっくり近づく」動きをする
- 🧒 ピーター役:弦楽テーマで颯爽と登場する
衣装や大道具がなくても成立するのが、この作品の保育向けとしての強みです。
ピーターと狼の作曲背景と保育士が知っておくと差がつく豆知識
プロコフィエフがこの作品を作曲したのは1936年、ソビエト連邦の時代です。当時のモスクワ中央児童劇場の依頼を受け、わずか4日間で作曲したという記録が残っています。これが驚きです。
35分の交響的物語をわずか4日で書き上げたという事実は、プロコフィエフの天才性を示すと同時に、「子ども向けだからこそシンプルに作った」という意図を示しています。
知っておくと得する豆知識を3つ紹介します。
- 🎼 初演は1936年5月2日:モスクワの児童劇場で初演されたが、当初の評判は芳しくなく、人気が出たのは戦後のことです
- 🦆 アヒルの「生死」は語りによって変わる:狼に丸飲みにされたアヒルが「お腹の中で生きている」という演出と「食べられた」という演出の2パターンが存在し、指揮者や語り手によって異なります
- 🌍 世界中で500種類以上の録音が存在する:語りのパートを著名人が担当したバージョンが多数あり、デヴィッド・ボウイやナレーターの違いによる聴き比べも楽しめます
「アヒルが実は生きているかもしれない」という情報は、子どもたちに伝えると物語への関心が一気に高まります。「どっちだと思う?」と問いかけるだけで、豊かな対話が生まれます。
これは保育のねらい「言葉で伝える力」にもつながります。
また、ナレーション(語り)の台本は著作権が切れているものも多く、日本語訳を保育士が自分でアレンジして使うことも可能です。独自のセリフを加えて地域の動物に置き換えるなど、アレンジの幅も広いです。
参考:プロコフィエフとこの作品の制作経緯について、ロシア音楽の文脈から詳しく解説されています。
ヤマハ音楽振興会 – プロコフィエフ「ピーターと狼」解説ページ
参考:子どもへの音楽鑑賞活動の実践例と保育指導への応用について紹介されています。


