上柴はじめ作曲の童謡と保育活用
上柴はじめさんの童謡を毎日歌っているのに、その楽曲が子どもの発達に最適な理由を知らない保育士は8割以上います。
上柴はじめさんの作曲家としての経歴と代表曲
上柴はじめさんは、日本を代表する童謡作曲家として、保育現場で長年愛される楽曲を数多く生み出してきました。1940年代から活動を開始し、子どもたちの心に響く温かいメロディーと、覚えやすい歌詞で知られています。
代表曲には「おばけなんてないさ」「にじ」「世界中のこどもたちが」などがあります。これらの楽曲は、幼稚園や保育園での日常保育はもちろん、運動会や発表会などの行事でも頻繁に使用されています。
どういうことでしょうか?
上柴さんの作曲の特徴は、子どもの声域に配慮した音域設定にあります。一般的に3歳児の快適な音域はド~ラ(約1オクターブ)、5歳児でもシ♭~レ(約1オクターブ半)程度です。上柴さんの楽曲の多くは、この範囲内で作られており、子どもたちが無理なく歌える設計になっています。
つまり、楽譜通りに歌うだけで自然と子どもの発声に優しい保育ができるということですね。
また、リズムパターンも単純明快で、繰り返しが多い構成になっています。「おばけなんてないさ」を例にとると、「おばけなんてないさ おばけなんてうそさ」という冒頭のフレーズが、子どもたちの記憶に残りやすい2回繰り返しの構造です。認知心理学的には、幼児期の記憶定着には3~5回の反復が効果的とされており、上柴さんの楽曲はこの原則を自然に取り入れています。
上柴はじめ作曲の童謡が保育現場で選ばれる理由
保育現場で上柴はじめさんの楽曲が選ばれ続ける最大の理由は、子どもの発達段階に合わせた音楽設計にあります。保育指針でも音楽活動は「感性と表現に関する領域」として重視されていますが、上柴さんの作品はこの教育目標と自然に合致しています。
具体的には、メロディーの跳躍が少ないという特徴があります。音楽理論では、隣接する音への移動を「順次進行」、離れた音への移動を「跳躍進行」と呼びますが、幼児が歌いやすいのは順次進行が中心の楽曲です。上柴さんの「にじ」では、全体の約70%が順次進行で構成されており、4歳児でも初見で歌いやすい設計になっています。
これは使えそうです。
さらに、歌詞の言葉選びも保育現場向きです。擬音語や擬態語が適度に含まれており、言語発達の途上にある子どもたちでも意味を理解しやすくなっています。「ドンドン」「キラキラ」といったオノマトペは、3歳前後の子どもが最も興味を示す言語表現で、語彙獲得のきっかけにもなります。
加えて、歌詞の内容がポジティブで、子どもの情緒を安定させる効果があります。「おばけなんてないさ」は、子どもが持つ漠然とした不安を明るく払拭する内容で、夕方の降園前に歌うと気持ちが落ち着くという保育士の声も多く聞かれます。音楽療法の観点からも、明るい長調の楽曲は子どもの気分を前向きにする効果が実証されています。
結論は、音楽的配慮と教育的意図が完璧に融合しているということです。
年齢別・上柴はじめ作曲の童謡選曲ガイド
子どもの年齢によって、適切な楽曲は変わってきます。上柴はじめさんの作品群の中から、発達段階に応じた選曲をすることで、音楽活動の効果が格段に高まります。
0~1歳児クラス向け
- シンプルなメロディーの楽曲を選びます
- テンポはゆっくり(♩=80~100程度)が基本です
- 保育士が抱っこしながら歌える曲が適しています
- 繰り返しの多い「おおきなくりのきのしたで」などが最適です
2~3歳児クラス向け
4~5歳児クラス向け
- 音域が広がり(シ♭~レ程度)、複雑なリズムにも挑戦できます
- 「世界中のこどもたちが」のような、歌詞に意味を考えさせる内容も理解できます
- 二部合唱や輪唱にも挑戦できる時期です
- 運動会や発表会での合唱曲として活用できます
選曲の際は、季節や行事との関連性も考慮しましょう。春なら「にじ」、秋なら「どんぐりころころ」(編曲版)など、季節感のある楽曲を選ぶと、子どもたちの生活体験と音楽が結びつきやすくなります。環境認識の発達にも寄与するというわけですね。
また、クラスの雰囲気に合わせた選曲も重要です。落ち着きのないクラスには、ゆったりしたテンポの楽曲を多めに取り入れることで、集団全体の情緒を安定させることができます。音楽心理学では、テンポ♩=60~80の楽曲には心拍数を落ち着かせる効果があるとされています。
上柴はじめ作曲を使った季節の保育実践例
季節ごとの保育活動に上柴はじめさんの楽曲を取り入れることで、子どもたちの季節感覚を豊かに育てることができます。ここでは、実際の保育現場で効果の高かった実践例を紹介します。
春の保育実践
4月の新入園児を迎える時期には、「せんせいとおともだち」のような、新しい環境への期待感を高める楽曲が効果的です。入園後1週間は、毎朝この歌でスタートすることで、登園への不安を軽減できます。実際に、この方法を導入した園では、慣らし保育期間中の泣く子の割合が前年比で約30%減少したという報告があります。
5月には、「こいのぼり」を歌いながら製作活動と連動させます。歌詞の中に出てくる「大きい真鯉」「小さい緋鯉」といった言葉を、実際に作った鯉のぼりと結びつけることで、言葉の意味理解が深まります。
夏の保育実践
7月の七夕では、「たなばたさま」を歌いながら短冊作りをします。歌詞に出てくる「五色の短冊」について、実際に5色の折り紙を用意して見せることで、色の認識と数の概念を同時に学べます。これは認知発達において「具体物と抽象概念の結びつき」という重要なプロセスです。
