自然体験活動 保育 ねらい 歌 うた

自然体験活動 保育 ねらい

自然体験活動を「歌」で深める見取り図
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ねらいは「五感」と「探究」

自然の応答性・多様性・刺激性・適度な困難性を生かすと、子どもの感性や探究心、自己肯定感などが育ちやすくなります。

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歌は「体験の言語化」を助ける

観察→発見→驚き→共有の流れに、短い歌や手遊びを挟むと、子どもが気づきを言葉にしやすくなります。

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安全と環境構成で「できた」を増やす

服装・危険予測・活動範囲の明確化をしつつ、無理強いしない援助で成功体験を積み上げます。

自然体験活動 保育 ねらい 五感 体験を育てる

 

自然体験活動の価値は、「自然に触れると良いらしい」という雰囲気ではなく、自然が持つ性質を理解すると一気に設計しやすくなります。長野県教育委員会の自然教育・野外教育の資料では、自然の特徴として「応答性の高さ」「多様性の高さ」「刺激性の高さ」「適度な困難性」が挙げられています。たとえば、水たまりの氷を踏むと“パリッ”と割れる、枝を曲げるとしなり、さらに力を入れると折れる――こうした反応の分かりやすさが、子どもの試行錯誤を誘発します。

保育の文脈で言い換えるなら、「やってみたら返ってくる環境」を用意できる、ということです。室内の玩具でも試行錯誤はできますが、自然は反応が一様ではありません。同じ落ち葉でも乾き具合が違い、同じ石でも重さや手触りが違い、風や匂いは毎回変わる。そこに子どもは“自分の加減”を合わせようとします。資料でも、対象に合わせて加減を調整する力、予想通りの反応が得られた成就感、意外な反応への驚きが次の好奇心につながる、という流れが示されています。

参考)https://itbs-ecopo.jp/wp-content/uploads/2019/03/6ce51ee022218728fa0c69046708cd28.pdf


歌に興味がある読者向けにポイントを一つ足すなら、五感体験は「歌の素材」になりやすい点です。耳で聞いた「風の音」、鼻で感じた「土の匂い」、手で触れた「木の皮のざらざら」。こうした感覚語は、子どもがそのまま歌詞の“ことば”として拾いやすく、日々の歌(うた)に落とし込むと記憶に残りやすいです。自然の中での沈黙や耳を澄ます活動も、アクティビティ例として「ネイチャーヒアリング(自然の音を聴く)」が紹介されており、感覚を研ぎ澄ませる設計ができます。​

実践の組み立て例(短時間・低年齢にも調整可能):

  • 導入:園庭や散歩先で「今日の音」を探す(鳥、葉ずれ、車の音など“自然+人工”を区別してみる)
  • 体験:触る・嗅ぐ・聴くのどれかを主役にする(全部やろうとしない)
  • 共有:最後に“感じたこと”を一言で言う→その言葉を保育者が短い節にして歌う(即興でOK)

自然体験活動 保育 ねらい 探究心を育てる

自然体験活動の「ねらい」を書くときに、探究心は便利な言葉ですが、現場ではもう少し具体化すると指導計画が作りやすくなります。長野県教育委員会の資料では、自然体験の中で子どもが対象に自ら働きかけ、応答を解釈し、試したり楽しんだりするプロセスが、忍耐力・創造力・探究心・論理的思考力などを働かせ、手応えが自己肯定感や主体性につながると説明されています。

つまり、探究心を育てるコツは「答えを教える」より「手応えが返る問い」を置くことです。保育でよくある失敗は、自然体験を“行事の思い出”で終わらせてしまうことです。もちろん行事にも価値がありますが、ねらいを達成するには、同じ場所・同じ活動を時期を変えて繰り返す、ねらいが近いプログラムを一定期間内に複数回実施する、といったポイントが資料で示されています。​
歌との接続を考えるなら、繰り返しは歌と相性が抜群です。たとえば「春夏秋冬さがしをしよう」というアクティビティは、四季の変化を感じ取る探索活動で、年間を通じて同じ森で活動すると変化が分かりやすいという留意点が書かれています。​

