ショーション 声楽
ショーション 声楽の歌曲:代表作と狙い
ショーソン(Ernest Chausson)の声楽作品で、学習者がまず触れやすく、なおかつ「フランス語の歌」「後期ロマン派の和声感」「詩の語り」をまとめて鍛えやすいのが、管弦楽伴奏(またはピアノ伴奏版)も存在する大規模歌曲《愛と海の詩(Poème de l’amour et de la mer)op.19》です。
この作品は2つの詩(「水の花」「愛の死」)を核にしつつ、間に管弦楽の間奏が入る構造で、声が“伴奏の上に乗る”というより“オーケストラの呼吸の中で語る”発想が求められます。
さらに実務的に重要なのが、同じ詩人ブショールの詩による歌曲「Le Temps des lilas(ライラックの花咲く頃)」です。
参考)Le Temps des Lilas ~リラの花咲くころ~ …
《愛と海の詩》の終結部に、この歌曲の詩句(最後の4節)をショーソン自身が書き写して取り入れた、と解説されることがあり、作品横断で“詩の時間感覚”を設計する学習材料になります。
参考)ラジオ生活:クラシックの庭 ショーソン「愛と海の詩」Erne…
意外に見落とされがちな観点として、ショーソンの有名曲「詩曲(Poème)op.25」は一般にヴァイオリンと管弦楽のための作品で、声楽曲ではありません。
ただし、フランス語のタイトル「Poème(詩曲)」が示す“標題を超えて詩情を音で語る”態度は、ショーソンの歌曲解釈にも直結するため、声楽側が「詩曲的に歌う」と言うときの比喩の参照枠としては役に立ちます。
参考)ロシアの文豪が書いた愛をフランスの作曲家ショーソンが《詩曲》…
参考:ショーソン歌曲の分析的な注意点(母音配置・跳躍など)に触れており、練習の観点づくりに有用
ショーション 声楽の発音:フランス語とR
フランス歌曲で多くの学習者が最初につまずくのは、「フランス語の会話発音を正確に再現すること」と「歌としての語感の美しさを優先すること」が必ずしも一致しない点です。
実務的には、舞台(歌唱)として成立する発音は“辞書の正しさ”より“音楽と一体化した明瞭さ”が優先される、という立場をまず受け入れると、練習が早く進みます。
Rについては、クラシック声楽ではイタリア語と同様に巻き舌(ふるえ音)を基本にする、という整理が紹介されています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/f0d3c0b0a985f5d17cd86cf60db40d4a76756879
ただし、Rを常に強調するのではなく、語頭や強調すべき箇所だけでよい、単語中の短い発語では巻き舌を強く意識しなくてよい、という現場目線の注意も重要です。
さらに「RよりもLをしっかり意識し、RとLの違いを明快にすることが大事」という指摘は、歌詞が聴き取れない原因を“Rが弱い”と誤診しがちな人にとって、修正の近道になります。
練習のコツ(レッスンでそのまま使える形)を、ショーソン歌曲に寄せて具体化します。
✅ Rの練習は「単語単体」より「フレーズ内の強調点」で行う:例として、クレッシェンドで言葉のエネルギーが上がる箇所にだけRの芯を置く(過度に巻くと、フランス歌曲の柔らかい陰影が硬くなる)。
✅ Lは子音の“輪郭”担当:Lが曖昧だと母音だけが流れて、ショーソン特有の和声の変化点で言葉が落ちます。
✅ 「通す子音」と「溶かす子音」を分ける:RやLは通すが、破裂音を強くやり過ぎない(弱声の美しさを守るため)。
参考:会話フランス語との差(R・鼻母音・E母音)を、歌唱目線で簡潔に整理している
ショーション 声楽の発音:鼻母音とE
鼻母音は「4種類を厳密にやり分ける」より「3種類にまとめる」発想が提示され、特にOEの鼻母音をEの鼻母音に寄せる考え方が紹介されています。
