竹の歌・中島みゆきが保育士に届けるメッセージ
保育士の5年以内離職率は42.2%にのぼりますが、「竹の歌」を知ると離職を考える頻度が下がる人がいます。
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竹の歌・中島みゆきの歌詞全体の意味と背景
「竹の歌」は、中島みゆきが1995年11月に初演した音楽劇「夜会VOL.7 2/2」のために書き下ろしたオリジナル曲です。アルバムとしては1999年11月3日発売の「日−WINGS」の1曲目に収録されており、演奏時間は約5分53秒というじっくり聴かせる作品になっています。
歌詞の冒頭はこうはじまります。「遙かな山から吹きつける風に ひれ伏しながら けして折れはせぬ」。ここで描かれているのは、竹の木の特性です。竹は強風が来ても根こそぎ倒れることなく、しなやかに曲がりながら折れない。これが「竹の歌」全体を貫く中心的なイメージです。
「折れない」のが基本です。
サビに相当するフレーズには「地下に根を張る あの竹林」「地下に根を張る あの竹の歌」といった言葉が繰り返し登場します。目に見える地上の部分だけではなく、地下に深く広く根を張ることで、嵐にも雨にも耐えられる。そのことへの尊敬と憧れが、この歌の核心にあります。
また「月の日 火の日 水の日 木の日 金に踊って 土と日に還る」という一節は、一見すると曜日を並べているだけのように聞こえますが、実はここには東洋哲学の「陰陽五行説」が巧みに組み込まれています。月・火・水・木・金・土・日は惑星と結びついており、五行(木・火・土・金・水)と陰陽(月・日)の思想体系そのものです。
つまり「竹の歌」は、単なる自然賛歌ではなく、「万物の変化に柔軟に対応し、必要があればどのような姿にも成り変わることができる」という東洋思想のメッセージを凝縮した歌といえます。意外ですね。
夜会「2/2」の舞台は、アジアを一人旅する日本人女性が諸事情で帰国できなくなり、しだいに現地の生活に順応していく物語です。中島みゆき自身がヒロインを演じ、この曲で「大地に根を張って生きるアジアの精神」と和合していく姿が表現されました。1995年の初演が好評を博し、小説化・映画化(2005年)を経て、2011〜2012年にも再々演されるほどの名作です。
この歌が保育士に響く理由。それは、嵐にひれ伏しながらも折れない竹の姿が、日々の保育現場でさまざまな困難に向き合いながらも子どもたちのために踏ん張り続ける保育士の姿に、自然と重なるからです。
竹の歌・中島みゆきが保育士の心に響く理由と歌詞の深読み
保育士の仕事は、外からはなかなか見えにくい苦労の連続です。厚生労働省のデータによると、保育士の5年以内離職率は約42.2%にのぼります。10人いれば4人以上が5年以内に職場を離れている計算で、これはサッカーチームの半分近くがいなくなるようなイメージです。
離職理由の上位には「仕事量が多い(69.8%)」「労働時間が長い(56.6%)」「職場の人間関係(33.5%)」といった項目が並びます。毎日子どもたちの前では笑顔でいなければならない一方、裏では膨大な書類仕事や保護者対応に追われる。そのギャップが積み重なって、心が折れてしまうケースは少なくありません。
厳しいところですね。
そんなとき、「竹の歌」の歌詞は不思議な力を持ちます。「ひれ伏しながら けして折れはせぬ」というフレーズは、「頑張れ」という外からの叱咤ではなく、「ひれ伏してもいい、でも折れなくていい」という内側からの肯定です。保育士として、保護者や上司からプレッシャーを受けても、嵐の日に竹がしなやかに曲がるように、その場では頭を下げながらも心の芯は折らずにいられる。そういうしぶとさを、この歌は静かに讃えています。
「けして折れはせぬ」が条件です。
さらに「地下に根を張る あの竹林」というフレーズにも、保育士として深く共感できる部分があります。竹の強さの秘密は、地上から見えない地下にあります。地下茎は横に広がり、互いにつながり合い、ひとつの竹が倒れても全体は生き残ります。保育士の仕事も同様です。子どもの心に刻まれる影響、同僚との助け合い、地域のつながり。それらは目に見えにくくても、確実に社会の根を支えています。
「ゆく夏来る夏 照りつける熱に 埋もれながら けして消えはせぬ」というフレーズも印象的です。毎年入れ替わる子どもたち、変わっていく環境の中でも、保育士としての自分は消えない。そういう自己肯定の視点で読むことができます。
中島みゆきのこの歌には「疲れたときに背中を押してくれる」だけでなく、「疲れたままでも折れずにいていい」という言葉の力があります。保育士にとって、これは大きな違いです。
竹の歌・中島みゆきのアジアへの広がりと独自の文化的背景
「竹の歌」は日本国内にとどまらず、アジア全域で愛されている曲でもあります。これはあまり知られていない事実です。
台湾の人気歌手・リッチー・レン(任賢齊)が「天涯」というタイトルで中国語カバーを発表し、台湾ドラマのエンディングテーマにもなりました。さらにその「天涯」を中国の女性歌手が再びカバーするなど、複数の国にまたがって伝わっています。コンピレーションアルバム「中島みゆき的アジアン・カバーズ」には、テレサ・テン、フェイ・ウォンなど香港・台湾の大物歌手たちによる中島みゆき楽曲のカバーが収録されており、「竹の歌」もその文脈の中にあります。
これは使えそうです。
