オルフ カルミナブラーナの名盤を選ぶ前に知っておくべきこと
カルミナ・ブラーナを「子ども向けに選ぶなら演奏は何でもいい」と思うと、保育の質で3割以上の差が出ることがあります。
オルフ カルミナブラーナとはどんな曲か:保育士が知っておきたい基礎知識
カルミナ・ブラーナは、ドイツの作曲家カール・オルフ(1895〜1982年)が1936年に完成させた世俗カンタータです。 「おお運命の女神よ(フォルトゥナ)」で始まる冒頭の合唱は、映画・ドラマ・スポーツ中継のBGMとして世界中で使われており、曲名を知らなくてもほぼ確実に耳にしたことがある曲です。alpacablog+1
作品の原典となった詩歌集は、1803年にバイエルンのベネディクト・ボイレン修道院で発見された12〜13世紀の写本です。 その内容は、当時の若者たちが書き記した恋・酒・賭博・社会への不満など、非常に自由奔放なものでした。 オルフは250あまりある詩歌の中から24篇を選び、「春」「酒場」「恋愛」という3つのカテゴリーに整理して曲をつけました。classic-info+1
この曲が保育の現場と深く関わるのは、オルフ自身が独自の音楽教育メソッド「オルフ・シュールヴェルク」を開発した音楽教育者でもあったからです。 強烈なリズムと単純明快な反復構造は、子どもたちの身体反応を引き出しやすいという特性があります。つまり、名盤を正しく選ぶことが保育活動の質に直結するということです。
参考)https://u-nagano.repo.nii.ac.jp/record/645/files/kentan_kiyo-40-12.pdf
オルフ カルミナブラーナ名盤の最高峰:ヨッフム=ベルリン・ドイツ・オペラ盤(1967年)
カルミナ・ブラーナの名盤として最も多くの音楽評論家が挙げる一枚が、オイゲン・ヨッフム指揮、ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団による1967年のドイツ・グラモフォン盤です。 ヨッフムはこの曲を得意としており、1952年のバイエルン放送響との録音に続く、再録音にあたります。harucla.cocolog-nifty+1
この盤の最大の魅力は独唱陣の豪華さです。 バリトンにフィッシャー=ディースカウ、ソプラノにグンドゥラ・ヤノヴィッツ、テノールにゲルハルト・シュトルツェという「超」のつく名人が揃っており、特に第2部「酒場にて」のテノールの怪演は常軌を逸したレベルとも言われます。 なお、この録音にはオルフ本人が立ち会っており、作曲家のお墨付きを得た演奏という点でも権威があります。classic-info+1
テンポはやや遅め・スケール大きめで、感情の振れ幅が非常に大きく、保育士が「演奏の個性」を学ぶ教材としても最適な一枚です。 長年カルミナ・ブラーナのベストセラーとして君臨し続けているのはその中身の豊かさゆえで、聴くたびに新しい発見があると評されています。
参考)カルミナ・ブラーナ (オルフ) | おすすめ名盤レビュー【C…
| 指揮者 | オーケストラ | 録音年 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ヨッフム | ベルリン・ドイツ・オペラ | 1967年 | スケール大・独唱陣が最強クラス・オルフ本人立会い |
| 小澤征爾 | ベルリン・フィル+晋友会 | 1990年 | 疾走感あり・日本の合唱を世界に示した |
| ムーティ | フィルハーモニア管 | 1979年頃 | 筋肉質なリズム・スタンダードに近い完成度 |
| プレヴィン | ウィーン・フィル | 1980年代 | 柔らかな音色・整然とした美しさ |
| レヴァイン | シカゴ交響楽団 | 1984年 | クールでダイナミック・録音の解像度が高い |
