運動会と保育園と行事
運動会のねらいとテーマとプログラム
保育園の運動会は、単に「走る」「勝つ」日ではなく、子どもが“体を動かす楽しさ”を知り、友達や大人と関わりながら達成感を得るための行事として位置づけられています。運動会のねらいとして「体を動かす楽しさ」「人と関わる楽しさ」「ワクワクや達成感」が挙げられる点は、企画の出発点にするとブレにくくなります。参考:運動会のねらい整理(体を動かす・関わる・達成感)
保育のねらいの整理が詳しい参考リンク(ねらい全体と準備の考え方)

テーマを決めると、競技名・装飾・入退場・BGMが一本の線でつながり、保育士側の準備の迷いが減ります。例えば「オリンピック」や「絵本」「海や空」といったテーマは、子どもがイメージしやすく、競技にも展開しやすいとされています。テーマがあると、かけっこ一つでも「○○になりきって走る」など表現遊びの要素を足せて、練習が“作業”になりにくいのが利点です。
プログラム作りのコツは、体力が必要な競技を前半に寄せつつ、途中に親子競技や表現(ダンス等)を挟み、集中力と疲労の波を整えることです。運動会は日常と環境が違うため、最初に“準備運動(準備体操)”で場の空気を整えるのが基本になります。乳児がいる園ほど「午前中で終了」「屋内(体育館等)で実施」といった運営が多いという指摘もあり、時間設計と会場選びは園の実態に合わせて決めるのが現実的です。
運動会の年齢別と競技と親子
年齢別にねらいを整理すると、競技選定で無理が減ります。乳児(0~2歳)は、親子で一緒に動いて雰囲気を楽しむことが中心で、歩く・はいはいなど発達の違いが大きいため“見せる発表”に寄りすぎない設計が向きます。3歳児は「保護者や友達と運動する楽しさ」、4歳児は「友達と協力しながら体を動かす楽しさと自信」、5歳児は「自分の力を出し切り、友達と一緒に楽しむ」など、発達段階に応じたねらいが示されています。
競技は“できる・できない”を測る方向より、“やってみたい”を引き出す方向が成功しやすいです。0~2歳は親子ダンス・簡単なサーキット遊び、3歳は玉入れや簡単な並びっこ、4~5歳は障害物リレーやチーム対抗リレー、大縄跳びなど、年齢が上がるほど協力要素・挑戦要素を少しずつ増やす考え方が紹介されています。親子競技は保護者の参加で子どもの安心感が上がり、運動会全体が“家族のイベント”になりやすい点がメリットとして語られています。
ここで意外に差が出るのが「親子競技の説明コスト」です。保護者は当日ぶっつけ参加になりやすいので、ルール説明が長い競技ほどグダつきます。説明を短くする工夫として、①見本を1回見せる、②道具を見れば直感でわかる(ボール送り等)、③失敗しても成立するルール(時間内に運ぶ等)にしておくと、場が止まりにくくなります。
運動会の準備と練習と安全
運動会準備で最優先にしたいのは「トラブルを想定しておく」ことです。天候の急変、ケガや体調不良、器具の故障などを事前に想定し、代替プログラムや屋内実施案、応急処置キット、予備の道具を用意する重要性がまとめられています。特に近年は暑さ・豪雨で予定通りにいかないことが増えているため、「当日の判断基準(何時に決定し、どう連絡するか)」まで文章化しておくと混乱が減ります。
練習は“完成度を上げる作業”というより、“当日を安心して迎えるための見通し作り”に寄せると、子どもの負担が下がります。実際の流れをシミュレーションしておくと当日の混乱防止になる、という整理もあります。練習が長期化すると、運動会のためだけの生活になってしまい、普段の遊びや生活が圧迫されがちです。そこで、練習を短くする具体策として、次のように分解すると現場で回しやすいです。
✅練習設計の分解(例)
- 競技:ルール確認は“1日5分”の小分けで、反復は遊びの中に混ぜる
