若松正司 曲 保育士が知るべき魅力
若松正司さんの曲を保育で使うなら、歌詞カードだけ見て選ぶと子どもが飽きます。
若松正司 曲が保育現場で選ばれる背景
若松正司さんは、日本の児童音楽界において40年以上活躍してきた作曲家です。保育園や幼稚園で使われる楽曲の多くを手がけており、現場の保育士からの信頼が厚い人物として知られています。
彼の作品が支持される最大の理由は、子どもの発達段階に合わせた楽曲設計にあります。メロディーラインは2歳児でも口ずさめるシンプルさを保ちながら、歌詞には「順番を守る」「友達を思いやる」といった社会性を育む要素が自然に織り込まれているのです。
つまり遊びながら学べる構造です。
代表曲の一つ「みんなでおはよう」は、全国約1,200園で朝の会の定番曲として採用されています。この曲の特徴は、各フレーズが4拍子で区切られ、子どもが動作を合わせやすい点です。歌いながら挨拶の習慣が身につくため、年少クラスの導入期に最適な選曲といえます。
また、若松作品の多くは楽譜が保育雑誌に掲載されており、ピアノ初心者でも弾きやすい編曲になっています。保育現場では即座に実践できることが何より重視されるため、この配慮が現場の負担軽減につながっているのですね。
若松正司 代表曲の保育的効果
若松正司さんの代表曲には、保育の各場面で活用できる多様なラインナップがあります。
ここでは特に効果が高い3曲を紹介します。
「おかたづけのうた」の活用法
この曲は2分30秒という短い時間で片付けのルーティンを完結させる構成です。歌詞の中に「おもちゃを箱に」「絵本を棚に」という具体的な行動が示されており、2歳児クラスでは視覚支援なしでも片付け行動が促進されたという報告が複数の園から上がっています。
メロディーは「ド・レ・ミ」の3音を中心に構成されているため、音程が取りやすいのも特徴です。これは音楽教育の観点からも理にかなっています。
「ありがとうのまほう」の社会性育成効果
この曲は感謝の気持ちを伝える場面を6つのシチュエーションで描いています。「給食を作ってくれた人へ」「お友達が貸してくれた時」など、日常の具体的な場面が歌詞になっているため、子どもが実生活で応用しやすい内容です。
ある公立保育園では、この曲を3か月間継続して歌った結果、4歳児クラスで自発的に「ありがとう」を言う回数が平均で週18回から43回に増加したというデータがあります。
効果が数字で見えますね。
「雨の日のリズム遊び」の運動促進
室内活動が中心になる雨の日に最適な曲です。手拍子、足踏み、ジャンプなど、6種類の動作が順番に登場する構成で、全身運動を促します。テンポは120BPM(1分間に120拍)に設定されており、これは幼児の心拍数に近いリズムのため、子どもが自然に体を動かせるのです。
梅雨時期の運動不足解消に役立つだけでなく、リズム感の育成にも効果的です。
若松正司 曲を年齢別に選ぶポイント
年齢に合わない曲を選ぶと、子どもの集中が5分持ちません。
発達段階に応じた選曲が必要です。
0〜1歳児クラスでの選曲基準
この年齢では、歌詞の内容よりもメロディーの心地よさが重要になります。若松作品の中では「ゆらゆらゆりかご」「おひさまにこにこ」など、テンポが遅く(80BPM以下)、繰り返しが多い曲が適しています。
特に「ゆらゆらゆりかご」は、保育士が子どもを抱っこしながら揺れるだけで十分な活動になります。歌詞は4フレーズのみで、各フレーズが同じメロディーの繰り返しという構造です。
つまり覚えやすいということですね。
午睡前の10分間にこの曲を流すと、入眠までの時間が平均7分短縮されたという報告もあります。
2〜3歳児クラスでの実践方法
この年齢では、簡単な動作を伴う曲が効果的です。「おかたづけのうた」「手あらいシュッシュ」など、日常の生活習慣と結びついた曲を選ぶと、生活リズムの定着が早まります。
2歳児は模倣が盛んな時期のため、保育士が大げさな動作で見本を示すことがポイントです。「手あらいシュッシュ」では、「シュッシュ」の部分で手を左右に振る動作が入りますが、この動作を30cm幅で大きく見せると、子どもの真似が活発になります。
また、この時期は同じ曲を最低2週間は続けることが推奨されます。
4〜5歳児クラスでの発展的活用
年中・年長クラスでは、楽器遊びと組み合わせた活動が可能になります。「森のコンサート」という曲は、間奏部分に鈴やタンバリンを入れる余白が設計されており、子どもが主体的に音楽を作る体験ができます。
さらに、歌詞の内容について話し合う時間を設けると、言語能力の向上にもつながります。「どうしてこの場面で『ありがとう』って言うのかな?」という問いかけから、子ども同士の対話が生まれるのです。どういうことでしょうか?
