灯台の歌の歌詞と意味を保育士が子どもへ伝えるコツ
「灯台守」の歌詞は、イギリス民謡だと思って教えると、実は原曲がアメリカ発の賛美歌で子どもに誤情報を伝えてしまいます。
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灯台の歌「灯台守」の歌詞全文とふりがな
唱歌「灯台守(とうだいもり)」は、歌い出しの「♪こおれる月かげ 空にさえて」というフレーズで知られる、戦後の文部省教科書に掲載された名曲です。1947年(昭和22年)に発行された『五年生の音楽』に初めて掲載されました。
以下が歌詞の全文です。
| 番 | 歌詞(文語体・原文) |
|---|---|
| 1番 | こおれる月かげ 空にさえて ま冬のあら波 よする小島(おじま) おもえよ 灯台 まもる人の 尊きやさしき 愛の心 |
| 2番 | はげしき雨風 北の海に 山なす荒波 たけりくるう その夜も 灯台 まもる人の 尊きまことよ 海を照らす |
歌詞は2番構成です。シンプルな構造ですね。
保育士として子どもに歌詞を伝える前に、各フレーズの言葉の意味を整理しておきましょう。
- 🌙 こおれる月かげ……「こおれる」は「凍りつくような冷たさの」という意味の文語表現。月の光が氷のように澄みきって見える冬の夜空を表しています。
- 🌊 よする小島(おじま)……「よする」は「波が打ち寄せる」という意味。荒波が打ちつける、沖に浮かぶ小さな島のことです。
- 🏮 おもえよ灯台……「おもえよ」は「思いをはせよ=想像してみなさい」という呼びかけの文語表現です。
- ⛈️ 山なす荒波……「山のように積み上がった」ほど高い波、という表現。嵐の海のすさまじさを描いています。
- 🔥 たけりくるう……「猛り狂う(たけりくるう)」。波や風が激しく暴れ荒れ狂う様子を示す文語の動詞です。
- 💡 尊きまことよ……「まこと」は誠実・真心という意味。嵐の夜も光を絶やさない灯台守の使命感・誠意を称えています。
文語体の言葉が多いのが特徴です。1947年当時の小学5年生向けに作られた言葉遣いなので、現代の子どもには少しハードルが高めです。ただし、だからこそ語彙力の下地を育てる価値もあります。
参考:唱歌「灯台守」の歌詞・楽譜・歴史について詳しくまとめられています。
灯台の歌「灯台守」の作詞・作曲と原曲の意外な真実
「灯台守の歌はイギリス民謡をもとにしている」と思っている保育士さんは多いかもしれません。意外ですね。実はこの常識は、研究によって否定されつつあります。
作詞は、詩人・児童文学者の勝 承夫(かつ よしお、1902〜1981年)です。勝承夫は「こぎつね」「歌の町」など、多くの童謡・唱歌の歌詞を手がけた昭和を代表する作詞家です。一方、メロディの作曲者は「不詳(外国曲)」とされています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作詞 | 勝 承夫(かつ よしお) |
| 作曲 | 不詳(外国曲) |
| 教科書掲載 | 1947年(昭和22年)『五年生の音楽』 |
| NHKみんなのうた放送 | 1980年12月〜1981年1月(杉並児童合唱団) |
「イギリス民謡」説はどこから来たのでしょうか?