- 入退場:行進が難しければ「音が鳴ったら集まる」「並び替え遊び」から
- 用具:当日と同じ大きさ・滑りやすさを一度は触っておく(特にマット・跳び箱・トンネル)
- 先生の動線:誘導係・安全係・アナウンス係を固定し、練習から役割分担
安全面では「子どもの動きを予測して危険箇所を事前チェックし、バランスを崩しそうな場所にはマットを敷く」といった運動遊び全般の基本が、運動会でもそのまま当てはまります。運動会前は会場設営で視界が変わり、子どもの動きも興奮で大きくなるため、普段より“余白(ぶつからない距離)”を多めに取るのが実務的です。
運動会の保護者対応と配慮
運動会が荒れやすい原因は、子どもよりも「大人側の期待値」が過熱することです。子どもの良いところを見せたい気持ちから、無理にやらせる・泣いているのに競技へ押し出すなどが起きると、行事が“成功体験”ではなく“嫌な記憶”になりかねません。保育園の運動会は「勝ち負けにこだわりすぎると運動嫌いにつながる可能性がある」という指摘もあり、保護者にも園の方針として共有しておくとトラブル予防になります。
配慮が必要な子(運動が苦手、集団が不安、初めての環境に弱い等)には、競技そのものを変えるだけでなく、“役割”を用意するのが効きます。例えば「旗を渡す」「スタートで合図を聞く係」「ゴールでシールを貼る」など、走らなくても参加感が出る設計は、練習の段階から混ぜると本人の安心につながります。運動が苦手な園児にも楽しめるよう、能力に応じた競技や協力型競技を取り入れる重要性がまとめられているため、競技選びの根拠として説明しやすいです。
📣保護者向け事前案内に入れると効く一文(例)
- 「当日は“できたかどうか”より、“やってみようとした瞬間”を一番の見どころにしてください」
- 「泣いてしまった場合は、無理に参加させず、先生と一緒に気持ちを整える時間を優先します」
- 「写真撮影は周囲の方の視界を遮らないようご配慮ください(園のルールを明記)」
この“言語化”があるだけで、当日の空気が変わります。保護者の満足度は競技の派手さではなく、「園が何を大事にしているかが伝わったか」「うちの子も大切に扱われたか」で決まりやすいからです。
運動会の独自視点:雨天と屋内と動線
検索上位の記事は「ねらい」「競技」「準備」「練習」に焦点が当たりやすい一方で、現場の差が一番出るのは“動線設計”です(ここは園ごとの条件で答えが変わるため、記事で薄くなりがちです)。とくに屋内開催(体育館等)では、子どもの動線と保護者の動線が交差すると、転倒・迷子・接触が起きやすくなります。屋内は天候に左右されず計画が立てやすいメリットがある反面、人が密になりやすいという構造的リスクがあります。
そこで、意外に効くのが「動線を競技ごとに変えない」設計です。例えば、サーキット→玉入れ→親子競技…と道具を入れ替えるたびに通路が変わると、誘導が増えて事故も増えます。おすすめは、次のような“固定レイアウト”です。
🏟固定レイアウト案(屋内向け)
- 走るゾーン:直線1本(コーンで区切る)
- 待機ゾーン:クラスごとに床テープで色分け
- 競技ゾーン:中央に集約(玉入れ、ボール送り等)
- 救護・クールダウン:入口近くに固定(出入りしやすい)
また、雨天対応は「屋内に変更する」だけでなく、「競技の強度を下げる」まで決めておくと完成度が上がります。屋内では滑りやすさ・反響・視界の狭さが増えるので、障害物を減らす、リレーは距離を短くする、音の合図は笛より音源にする等、“条件に合わせてスケールダウンする基準”を事前に作ると、当日判断が楽になります。
この独自視点を入れておくと、記事が単なるアイデア集ではなく「運営の設計図」になります。結果として、運動会当日の事故リスクと先生の消耗を同時に下げられます。