この“同じことを時期を変えてやる”は、そのまま「季節のうた」の導入にもなります。歌が先で自然が後、ではなく、自然の変化を見た後に歌を歌うことで、歌詞が「実感のことば」になりやすいです。

探究心を深める「問い」の例(年齢に合わせて難易度調整):

  • 「今日の葉っぱは、昨日の葉っぱとどこが違う?」(比較)
  • 「同じ色はどこにある?」(分類)※色を探す活動も例示されています
  • 「音はどこから聞こえた?」(推理)※ネイチャーヒアリングの発想
  • 「触ったものを、目で見ずに当てられる?」(感覚の精度)※“お宝当て”の発想

探究心を“上げる”だけでなく、保育者が“見取る”視点もセットにすると記事として強くなります。たとえば、子どもが同じことを何度も試しているなら「粘り強さ」、別の素材に置き換えているなら「転用」、友だちに見せに行くなら「共有とコミュニケーション」。資料では、自然体験がコミュニケーション能力や信頼関係の形成にもつながるねらいとして整理されています。​

自然体験活動 保育 ねらい 安全 服装 環境構成

自然体験活動は、楽しい一方で「安全」を計画に埋め込まないと継続が難しくなります。長野県教育委員会の資料では、アクティビティ実施上の留意点として、子どもの特性を察知して個別に支援すること、土に触れる抵抗感がある子に無理強いしないこと、外部指導者がいる場合も担任が丸投げせず評価や支援に関わることが重要だと述べています。

また、各アクティビティの安全上の留意点には、長袖・長ズボン・帽子・軍手の着用、危険な動植物(ヘビ、ハチ、ウルシなど)への対処確認、暗い環境での活動時の配慮など、具体的な指示が繰り返し登場します。​

ここは記事の読み手(保育者)にとって即戦力なので、抽象論にせず、園で使えるチェック項目として提示するのが有効です。

現場で使える安全・環境構成チェック(例):

  • 活動範囲:子どもが「ここまで」と理解できる線引きがある(ロープ・目印など)
  • 服装:長袖・長ズボン・帽子・軍手を基本に、季節で調整する
  • 危険予測:ハチ・ウルシなど“地域で起こりがちなもの”を事前に共有する
  • 無理強い回避:触れない子には「見る係」「集める係」など役割を用意する
  • 振り返り:最後に感想を引き出し、価値づけをする(評価は子どもの変容に焦点)

歌(うた)が好きな園・クラスなら、安全ルールの定着にも歌を使えます。例えば「軍手、ぼうし、ながそで…」のように、準備物を短いリズムに乗せて唱えるだけで、注意喚起が“指示”ではなく“活動の一部”になります。安全面の要点は資料内で繰り返し示されているため、歌にしても内容がブレにくいのが利点です。​

権威性のある参考リンク(安全・プログラム設計の根拠/ねらいの整理に有用):

自然体験活動の重要性(自己肯定感・コミュニケーション等)と、ねらい別アクティビティ、実施上の留意点がまとまっています。

https://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/kyogaku/goannai/soshiki/documents/shizen-yagai1.pdf

自然体験活動 保育 ねらい 歌 うた 連携

ここからは「保育園での歌に興味がある人向け」というテーマに寄せて、自然体験活動と歌の連携を、ねらいに沿って“崩れない”形で整理します。自然体験のねらいは、感性・探究心・自己肯定感・協調性・コミュニケーション能力・信頼関係などに分類できるとされ、アクティビティもそのねらいに基づいて整理されています。

