山田耕筰 保育園 童謡
山田耕筰 保育園 童謡 この道の背景と歌い方
保育園で「この道」を扱うとき、最初に押さえたいのは“童謡=簡単”とは限らない点です。ピティナ(ピアノ曲事典)の解説では、《この道》は1927年2月24日作曲で、詩は前年1926年8月に雑誌『赤い鳥』で発表されたこと、さらに『童謡百曲集』第3集の第47曲として収録され1927年11月15日に出版されたことが示されています。
また同解説では、歌唱音域が非常に広く、強弱記号が細かく、言葉に沿うように拍子を変化させる書法が使われている点が述べられています。
この情報を保育に翻訳すると、ポイントは「完成形の合唱」を目標にしないことです。たとえば次のように“部分参加”の設計へ落とし込みます。
・導入:保育者が1番のみ提示し、子どもは「この道は いつか来た道」のフレーズだけ参加(短い反復で安心感を作る)
・展開:歌詞の名詞(道/丘/時計台)をカードや簡単な絵で見える化し、歌う前に「どんな景色?」を一言ずつ出してから歌へ戻る
・発展:強弱の指示が細かい作品特性を利用し、「小さな声の“ああ”」「大きな声の“そうだよ”」のように“言葉だけ”でダイナミクス遊び
さらに「この道」は、言葉のアクセントに沿って旋律が形作られるという特徴が解説されています。
そのため、歌が不安定なクラスでは、いきなり音程を追うよりも「朗読→リズム読み→最後に旋律」の順にすると、言葉とメロディの接続が滑らかになります。
参考:楽曲の成立(作曲日・出版)と、童謡でも音域が広いこと、言葉に沿う拍子変化など“保育での扱い方”の根拠

山田耕筰 保育園 童謡 からたちの花の情景あそび
「からたちの花」は、冒頭の情景が非常に強く、保育園では“歌う前の体験”を作りやすい曲です。ピティナ(ピアノ曲事典)の作品紹介では、《からたちの花》は1925年に北原白秋の詩に作曲されたことが示されています。
保育の導入としては、歌唱以前に「白い花」「垣根」「とげ」といった語を、子どもが触れる活動へ置き換えるのが効果的です。たとえば以下のような展開が考えられます。
・白い花:白い折り紙をちぎって貼り、壁面に“からたちの花”を作る(指先の活動にもなる)
・垣根:積み木やカプラで“道の脇の垣根”を作り、そこを通るごっこ遊びにする
・とげ:安全配慮を前提に「触ると痛い」「近づきすぎると困る」など、距離感・ルールの話題へつなげる
歌唱では、難しい音域や表情の幅に配慮して、フレーズを短く区切るのが現実的です。特に年少〜年中では「からたちの花が咲いたよ」を中心に“歌の核”を固定し、他の歌詞は保育者が歌って情景を保つ方法が安定します。
また、同じ“白秋×山田耕筰”の作品として「この道」と並べると、子どもが「同じ作曲家・同じ作詞家でも景色が違う」ことに気づけます(曲紹介の言葉が増えると、歌の時間が“鑑賞”に寄りすぎる懸念があるため、紹介は短く・体験は長くがコツです)。
参考)童謡百曲集 15. からたちの花/Nursery Songs…
参考:「からたちの花」が1925年の作品であること(曲紹介の根拠)
童謡百曲集 15. からたちの花/Nursery Songs…
山田耕筰 保育園 童謡 童謡百曲集と選曲のコツ
山田耕筰の童謡を調べていくと、「童謡百曲集」という大きなまとまりに行き当たります。ピティナ(ピアノ曲事典)の《この道》解説では、『童謡百曲集』第3集に収録され、同じ作品群には《赤とんぼ》など代表曲が含まれることが述べられています。
保育園での選曲は、「有名曲かどうか」だけでなく「園の生活と接続しやすい語彙かどうか」で決まります。そこで、童謡百曲集の世界観を“保育の観点”で切り分けると実務に強くなります。
・季節語がはっきり:行事(秋・春)と結びやすい
・動作語が多い:手遊び・表現遊びへ落とし込みやすい
・情景語が中心:散歩や戸外活動の“言葉のストック”になる
一方で注意点もあります。童謡百曲集に収録される作品は「子どもが歌いやすい音域」に最適化されていない場合があります(少なくとも《この道》は音域が非常に広いと解説されています)。