ここで大切なのは、細分化の正確さよりも、Eに対してAとOの鼻母音の差をしっかり出すこと、という優先順位です。
ショーソンの歌曲は、旋律が“過剰に歌い上げる”方向へ行くと途端に重くなりやすいので、鼻母音の処理は「響きを濁らせない」ことを最上位目標に置くと安定します。
E母音については、狭いE(e)を無理に鋭く作ると強調されがちで美しくないため、定冠詞Les、不定冠詞Des、所有格Mesなどで使われるEは“広い方が歌唱に馴染みやすい”という実践的な提案があります。
これをショーソンに当てはめると、語尾の弱声や、和声が陰る瞬間のニュアンスが崩れにくくなります。
鼻母音とE母音は、発声(息・喉・共鳴)とセットで調整しないと逆効果になりやすいので、次の順で試すと事故が減ります。
🔧 ①母音を“明るくしよう”としない:まずは息の流れを一定にし、母音は薄めの濃度で統一する(明るさは後から足す)。
🔧 ②鼻母音は“鼻に入れる”より“口腔の形を保持して鼻が混ざる”感覚:鼻へ押し込むと、言葉は出るが響きが詰まります。
🔧 ③広いEで語尾を揃える:フレーズ終止でEが細くなると、ショーソンの“余韻”が途切れて聴こえます。
ショーション 声楽の発声:弱声とレガート
ショーソンの歌曲は、強さで押すより、弱声の密度とレガートの質で世界観が決まります。
《愛と海の詩》は大規模作品で、独唱がメゾ・ソプラノ/ソプラノ/バリトン等で歌われるとされますが、歌詞の主人公は男性である一方、女声で歌われることが一般的だという説明もあり、声種に応じて“語り口”の設計が変わる点が面白いところです。
弱声のトレーニングは「小さく歌う」ではなく、「支えを保ったまま、声帯の接触圧を上げ過ぎない」方向で組み立てます。
ここで役立つのが、発音を“歌うための発音”として捉え、辞書的な厳密さより音楽的表現を優先する、という考え方です。
つまり、ショーソンでは「母音を完璧に作る」より「フレーズが途切れない母音運搬」を優先した方が、結果的にフランス語も伝わります。
レガートの具体策を、練習手順として書きます。
- 歌詞なしで母音だけ:まずはEや鼻母音で“息の流量が変わらない”ことを確認する(音程より流量)。
- 子音は“前で軽く”:R/Lは輪郭を作るが、息の流れを止めない。
- 最後の子音・語尾は“音楽の余韻”に置く:フレーズ終止で母音が急に細くなると、作品の陰影が痩せます。
ショーション 声楽の独自視点:詩曲と表現
検索上位の定番は「発音」「代表曲」「歌詞解釈」になりがちですが、実際に歌が変わる独自視点として有効なのが、“詩曲(Poème)的にフレーズを設計する”という発想です。
ここで言う詩曲は声楽曲そのものではなく、ショーソンの器楽曲《詩曲(Poème)op.25》が示す「標題を外しても詩情が立ち上がる音の運び」を、声楽のフレージングに借りるという意味です。
具体的には、言葉を強調してドラマを作るのではなく、和声の移ろい・間奏との受け渡し・テンポ感の“揺れの許容範囲”で詩情を出します。
《愛と海の詩》が2つの詩と間奏から成るという構造は、「歌の部分だけ練習する」癖がある人ほど損をしやすく、間奏のあとに“別の人間として再登場する”くらいの気持ちで音色を替えると、作品が立体化します。
この視点をレッスンの課題に落とすなら、次が効果的です。
- 🎭 間奏前後で「声の色」を2種類作る:同じ弱声でも、前は“期待”、後は“記憶”のように、母音の密度を微妙に変える。
- 🎧 自分の録音を“歌詞”ではなく“間”だけ聴く:間が不自然だと、詩情より説明口調に聴こえやすい(ショーソンでありがちな失敗)。
- 🗣️ 発音は目的ではなく手段:R・鼻母音・E母音は、レガートを守るために最適化する(発音を直すほど歌が硬くなる場合は順序が逆)。


