横割り保育のメリットとデメリットを保育士が徹底解説

横割り保育のメリットとデメリットを保育士の視点で整理する

横割り保育が「安全で効率的」と思っているなら、3月生まれの子が自己肯定感を失うリスクを見落としているかもしれません。

この記事のポイント3つ

横割り保育の基本とねらい

同年齢でクラスを構成する横割り保育の仕組みと、保育所保育指針に基づくねらいを整理します。

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メリットとデメリットの両面

発達段階に応じた保育のしやすさというメリットと、月齢格差・人間関係の固定化というデメリットを具体的に解説します。

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縦割り保育との組み合わせ方

横割り保育単独ではなく、縦割り保育を部分的に取り入れることで両方のメリットを活かす実践的な方法を紹介します。

横割り保育とは何か?縦割り保育との違いと基本のねらい

 

横割り保育とは、同じ年度に生まれた子どもたち(同学年・同年齢)を同じクラスにまとめて保育する方法です。日本の保育園・幼稚園・認定こども園の多くが、この横割り保育を基本形態として採用しています。たとえば「0歳児クラス」「1歳児クラス」「2歳児クラス」というように、年齢でクラスを「横に切る」イメージから「横割り」と呼ばれます。

対して縦割り保育異年齢保育)は、複数の年齢を1つのクラスに混在させる方法です。この2つを比較することで、横割り保育の特徴がより明確になります。

横割り保育の主なねらいは3点あります。

  • 発達段階に合った活動の提供:同じ年齢の子どもたちは、運動能力・言語発達・認知能力がある程度近い水準にあります。そのため、一斉活動や製作、絵本の読み聞かせなどを年齢に合わせて計画しやすくなります。
  • 安全な環境の確保:特に0〜2歳児は月齢による体格差・体力差が非常に大きいです。同学年でまとめることで、体格の大きな子に小さな子が巻き込まれるリスクを最小限にできます。
  • 同年齢ならではの仲間関係の形成:近い発達段階にある子ども同士だからこそ生まれる競い合い・助け合い・共感の経験は、横割り保育ならではの豊かな育ちにつながります。

保育所保育指針(厚生労働省)でも、子どもの発達過程を踏まえた保育の重要性が強調されており、横割り保育はその基本的な枠組みとして機能しています。

横割りか縦割りかという二項対立で語られることが多いですが、実際にはどちらが「正解」というわけではありません。大切なのは、自分たちの園が目指す保育理念に沿って、それぞれの形態の特性を理解した上で選択・運用することです。

こども家庭庁:保育所保育指針(PDF)|発達段階に応じた保育の基本方針が確認できます

横割り保育のメリット|保育士が現場で実感できる5つの強み

横割り保育には、保育士にとっても子どもにとっても明確なメリットがあります。以下に、現場での実感と合わせて整理します。

① 指導計画・指導案が立てやすい

同年齢のクラスでは、発達の目安がある程度そろっています。3歳児クラスであれば「友達と一緒に簡単なルールのある遊びを楽しむ」「自分の気持ちを言葉で伝えようとする」といったねらいを設定しやすく、月案・週案・日案を一貫した流れで作成できます。これは指導案作成の効率化に直結する点です。

異年齢が混在するクラスでは、年齢ごとに異なるねらいを同時に意識しなければならず、計画立案の複雑さが増します。横割り保育ならクラス全体に共通のねらいを持ちやすい、これが基本です。

② 安全面での配慮がしやすい

0歳児は寝ているか、やっとお座りができる時期。2歳児はよちよち歩きから走り回る段階へと移行します。同学年でまとめることで、活動の強度や遊具の選定が均一化でき、事故リスクを大きく下げられます。

たとえば1歳児クラスでは、誤飲防止のため直径3.2cm以下の小さなパーツのおもちゃを排除する基準を一律に設けやすくなります。縦割り保育では5歳児が使う細かいパーツを1歳児が触れてしまうリスクへの対処が常に求められます。安全対策が明確、これは大きな強みです。

