ユニゾンと保育と合唱
ユニゾンの保育の合唱で音程とピッチ
ユニゾンは「全員が同じメロディー」を歌うので簡単に見えますが、実際は合唱に必要な力が最も凝縮される練習領域です。
合唱の現場では、ユニゾンの理想は「30人で歌っていても1人で歌っているように聞こえる」状態で、誰かの声が飛び出さず、声が一つに溶けることが重視されます。
この「溶ける」ための条件は、単に音程が合うだけでなく、ピッチ感(高さの中心のそろい方)も一致していることがポイントだと整理されています。
保育の合唱で起きやすいのは、次のような“ズレの種類”が混在することです。
- 音程のズレ:狙った音から高い・低い。
- ピッチのズレ:音は合っているつもりでも、全体の「中心の高さ」がじわっと上がる/下がる。
- 声質のズレ:一人だけ硬い声・強い声で、音は合っても混ざらない。
意外と見落とされやすいのは、音程を直そうとして「もっと大きな声で」と言うほど、子どもが力んで耳が働かなくなり、ピッチが余計に散ることです。
参考)SHOWROOM
保育の現場向けには、まず「聞こえる声」「やさしい声」に寄せる声かけへ変えるほうが、結果として音程もそろいやすいという指摘があります。
参考)https://www.apda.jp/pdf/p01_jinkou/pop_no66_jp.pdf
すぐ使える声かけ例(言い換え集)
- 「大きな声で!」→「お口をしっかり開けよう」
- 「もっと元気に!」→「まあるい、やさしい声で」
- 「音程合ってない!」→「お友だちの声を聞きながら、同じところにのせよう」
ユニゾンの保育の合唱で発声
保育者の発声は、子どもの歌唱に直接影響します。日々「歌う・読み聞かせ・注意喚起」などで声を酷使しやすく、無理な発声が続くと声帯に負担がかかり得るため、基礎的な発声の理解が重要だとまとめられています。
また、声は主に「呼吸」「声帯の振動」「共鳴」の三要素で成り立つという整理があり、保育者がこの仕組みを知った上で無理のない声を出すことが、子どものモデルにもなります。
現場で“効く”発声の整え方は、「専門家のように鍛える」より、毎日の保育の中で再現できる形に落とすことです。
例えば、腹式呼吸は吐く息のコントロールがしやすく、長いフレーズや声の安定に有利だと説明されています。
さらに共鳴は、喉頭原音を口腔・鼻腔などの共鳴器官で響かせることで、声帯の負担を減らしつつ通る声につながる、という考え方です。
保育合唱向け「発声づくり」ミニ練習(短時間でできる版)
- 朝の会前に20秒:歯を軽く開けてハミングで「んー」を短く(共鳴の入口づくり)。
- 歌い出し直前:最初の1音を保育者が「聞き取りやすい声」で提示し、子どもは真似る(入口の高さを固定)。
- 伴奏の音量:ピアノを大きくし過ぎない(伴奏が大きいと子どもが怒鳴りやすい要因になり得る)。
「意外な落とし穴」として、子どもが怒鳴って歌う背景には、保育者の「元気よく大きな声で歌いましょう」という声かけが、子どもに“怒鳴る声=元気”と誤学習される可能性がある、という指摘があります。
ここは指導の工夫で改善しやすく、否定から入らず「もっと上手になれる方法を知ってるよ」という形で導く具体例も紹介されています。
参考:幼児期の発声・歌唱指導、怒鳴り声の要因、声域、伴奏バランスの考え方
幼児期における発声と歌唱指導(幼児の声域、怒鳴り声の要因、発声の仕組み、保育者の声の扱い)
ユニゾンの保育の合唱で聞き取りやすい声
保育でユニゾンをそろえる最短ルートは、「大声」より「聞き取りやすい声」を全員の基準にすることです。
保育者側の工夫として、歌手のような声でなくても「口をしっかり開ける」「お腹から声を出す」ことで、子どもに届く自然で聞き取りやすい声になるという整理があります。
また、保育者の体の向き、子どもの立ち位置、ピアノ音量の配慮も“聞こえやすさ”に直結するとされています。
聞こえ方が整うと、ユニゾンの誤差が減る理由はシンプルです。
- 子どもが「自分の声」だけでなく「周りの声」を材料にできる。
- 先生のモデルが明瞭だと、真似が正確になりやすい。
- 言葉が明確だと、リズムもそろいやすい(言葉の頭がそろう)。
ユニゾンは「誰かの声が飛び出して聞こえてはいけない」「みんなの声が一つに溶け合う」ことが重要だという説明があり、聞き取りやすさは“溶ける”ための前提条件になります。
