トリルの歌と保育士のための発声練習
毎日子どもの前で歌っているのに、声がすぐ枯れてしまっていませんか?
トリルの歌における意味と3つの種類
「トリル」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。ピアノ楽譜に書かれた「tr」記号だと思っている方も多いかもしれませんが、歌の世界でのトリルは少し広い意味を持っています。つまり、歌に登場するトリルとは「声や唇・舌を細かく振動させるテクニック全般」のことです。
歌や発声練習の文脈では、主に以下の3種類が使われています。
- 声楽的トリル:楽譜に書かれた音とその1音上の音を素早く交互に繰り返す装飾技法。オペラや合唱でよく登場します。
- リップトリル(リップロール):唇を閉じたまま息を吐き、唇をブルブルと振動させる発声練習。喉への負担を最小限に抑えながら歌えるため、ウォームアップに最適です。
- タングトリル(巻き舌):舌先を上前歯の裏に当て、息の力で「トゥルルル」と振動させる発声練習。滑舌改善にも直結します。
保育士の日常業務では、主に「リップトリル」と「タングトリル」が役立ちます。これが基本です。
声楽的なトリルは合奏や行事の際に披露できると子どもたちの印象に残りますが、まずはリップトリルとタングトリルをマスターすることが先決です。どちらも道具不要で、保育室や自宅で練習できます。
参考:ボイストレーニング用語としてのトリルの定義について
トリルとは – ボイストレーニング(ボイトレ)のGLIDE SLOPE
リップトリルの歌い方と保育士向け練習ステップ
リップトリルは、喉に一切負担をかけずに発声できる点が最大の特徴です。いいことですね。保育の現場では毎日何十分も大声を出す場面があるため、喉を消耗させない練習法の習得は非常に重要です。
リップトリルの正しいやり方
まず唇を軽く閉じ、全身をリラックスさせます。次に、腹式呼吸で息をゆっくり吐きながら、唇を「ブルブル」と振動させます。最初は声なしでもOKです。コツは、唇の周りに余計な力を入れないこと。「両頬を指でやさしく持ち上げる」と唇が振動しやすくなります。
慣れてきたら、以下のステップで練習を進めましょう。
| ステップ | 内容 | 目安時間 |
|---|---|---|
| ①息だけ | 声を出さず唇だけ振動させる | 30秒 |
| ②声あり・単音 | 「ブルブル」しながら声を乗せる | 1分 |
| ③音階練習 | ドレミファソ〜とリップトリルで音階を上げ下げ | 2〜3分 |
| ④曲で実践 | 保育の歌をリップトリルで歌ってみる | 2〜3分 |
リップトリルを続けることで得られる具体的な効果は次の3つです。喉のリラクゼーション(声帯の緊張が取れる)、息のコントロール力アップ(ブレスが安定し歌が途切れにくくなる)、ボーカルレンジの拡大(高音・低音への対応力が上がる)です。
保育士の中でも「高い音が出ない」「音程が不安定」という悩みを持つ方は多くいます。これは問題ありません。リップトリルを毎日5分続けることで、3〜4週間で変化を感じ始める方が多いです。
声に悩む保育士さん向けのボイストレーナーのアドバイスはこちらが参考になります。
保育士の歌の悩みをズバッと解決!ボイストレーナーが練習のコツを解説 – hoiku-is.jp
タングトリルの歌い方と保育士が得られる滑舌改善効果
タングトリルは「舌先を上の前歯裏に当て、息の圧力で舌を振動させる」発声技法です。「トゥルルルル」という音が出れば成功です。これは使えそうです。
タングトリルを継続することで得られる効果は多岐にわたります。
- 舌のリラクゼーション:舌に不要な力が入らなくなり、なめらかな発音が可能に。
- 喉が開く:タングトリルは喉を開いた状態でないとできないため、自然と発声に適した口腔内の形が身につきます。
- 滑舌の改善:日本語は舌をあまり動かさなくても発音できる言語のため、意識的に練習しないと舌の動きが不活発になります。タングトリルを定期的に行うことで舌筋が鍛えられ、子どもへの語りかけや歌唱時の発音が明瞭になります。
- 腹式呼吸の定着:タングトリルは安定した息の流れがないとできません。つまり自然と腹式呼吸のトレーニングになるということです。
タングトリルができない場合の対処法
多くの方が最初はうまくできません。厳しいところですね。まずは「らりるれろ」を繰り返し言う練習から始め、舌先が上前歯の裏に当たる感覚を確認します。次に舌根のエクササイズ(舌を指で前に引っ張り15秒キープ)を3回実施してから、再度挑戦してみてください。
重要なのは、「舌だけを動かそうとしない」ことです。体全体の力みを取り除き、息を均一に吐くことに集中すると、舌が自然に振動し始めます。声楽教師の実践的な指導では「母音を切り替えるイメージ(ア→オ→ア→オと交互に)」でトリルをかけると動きが身につきやすいとされています。
タングトリルのやり方と効果について、アミューズメントメディア総合学院の記事が詳しくまとめています。
タングトリル(巻き舌)の方法|ボイストレーニングのやり方を解説 – アミューズメントメディア総合学院
声楽的トリルの歌い方と保育現場での活かし方
