季節の歌と保育園と行事
季節の歌の保育園行事のねらい
行事で季節の歌を扱う最大の利点は、「その日だけのイベント」を子どもの生活や遊びに接続できる点です。厚生労働省の保育所保育指針でも、保育は生活の連続性や季節の変化などを考慮して計画することが示されています。そこに歌を置くと、季節の変化(寒い・暑い・花が咲く・暗くなるのが早い等)を、子どもが言葉と身体感覚でつかみやすくなります。
参考:保育所保育指針本文(計画・生活の連続性、季節の変化に配慮する旨)
また、季節の歌は「歌唱の完成」を目標にしなくても成立します。保育所保育指針の「表現」では、音楽やリズム、歌、手遊び等を楽しむことが内容として挙げられており、日常の遊びの延長線で十分に価値が出ます。つまり、行事に向けて“仕上げる”よりも、行事までの過程で繰り返し味わうことで、子どもが安心して参加しやすくなります。
ポイントは、行事のねらいを「見せる発表」に寄せすぎず、「経験の共有」に置くことです。例えば入園式なら「先生・友だち・場所に親しむ」、七夕なら「空・夜・願いといったイメージを広げる」、運動会なら「拍や合図に反応して動く楽しさ」など、歌が担えるねらいは多様です。
さらに意外に効くのが「歌=気持ちの切り替え装置」という視点です。行事の緊張、いつもと違う人の多さ、衣装や移動など、子どもは情報量が増えると疲れます。短い季節の歌や手遊び歌を“合図”として固定すると、集団の見通しが立ち、情緒が落ち着きやすい運用になります。
季節の歌の春夏秋冬と行事
春夏秋冬を「行事の前後」で捉えると、同じ季節でも歌の役割が変わります。例として、春は入園・進級という“関係づくり”が核になりやすく、春の歌は自己紹介・呼名・あいさつと相性が良いです。実際に4月の入園式・進級式に向けた歌として「先生とおともだち」や「入園のうた」などが紹介されており、新生活の不安を和らげる意図が読み取れます。
参考:4月の歌(入園式・進級式の文脈と選曲例)

夏は七夕・水遊び・夏祭りなど「環境(自然現象)への興味」を広げやすい季節です。歌の選び方としては、暑さや水だけに寄せず、「夕方の空」「虫の声の前段階」「風」など、時間帯の変化を含む歌を混ぜると、子どもの観察が深まります。行事当日だけでなく、前週に“散歩で見つけたものを歌に重ねる”と、歌が図鑑のように働きます。
秋は運動会・遠足・芋掘り・お月見・敬老の日など、行事が“収穫”と“身体”に集約しやすい時期です。歌も、テンポが安定したもの(歩く・並ぶ・手拍子)を選ぶと、移動や整列がスムーズになります。さらに、月や虫など抽象度が上がるモチーフを入れると、3~5歳児のイメージ表現を引き出しやすいです(虫の声を言葉でまねる、月の形を身体で表す等)。
冬はクリスマス会・発表会・お正月・節分など、園内での“文化・伝統”に触れやすい季節です。12月の歌は、クリスマス曲に偏りがちですが、冬の自然(雪、北風、たき火等)と行事(年末の雰囲気)を並走させると、季節理解が立体になります。12月に楽しめる歌として、冬やクリスマスの歌が年齢別でまとまっている例もあり、クラス運用の参考になります。
参考:12月の保育園で楽しめる歌(年齢別の例)
ここで「意外な情報」として押さえたいのは、“季節の歌=四季のイベント曲”に限定しないことです。保育所保育指針では、地域の生活や季節の行事に興味・関心をもつことも示されており、園外の地域行事(地域祭り、商店街の飾り、地域の防災訓練等)も、季節の歌の題材になりえます。園の行事が少ない月ほど、地域の季節感を拾うと年間の歌が途切れません。
季節の歌の保育園行事の選び方
