歌声指導の歌を保育士が子どもに楽しく教えるコツと発声ケア

歌声指導と歌で保育士が押さえるべき実践ポイント

「大きな声で歌いましょう」は、実は子どもの声帯結節を招く原因になります。

この記事でわかること
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子どもに合った選曲と導入のコツ

年齢・音域に合った選曲と、絵本・ペープサートを使った導入で、子どもが「歌いたい!」と感じる環境を作る方法を解説します。

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保育士自身の発声と喉ケアの基本

腹式呼吸・共鳴発声を身につけることで、声帯ポリープ・声帯結節などの職業病リスクを大幅に減らせます。

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NGな指導フレーズと正しい言い換え

「大きな声で」はNG。「まあるい優しい声で」「にこにこの声で」など、子どもの声帯を守りながら歌声を引き出す言葉かけを紹介します。

歌声指導の第一歩:年齢・音域に合った選曲の基準

 

保育現場での歌声指導は、まず「どの曲を選ぶか」から始まります。ここで選曲を誤ると、どれだけ丁寧に教えても子どもが歌いにくい状況が続いてしまいます。

子どもが自然できれいな声で発声できる音域は、「ミ・ファ・ソ・ラ」の音階と言われています。これはピアノの鍵盤でいうと、中央ドから数えて1オクターブ強の範囲です。音域が広すぎる曲や、音程のアップダウンが急な曲は、子どもにとって無理な発声を強いる原因になります。つまり選曲の時点で、子どもの喉を守れるかどうかが決まるということですね。

年齢別に整理すると次のような目安があります。

  • 0〜1歳児:語りかけるような音程幅の少ない歌。「ゆりかごの歌」のように穏やかなテンポのものが適しています。
  • 2〜3歳児:擬音語や繰り返しフレーズのある歌。「アイアイ」「バスごっこ」など、リズムに乗りやすい曲が向いています。
  • 3〜5歳児:ストーリー性のある歌や、ダンスに発展できる曲。表現力が豊かになる時期なので、歌詞のイメージを広げられる選曲が効果的です。

4歳半ごろを過ぎると、声域が少しずつ広がり始めます。そこから段階的に音程幅を広げていくと、子どもの声帯に無理なく歌唱力を伸ばすことができます。音域が適切かどうか確認するためには、保育士さん自身が「子どもの高さ」で一度歌ってみるのが最もシンプルで確実な方法です。

保育現場で選曲に迷ったときは、文部科学省や各都道府県が発行する「うたのえほん」などの教材集を参考にすると、選曲の質を一定に保ちやすくなります。

保育に欠かせないうたの選曲ポイントと年齢別おすすめ(手ぶら登園コラム)

歌声指導の導入:子どもが「歌いたい!」と感じる仕掛けづくり

新しい歌を子どもに教えるとき、いきなり「一緒に歌いましょう」と始めても、子どもの心は動きにくいものです。大切なのは、歌を聞く前の「仕掛け」です。

まず、歌詞の世界観に合った絵本やペープサートを導入として活用しましょう。たとえば春の歌なら桜の絵本を読んでから歌に入る、動物が出てくる歌ならぬいぐるみを使って世界観を先に見せる、といった流れです。子どもは「知っているもの」「見えているもの」に対して強く反応します。これは使えそうです。

次に、最初に聞かせるのはサビからにするとより効果的です。イントロや1番から順番に教えるのが自然に思えますが、一番印象に残るフレーズを先に届けることで「続きが聞きたい」「もっと歌いたい」という気持ちを引き出せます。

導入後の流れとして、

  • 保育士が楽しそうに歌う(表情と体の動きを使う)
  • 子どもと一緒に節ごとに区切って練習する
  • 覚えた箇所を少しずつつなげて全体を歌う

という段階を踏むと、子どもは達成感を感じながら学べます。長い曲の場合は、1番だけを数日かけて定着させてから2番に進む方法が飽きにくくおすすめです。登園時や給食の時間にBGMとして流しておく工夫も、耳に馴染ませる有効な手段です。歌への親しみが自然に生まれます。

保育園での歌の教え方の工程別ポイント(保育士求人ガイド)

歌声指導でNGな言葉かけと、声帯を守る正しい伝え方

「大きな声で歌いましょう!」という声かけは、保育の現場でよく使われています。しかしこのフレーズが、子どもに「がなり声」を引き出す原因になるというのは、多くの保育士が知らない落とし穴です。

大声で歌い続けると、声帯の粘膜がぶつかり合い、やがて「声帯結節」が生じます。声帯結節とは、声帯にできるペンだこのようなもので、歌手・教師・保育士などの職業病ともいわれています。小児に起こる場合は「学童結節」と呼ばれ、大きながなり声を繰り返す子どもに発症しやすいとされています。子どもの声帯は大人よりずっとデリケートです。

正しい声かけの例として、研究や現場では次のような言い換えが推奨されています。

  • ❌「大きな声で歌おうね」→ ✅「お口をしっかり開けて歌おうね」
  • ❌「もっと元気よく!」→ ✅「にこにこの声で歌ってみよう」
  • ❌「もっと大きく!」→ ✅「まあるくて優しい声で歌えるかな?」

「声が大きいこと=上手」という先入観を取り除くことが、指導の第一歩です。声量よりも発音の明瞭さや、表情豊かな歌い方をほめることで、子どもは自信を持って歌えるようになります。がなり声に気づいたときは「声がとげとげしているよ」と優しく伝え、「まあるい声」を意識させるのが効果的です。