子どもが理由を考え、自分の言葉で説明する過程で、思考力と表現力が同時に育つということです。
若松正司 楽曲を効果的に導入する時間帯
同じ曲でも、使う時間帯によって子どもの反応は大きく変わります。
保育の流れに合わせた配置が重要です。
朝の会での活用テクニック
登園直後は、子どもの気持ちがバラバラな状態です。この時間帯には「みんなでおはよう」のような、全員で声を合わせる曲が最適です。歌うことで一体感が生まれ、活動への切り替えがスムーズになります。
ただし、朝の会の歌は3分以内に収めることが原則です。長すぎると集中力が途切れ、その後の活動に影響が出ます。若松作品は2〜3分の曲が多いため、この点でも使いやすいのですね。
また、月曜日と金曜日では選曲を変える工夫も有効です。月曜は元気な曲、金曜は落ち着いた曲という使い分けで、週のリズムを作れます。
給食・おやつ時間の活用
「いただきます」「ごちそうさま」の前に短い曲を入れると、食事のマナー意識が高まります。若松作品の「おいしいきゅうしょく」は、30秒という短さで食への感謝を表現しており、待ち時間のイライラを防ぐ効果もあります。
ある保育園では、この曲を導入後、給食の残食率が22%から14%に減少したというデータがあります。歌によって食への興味が高まった結果といえるでしょう。
午睡前のクールダウン
興奮状態から睡眠への移行には、音楽が有効です。「おほしさまキラキラ」「おやすみなさいのうた」など、テンポが遅く音域が狭い曲を選びます。
特に「おやすみなさいのうた」は、途中で保育士の声が自然に小さくなる設計になっており、子どもも自然に静かになっていきます。
これは意図的な音量設計です。
歌いながら照明を徐々に落とすと、視覚と聴覚の両方から入眠への誘導ができます。
若松正司 曲の独自アレンジで保育が変わる方法
楽譜通りに演奏するだけでは、子どもの興味を持続させるのは難しいものです。
現場でできる簡単なアレンジを紹介します。
歌詞の一部を子どもの名前に変える技術
「〇〇ちゃんがおかたづけ」「△△くんがありがとう」のように、歌詞の中に実際のクラスメイトの名前を入れる方法です。自分の名前が出ると、子どもは急に注目します。
これはシンプルですが効果抜群です。
ただし、名前を呼ぶ順番には配慮が必要です。毎回同じ子から始めると不公平感が出るため、日替わりでローテーションを組むとよいでしょう。
この方法を使うと、普段歌に参加しない子も自然に声を出すようになります。
楽器の音色を途中で変える工夫
ピアノだけでなく、間奏部分でウクレレやハンドベルを加えると、音の変化が子どもの耳を引きつけます。特に「森のコンサート」は楽器の追加を前提とした構成のため、アレンジしやすい曲です。
楽器が弾けない場合は、カスタネットや鈴など、子どもと一緒に鳴らせる楽器を使う方法もあります。子ども自身が音を出すことで、受け身だった音楽活動が能動的なものに変わるのです。
テンポを変えて遊びに発展させる
同じ曲を速くしたり遅くしたりすることで、全く違う活動になります。「おかたづけのうた」を2倍速で歌うと、競争的な要素が加わり、片付けのスピードが上がります。逆に半分のテンポにすると、丁寧に整理する習慣がつきます。
この方法は特別な準備が不要で、保育士の判断で即座に実行できるのが利点です。
ただし、速すぎると焦りを生むため、子どもの様子を見ながら調整する必要があります。
若松正司 曲を使った保護者との連携
保育園で歌っている曲を家庭でも共有すると、子どもの安定につながります。
保護者との連携方法を具体的に示します。
連絡帳での情報共有のコツ
「今日は『ありがとうのまほう』を歌いました。お家でも『ありがとう』が増えるかもしれません」といった一文を添えるだけで、保護者の観察ポイントが生まれます。
さらに、歌詞カードのコピーを配布すると、家庭でも同じ歌を歌える環境が作れます。園と家庭で同じ歌を歌うことで、子どもは生活リズムをより確実に身につけられるのです。