そのため、現場では「原曲に忠実に」よりも、園児の発達段階に合わせた“歌い方の設計”が重要です。具体的には、
・キーを下げる(ピアノ伴奏なら移調しやすい)
・1番だけ歌う、またはサビ(印象句)だけ歌う
・歌唱より鑑賞中心にして、絵や動きで参加させる
などが現実的です。
さらに意外と効くのが、「山田耕筰の童謡は“大人が歌うと映える”作りでもある」という視点です。《この道》は童謡と呼ばれても、求める表現力が高いという説明があり、保育者の歌唱が“聴かせる教材”として機能しやすいタイプだと読み取れます。
つまり、子どもに100%歌わせるより、保育者の歌を核にして、子どもは情景づくりや部分参加で関わる――この設計が、山田耕筰作品では成果が出やすいです。
山田耕筰 保育園 童謡 著作権と園だよりの注意点
保育園で童謡を扱う際、現場トラブルになりやすいのが「著作権は“曲”だけではない」点です。ある解説記事では、山田耕筰作品は没後の保護期間満了により2016年1月1日からパブリックドメインとして扱えるようになった旨が述べられています。
また、ピティナ(ピアノ曲事典)の《この道》ページでは、著作権が「パブリック・ドメイン」と明記されています。
ただし、園の運用では次の3点を分けて確認する必要があります。
・曲(作曲者の権利):山田耕筰の曲はPDとして扱われる例がある一方、確認は資料に基づくのが安全です。
・歌詞(作詞者の権利):白秋など作詞者が別にいるため、曲がPDでも歌詞の扱いが同じとは限りません(「曲によっては歌詞が著作権保護されている場合がある」という注意喚起もあります)。
参考)【音楽】著作権フリー・著作権切れの日本の童謡一覧|パブリック…
・音源(演奏・録音物):YouTubeや市販CDの音源は別の権利が絡むため、「曲がPDだから動画をそのまま使える」とは言えません(園の動画配信・発表会DVD等では特に注意が必要です)。
園だよりでありがちなケースとしては、歌詞を全文掲載してしまうことです。安全策としては、
・歌詞を全文ではなく一部引用にとどめ、活動のねらい(情景/言葉)を書く
・歌詞の代わりに「今日歌った曲名」「印象に残った言葉」だけを載せる
・どうしても全文掲載が必要なら、権利状況を個別に確認する
が実務的です。
参考:山田耕筰作品のPD化(2016年)に触れている解説
参考:童謡でも「歌詞が著作権保護されている場合がある」等、利用時の注意点
【音楽】著作権フリー・著作権切れの日本の童謡一覧|パブリック…
山田耕筰 保育園 童謡 独自視点:言葉のアクセント遊び
検索上位の解説は「代表曲」「背景」「歌詞の意味」に寄りがちですが、保育現場で効くのは“音楽の作り”を遊びに変換する視点です。ピティナの《この道》解説には、8分音符に1字を当て、拍子を変化させて言葉に沿った旋律を作っている、という具体的な書法が書かれています。
ここから導けるのは、「山田耕筰の童謡は、言葉の言い方(アクセントや間)を大切にすると、子どもの声がそろいやすい」という実践的な仮説です。
そこで、歌唱指導というより“日本語あそび”として次を試すと、年齢差があっても成立します。
・アクセントまねっこ:保育者が「このみち」「いつかきたみち」を“言い方”だけ変えて提示し、子どもが面白い方を選んでまねる(音程不要)
・間(ま)ゲーム:「ああ/そうだよ」の前に、手拍子で1拍だけ“ため”を作る→一斉に言う(集団の同期が取りやすい)
・情景ことば集め:「道」「丘」「花」など、クラスの散歩で見たものを“この道ことば”として貼り出し、次回の歌の前に読む
この方法の利点は、音域が広く歌いにくい部分を「無理に歌わせる」方向へ行かないことです。《この道》は音域が非常に広いという説明があるため、年中以前でフル歌唱を狙うと“声が出ない子”が置き去りになりやすいですが、言葉遊びに変換すれば参加の入口を増やせます。
また、保育者にとっても「歌が得意でないと扱えない名曲」ではなく、「言葉の扱い方で成立する活動」へ変わるため、園内で共有しやすい実践になります。