オルフ カルミナブラーナ名盤の日本人枠:小澤征爾=ベルリン・フィル盤
小澤征爾が晋友会合唱団を率いてベルリン・フィルと共演した1990年の録音は、日本のクラシック音楽史に残る一枚です。 晋友会合唱団はアマチュアの合唱団ですが、その一糸乱れぬコーラスは当時のドイツで絶賛されました。
これは重要な事実です。 当時のベルリン・フィルはカラヤンが逝去した直後で、オーケストラのレベルが最高潮にあった時期です。 そのトップオーケストラに乗り込んだ日本人指揮者と日本のアマチュア合唱団という組み合わせは、奇跡的な化学反応を起こしました。
小澤の最大の特徴はテンポ設定です。 冒頭「おお運命の女神よ」を通常より速いテンポで一気に燃え上がらせる手法は、他の指揮者にはない独自のアプローチです。 映像付きのDVDも発売されており、小澤征爾の最盛期の指揮ぶりを視覚的に確認できるため、保育士の音楽研修素材としても価値があります。
オルフ カルミナブラーナ名盤の選び方:保育活動別おすすめ指揮者盤
保育活動でカルミナ・ブラーナを使う場面は、主に「リズム遊び」「お遊戯会の発表」「音楽鑑賞の時間」の3つに分けられます。リズムの明確さを優先するならムーティ盤、曲全体の美しさと構造を伝えたいならプレヴィン盤、強烈なインパクトを与えたいなら小澤盤が適しています。
保育士自身がカルミナ・ブラーナの世界観を深く理解するための1枚として選ぶなら、ヨッフム盤が最も勉強になります。 スケールが大きく、独唱者ごとのキャラクターが際立っており、「なぜこの曲がこれほど愛されているのか」を体感できる内容だからです。 ヨッフム盤が「名盤中の名盤」と呼ばれる理由はまさにここにあります。harucla.cocolog-nifty+1
また、実際の保育現場での使用には、約1時間という演奏時間全体を使うのではなく、冒頭の「おお運命の女神よ」(第1曲)や第1部「初春に」から数曲を抜粋するのが現実的です。 抜粋で使う際も演奏の質を落としたくない場合、どの盤を選んでも最初の2分間で引き込む力があるものが使いやすく、その意味でもムーティ盤や小澤盤の冒頭の疾走感は実用的です。wikipedia+1
参考:カルミナ・ブラーナの曲構成・楽器編成・歌詞詳細(おすすめ名盤レビューも豊富)
保育士が知らないと損するオルフの音楽教育哲学:カルミナブラーナの名盤選びに活きる視点
カルミナ・ブラーナを単なる「迫力のある合唱曲」として捉えるだけでは、保育の現場での活用機会を大きく逃します。 オルフは作曲家である一方で、「オルフ・シュールヴェルク(Orff-Schulwerk)」と呼ばれる独自の音楽教育システムを開発した人物です。
このメソッドは現在、世界40か国以上で保育・幼児教育に取り入れられています。 日本の保育所保育指針にも「音楽」という言葉が使われており、オルフの教育理念はその根幹に影響を与えていると研究者から指摘されています。 基本は「話す・歌う・動く」を一体化させたリズム指導にあり、カルミナ・ブラーナのような反復するリズムパターンが子どもの言語発達にも効果的と考えられています。
ここが重要なポイントです。 名盤を選ぶ際に「音の迫力」だけを基準にするのではなく、「リズムの輪郭が子どもに届きやすいか」という視点を持つと選択肢が変わります。 リズムの明確さでいえばムーティ盤やレヴァイン盤が優れており、柔らかく子どもに聴かせやすい音色という点ではプレヴィン盤やヨッフム盤が向いています。u-nagano.repo.nii+1
参考:オルフの音楽教育理念に基づく幼児のリズム指導の研究論文(長野大学紀要)
C.オルフの音楽教育理念に基づく幼児のリズム指導について(PDF)
参考:カルミナ・ブラーナの楽曲解説・基本動機の分析(鑑賞前の予習に最適)