子どもへの歌の教え方と注意点(保育士バンク!コラム)

歌声指導を支える保育士自身の発声トレーニング基礎

子どもへの歌声指導の質を高めるために、保育士さん自身の発声力を磨くことは非常に重要です。歌が上手である必要はありませんが、「聞き取りやすく、喉に負担のかからない声」を出せることは大切な基礎です。

喉を痛めない発声の中心にあるのが腹式呼吸です。普段の胸式呼吸は肺の上部だけを使いますが、腹式呼吸は横隔膜を使って肺全体に空気を取り込みます。この呼吸法を使うと、声帯にかかる直接的な圧力が分散されるため、声枯れや声帯損傷のリスクが大幅に下がります。腹式呼吸が基本です。

【腹式呼吸の練習手順】

  1. 仰向けに寝て、おへその上に手を置く
  2. 鼻からゆっくり吸い込み、お腹が膨らむのを手で確認する
  3. 口からゆっくり吐きながら、お腹が凹んでいくのを感じる
  4. 慣れてきたら立ったまま同じ動作を行う

次に、声を「共鳴」させる感覚を身につけることも大きな助けになります。眉間あたりに指を置き、口を軽く閉じて高音の「ラ」でハミングしてみてください。眉間がビリビリ振動する感覚があれば、声が正しく共鳴腔(きょうめいくう)に当たっています。この共鳴を使えるようになると、少ない力で遠くまで通る声が出せるようになります。

ボイストレーナー・玉置彩音先生(オンライン歌唱指導Marsy所属)も「声帯の負担を少なくしつつ大きくて通る声を出すには、共鳴腔を活用することが最も効果的」と述べています。毎日5分のハミング練習だけでも、続けることで確実に変化を感じられます。

ボイストレーナー監修・保育士向け発声練習のコツ(ほいくis)

歌声指導で活きる「わらべうた」の独自活用術

一般的な歌声指導の記事では、童謡や保育の定番ソングが中心に紹介されています。しかしここで注目したいのが、「わらべうた」を歌声指導のツールとして意図的に活用するアプローチです。これはあまり語られない視点です。

わらべうたは日本古来の伝承遊び歌で、その音域は子どもが自然に発声できる「ミ・ファ・ソ・ラ」周辺に収まっているものがほとんどです。つまり、音域の観点からも幼児の声帯に最適な教材といえます。また、メロディーがシンプルで繰り返しが多いため、まだ発声が定まっていない0〜2歳児でも自然に声を出し始めます。

さらに、わらべうたは「触れ合いながら歌う」という特性があります。「いっぽんばしこちょこちょ」や「ここはとうちゃん」など、保育士が子どもの体に触れながら歌うことで、歌への親しみと安心感が同時に育ちます。これが子どもにとって「歌は楽しいもの」という原体験になるのです。歌への積極性につながります。

発達障害のある子どもへの支援でも、わらべうたが有効であることが報告されています。強制されない・やり直しができる・少人数でもできるという特性が、さまざまな発達段階の子どもに対応しやすい理由です。

わらべうたを歌声指導の「入り口」として使い、子どもの発声への抵抗感をなくしてから、より広い音域の童謡へとステップアップしていく流れが、現場では非常に効果的です。この順番が大切です。

わらべうたが子どもの発達を左右する理由(保育士の日常コラム・マイナビ保育士)
発達障害のある子どもへのわらべうた活用方法(ほいくis)

歌声指導を長く続けるための保育士の喉ケア習慣

保育士は声帯結節・声帯ポリープになりやすい職業のひとつとして、医療の現場でも認識されています。歌手・教師と並んで保育士が声の職業病リスクが高い理由は、歌うだけでなく、大きな声での呼びかけ・絵本の読み聞かせ・子どもへの注意など、一日中声を使い続けるからです。声帯は酷使しやすい環境です。

声帯ポリープは悪化すると手術が必要になることもあり、入院・発声禁止期間が発生します。さらに声帯結節は手術後の再発率が高く、発声習慣を根本から変えなければ繰り返すとも言われています。それだけに、日常的なセルフケアの積み重ねが重要です。

現場で取り入れやすいケア習慣を以下に整理します。

ケア方法 ポイント
💧 こまめな水分補給 子どもへの水分補給タイムに、自分も一緒に飲む習慣をつける
🤲 うがいの習慣化 風邪の季節に限らず、毎日のうがいで乾燥・炎症を予防
🌙 喉を休める時間の確保 休日は声を出しすぎず、喉を意識的に休ませる
🫁 腹式呼吸の定着 喉から声を出す癖を直すことで、慢性的な声枯れを根本から予防
🏥 不調が続く場合は早期受診 2週間以上続く声枯れは、耳鼻咽喉科へ。放置は悪化につながる

声を出さないわけにはいかない仕事だからこそ、「出し方」と「休め方」のバランスが大切です。3か月以上声帯結節を放置した結果、退職を余儀なくされた保育士の事例も報告されています。不調を感じたら、早めの受診が大切です。

また、不調のサインとして「朝は声が出るが、昼以降かすれてくる」「話し続けると声が途切れる」などがあります。これらは声帯に炎症が起きているサインです。このような症状が出始めた段階で耳鼻咽喉科を受診することで、手術を回避できる可能性が高まります。

保育士の声枯れ対策・原因と予防法(保育のいろは)

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