ソットボーチェの意味と保育士が現場で使える声のコントロール術
保育士の声かけが「大きすぎる」と、子どもの自己制御能力の発達が平均12%遅れるという研究データがあります。
ソットボーチェの意味とイタリア語としての語源
ソットボーチェ(sotto voce)はイタリア語が語源の音楽用語です。「sotto」は「下方に・以下に」という意味を持ち、「voce」は「声」を意味します。2つの言葉を合わせると「声の音量を下に(抑えて)」という指示になります。
日本語に訳すと「静かに抑えた声で」「ささやくように」というニュアンスです。これが基本です。
音楽の世界では、声楽家や器楽奏者に対して「音量を落として、ひそひそと演奏・歌うように」と指示するときに楽譜へ書き込まれます。強弱記号(音の強さ・弱さによる表現についての記号)の一種に分類されています。
楽譜上では、略記の「s.v.」が用いられることが多いです。指揮者や演奏者によっては「発想記号(曲想標語)」として捉えることもあり、その場合は「ひそひそと声を抑えるように演奏する」くらいのニュアンスになります。意外ですね。
つまり、ソットボーチェは単純な「小声で」という指示以上の、表現上の意図が込められた言葉です。
ソットボーチェと他の音楽用語との違い・類義語
ソットボーチェと似た用語として「ピアノ(piano / p)」や「ピアニッシモ(pianissimo / pp)」があります。これらはいずれも音量を小さくする指示ですが、ニュアンスに差があります。
| 用語 | 言語 | ニュアンス | 略記 |
|---|---|---|---|
| ソットボーチェ(sotto voce) | イタリア語 | ひそやかに・ささやくように | s.v. |
| ピアノ(piano) | イタリア語 | 弱く・静かに | p |
| ピアニッシモ(pianissimo) | イタリア語 | 非常に弱く | pp |
| メッゾ・ピアノ(mezzo piano) | イタリア語 | やや弱く | mp |
ピアノやピアニッシモが「音量の数値的な小ささ」を指すのに対し、ソットボーチェは「ひそやかな質感・雰囲気」を重視した表現です。これは使えそうです。
対義語としては「フォルテ(forte / f)」が挙げられます。フォルテは「強く・大きく」という意味で、ソットボーチェとは正反対の指示になります。
声楽分野では特に、ソットボーチェは「囁くように歌う」技法として重要視されており、歌手が声帯に負担をかけずに静かな表現をするための技術とも関わっています。
ソットボーチェの意味を保育士が現場で活かす「小声戦略」
ここが多くの保育士にとって意外な盲点です。声を「大きくして注目させる」ことが当然だと思っていませんか。実は、静かな声・ひそひそ声のほうが、子どもの注意をより強く引く場面が多いのです。
これを「小声戦略」と呼ぶ保育・教育の専門家が増えています。人は予想外に小さな声を聞いたとき、「え、何を言ってるの?」と自然に耳を傾ける心理が働きます。子どもも同様で、先生が突然ひそひそ声になると、「聞き逃してはいけない」という意識が生まれます。
具体的な活用シーンをまとめました。
- 🌙 お昼寝の導入時:大きな声でなく、ソットボーチェで絵本を読むことで入眠を促しやすい
- 🎨 製作活動の説明時:ざわついたクラスに、あえて小声で話し始めると子どもが静かになる
- 😤 興奮している子どもへの声かけ:叫んでいる子に大声で返すと逆効果。静かな声でゆっくり話すと落ち着きやすい
- 🎵 音楽・リズム遊びの場面:ソットボーチェのパートを取り入れることで、音の強弱の概念を遊びながら体験させられる
声の強弱を意識的に使い分けることが原則です。これは保育技術の中でも「声のコントロール」という専門スキルのひとつとして、保育士養成校でも取り上げられているテーマです。
ソットボーチェの意味から学ぶ・保育士の声が子どもの発達に与える影響
保育士の「声の大きさ」は、子どもの情緒発達に直接影響するという研究が複数報告されています。常に大きな声が飛び交う保育環境では、子どもが慢性的なストレス反応(コルチゾールの分泌増加)を示すケースがあることが指摘されています。
逆に、静かで落ち着いたトーンで話しかけられた子どもは、語彙の習得スピードが速いとも言われています。これは重要なポイントです。
保育士が意識すべき「声のコントロール」の基本をまとめます。
- 📢 緊急時・安全確保:大きくはっきりした声(フォルテ)で即座に伝える
- 💬 個別の声かけ・安心させる場面:ソットボーチェで穏やかに、目線を合わせて話す
- 🎶 集団への指示:最初だけ大きな声で注目させ、その後は静かな声に切り替える
- 🌿 感情的な場面・ケンカ仲裁:決して怒鳴らず、静かで落ち着いたトーンを維持する
声の質(トーン・速度・リズム)は、音量と同じくらい重要です。ゆっくりとした話し方と低めの音程も、子どもに安心感を与えます。
保育士の音声表現力を高めたい場合、NHK放送研修センターが提供する「話し方・声のトレーニング」関連テキストや、日本保育協会が発行する保育技術関連の資料が参考になります。
声のコントロールは、一朝一夕に身につくものではありません。日々の意識的な実践が大切です。
ソットボーチェの意味を音楽活動に取り入れる・保育士向け実践アイデア
保育現場における音楽活動は、ただ歌を歌うだけではありません。ソットボーチェという概念を子どもに体験させることで、音の強弱・表現の豊かさを遊びながら学ばせることができます。
「音の大小ゲーム」は特に有効な活動です。先生が「大きな声で!(フォルテ)」「今度はひそひそ声で(ソットボーチェ)!」と呼びかけながら一緒に歌う活動で、3歳児クラスでも楽しめます。
具体的なアクティビティのアイデアをご紹介します。
- 🦁 動物の声マネ遊び:ライオンは大きな声(フォルテ)、ネコはひそひそ声(ソットボーチェ)などキャラクターに結びつける
- 📖 絵本の読み聞かせ:場面によって意図的に声を大小させ、物語の臨場感を高める
- 🎼 わらべうた・手遊び:「大きな声」「小さな声」の部分を楽譜や絵カードで視覚化して示す
- 🌟 音楽会・発表会の指導:「ここはソットボーチェで歌ってみよう」と音楽用語を実際に使って教えることで語彙力も高まる
音楽活動でソットボーチェを意識的に取り入れると、子どもの表現力・傾聴力の両方を同時に育てられます。これは使えそうです。
子どもに音楽用語を教える際には、難しい言葉として教えるのではなく、「ひそひそ声で歌う」という体験に紐づけることが大切です。体験から言葉へ、という順序が習得を早めます。
保育士向けの音楽指導に関する参考資料として、文部科学省の「幼児期の音楽に関する指導資料」も実践の根拠として活用できます。
文部科学省 幼稚園・保育所関連資料|幼児教育の指導に関する情報
ソットボーチェという一つの音楽用語を知るだけで、保育の声かけも音楽活動も、まったく新しい視点で見直せるようになります。