選曲のコツは「歌いやすさ」だけでなく、「子どもの体験とつながる言葉が入っているか」で判断することです。保育所保育指針の乳児保育では、保育者の語りかけや歌いかけ等への応答が、言葉の理解や発語の意欲につながると示されています。つまり、乳児ほど“歌を聴いて覚える”より、“歌に応答して関わる”方が主目的になります。
参考:保育所保育指針(歌いかけ等への応答、表現領域の記載)
具体的には、同じ季節でも次のように“行事の場面”で歌を使い分けると、選曲が楽になります。
【行事の場面別:選曲の基準】
- 🎤導入(集まる・始まる):短い、繰り返し、合図が明確(名前・挨拶・手拍子)。
- 🌿体験(見る・触れる・動く):季節語が具体的(花、風、雨、雪、虫、月など)で、実物に結びつく。
- 🎪当日(人が多い・緊張):歌詞が長すぎない、音域が広すぎない、失敗しても崩れない構造。
- 🧩振り返り(思い出す):行事で見たもの・したことが想起できる言葉が入る、会話に展開できる。
そして、園児の発達に合わせて「歌い方」を変えるのも重要です。0~2歳児では、全部を歌わせるより、フレーズの最後だけ一緒に言う・身振りだけ参加するなど、参加形態を広く取る方が成功しやすいです。3~5歳児では、強弱や速さの変化、掛け合い、隊形移動(輪・2列)などを入れると、行事らしさが出ます。
注意点として、ブログ記事では歌詞の全文掲載を避け、曲名やねらい、活動の流れ、アレンジ方法(手遊び・導入トーク)を中心に書くのが安全です。学校向けの説明ではありますが、歌詞を無断で載せるのは認められない旨の注意喚起があり、園の発信でも同様のリスク意識が必要です。
参考:学校のホームページで歌詞掲載は手続きが必要(JASRAC)
季節の歌の保育園行事と著作権
保育園行事で歌うだけなら問題になりにくいケースでも、「ブログに載せる」「配信する」「歌詞カードを保護者へ配布する」「動画を公開する」など、外部公開が絡むと著作権の論点が変わります。JASRACの教育機関向け案内では、授業の過程で一定条件を満たす利用は許諾なく可能な場合がある一方、学校のホームページで歌詞を掲載する場合には手続きが必要と明記されています。園ブログも“ホームページ上の公開”に近いため、歌詞の掲載や音源の利用は慎重に扱うべきです。
参考:学校など教育機関での音楽利用/学校のHPで歌詞掲載は手続きが必要(JASRAC)
また、見落としがちなのが「替え歌」の扱いです。教育芸術社の著作権Q&Aでは、無断で歌詞を変えることは同一性保持権や翻案権を侵害するおそれがある旨が示されています。園内で口頭で楽しむ範囲と、配布物・動画・投稿として残す範囲は分けて考えると安全です。
参考:無断で歌詞を変えることのリスク(教育芸術社 著作権Q&A)

さらに「意外と危ない運用」が、発表会や行事の動画をオンラインで共有するケースです。オンライン配信では許諾が必要になる場合があるという整理もあり、録画・配布・配信のどれを行うかで手続きが変わります。園の実務では、現場判断で進みがちなので、園の規程(保護者共有の範囲、SNS投稿可否、BGMの扱い)を先に確認しておくと、後戻りが減ります。
参考:行事と配信で著作権の扱いが変わる(解説記事)
【学校行事と配信】先生教えて!学校で迷わないための著作権の話…
最後に、ブログ記事で実務的に役立つ書き方の工夫を置きます。
【ブログで安全に価値を出す書き方】
- 📝歌詞は載せない:代わりに「ねらい」「活動手順」「声かけ例」「振り付けのポイント」を書く。
- 🎶曲名+季節+行事:例「4月 入園式」「12月 クリスマス会」のように、探している保育者が着地しやすい言葉で整理する。
- 👀観察ポイントを添える:例「サビで声が出る子/手が止まる子」「緊張時に目線が上がる子」など、行事の記録にもつながる観点を書く。
- 😊絵文字は合図として使う:導入(🔔)、移動(🚶)、手拍子(👏)など、意味が伝わるものだけに絞る。