これが基本です。
保育参観での実演
保護者が参加する行事で、若松作品を一緒に歌う時間を設けると効果的です。特に「手あらいシュッシュ」のような生活習慣の曲は、保護者にとっても実用的な情報になります。
ある保育園では、参観日に「おかたづけのうた」を保護者と一緒に歌ったところ、翌月のアンケートで「家での片付けがスムーズになった」という回答が68%を占めました。
保護者が曲を覚えることの効果が見えますね。
参観後に楽譜を配布するサービスも喜ばれます。
動画配信での活用事例
最近では、限定公開の動画で保育の様子を共有する園が増えています。若松作品を歌う場面を短く編集して配信すると、家庭での会話のきっかけになります。
ただし、著作権への配慮が必要です。JASRAC登録曲の場合、園内での使用は問題ありませんが、ネット配信には別途手続きが必要なケースもあります。不明な点は、日本音楽著作権協会に確認すると安心です。
JASRAC公式サイトでは、保育施設向けの著作権ガイドラインが公開されています。配信前にこちらを確認しておくと、トラブルを避けられます。
若松正司 曲選びで避けるべき失敗パターン
良かれと思って選んだ曲が、かえって保育の妨げになることがあります。
よくある失敗例から学びましょう。
歌詞の意味が年齢に合わない選曲
5歳児向けの歌詞を2歳児に歌わせても、内容が理解できず飽きてしまいます。若松作品には対象年齢の目安が楽譜に記載されているため、必ず確認してから選びましょう。
例えば「お友達と仲良く」をテーマにした曲でも、2歳児向けは「一緒に遊ぼう」程度のシンプルな内容ですが、5歳児向けは「相手の気持ちを考える」といった抽象的な概念が入ります。
この違いは重要です。
年齢に合わない曲は、子どもの興味を引けないだけでなく、発達の機会も逃してしまいます。
季節感を無視した選曲ミス
「雪だるまつくろう」を7月に歌っても、子どもはイメージできません。若松作品には季節の曲も多いため、時期を考えた計画が必要です。
ただし、季節の1〜2か月前から導入する方法は効果的です。11月から「お正月のうた」を少しずつ練習しておくと、12月には完璧に歌えるようになり、行事でも披露できます。
早めの準備がコツですね。
音域が広すぎる曲の選択
子どもの声域は大人より狭いため、音域が1オクターブを超える曲は歌いにくいのです。若松作品の多くは音域が狭く設計されていますが、一部に例外もあります。
楽譜を見て、最低音と最高音の差が10度以内の曲を選ぶと安全です。どういうことでしょうか? ピアノの鍵盤で言うと、「ド」から1オクターブ上の「ミ」までの範囲ということです。
音域が合わない曲を無理に歌わせると、子どもが音楽嫌いになるリスクもあります。
若松正司 以外の作曲家との組み合わせ方
若松作品だけに偏ると、音楽的な幅が狭くなります。
他の作曲家とのバランスが大切です。
中川ひろたか作品との使い分け
中川ひろたかさんは、若松正司さんと並んで保育音楽の二大巨頭と呼ばれています。中川作品は「遊び歌」が多く、体を動かす活動に適しています。一方、若松作品は「生活習慣」や「社会性」を育む内容が中心です。
午前中の活動では中川作品で体を動かし、午後の落ち着いた時間に若松作品を使うという組み合わせが効果的です。
このバランスが理想的ですね。
わらべうたとの併用
伝統的なわらべうたは、リズム感や言葉の響きを育てる効果があります。若松作品の現代的なメロディーと、わらべうたの素朴な音階を両方経験させることで、子どもの音楽的な引き出しが増えます。
例えば「ずいずいずっころばし」のようなわらべうたを週1回、若松作品を週4回という頻度で組み合わせると、変化のある音楽環境が作れます。
クラシック音楽を午睡時に活用
午睡時にはクラシックのオルゴールアレンジを流し、活動時間に若松作品を使うという切り替えも有効です。音楽の役割を明確に分けることで、子どもは場面に応じた行動を学びます。
つまり「この音楽が流れたら寝る時間」という条件付けができるということです。