8月のプール活動では、水への恐怖心を和らげるために、「みずあそび」の歌を活用します。プールに入る前に歌うことで、心理的な準備ができ、スムーズな水遊び導入につながります。
秋の保育実践
10月の運動会では、「世界中のこどもたちが」を開会式の歌として使用している園が多くあります。この楽曲の「世界中の子どもたちが一度に笑ったら」という歌詞は、運動会のテーマである「みんなで協力」という価値観と合致しています。
11月の発表会に向けては、9月頃から練習を開始します。「おばけなんてないさ」は、振り付けもしやすく、3歳児クラスでも十分に演じられる楽曲として人気です。
冬の保育実践
12月のクリスマス会では、「あわてんぼうのサンタクロース」を合唱曲として使用します。この曲は、失敗を笑いに変える内容で、子どもたちに「間違えても大丈夫」というメッセージを伝えられます。
2月の生活発表会では、1年間の成長を見せる場として、難易度の高い楽曲にチャレンジします。5歳児クラスなら、「にじ」の二部合唱も可能です。
季節に応じた選曲をすることで、子どもたちは音楽を通じて四季の移ろいを感じ取れるようになります。
これが環境認識力の基礎です。
他の童謡作曲家との違いと上柴はじめの独自性
上柴はじめさんの作風には、他の童謡作曲家にはない独自の特徴があります。同時代の作曲家と比較することで、その魅力がより明確になります。
まず、中田喜直さんや團伊玖磨さんといった、芸術性を重視した作曲家と比較してみましょう。中田さんの「ちいさい秋みつけた」は美しいメロディーで知られますが、音域が広く(シ♭~ミ♭の1オクターブ半)、幼児には少し難しい楽曲です。一方、上柴さんの楽曲は音域を抑え、実用性を優先しています。
どうなりますか?
芸術性と実用性のバランスが絶妙なのです。上柴さんの楽曲は、音楽的に単純すぎず、かといって難しすぎない「ちょうどいい複雑さ」を持っています。発達心理学では、子どもの興味を引くには「既知と未知のバランス」が重要とされますが、上柴さんの作品はまさにこの原則を体現しています。
また、わらべうた調の作曲家である小林純一さんと比較すると、上柴さんの楽曲はより現代的で、ピアノ伴奏との相性が良い点が特徴です。保育現場では、ピアノやキーボードでの伴奏が一般的なので、この特徴は大きなメリットになります。
さらに、上柴さんの楽曲には「物語性」があります。「おばけなんてないさ」では、最初は怖がっていた子どもが、最後には「おばけと友達になっちゃった」と変化するストーリーが含まれています。この物語構造が、子どもたちの想像力を刺激し、歌への興味を持続させます。
加えて、歌詞の日本語が自然で美しいという点も見逃せません。「にじ」の歌詞を見ると、「雨上がりの空を見上げてごらん」という冒頭から、日本語のリズムが心地よく流れます。これは、詩人としての感性も併せ持つ上柴さんならではの特徴です。
結論は、実用性・芸術性・教育性の三位一体です。
上柴はじめ作曲を活用した音楽指導のコツ
上柴はじめさんの楽曲を使った音楽指導を成功させるには、いくつかのコツがあります。これらを押さえることで、子どもたちの音楽的な成長を効果的に促せます。
導入時のポイント
新しい曲を教える際は、いきなり歌わせるのではなく、まず保育士が楽しそうに歌って聞かせます。子どもは模倣学習が得意なので、大人が楽しんでいる様子を見ることで、自然と興味を持ちます。最低でも3回は聞かせてから、一緒に歌い始めるのが基本です。
また、歌詞の意味を理解させることも重要です。「にじ」なら、実際に雨上がりの虹を見た経験と結びつけて説明します。体験と音楽を結びつけることで、記憶の定着率は約2倍になるという研究結果もあります。
練習時のテクニック
全体を通して歌う前に、難しいフレーズを部分練習します。「おばけなんてないさ」なら、「さ・さ・さ」という部分は音程が取りにくいので、ここだけ繰り返し練習します。
リズム感を養うために、手拍子や足踏みと組み合わせるのも効果的です。4分音符では手を叩き、2分音符では足を踏むといった、視覚と触覚を使った学習方法は、聴覚だけの学習より約40%記憶定着率が高いとされています。
発展的な活用法
慣れてきたら、楽器演奏と組み合わせます。「世界中のこどもたちが」なら、サビの部分でタンバリンやカスタネットを鳴らすと、子どもたちの達成感が高まります。5歳児クラスなら、簡単な二部合唱にも挑戦できます。
また、振り付けを子どもたち自身に考えさせるのも良い方法です。創造性を育てると同時に、曲への理解が深まります。ただし、振り付けは複雑すぎないことが条件です。
注意すべき点
無理に完璧を求めないことが最も重要です。音程が少しずれていても、楽しく歌っていれば褒めてあげましょう。厳しく指導しすぎると、音楽嫌いになってしまうリスクがあります。実際に、幼児期に音楽を強制された経験のある人の約25%が、大人になっても音楽に苦手意識を持ち続けるという調査結果があります。
それで大丈夫でしょうか?
楽しさ優先で大丈夫です。幼児期の音楽教育の目的は、正確な歌唱技術の習得ではなく、音楽を楽しむ心を育てることにあります。保育所保育指針でも「感性を豊かにする」ことが目標とされており、技術習得は二の次なのです。
厚生労働省「保育所保育指針」(PDF) – 第2章「保育の内容」の「表現」領域に、音楽活動の目標が明記されています
保育士自身が音楽を楽しむ姿勢を見せることが、何より大切な指導法になります。


