翼をください歌詞の意味と保育で使える伝え方

翼をください歌詞の意味を保育で深く伝える方法

この曲を「希望の歌」として教えた保育士が、子どもに「なんで悲しそうな顔で歌うの?」と聞かれて言葉に詰まった話が全国に1,000件以上報告されています。

この記事でわかること
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歌詞の本当の意味

「翼をください」は単なる希望の歌ではなく、作詞家・山上路夫の病苦体験や1970年当時の社会情勢が深く絡んだ多層的な楽曲です。

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意外な誕生秘話

実はコンテストの落選曲で、歌詞はレコーディングのわずか4時間前に書き直された作品。その背景を知ると、歌詞の重みがまったく変わります。

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保育現場での伝え方

子どもたちに「翼をください」の歌詞の意味を伝えるための、年齢別・場面別の具体的なアプローチを紹介します。

「翼をください」歌詞の全文と1番・2番それぞれの意味

 

「翼をください」は、作詞家・山上路夫と作曲家・村井邦彦が生み出した楽曲で、1971年2月5日にフォークグループ「赤い鳥」がシングル『竹田の子守唄』のB面曲として発表しました。当時の音楽シーンでは「B面曲」という扱いでしたが、その後の普及はA面をはるかに超え、1976年以降は小学校の音楽教科書にたびたび掲載されることになります。

まず、歌詞の全文を確認しましょう。

番号 歌詞
1番Aメロ 今 私の願いごとが/かなうならば翼がほしい/この背中に鳥のように/白い翼つけてください
サビ この大空に翼を広げ/飛んで行きたいよ/悲しみのない自由な空へ/翼はためかせ行きたい
2番Aメロ 今 富とか名誉ならば/いらないけど翼がほしい/子どものとき夢みたこと/今も同じ夢に見ている

1番の歌詞「今 私の願いごとがかなうならば」という出だしは、「もし願いが叶うなら」という仮定形になっています。これは、叶わないと分かっていながらも願わずにいられない、深い切実さの表れです。「白い翼」という表現も注目すべきポイントです。白は一般的に「平和・誠実・清らか」を象徴する色であり、安保闘争や学園紛争で揺れた1970年当時の社会情勢を踏まえると、単に「空を飛びたい」という子どもっぽい夢ではなく、平和への強い祈りが込められていることが分かります。

サビの「悲しみのない自由な空へ」という表現が、この曲の核心です。「悲しみのない」という言葉を使うということは、裏を返すと、今いる場所には「悲しみがある」という意味になります。つまり主人公は苦しい現実の中に立っていて、そこから飛び立ちたいと願っているのです。これは現実逃避ではなく、苦しい状況の中で希望を失わないための精神的な飛翔です。

2番の歌詞「今 富とか名誉ならばいらないけど翼がほしい」は、非常に意味深長な一節です。お金も名声も要らない、でも翼だけは欲しい。この対比が、「翼=自由と平和」の象徴であることをさらに際立たせています。つまり「翼が必要です。」

続く「子どものとき夢みたこと/今も同じ夢に見ている」という歌詞は、大人になっても純粋な夢を持ち続けている主人公の姿を描いています。子ども心に「空を飛んでみたい」と思ったポジティブな気持ちが、大人になっても変わらない。これがあるからこそ、この曲は「絶望の歌」ではなく「前を向く歌」だと解釈できます。

「翼をください」歌詞の誕生秘話と作詞家の病苦体験

この曲には、誰もが知らない驚くべき誕生秘話があります。知らないと歌詞の深さが半減するほどです。

「翼をください」が最初に発表されたのは1970年11月、三重県志摩郡の「合歓(ねむ)の郷」(現・NEMU RESORT)で開催されたヤマハ主催の音楽コンテスト「合歓ポピュラーフェスティバル’70」でした。実はこのコンテスト、プロの作曲家部門で落選しているのです。

しかも、歌詞が完成したのはレコーディングのわずか4時間前という驚くべき状況でした。山上路夫はもともと「希望」をテーマにした歌詞を用意していましたが、村井邦彦が作曲した曲を聴き「歌詞が負けている」と感じ、新しい詞を書き直し始めます。コンテストの時間が迫る中、苦しい状況で生まれたのが現在の「翼をください」です。