③ 月齢に近い子ども同士の仲間意識が生まれやすい

同じくらいの発達段階にある子どもたちは、同じことに興味を持ちやすく、遊びのシーンでの「共鳴」が起きやすい傾向があります。2歳児クラスであれば、並行遊びから協同遊びへと発展する過程を同じクラスの子ども全員が経験する時期と重なります。

お互いの気持ちが分かり合いやすく、ケンカも仲直りも繰り返しながら、同年齢ならではの濃い仲間関係が育まれます。いいことですね。

④ 担任保育士の専門性を年齢ごとに深化させやすい

「3歳児担任を5年間続けている」という保育士の場合、3歳児の発達特性・よく起こるトラブル・効果的な言葉がけのパターンなどについて、深い専門知識を積み上げられます。横割り保育では、特定の年齢クラスを継続的に担当することで実践的な専門性が育ちやすくなります。

⑤ 保護者との連携がとりやすい

「○歳児クラスの担任」という明確な役割分担のもと、保護者に年齢に応じた発達の見通しを伝えやすくなります。懇談会や個人面談でも、同学年の子どもたちの発達の目安を共通の言葉で伝えられるため、保護者との信頼関係を築きやすいという側面があります。

横割り保育のデメリット|見落とされがちな3つの落とし穴

横割り保育にはメリットが多い一方で、現場では意外と見落とされがちなデメリットが存在します。これらを知らずにいると、子どもの育ちに悪影響が出てしまうこともあります。

落とし穴① 4月生まれと3月生まれの「約1年の発達差」が生む格差

横割り保育の最大の盲点がこれです。同じ「4歳児クラス」に在籍していても、4月2日生まれの子と3月31日生まれの子では、実質的に約1年もの月齢差があります。これは幼児期には非常に大きな差です。

研究でも、同学年内で4月生まれの子どもは3月生まれの子どもより算数の偏差値が平均3.5ポイント高いというデータがあります(東京大学など複数の研究より)。さらに、早生まれの子(1〜3月生まれ)は学年内での「できない経験」が積み重なることで、自己肯定感が低下しやすい傾向があることも指摘されています。

横割り保育の中では、この月齢差が「クラスの中でいつも遅れている子」という固定したキャラクターを生み出してしまうリスクがあります。低月齢児はいつまでたっても低月齢児、という状態になりがちです。

この問題に気づいた保育士がとれる対策のひとつは、月齢を踏まえた個別の声がけと評価です。「○○くん、前よりずっと上手になったね」という個人内成長への言及を意識することで、低月齢児の自己肯定感を守ることができます。個々の成長過程に合わせた対応が原則です。

落とし穴② 人間関係・キャラクターが固定化されやすい

横割り保育では、同じメンバーで1年間(場合によっては数年間)過ごすため、人間関係が固定化しやすい傾向があります。「〇〇ちゃんはリーダー、△△くんはいつも引っ張り回される役」という役割が固まってしまうことがあります。これは結構やっかいです。

一度固定したキャラクターから抜け出せず、自分の可能性を狭めてしまう子どもが出てくることも。特に保育園生活が長くなると、年長になっても「〇〇ちゃんは泣き虫だから」という先入観が取れないケースが現場でも見られます。

対策として、座席配置や活動グループを定期的に入れ替えることが有効です。また、行事や特定の活動のときだけ年齢を混ぜるなど、部分的に縦割り保育を取り入れることで、新しい人間関係の可能性が広がります。

落とし穴③ 同年齢だからこそ生まれる「過剰な競争意識」

発達水準が近い子どもたちが集まると、良い意味での競い合いが生まれる一方で、勝ち負けへの過剰なこだわりや、友達を意識した不安感が生まれやすい側面もあります。

縦割り保育では年齢差があるため、競争よりも役割(お兄さん・お姉さん、教える側・学ぶ側)が自然に生まれます。一方横割り保育では「同じ土俵に立っている」という意識が強くなり、自分がうまくできないことへの劣等感が出やすくなることがあります。