この枠組みに歌を当てはめると、歌は「表現」「共有」「振り返り」の装置として機能します。

連携の設計で大切なのは、歌を“余興”にしないことです。例えば、自然の中で「ネイチャーヒアリング」をした後、感じた音を言葉にして共有する時間を作る、という流れが資料にあります。​

ここで、子どもが言った言葉(例:「サラサラ」「ゴー」「ピタッ」)を保育者が節にして返すと、「聴く→言う→歌う→もう一度聴く」という循環が生まれ、体験が深くなります。

ねらい別:歌の入れどころ(例)

  • 感性:活動中は静かに、終わりに“音のまね歌”で共有(聴いたものを再現する)
  • 探究心:同じ場所で季節を変えて同じ歌を歌い、歌詞の“意味”が変わる体験を作る(春夏秋冬の視点)
  • 協調性:グループで作る活動(例:森のレストラン等)で、役割交代を歌で知らせる(合図のルール化)
  • 信頼関係:ペア活動(例:「わたしの木」など)の前に、安心感を作る短いわらべ歌を入れる

ここで、意外と見落とされがちな“ねらいの落とし穴”も押さえます。歌は場を一体化させますが、同時に「みんな一緒」を強めやすい道具でもあります。資料では、土に触れるのが苦手な子に無理強いすると自然から離れてしまう、といった個別配慮の重要性が指摘されています。​
歌の運用でも同様で、「歌いたくない」「声を出したくない」子どもがいる前提で、“ハミングだけ”“手拍子だけ”“聴く係”など複数の参加形態を用意すると、自然体験のねらい(主体性・自己肯定感)と矛盾しにくくなります。​

自然体験活動 保育 ねらい 独自視点 応答性 多様性

検索上位の記事では「自然遊びのねらい」「五領域」「指導計画」などが語られがちですが、少し独自の視点として“自然の設計変数”に注目すると、記事のオリジナリティが出ます。長野県教育委員会の資料が示す「応答性・多様性・刺激性・適度な困難性」は、実は保育の環境構成を点検するための“つまみ”として使えます。

つまり、同じ「散歩」でも、どのつまみを上げるかで、育つ姿の出方が変わるという考え方です。

例えば「応答性」を上げたいなら、子どもの働きかけに対して反応が返ってきやすい素材(氷、泥、水、枝、落ち葉)を選ぶとよい。逆に、造花や加工された素材は反応が均一で、応答性が弱くなりがちです。​
「多様性」を上げたいなら、同じ種類が大量にある場所より、木・草・石・水が混在する場所、視点を変えると別の遊びが生まれる場所が向きます。​
歌との接続でこの視点が効くのは、「今日は歌が盛り上がらない」を“子どもの気分”だけで片づけないためです。もしかすると、その日のフィールドは応答性が低く、子どもが「試す」余地が少なかったのかもしれません。あるいは刺激性が高すぎて落ち着かなかったのかもしれません。​

そう考えると、次の改善が“歌の選曲”だけではなく、“環境構成の調整”として見えてきます。

環境構成の微調整アイデア(ねらい→環境のつまみ)

  • 主体性・自己肯定感:適度な困難性を少し入れる(小さな段差、滑りやすい坂など)※安全配慮は前提
  • 感性:刺激性を上げる(匂いのある場所、音がよく聞こえる場所)→最後に言葉化・歌化
  • 協調性:多様性を上げる(役割が分かれる素材がある場所)→グループ活動へつなぐ

最後に、保育計画の文章として「ねらい」を書くときの言い回し例も置いておきます(そのまま転用しやすい形)。

  • 身近な自然に触れ、五感を通して心が動く体験を味わう。
  • 自然物への働きかけと応答を楽しみ、試したり工夫したりする中で探究心を育む。
  • 友だちと発見を共有し、言葉や歌(うた)で表現する喜びを感じる。
  • 無理強いをせず、個々の感じ方や関わり方を尊重しながら、安心して自然とかかわる。


増補改訂版 人と自然をつなぐ教育