声楽で使う「トリル」は、楽譜上の音とその1音上の音を素早く交互に繰り返す装飾技法です。例えば「ラ」にトリルが付いていれば「シとラを高速で行き来する」ことになります。オペラやクラシックの歌に多く登場します。
保育士が声楽的なトリルを使う場面として、代表的なものが「お遊戯会の伴奏曲」や「卒園式・入園式の歌」です。行事曲の中には装飾音的なパッセージが含まれることがあり、トリルの感覚が身についていると表現力がぐっと豊かになります。
声楽的トリルの練習手順(3ステップ)
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①2音を交互に歌う | 例「シ・ラ・シ・ラ・シ・ラ」を同じテンポで正確に繰り返す |
| ②母音を切り替える | 上の音を「o(オ)」、下の音を「a(ア)」で歌い、声の当てどころを変える感覚をつかむ |
| ③速度を上げる | ゆっくり→少し速く→トリルの速さへと段階的に速める |
難しいのが「喉で動かそうとすること」です。喉を動かそうとすると全身の力みが増し、かえって音が震えなくなります。声楽の専門家によれば「母音の微妙な変化で音色を変えるイメージ」でうたうことで、自然にスピードが生まれるとされています。
このアプローチは保育士が子どもへ歌唱指導をする際にも活用できます。「喉を動かして」と教えるのではなく、「音の色を変えてみて」という声かけをすると、子どもたちが自然体で声を揺らす感覚をつかみやすくなります。
声楽のトリル練習法を実際のレッスンに基づいて解説した記事です。
声楽のトリル練習方法|レッスンで実際にやってもらっている3つのステップ
トリルの歌練習で保育士の声帯ポリープリスクを下げる方法
声帯ポリープや声帯結節は、歌手・教師・保育士に特に多い職業病です。声帯を日常的に酷使する職業で発症しやすく、保育士はそのリスクが高い職種のひとつに数えられています。
声帯ポリープになると、声のかすれ・低音化・喉の違和感が続き、重症化すると呼吸困難に至ることもあります。声が出なくなれば保育の仕事自体ができなくなるリスクがあります。喉は守っておくべきです。
リップトリルが声帯保護に効く理由
リップトリルは「声帯に逆流する空気圧(SOVTE=半閉塞声道訓練)」を活用した発声法で、音声治療の現場でも取り入れられています。唇の振動が作るバック圧力が声帯の過度な接触を緩和し、声帯の粘膜を傷めにくい状態で発声できます。つまり、リップトリルをウォームアップに使うだけで声帯への負担を大幅に減らせるということです。
保育士が今日からできる声帯ケア5選 🎯
- 🌊 こまめな水分補給:常温〜温かい水を30分ごとに一口ずつ飲む。冷たすぎる水は喉を収縮させてNG。
- 😮 発声前のリップトリル2分:朝の会や歌の前に必ず実施。喉のエンジンをかけるイメージ。
- 🌡️ 室内の湿度管理:湿度50〜60%が声帯に最適。乾燥する冬は加湿器を活用。
- 😴 休日の声の安静:休日は意識的に声を控え、声帯を休ませる。
- 🏥 2週間以上の声枯れは耳鼻科へ:声のかすれが続く場合は早めに受診。声帯ポリープは初期ほど治療が簡単です。
リップトリルは喉の治療にも活用されているという事実は意外ですね。声帯を鍛えるだけでなく守る道具でもあります。
声帯を酷使する職業(歌手・教師・保育士)の喉の病気リスクについては、専門医が解説しています。
喉の酷使で起こる声帯ポリープ 専門医療機関の受診を – 時事メディカル
子どもと一緒に楽しむトリル遊び歌の取り入れ方【保育士独自視点】
トリルは「大人のボイストレーニング」という印象が強いですが、実は子どもが最も自然にトリルに近い声を出している瞬間があります。それは子どもが「ブーブー」と唇を震わせて遊んでいるときです。子どもはもともとリップトリルの動作をしています。
この視点を活かすと、保育の歌唱指導に「遊び感覚のトリル体験」を取り入れることができます。
子どもと使えるトリル導入のアイデア 🎶
- 🐝 「ハチさんの声で歌ってみよう」:リップトリルを「ハチの羽音」に例えることで、2〜3歳児でも自然に唇を震わせ始めます。
- 🚂 「電車がトンネルを走る音」:タングトリルの「トゥルルル」を「電車の音」として導入すると、特に男の子が喜んで真似します。
- 🎵 「ふしぎな声で歌おう」:歌の前半を通常に歌い、後半をリップトリルで歌う「変身バージョン」を取り入れると、子どもたちの集中力が一気に上がります。
このような取り組みの副次的なメリットとして、子ども自身の「腹式呼吸の芽生え」が挙げられます。3〜5歳は呼吸パターンが形成される時期であり、遊びの中でリップトリルを経験すると呼吸コントロールの感覚が自然に育まれます。これは保育の音楽活動としても非常に価値があります。
また、行事の前に「今日はトリルの声で練習しよう」と声をかけるだけで、子どもたちが喉を傷めずに元気に歌う練習ができます。保育士自身の声も守れる一石二鳥の手法です。これだけ覚えておけばOKです。
子どもへの歌唱指導のねらいやポイントについては以下が参考になります。
保育園での歌の教え方。選曲や導入など子どもに指導するポイント

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