保育の合唱では、個々の声量差が出やすいので、「みんな同じくらいの“聞こえやすさ”」を目標にすると、飛び出しが減りやすいです。
すぐにできる環境調整(チェックリスト)
- 子どもを半円にする(中央に音が集まり、聞き合いが起きやすい)。
- 先生はピアノの横で正面を向きすぎない(子どもに声を届ける向きにする)。
- 「大きい声」指示を封印し、「口の形」「にこにこの声」など質の指示に置換する。
参考:保育園での歌の教え方(導入、声かけ、聞き取りやすい声、視覚的な要素)
保育園での歌の教え方(選曲・導入・声かけ・聞き取りやすい声のポイント)
ユニゾンの保育の合唱で導入と練習
保育園で歌を教える導入は、いきなり全曲練習よりも「興味を引き出す」「まずは保育者が歌う」「少しずつ区切って一緒に歌う」という段階設計が有効だとまとめられています。
特に節ごとに区切り、歌詞の内容や意味を説明しながら歌うと、子どもが覚えやすいとされています。
長い曲は何日かに分けて少しずつ教えると、飽きにくくスムーズという提案もあります。
ユニゾンの合唱練習に落とすなら、導入は次の順が扱いやすいです。
- イメージ提示:絵カードやペープサートで情景を共有する(歌詞の世界をそろえる)。
- モデル提示:保育者が心を込めて歌い、サビから入るなど印象を残す。
- 分割ユニゾン:1フレーズずつ全員で同じ言葉をそろえる(音程より言葉の頭をそろえる)。
- つなげる:最後に通して歌い、おさらいする。
ここでの“あまり知られていない効き方”は、音程指導を先にしないことです。合唱の考え方として、ユニゾンは「音程」だけでなく「声が溶ける」「飛び出さない」ことが要で、まず混ざりを作ると結果的に音程も整いやすい、という捉え方が示されています。
保育の合唱で音程が揃わないときほど、いったん声量を落として「聞き合い」を戻すほうが、練習時間が短く済むケースが出てきます。
練習メニュー例(発表会前の5日間プラン)
- 1日目:サビだけユニゾン、絵カードで意味共有。
- 2日目:Aメロを2フレーズずつ区切り、最後にサビへ接続。
- 3日目:通し1回→難所だけ繰り返し(「もぞもぞ」を見つけた箇所)。
- 4日目:立ち位置・向き調整、ピアノ音量を小さめにして聞き合いを作る。
- 5日目:本番想定で1回、終わったら「よかった混ざり」を言語化して共有(次の再現性を上げる)。
ユニゾンの保育の合唱で環境(独自視点)
検索上位で語られやすいのは「発声」「音程」「教え方」ですが、保育の合唱でユニゾンが崩れる根本原因は、実は“音楽の問題”ではなく「環境の音設計」になっていることが少なくありません。
具体的には、周囲が騒がしい→伴奏が大きくなる→子どもが負けないように怒鳴る→聞けなくなる→ピッチが散る、という連鎖が、怒鳴り声の要因として整理されています。
つまり、技術指導の前に「怒鳴らなくて済む環境」を作ることが、ユニゾン改善の近道になります。
独自視点として提案したいのは、合唱の時間を「静けさの演出」から始めることです。
- 合図(鈴・手拍子1回など)で“音の密度”を下げる。
- 伴奏はあえて小さく入り、子どもの声が聞こえる状態を作る。
- 先生の声も小さめの“通る声”で始め、子どもが耳を使う方向へ誘導する。
このアプローチは、「むやみに大きな音で伴奏を弾かない」「環境作りができていないと子どもが怒鳴る要因になる」という指摘と整合します。
さらに、保育の歌の教え方として「雰囲気作り」や「正しさにこだわりすぎない」ことも大切だとされており、環境から整えるのは実務的に相性が良いです。
ユニゾンの理想が「一つに溶ける」ことだとするなら、音程修正の言葉を増やすより、溶ける条件(聞こえる・怒鳴らない・飛び出さない)を先に揃えるほうが、保育現場では再現しやすいはずです。
現場で使える「環境づくり」ミニ表
| 困りごと | 起きやすい原因 | 手直し |
|---|---|---|
| 声が大きすぎてバラバラ | 「大きな声」声かけ/伴奏が大きい | 「口を開ける」へ言い換え、伴奏音量を下げる |
| 音程が上ずる | 力みで聞けない | “やさしい声”で入り、聞き合いを戻す |
| 言葉がそろわない | 聞き取りにくいモデル | 保育者が聞き取りやすい声で提示し、フレーズ分割で練習 |