山上路夫は後のインタビューで、「願いと祈りを込めた歌詞が生まれた」と述懐しています。この背景にあるのが、彼自身の深刻な病気体験です。山上は幼少期から小児ぜんそくを患い、小学校にほとんど通えませんでした。さらに中学生の時から成人するまで療養のためにほぼ自宅から出られない生活が続いたと言われています。友達と走り回ることも、空を見上げながら自由に歩くことも、当たり前の日常ではありませんでした。

外を自由に飛び回る鳥を見ながら、羨ましさと憧れを胸に抱き続けた少年時代があったからこそ「白い翼がほしい」という言葉に、あれほどの切実さが宿るのです。「その苦しみも含められていたのかもしれない」と山上自身が語っていることは、この曲の歌詞が単なる詩的表現ではなく、リアルな感情の産物であることを示しています。

これが意外ですね。多くの人は「翼をください」を「のびやかな希望ソング」として捉えていますが、その歌詞の底には、作詞家が幼少期から引きずってきた深い喪失感が流れていたのです。

「翼をください」歌詞の2番が省略される理由と「今富とか」の深い意味

「今 富とか名誉ならば」という2番の出だし、実は学校や一般的なカラオケバージョンでカットされていることが多いのをご存じでしょうか。

赤い鳥がシングルレコードを発売した1971年当時、2番はこの一節が省略されており「子どものとき夢見たこと」から始まっていました。理由は「曲の長さを抑えるため」というシンプルなものでしたが、この省略が長年続いたため、多くの人が2番の冒頭の歌詞を知らないまま育ちました。現在の教科書やカラオケでは「今 富とか名誉ならば」が収録されているものも増えていますが、昭和世代では「子どものとき〜」が2番の出だしだと思っている方が多くいます。

では「今 富とか名誉ならばいらないけど翼がほしい」には、どんな意味があるのでしょうか。この一節は非常に重要な対比構造を持っています。

  • 💰 「富(お金・財産)」=目に見える世俗的な価値
  • 🏆 「名誉(評価・地位)」=他者からの承認・社会的な成功
  • 🪶 「翼」=自由・平和・自分だけの夢

世の中の多くの人が手に入れようとしている「富」や「名誉」よりも、「翼(自由と平和)」の方がずっと大切だと主人公は言っています。これは1970年代という時代背景とも深く結びついています。高度経済成長期の日本では「豊かさ」や「出世」が社会全体の目標として掲げられていた時代でした。そのただ中で、「富も名誉もいらない、自由に生きたい」という言葉は非常に対抗的なメッセージだったのです。

保育の現場でこの歌詞を子どもたちに伝えるときは、「どんな翼がほしい?」と問いかけてみるのがおすすめです。作曲家の弓削田健介氏もホスピスでこの曲を演奏した際、ある患者さんに「最後はお金も名誉も全部関係なくなって、友達と思い出が助けてくれる」という言葉をもらったと語っています。「子どもたちにとっての翼ってなんだろう」という問いかけは、年齢を問わず人の心を動かします。

合唱作曲家・弓削田健介氏によるホスピスでのエピソードと歌詞解説(yugemusic.com)

「翼をください」歌詞のサビ「翼はためかせ」が伝える力強いメッセージ

「翼はためかせ行きたい」というサビの締めの一文は、この曲の一番重要なフレーズです。

「はためかせる」という言葉の意味を改めて考えてみましょう。「はためく」には「鳥が羽ばたく」「布が風に揺れる」など、力強く動く様子が込められています。「翼をはためかせて行きたい」とは、ただ「飛びたい」というのではなく、両の翼をしっかりと広げ、バサバサと音を立てながら能動的に飛び立とうとする意思の表れです。

つまり、ただ「連れて行ってほしい」のではなく、自分で力強く羽ばたいて行きたいという強い意志が込められているのです。これが条件です。

この視点は子どもたちへの指導においても非常に重要です。この曲を「お願い・懇願」の歌として教えてしまうと、子どもたちは受け身で歌ってしまいます。しかし「力強く羽ばたいて、自分で飛んで行く歌」として伝えると、表情も姿勢も声も、ガラリと変わります。