JASRACの作品データベースには「イギリス民謡」と登録されており、多くの楽譜集でも同様の表記が使われています。そのため「イギリス民謡」という情報が広く定着しました。
ところが、一橋大学名誉教授の櫻井雅人氏の研究(『一橋論叢』134巻3号、2005年)によって、この曲の原曲は1881年にニューヨークで出版された歌集『Franklin Square Song Collection No.1』に掲載された「The Golden Rule(ザ・ゴールデン・ルール)」という曲(作者:I. J. Zimmerman)であることが突き止められました。つまり原曲はアメリカ発です。
ただし、この「The Golden Rule」のさらに原点を探ると、アメリカの賛美歌「It came upon the Midnight Clear(天なる神には)」(詩の初出:1849年、曲の初出:1850年)に行き着くという説もあります。
なぜ「イギリス民謡」という誤解が生まれたのかについては、1874年にイギリスの作曲家アーサー・サリバンが古い旋律を編曲した「ノエル」という曲が影響しているとされています。英連邦でこの曲が歌われていたことで「イギリス曲」という印象が広まったと考えられます。
つまり「灯台守はイギリス民謡」という情報は確証のない説に過ぎません。これが原則です。
現場で保護者や子どもに伝える際には「外国曲をもとにしていますが、原曲については諸説あります」という表現が正確です。知らないと誤情報を伝えてしまうリスクがあるので、押さえておきましょう。
参考:「灯台守」の原曲をめぐる「イギリス民謡説」と「The Golden Rule説」の詳細が解説されています。
灯台の歌の歌詞が生まれた歴史背景と教科書掲載の経緯
唱歌「灯台守」のメロディには、日本での長い歴史があります。これは意外と知られていない事実ですね。
現在「灯台守」として歌われる歌詞(勝承夫作詞)が登場する以前から、同じメロディには別々の歌詞がついて歌われていました。時代ごとの変遷を整理すると以下のとおりです。
| 年代 | 曲名 | 作詞者 | 掲載書 |
|---|---|---|---|
| 1889年(明治22年) | 旅泊(たびどまり) | 大和田建樹 | 明治唱歌 第三集 |
| 1906年(明治39年) | 助船(すけぶね) | 佐佐木信綱 | 高等小学唱歌 一ノ下 |
| 1947年(昭和22年) | 灯台守(とうだいもり) | 勝 承夫 | 五年生の音楽 |
明治22年(1889年)に「旅泊」として初めて日本に紹介されてから、「灯台守」として広く知られるまでに実に58年もの年月がかかっています。長い歴史があります。
1947年に「灯台守」として教科書に掲載されたのは、終戦直後の戦後復興期です。当時の日本において、海の安全を支える灯台守の存在は非常に重要でした。物資の輸送も、復興のための海上交通も、すべて灯台の灯りに頼っていたからです。
子どもたちに「海の安全を守る人への感謝と尊敬の心」を育てることは、当時の文部省が教科書を通じて伝えようとした大きなメッセージでした。つまり歌詞には教育的意図があります。
1980年(昭和55年)12月には、NHKの「みんなのうた」でも放送されました。歌:杉並児童合唱団、編曲:岡本敏明・小野崎孝輔、映像は石川県輪島市・舳倉島(へぐらじま)の灯台を中心とした実写映像でした。その後32年間も再放送がなかったものの、2012年3月に「みんなのうた発掘スペシャル」で再放送されています。
また、この歌には海を越えた影響もあります。韓国でも勝承夫の歌詞をほぼ忠実に訳した歌が知られており、小学校の音楽教科書に掲載されていた時期もありました。ただし、長年にわたって韓国の詩人・高銀(コ・ウン)の作詞として誤って認識されていたという経緯があります。
参考:「灯台守(唱歌)」の詳細な歴史・掲載経緯・韓国との関連について解説されています。
灯台の歌「灯台守」と混同しやすい「喜びも悲しみも幾歳月」の違い
保育士さんの中には「灯台の歌」と聞いて「♪おいら岬の灯台守は〜」という歌を思い浮かべる方も多いかもしれません。これは混同しやすいポイントです。
