鳥の歌と保育園
鳥の歌の保育園の定番と童謡
保育園で「鳥の歌」としてまず名前が挙がりやすいのは、童謡「ことりのうた」です。ほいく現場で弾き歌いとしてよく使われ、保育士試験(実技)の課題曲になった年もあると紹介されており、「現場での定番」という位置づけがはっきりしています。さらに、曲の中で小鳥のさえずりを表現するフレーズが印象的で、テンポが良いのでリズム感に注意して練習するとよい、という“指導の勘所”も示されています。これは、単に「歌える」だけではなく、集団で合わせる・楽しく続けるための“テンポ設計”が大事だという示唆でもあります。
また、鳥が登場する童謡は「ことりのうた」だけではありません。鳥をテーマにした童謡メドレー動画では、「ことりのうた」のほか「かっこう」「はと」「ななつのこ」などが並び、保育・家庭向けにまとめて触れられる曲群があることがわかります。こうした“鳥の歌の棚”を持っておくと、季節や活動の流れに合わせて差し替えができます。たとえば、朝の会はテンポがよく短い歌、落ち着かせたい場面はゆったり、帰りの会は余韻が残る歌…というように、同じ「鳥の歌」でも使い分けが可能です。
保育園の歌は、音楽そのものの価値だけでなく、生活の切り替え・気持ちの整理・言葉の獲得と強く結びつきます。鳥の題材は、鳴き声(オノマトペ)・動き(羽ばたき)・色(赤い鳥など)と、幼児が理解しやすい要素が豊富です。つまり「鳥の歌」は、子どもにとって“感じたことを音にする”体験の入り口になりやすいジャンルと言えます。
参考:保育現場での定番曲「小鳥のうた」の位置づけ・対象年齢・練習ポイント

鳥の歌のことりのうたの歌詞とリズム
「ことりのうた」は、歌詞の中に“さえずり”を模したフレーズが入っている点が特徴として語られています。ほいくisの解説でも、小鳥のさえずりを表現した部分が印象的でテンポの良い曲、とされ、リズム感に気を付けて練習することが勧められています。保育園で歌うとき、この“さえずり部分”は、子どもが最も反応しやすいポイントになりやすいです。言葉として意味を理解する前でも、音の並びが面白いから参加できる、という強さがあります。
実際、歌詞付きの動画では「ことりはとっても うたがすき」「かあさんよぶのも うたでよぶ」に続いて、「ピピピピピ」「チチチチチ」「ピチクリピィ」といった音が提示されています。こうしたオノマトペは、発語がまだ安定しない年齢でも“声を出す参加”を成立させます。うまく歌うよりも、声が出たことを価値にしやすい点が、鳥の歌の大きなメリットです。
リズム面では、オノマトペがあることで、拍の位置を身体でつかみやすくなります。保育園の集団では、歌が得意な子が先導してしまい、ほかの子が置いていかれることが起きがちです。しかし「ピピピ」「チチチ」などの短い音は、全員が“同じ長さ・同じタイミング”で入りやすい。ここが、童謡が長く現場に残る理由の一つだと考えられます(難しいメロディより、揃う快感が出やすい)。
さらに、歌詞の構造が“繰り返し”である点も保育向きです。母さん→父さん、という差し替えで同じ型が続くため、1番を覚えれば2番は見通しが立ちます。見通しが立つと、次の言葉を待てるので、聞く姿勢も育ちます。鳥の歌は、情景のかわいさだけでなく、「集団で歌を成立させる設計」が詰まっているのが面白いところです。
参考:歌詞と楽曲情報が確認できる「ことりのうた」動画(歌詞付き)

鳥の歌の手遊びと音楽あそび
保育園で「鳥の歌」を扱うときは、“歌う”から“遊ぶ”へつなげる設計が重要です。鳥の題材は、羽・くちばし・歩き方・鳴き声など、身体表現に直結する要素が多いので、手遊びや動きの活動に発展させやすいです。たとえば「ことりのうた」なら、さえずり部分で指先を小刻みに動かして“口ばし”、腕を広げて“羽ばたき”、ステップで“ぴょこぴょこ”というように、音と動きを対応づけられます。
鳥が登場する童謡メドレー(0〜3歳向け等)では、複数の鳥の曲が並んでおり、活動の流れに合わせて選曲しやすいことがわかります。保育園の現場では、「今日はこの歌だけ」より、「導入→盛り上げ→クールダウン」のセットが作れると強いです。鳥の歌は、テンポの違う曲が揃っているので、同テーマのまま構成できます。テーマが一貫すると、子どもは“世界観”に入りやすく、行動もまとまりやすくなります。
具体的な音楽あそびの例を、保育園で実装しやすい形に落とします。
・🐤導入(30秒〜1分):鳥の鳴き声まねっこ(「ピピピ」「チチチ」だけでOK)
・🎵歌唱(1〜2分):「ことりのうた」を1番だけ歌い、さえずりだけ2回おかわり
・👐手遊び(1〜2分):さえずりで手指を動かす/母さん・父さんで方向転換
・👂聴く活動(1分):最後だけ小さな声で歌う(“森の小鳥”にする)
・🧠言葉(1分):今日の小鳥は何色?どんな実を食べた?(次の歌へ橋渡し)
ここでポイントは、“上手に歌う”をゴールにしないことです。鳥の歌の強みは、参加の入口が多い点(声・手・身体・想像)なので、どれか一つで参加できれば成功にできます。結果として、歌が苦手な子も居場所を作りやすい。保育園の歌は評価の場ではなく、集団が同じ方向を向くための装置なので、鳥の歌はその装置として非常に優秀です。
参考:鳥の童謡をまとめて選曲できるメドレー(曲名一覧が参考になる)

