和太鼓わじんを保育士が活かす子どもへの効果と実践ガイド
和太鼓を見ているだけで、子どもの集中力は30分以上続く。
和太鼓わじん(和-jin)とはどんなグループか
「和太鼓 わじん(和-jin)」は、リーダー・伊藤芳陽を中心に2008年に創立されたプロ和太鼓パフォーマンスグループです。伊藤芳陽氏の父は和太鼓音楽集団「鼓代神」の宗家・伊藤芳男という和太鼓界の名家に生まれ、幼少期から和太鼓に親しんできた人物です。
グループ名「和-jin」は読んで字のごとく「わじん」と読み、「和(日本)の人」を意味しています。その名が示すとおり、日本の伝統的な和太鼓の持つ重低音を最大限に活かしつつ、現代的なパフォーマンスを融合させた舞台作りが大きな特徴です。
和-jinの最大の強みは、「音と光のイリュージョン」とも称される独創的なステージにあります。「立体的でダイナミックな重低音を!」というコンセプトのもと、曲作りからパフォーマンスまで、あらゆる工程で妥協しない姿勢を貫いています。
また、和太鼓界では初となる日本テレビのバラエティ番組レギュラー出演を果たし、全国的な話題を集めたグループでもあります。つまり、メディアで実績を積んだ本物のプロです。その知名度と実績を活かし、学校や保育・教育施設向けの公演活動にも精力的に取り組んでいます。
東京都教育委員会が主催する「笑顔と学びの体験活動プロジェクト」では、和-jinが複数の学校で公演を実施してきました。東京都立橘高等学校でも2023年12月に全3学年が「和-jin」の公演を鑑賞しており、子どもたちへの本物の芸術体験の場として高い評価を得ています。
なお、現在はグループとしての和-jinは解散し、代表の伊藤芳陽氏はその後、和太鼓グループ「和太鼓JZ(ジェイズ)」をプロデュースしながら、和太鼓教室や作曲サポート事業なども行っています。保育・教育現場とのつながりを大切にしている点は、和-jin時代から変わっていません。
和太鼓 PERFORMANCE GROUP 和-jin|株式会社重本音楽事務所(学校公演のプログラム内容や概要が確認できます)
和太鼓わじんの保育園向け公演プログラムの内容と特徴
和-jinの学校・保育施設向け公演は、約60分のプログラムが基本構成です。子どもたちが飽きないよう、演奏鑑賞だけにとどまらず、体験コーナーや楽器紹介など複数のコンテンツが組み合わされています。
主なプログラム内容を整理すると次のとおりです。
| 演目名 | 内容 |
|---|---|
| 息吹輝(いぶき) | 春の草木や花のような躍動感をリズムで表現 |
| KUW♂AGATA | クワガタの力強さを表現。左右対称の演奏でクワガタのシルエットを演出 |
| 幻光打(げんこうだ) | ブラックライトを使った音と光のコラボレーション |
| 楽器紹介・模範演奏 | メンバー紹介を交えながら様々な和楽器を紹介 |
| 体験コーナー | 希望する子ども数名が実際に和太鼓を体験 |
| ZUDON | 全員参加で「一体感」を楽しむコーナー |
| 響魂(きょうこん) | メンバーそれぞれの魂の響きを3尺の大太鼓で打ち鳴らすフィナーレ |
特に注目してほしいのが「体験コーナー」と「ZUDON」です。子どもたちが実際に太鼓のバチを握って演奏する体験コーナーは、鑑賞だけでは得られない「自分でもできた!」という喜びを与えてくれます。これは保育のねらいである「主体的に関わる力を育む」とも直結する内容です。
ZUDONは子どもたちが「みんなで楽しい気持ちで一つになる」ことを和-jinが独自に表現した概念で、集団の一員として参加する協調性を自然に体験できます。クラス全員で取り組める活動としても非常に適しています。
また、ブラックライトを使った「幻光打」は、視覚的な驚きが子どもたちの感性を大きく刺激するコンテンツです。音楽体験であると同時に芸術鑑賞体験ともなるため、保育の情操教育の場としても価値が高いといえます。
公演の監修は「生涯学習音楽指導員」資格を持つ重本昌信氏が担当しており、教育的な視点からも内容が設計されています。これは一般的な芸能公演とは一線を画した点です。
東京都教育委員会「笑顔と学びの体験活動プロジェクト」(和-jinも参加した東京都の体験プログラム事業の概要が確認できます)
和太鼓わじんの演奏が子どもの脳・体幹・協調性に与える科学的根拠
和太鼓の演奏が子どもの発達に良いということは、感覚的なイメージで語られることが多いです。しかし実際には、脳科学の研究からも複数のエビデンスが示されています。
まず脳への効果から見ていきましょう。和太鼓演奏では右手と左手が異なるリズムを刻みます。右手と左手のリズムが違うということは、脳の中で左右を同時にコントロールする必要があるということです。これが左脳と右脳を同時に刺激すると言われる理由です。さらに、和太鼓を叩くことで「酸素化ヘモグロビン」が脳内で増加することが科学的に証明されており、集中力の向上が期待できます。