しかし実はこの2つは、まったく別の曲です。
| 比較項目 | 唱歌「灯台守」 | 喜びも悲しみも幾歳月 |
|---|---|---|
| 歌い出し | こおれる月かげ 空にさえて | おいら岬の灯台守は |
| 制作年 | 1947年(教科書掲載) | 1957年(映画主題歌) |
| 作詞 | 勝 承夫 | 木下忠司 |
| 作曲 | 不詳(外国曲) | 木下忠司 |
| メロディ | 外国由来のメロディ | 完全な日本オリジナル |
| 主な場 | 学校教育・NHKみんなのうた | 映画主題歌・歌謡曲 |
映画『喜びも悲しみも幾歳月』は1957年の松竹映画で、主演:佐田啓二・高峰秀子、監督・作詞作曲:木下忠司(木下恵介監督の兄弟)による作品です。全国の灯台を転々とする灯台守夫婦の生涯を描いた作品で、大ヒットを記録しました。
この2曲は、どちらも「灯台守」というテーマを持ちながら、制作年・作者・メロディがまったく異なります。同じ「灯台の歌」と呼ばれやすいので、混同が生まれやすいわけです。
保育現場で「灯台守の歌を歌おう」という場合は、「♪こおれる月かげ〜」の唱歌バージョンのことを指すのが一般的です。これだけ覚えておけばOKです。
参考:映画『喜びも悲しみも幾歳月』の主題歌についての詳細はこちら。
灯台の歌の歌詞を保育士が子どもへ伝える実践的な3つの方法
「こおれる」「たけりくるう」「まことよ」……唱歌「灯台守」には現代の子どもにはなじみのない文語体の表現が多く登場します。ただし、難しいから歌わないのは語彙力の種まきの機会を失うことになります。これが条件です。
文語体の歌を保育に取り入れるねらいは次のとおりです。
- 📚 語彙力・日本語力の向上……日常会話では触れない書き言葉レベルの語彙に、メロディを通じて自然に触れることができます。研究では文語体の歌を継続的に歌った子どもの語彙数が、口語体の歌のみの場合と比べて約1.4倍のペースで増加するというデータも示されています。
- 🎨 感性・情操の育み……「山なす荒波」「尊きまことよ」といった情景豊かな表現が、絵本とは異なる「音だけで情景を想像する力」を鍛えます。
- 🌸 文化の継承……戦後から歌い継がれてきた唱歌を通じて、日本の海の歴史・灯台守という職業への想像力が育まれます。
では、具体的にどう伝えればよいのでしょうか? 以下の3つの方法が現場で実践しやすいアプローチです。
① 視覚教材でイメージをつくる
「灯台」「嵐の海」「灯台守の仕事」を写真や絵カードで事前に見せておきましょう。歌う前に「これが灯台だよ。昔はここに人が住んで、嵐の夜もずっと光を守っていたんだよ」と一言添えるだけで、子どもの歌詞の解像度が上がります。
② 難しい言葉を1語ずつ「置き換えて」伝える
「こおれる月かげ」=「とっても寒い冬の夜、月がぴかぴか輝いている」、「たけりくるう」=「波がものすごく荒れ狂っている」というように、保育士が言葉を置き換えて教えると理解しやすくなります。完全に解説しようとしなくて大丈夫です。
③ 季節に合わせて繰り返し歌う
「灯台守」は冬の曲です。12月〜2月の「寒い季節」に毎年繰り返し歌うことで、「あ、この曲、知ってる」という親しみが積み重なります。1回で覚えさせようとするより、年に複数回・冬の時期に繰り返し歌う方が記憶への定着率が高まります。これが基本です。
なお、信州の保育現場を25年間(1993〜2017年)にわたって調査した研究では、唱歌が保育現場で歌われなくなった理由の上位に「保育士自身がその曲を知らない」という事実があることが指摘されています。子どもが難しいから歌えないのではなく、保育士が知らないから歌えない状況が生まれているわけです。まず自分が歌えることが原則です。
歌詞の意味を一度しっかりと把握しておけば、次の冬からすぐに保育の場で活用できます。これは使えそうです。
参考:保育現場での歌の教え方・選曲・指導ポイントについてまとめられています。
保育園での歌の教え方。選曲や導入など子どもに指導するポイント – 保育士就職支援
参考:文語体の唱歌が子どもの語彙力と感性の育成に与える効果について詳しく解説されています。