これは健全な競争心を育てるプラスの面もありますが、特に3歳児前後では感情の調整がまだ未熟なため、友達との比較でひどく落ち込む子が出ることに注意が必要です。

横割り保育が向いている場面・向いていない場面|保育士が判断するポイント

横割り保育がすべての場面で最適というわけではありません。向いている場面と向いていない場面をきちんと理解しておくことが、質の高い保育につながります。

横割り保育が特に力を発揮する場面

場面 理由
設定保育(製作・体操・音楽など) 発達段階が近いため、同じ指示・素材で活動を進めやすい
0〜2歳児の生活場面(授乳・食事・午睡) 月齢による生活リズムの差が大きいため、同学年での個別対応が現実的
発達相談・個別支援の記録 同年齢の発達基準と比較しやすく、気になる子どもへのサポートが判断しやすい

横割り保育だけでは難しい場面

場面 理由
朝・夕の少人数時間(延長保育など) 人数が少なくなるため、異年齢混合の方が自然な形になる
社会性・思いやりを特に育てたい活動 年上・年下の役割が生まれる縦割り環境の方が効果的
人間関係がマンネリ化しているとき 異年齢交流で新鮮な刺激と関係性のリセットが期待できる

保育士として大切なのは、「うちの園は横割りだから」と思考を止めないことです。横割り保育を基本形態にしながら、特定の時間帯・活動・行事のときだけ縦割り保育を組み込む「ハイブリッド型」が、多くの現場で実践されています。つまり、二択ではないということです。

たとえば、朝の自由遊びの時間は異年齢で過ごし、設定保育の時間は横割りクラスで活動するという方法は、横割り・縦割りそれぞれのメリットを最大化しやすいと現場でも評判です。自分の園の現状と照らし合わせて確認する、そのことが大事です。

ほいきゃり:縦割り保育(異年齢保育)のねらい・メリット・デメリットを保育士向けに解説

横割り保育の質を上げる「独自視点」|低月齢児への意図的な肯定的フィードバック設計

一般的な横割り保育の解説ではほとんど触れられていませんが、現場で横割り保育の質を高める鍵のひとつが「低月齢児への意図的な肯定的フィードバック設計」です。これは知ってると得します。

横割り保育では、4月〜9月生まれのいわゆる「遅生まれ」の子どもと、10月〜3月生まれの「早生まれ」の子どもが同じクラスに混在します。発達研究によると、早生まれの子は遅生まれの子よりも非認知能力(自己肯定感・自己効力感・粘り強さ)が平均的に低くなる傾向があることがわかっています。

これは横割り保育の「仕組み」が生んでいる側面があります。同年齢の子どもたちと常に比べられる環境に置かれた低月齢児が、「自分はできない」という経験を積み重ねやすいからです。これは防げる問題です。

対策として有効なのが、個人内成長への具体的な言及です。「〇〇くん、先週は一人でできなかったボタンが今日は全部できたね!」というように、他の子との比較ではなく「昨日の自分との比較」で子どもを評価する声がけを習慣にします。これだけ覚えておけばOKです。

さらに実践的な工夫として、低月齢児の子どもに「教える役割」を意図的に与えることも効果的です。たとえば、低月齢児が得意な遊び(絵を描く、歌を歌うなど)を活動に取り入れ、その子が「できる」「得意」を発揮できる場をつくります。横割り保育の中でも、意図的な環境設計によって低月齢児の自己肯定感を守ることは十分可能です。

この視点は、保育所保育指針が求める「一人一人の子どもの発達過程を踏まえ」た保育の実践にも合致しています。横割り保育だから画一的、ではなく、横割り保育の中でこそ個別対応の丁寧さが問われると言えるでしょう。

担任同士でこの視点を共有するためには、クラス内の生まれ月リストを活動計画の際に参照する習慣をつけることが手軽です。低月齢の子を把握した上で配慮を計画に組み込む、それだけで保育の質は変わります。

保育R:早生まれ・遅生まれの発達差への保育士の対応ポイントまとめ

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