なぜアジアでこれほど受け入れられたのかというと、「竹」という植物がアジア全域において文化的・精神的シンボルだからです。中国や台湾、ベトナム、インドネシアなど、竹は生活に密着した植物であり、「節を持ちながら真っ直ぐに伸びる」「しなやかで折れない」といった人の生き様の比喩として古くから使われてきました。
夜会「2/2」がベトナムを舞台に選んだのも偶然ではありません。「竹」と「紅い河」の風景を合わせ持つ国として、物語の核心に据えられたのがベトナムだったのです。
保育士として、子どもたちに異文化への興味を育てるとき、こうした「竹」の持つ文化的多様性は、保育活動のヒントにもなります。竹を使ったリズム楽器(竹のマラカスや竹筒太鼓など)を子どもたちと一緒に作りながら、「竹の歌」のような柔らかく力強いメロディを流す。そんな活動と合わせて紹介できると、音楽活動の幅が広がります。
竹の工作や楽器づくりに使えるアイデアは、保育専門誌「ポット」や「プリプリ」などに毎号掲載されており、季節の行事に合わせた内容が豊富です。活動のネタ探しに役立てると良いでしょう。
竹の歌・中島みゆきの歌声と表現力が生み出す効果
中島みゆきの歌声は、低音から高音まで幅広い音域を持ちながらも、地声の中高音発声に特徴があります。「竹の歌」では、その声の特性が最大限に活かされており、曲全体に独特の重厚感と包容力が生まれています。
「竹の歌」のアルバムバージョン(日−WINGS収録)では、アメリカのセッションミュージシャンたちが演奏に参加しています。ドラムはケニー・アロノフ、ベースはボブ・グラウブといった名だたるミュージシャンたちで、それぞれエルトン・ジョンやジョン・レノンのレコーディングにも参加したプロフェッショナルです。日本語の歌詞を載せながらも、国際的な演奏陣が醸し出すグルーヴは独特の存在感を生み出しています。
演奏の質が条件です。
夜会バージョン(VOL.7・1995年)と、アルバム収録バージョン(1999年)では、演奏のアレンジが微妙に異なります。夜会版は5分23秒、アルバム版は5分53秒と、アルバム版のほうが約30秒長く、よりドラマティックな展開になっています。聴き比べてみると、同じ歌詞でも受ける印象がかなり変わることに気づきます。
中島みゆきの「夜会」シリーズは、コンサートでもミュージカルでもない「言葉の実験劇場」として位置づけられています。通常のコンサートと違い、ストーリーと楽曲が一体化した演劇形式で、1989年から2019年まで計20回開催されました。東京と大阪でしか上演されない稀少なイベントで、チケット入手は毎回困難を極めました。
「竹の歌」はその夜会の中でも特別な位置を占める曲です。「2/2」は1995年、1997年、2011〜2012年と3回上演され、いずれも高い評価を受けました。映画化(2005年、瀬戸朝香・渡部篤郎主演)もされたことで、夜会シリーズの中でも最も広く知られる演目のひとつになっています。
中島みゆきの「夜会」とは何か?全作一覧と解説(yumeojiko.com)
竹の歌・中島みゆきを保育活動に活かす保育士ならではの視点
「竹の歌」は、子どもたちに直接聴かせる曲というより、保育士自身が自分の心を整えるためのBGMとして使うのに最適です。しかし、保育活動の中で「竹」というテーマを切り口にすると、思いがけず豊かな活動が広がります。
まず自然観察の面では、竹・笹は季節を問わず緑を保ち、七夕(7月7日)の行事でも子どもたちにとって身近な植物です。年長クラスであれば「竹はなぜ折れないの?」という問いかけから、植物の根と茎の働きを簡単に探るごっこ遊びへ発展させることもできます。
音楽活動の面では、竹の持つリズムが使えます。竹を叩いて音を出す「竹の楽器」は、インドネシア(アンクルン)やフィリピン(バンブーマリンバ)など東南アジア各地の伝統楽器です。100円ショップで販売されている竹の箸や竹串を使った手軽なリズム遊びとして取り入れている保育士も増えています。そこに「竹の歌」のような穏やかで力強いBGMを加えると、活動全体に統一感が生まれます。
これは使えそうです。
製作活動では、七夕シーズン(6〜7月)に竹の切り口の形を観察してスタンプ遊びにしたり、笹の葉を使って「笹船」を折るなどのプログラムが人気です。保育士としてこれらの活動を準備するとき、「竹の歌」の「地下に根を張る あの竹林」というフレーズを思い出しながら、「目に見えないところで根を張り続けることの大切さ」を自分自身に言い聞かせることができます。
保育士という仕事は、子どもの10年後、20年後に影響を与える「地下の根」のような存在です。その成果はすぐには見えません。しかし確実に社会の土台を作り続けている。そういう職業観を日常的に持ち続けるための支えとして、「竹の歌」の歌詞はとても強いメッセージを持っています。
また、職場の同僚や先輩保育士とのコミュニケーションのきっかけとしても活用できます。「最近、中島みゆきの竹の歌を聴いているんですが」と話すだけで、共通の話題が生まれることも少なくありません。中島みゆきのファン層は30代〜60代に幅広く存在しており、年齢の異なる同僚との橋渡し役になることもあります。
職場の人間関係が改善されるだけでも、離職率の低下につながるデータがあります。厚生労働省の調査では、人間関係を理由に退職した保育士は33.5%にのぼります。逆に言えば、職場の人間関係が良ければ3人に1人の離職を防げる可能性があります。小さなコミュニケーションの積み重ねが、職場環境を変える力を持っているのです。
保育士仲間でこういった深い歌を語り合える関係を持てると、日々のしんどさも少し違って見えてくることがあります。