鳥の歌とわらべうたと歳時歌
「鳥の歌」は、かわいい童謡だけではなく、行事や暮らしと結びついた“わらべうた/歳時歌”の層があります。鳥取県のページに掲載された「日本の鳥は(歳時歌)」は、七草をそろえ、まな板をたたきながら歌う習俗として説明されており、これは鳥追い(害鳥や害虫を追い払い、流行病などを避ける行事)だと解説されています。つまり、鳥は「愛でる対象」であると同時に、昔の生活では「田畑を守るために追う存在」でもあり、その両面が歌に残っています。この二面性は、保育の題材として意外性があり、年長児の“文化への入口”になります。
また、この歳時歌の面白い点は、「歌う」ことが単なる娯楽ではなく、共同体の行為(祈り・予防・願掛け)になっていることです。正月の時期に七草を扱う食育や行事の導入として、「七草=粥」だけで終わらせず、「七草を刻む所作に歌があった」という話を添えると、活動に厚みが出ます。保育園の行事は毎年繰り返すからこそ、“同じ内容の焼き直し”になりやすいですが、こうした地域資料を一つ入れるだけで、先生側も新鮮さを保てます。
ただし、保育園でそのまま再現する必要はありません。現代の園で扱うなら、刺激の強い言葉や差別的な表現が含まれないかは必ず確認し、必要に応じて「由来の紹介」に留めるのが安全です。再現する場合も、まな板を叩く代わりにタンバリンやカスタネットに置き換えたり、「鳥追い=追い払う」ではなく「一年元気に過ごせますように」と目的を言い換えたりできます。行事歌は“形式の再現”より、“意味の翻訳”が保育の仕事です。
参考:七草・鳥追いの行事としての背景(解説が具体的で保育の行事設計に役立つ)
鳥の歌の独自視点の観察と図鑑
検索上位の多くは、童謡の歌詞紹介・ピアノ・動画・保育での使い方に寄ります。一方で、保育園の現場に効くのに意外と書かれていないのが、「鳥の歌」を“観察”に接続する設計です。歌は室内で完結しがちですが、鳥は園庭・散歩・公園で実物に会える可能性が高い題材なので、歌と自然体験の往復ができます。これは、歌を「その場の活動」から「生活の言語」へ引き上げる方法です。
具体的には、「ことりのうた」の“さえずり”を、実際の鳥の鳴き声の聞き分け遊びに変換できます。大人はつい「鳥はチュンチュン」と一括りにしがちですが、子どもは音の違いに敏感です。朝の自由遊びで「今日は園の近くで何の音がした?」を拾い、鳴き声を“音のまま”再現させると、歌の「ピピピ」「チチチ」が“ただの歌詞”ではなく、世界の音を写す記号になります。すると、歌に戻ったときに表情が変わります。自分が聞いた音を、歌の中に見つけられるからです。
さらに発展として、クラスで“鳥の図鑑(ミニ)”を作ると、歌が継続教材になります。
・📘図鑑カード:見た鳥/色/いた場所/鳴き声(文字でも絵でもOK)
・🖍️制作:羽の模様をクレヨンでこすり出し風に表現(細い線=羽毛のイメージ)
・🎶音:その鳥の“鳴き声フレーズ”をみんなで決めて、歌に差し込む(替え歌ではなく「呼び声」として)
・🗓️季節:同じ場所でも季節で鳥が変わることを、カードの枚数で体感する
保育園での歌は「毎日歌うから身につく」反面、「毎日歌うから惰性になる」危険もあります。観察と図鑑を入れると、同じ「鳥の歌」が“今日の発見”に更新されます。歌を「覚えるもの」から「確かめるもの」へ変えると、子どもは強くなります。見た・聞いた・真似した・歌った、が一本の線でつながり、活動の説得力も上がります。結果として、鳥の歌は“音楽”であると同時に、“科学の入口”にもなります。