若松正司 曲の著作権と使用範囲の注意点
保育現場での音楽使用には、著作権の理解が欠かせません。トラブルを避けるための基礎知識を整理します。
園内での演奏と複製の範囲
保育園・幼稚園内で保育士が歌う行為は、営利目的でなければ著作権法第38条により許諾不要です。また、楽譜のコピーも、保育に必要な範囲であれば許容されるケースが多いです。
ただし「必要な範囲」の解釈は慎重に行う必要があります。クラス人数分のコピーは問題ありませんが、全園児の保護者に配布するのは範囲を超える可能性があります。判断に迷う場合は、出版社に問い合わせると確実です。
発表会やYouTube配信の扱い
保護者のみが参加する発表会は園内使用の延長と見なされますが、一般公開するイベントや、YouTubeなどでの配信は別の扱いになります。これらの場合、JASRACへの申請と使用料の支払いが必要です。
使用料は1曲あたり年間数千円程度ですが、配信規模によって変動します。いきなり配信して後から請求が来る事態を避けるため、事前の確認が必須です。
CDやストリーミングサービスの利用
市販のCDを園内で流すことは問題ありませんが、複製して複数の保育室で同時に使用することは違法になります。各保育室で使いたい場合は、必要枚数のCDを購入するか、ストリーミングサービスの施設向けプランを契約する方法があります。
最近では、保育施設向けの定額音楽サービスも登場しています。月額5,000円程度で若松作品を含む多数の楽曲が使い放題になるため、コスト面でもメリットがあるのです。
これは使えそうです。
若松正司 曲を使った年間計画の立て方
場当たり的な選曲ではなく、年間を通した計画を立てると、子どもの成長に合わせた音楽教育ができます。
4月〜6月の導入期プラン
新しいクラスがスタートする時期は、クラスの一体感を作る曲を中心に選びます。「みんなでおはよう」「なかよしのうた」など、協調性を育む内容が適しています。
この時期は同じ曲を毎日繰り返すことで、安心感と所属意識が生まれます。
最低4週間は同じ曲を続けるのが原則です。
7月〜9月の発展期プラン
クラスに慣れた時期には、動きのある曲や楽器を使った活動を増やします。「夏祭りわっしょい」「海の生き物ダンス」など、季節感のある曲で変化をつけましょう。
また、この時期から子ども主体の選曲を取り入れる方法も有効です。「今日はどの歌がいい?」と問いかけ、3つの選択肢から選ばせると、自主性が育ちます。
10月〜12月の充実期プラン
運動会や発表会に向けた準備期間です。若松作品の中から、複数人で役割分担できる曲を選ぶと、協力する経験ができます。「森のコンサート」では、歌うグループと楽器を担当するグループに分かれることで、役割意識が生まれるのです。
発表会の2か月前から練習を始めると、無理なく完成度を高められます。
1月〜3月のまとめ期プラン
1年間で歌った曲を振り返り、お気に入りの曲を再度歌う時間を作ります。子どもたちが成長を実感できるだけでなく、保育士自身も1年の保育を振り返る機会になります。
3月の終わりには「さよならのうた」など、別れと出会いをテーマにした曲で、進級への気持ちを整えましょう。
区切りをつけることが大事ですね。
若松正司さんの曲は、保育現場で即戦力になる実用性と、子どもの発達を支える教育的価値を両立させた作品群です。単に「楽しい歌」として消費するのではなく、年齢・場面・目的に応じて戦略的に選ぶことで、その真価が発揮されます。
保育士の皆さんが日々の実践で感じる「この曲、子どもたちに響いているな」という手応えは、若松作品の緻密な設計によるものです。今回紹介した選曲のポイントや活用法を参考に、ぜひ明日からの保育に取り入れてみてください。
子どもの成長は、日々の小さな積み重ねから生まれます。音楽という楽しい入口から、生活習慣や社会性を育てていく若松メソッドは、忙しい保育現場において、効率と効果を両立させる強力な味方になるでしょう。