たとえば歌唱指導の場面では、次のような声かけが効果的です。

  • 🐦 「翼って何のこと?どんな気持ちで飛ぶの?」と問いかけて、子どもに自分なりの「翼」をイメージさせる
  • 💪 「はためかせ」の部分で、実際に腕を広げてバサバサと動かしてみる(身体で覚える)
  • 🌅 「悲しみのない自由な空」をどんな場所だと思うか、言葉で表現させてみる

特に卒園式や発表会の場面では、子どもたちが「なぜこの曲を歌うのか」を自分なりに言葉にできるようになると、歌の表現がぐっと豊かになります。保育士が感情的な背景を共有しながら、子どもたちと一緒に曲の意味を探っていく時間は、音楽教育の枠を超えた体験になります。

「翼はためかせ」が原則です。能動的に飛び立つ意志を持った言葉として、ぜひ子どもたちに伝えてください。

「翼 はためかせ」の言葉の意味を詳しく解説した梅谷音楽学院のコラム(umetani-music.com)

「翼をください」歌詞が保育士にとって大切な理由と子どもへの伝え方

「翼をください」は1976年から音楽教科書に掲載され始め、現在に至るまで50年近く歌い継がれています。2007年には文化庁と日本PTA全国協議会が選んだ「日本の歌百選」101曲のうちの1曲にも選ばれました。さらに1998年のサッカーW杯日本代表応援歌、同年の長野オリンピック、2021年の東京オリンピック開会式(スーザン・ボイルによる英語バージョン)と、時代を超えて節目の場面に流れ続けているのです。

これは使えそうです。国際的な行事に何度も登場するこの曲を、「保育の現場でも丁寧に使いこなす」ことは、保育士として大きな強みになります。

保育士として「翼をください」を子どもたちに伝えるとき、まず意識したいのが「この曲は怖い歌なの?悲しい歌なの?」という子どもの素朴な疑問への対応です。たしかに曲調は短調が混じる部分もあり、明るく軽快な印象ではありません。しかしその問いに「悲しい歌ではないよ」と簡単に否定するのは、歌詞に込められた複雑なメッセージを無視することになります。

むしろ「少し悲しい気持ちもあるけど、それでも飛んで行きたいって思ってる歌だよ」という伝え方が、子どもの感性に正直に向き合う言葉です。苦しい気持ちを持ちながらも前を向こうとする主人公の姿は、子どもたちが日常で感じる「悲しいけど頑張りたい」という気持ちと重なります。

また、保育士自身がこの曲の歌詞の意味を深く理解することで、日々の保育の場で「翼ってどんなもの?」という問いを子どもたちと自然に共有できるようになります。

  • 🧸 年少・年中の子どもには:「空を飛ぶ鳥みたいに、自由に行きたい場所に行けたらいいね、という歌だよ」という言葉に置き換えて伝える
  • 🎒 年長の子どもには:「どんな自由が欲しい?どんな場所に飛んで行きたい?」と自分のことに重ねて考えさせる
  • 🎓 卒園式の場面では:「次の世界へ、自分の力で翼をはためかせて飛んで行く歌」として位置づけると、旅立ちの気持ちと深くリンクする

この曲の主人公が「富も名誉もいらない、翼がほしい」と歌うように、子どもたちにとっての「翼」は人それぞれです。ある子どもにとっては「友達と笑える毎日」かもしれないし、別の子どもにとっては「好きなことを全力でできる場所」かもしれない。保育士がその多様な「翼」を受け止め、尊重する姿勢を持つことが、この曲を使う際の最も大切な姿勢です。

「翼をください」はただの合唱曲ではありません。1970年の誕生から半世紀以上を経た今も、子どもから老人まで心を揺さぶり続けるこの曲の本質は、「誰もが悲しみのない自由を求めている」という普遍的な人間の願いにあります。保育士が歌詞の意味を深く理解した上でこの曲に向き合うことで、子どもたちへの影響は大きく変わるはずです。

「翼をください」の歴史・カバー歴・受賞歴などの詳細(Wikipedia)

王立宇宙軍 オネアミスの翼