体幹への影響も見逃せません。和太鼓演奏は全身を大きく動かす運動です。宝珠保育園(栃木県日光市)では、1曲8分に及ぶ演奏を週4回実施した結果、練習開始当初は「手が痛い」「足が痛い」と訴えていた子どもたちが、数か月後には演奏後も元気いっぱいになる姿が確認されています。この事実は「和太鼓=音楽」という固定観念を覆すものです。つまり、保育の体力づくりとしても機能するということです。
協調性の発達については、保護者からも実感の声が多く寄せられています。「引っ込み思案な子どもが、和太鼓を演奏するときは堂々としている」という保護者の声は、1件だけではなく多くの保育現場で繰り返し報告されています。人前で演奏する体験、失敗しても立て直す体験、仲間と音を合わせる体験、こうした積み重ねが子どもの自己肯定感を着実に引き上げます。
保育のねらいとして「リズム感・集中力を養う」「伝統楽器に触れる」「協調性を育む」が挙げられることが多いですが、和太鼓はそのすべてを一度に体験させられる稀有な活動といえます。これは大切なポイントです。
宝珠保育園「日光から世界に羽ばたく子どもへ!和太鼓教育」(和太鼓と脳科学・体力・自己肯定感の関係が保育現場の視点で詳しく解説されています)
和太鼓わじんの公演を保育現場で活かすための実践ポイント
「公演を依頼してみたいけれど、どう子どもたちに準備させればいいかわからない」という保育士の声は少なくありません。せっかくの公演も、事前準備なしでは子どもたちが十分に楽しめないことがあります。ここが重要なポイントです。
事前準備として最も効果的なのは、「和太鼓とはどんな楽器か」を絵本や動画でざっくり紹介しておくことです。たとえばYouTubeなどで和太鼓の演奏映像を1本見せるだけでも、子どもたちの「見たことある!」という親近感が生まれ、当日の集中力が大きく変わります。長い事前学習は不要で、5分程度の視聴でも十分です。
当日の座席配置にも工夫が必要です。演奏中に子どもが動き回ったり、隣の子と話し出すことを防ぐには、友だちとの距離を少し広めにとることが効果的です。クラスごとにきっちり並べるよりも、全体が「舞台を囲む形」で座れる配置にすると、子どもたちの臨場感が増します。
体験コーナーに参加する子どもを誰にするか、事前に決めておくことも大切です。その場で「やりたい人!」と聞くと、内気な子が参加できないケースが出てきます。「今日は○○くんと△△ちゃんが体験するよ」と前日に伝えておくだけで、その子どもの緊張が和らぎ、本番で堂々とした姿を見せてくれることが多いです。
公演後のふりかえりも保育の一部として活用できます。「どんな音が一番すごかった?」「叩いてみてどんな気持ちだった?」と子どもたちに問いかけることで、体験を言語化する力と感性の表現力が育まれます。感想を画用紙にお絵描きでまとめる活動に発展させることもできます。
保育士が知っておきたい和太鼓わじんとプロ公演の依頼方法と費用感
和-jinのような和太鼓パフォーマンスグループに保育・幼稚園が公演を依頼する場合、どのような手順を踏めばよいのかを整理しておきましょう。これは実際に動こうとすると意外と情報が少ない分野です。
主な依頼ルートは2種類あります。1つ目は制作会社・エージェント経由での依頼です。和-jinは株式会社重本音楽事務所が手がけており、学校公演専用ページから問い合わせが可能です。公演の内容や費用についてはケースバイケースですが、学校公演の相場は1回あたり数十万円前後となる場合が多いです。
2つ目は「笑顔と学びの体験活動プロジェクト」のような自治体・行政が実施する補助金付きプログラムの活用です。東京都教育委員会が実施するこのプロジェクトでは、都内の公立学校や施設を対象に和太鼓公演を含む66種類の体験プログラムが提供されています(令和7年度実績)。費用の一部または全部が補助される場合があるため、コスト面でも優れた選択肢です。
費用を抑えつつ体験させたい場合は、地域の和太鼓グループへの依頼も有効です。たとえば神奈川県では和太鼓パフォーマーzigzagが保育園向けの出張体験プログラムを提供しており、相模原市・厚木市・横浜市内の複数の学校や認定こども園での実績があります。大きなグループでなくても、地域に根ざしたパフォーマーに声をかけることで、子どもたちに本物の体験を届けることができます。
依頼の際に確認しておくべきポイントは次のとおりです。
- 🕒 公演時間と対象年齢(未満児・以上児の区別)
- 🥁 体験コーナーの有無と参加人数の上限
- 🔊 音響・照明機材の持ち込みが必要かどうか
- 📐 公演スペースの広さの最低条件
- 💰 費用の内訳(出演料・交通費・機材費など)
- 📄 行事の保険適用や事前の指導計画の有無
音が大きい公演の場合、近隣への配慮も必要です。事前に近隣への告知を行った上で実施するかどうかを園全体で確認しておくとトラブルを防げます。費用対効果を考えると、保護者参観や運動会前のプレイベントとセットにするなど、複数の目的に活用できる形で組み込むのがおすすめです。
和太鼓パフォーマーzigzag(保育園・学校への出張体験プログラムの実績と依頼方法が紹介されています)
ベネッセ教育情報サイト「子どもが和太鼓を習う5つのメリット」(子どもの発達と和太鼓の関係についての保護者向け解説記事です)
