シベリウス もみの木を保育で使いこなすポイント
もみの木を「クリスマス曲」だと思って12月だけ使っていると、年間300時間以上の活用機会を捨てていることになります。
シベリウス「もみの木」の作曲背景と北欧の精神
ジャン・シベリウス(1865〜1957)は、フィンランドを代表する作曲家です。 「もみの木」は1914年、第一次世界大戦が勃発した年に発表されました。 当時のフィンランドはロシア帝国の支配下にあり、ロシア語の強制など文化的な抑圧が続く苦しい時代でした。raindrop-baron.hatenablog+1
この曲は「5つの小品(樹の組曲)Op.75」の第5番にあたります。 組曲にはナナカマド、松、ポプラ、白樺、そしてもみの木という5つの樹が登場します。 つまり、この曲は単なるピアノ小品ではなく、フィンランドの大自然そのものを音楽で描いた作品です。
参考)5つの小品(樹木の組曲) 樅の木 Op.75-5/5 Pie…
もみの木はフィンランドで「永遠の生命の象徴」とされています。 古代ゲルマン人の時代から、厳しい冬でも緑を保ち続けるもみの木は信仰の対象になったほどです。 つまり「生命力の象徴」が基本です。
参考)名曲紀行 vol.8 シベリウス《5つの小品》より〈もみの木…
フィンランドには「シス(Sisu)」という言葉があります。 不屈の精神・忍耐力を意味するこの言葉は、文化に深く根付いています。 もみの木はその「シス」の象徴として、人々に愛され続けてきました。 保育士がこの背景を知ったうえでこの曲を子どもたちに聴かせるのと、そうでないのとでは、伝わる深みが全く異なります。
参考)ジャン・シベリウスと「樅の木」:フィンランドの自然を描いたピ…
1917年にはフィンランド独立を記念して、ヘルシンキ市内の公園にもみの木が植えられたという記録も残っています。 音楽と歴史が重なる、保育の「なぜ?」を深める素材として最適です。
🔗 参考:シベリウス「もみの木」の歴史的背景とフィンランドの状況について詳しく解説(名曲紀行 vol.8)
🔗 参考:シベリウスの生涯と「樅の木」の音楽的特徴・フィンランド精神との関係(note)
シベリウス「もみの木」の音楽的特徴と難易度の目安
この曲の最大の特徴は、冒頭から続くアルペジオ(分散和音)の流れです。 水が静かに流れるような音の連なりが、北欧の森の情景を見事に再現しています。 「メトロノームからは遠ざかり、自由に弾かなければならない」と言われるほど、即興的な表現が求められる曲です。
難易度はピアノ中級レベルとされています。 ブルグミュラー25の練習曲を終えたあたりから挑戦できる目安で、大人の発表会や保育士試験の選択曲としても人気があります。 中間部では曲調が一転し、力強い和音が響き渡ります。 穏やかな外見の裏に秘めた情熱、というのがこの曲の構造です。
参考)シベリウス「樅の木」(もみの木)の難易度を解説!【小学生の発…
弾き方のコツは「ゴールとピークを常に意識すること」です。 単なるアルペジオの連続にならないよう、どこへ向かっているかを把握して演奏することが求められます。 これは基本です。
保育士がこの曲をBGMとして使う場合、出力する機器の音質も意識してみてください。安価なBluetoothスピーカーではアルペジオの繊細な音の粒が潰れてしまいます。保育室で使うなら、2,000〜5,000円程度の小型ステレオスピーカーに切り替えるだけで、子どもたちの反応が変わることがあります。これは使えそうです。
🔗 参考:「樅の木」の難易度解説と演奏上の特徴について詳しくまとめた記事(seven-knives.online)
🔗 参考:日本ピアノ教育連盟による「樅の木 Op.75-5」の演奏解説(公式音楽百科)
シベリウス「もみの木」を保育の読み聞かせBGMに使う具体的な方法
読み聞かせにBGMを使う保育士は多いですが、「なんとなく静かな曲」を流しているケースがほとんどです。意図を持って選曲すると、子どもの集中力が変わります。
「もみの木」は冒頭の穏やかなアルペジオが、子どもの呼吸を自然にゆっくりさせる効果があります。これは「1/fゆらぎ」と呼ばれる、自然界に存在するリズムの特性と関係しています。川のせせらぎや木漏れ日と同じ揺らぎのパターンが、この曲には含まれています。結論は「自然音に近い音楽は、脳をリラックスさせる」です。
具体的な活用シーンをまとめると、以下のとおりです。
- 🌅 朝の会・落ち着きタイム:登園後の慌ただしい気持ちを整えるBGMとして
- 📖 絵本の読み聞かせ前:特に自然・動物・季節テーマの絵本との相性が抜群
- 😴 午睡(お昼寝)導入:中間部が来る前の穏やかな冒頭部分だけをループ再生
- 🎨 製作活動中:集中を促すBGMとして、音量を小さく設定して使用
「クリスマスだけ流す曲」という思い込みがあると、活用できる場面が極端に減ります。意外ですね。曲のテーマは「生命力・不屈の精神」なので、3月の卒園式の前後や、春の新年度スタートにも違和感なく使えます。
特に読み聞かせとの組み合わせでは、「もみの木」をかけながら読める絵本のリストを手元に持っておくと便利です。北欧・自然・冬のテーマだけでなく、「強く生きる」「仲間を助ける」系の絵本とも非常にマッチします。
保育士試験・発表会でシベリウス「もみの木」を選ぶ際の注意点
保育士試験の実技(音楽)では、課題曲が指定されるため「もみの木」を直接試験で使う機会は多くありません。しかし、職場の発表会や保護者参観での演奏曲として選ばれることは多い曲です。
難易度に関してはっきり言うと、「中級」という表記に安心しすぎると練習不足になりやすい曲です。 アルペジオが全編にわたって続くため、指の独立性と持久力が必要で、実質的な負荷はブルグミュラー25番修了後から半年〜1年程度の練習期間を見ておくのが安全です。
| チェック項目 | 目安・注意点 |
|---|---|
| 練習期間 | 最低3ヶ月、余裕を持つなら6ヶ月前から開始 |
| 難易度の実態 | ピアノ中級(ブルグミュラー修了〜ソナチネレベル) |
| 演奏の注意点 | メトロノームに頼らず「流れ」を意識して弾く |
| 楽譜の入手 | 「5つの小品 Op.75」に収録。楽天・Amazonで1,200〜2,000円程度 |
| 演奏時間 | 全曲で約3〜4分(発表会1曲として適切な長さ) |
楽譜の購入前に、まずYouTubeで複数の演奏動画を聴き比べて「自分のイメージに合う演奏」を見つけておくことが重要です。 演奏者によって、穏やかな解釈と力強い解釈に大きな差がある曲です。 聴き比べをしてから楽譜を選ぶのが原則です。
🔗 参考:「樅の木(シベリウス)」のピアノ中級向け演奏解説動画(YouTube)
シベリウス「もみの木」を使った保育士ならではの情操教育アイデア
音楽を「聴かせるだけ」で終わらせず、子どもの感性を引き出す活動につなげるのが保育士の腕の見せ所です。「もみの木」はその構造上、3つのフェーズ(静→動→静)を持っているため、感情の変化を体で表現するワークに非常に向いています。
以下のような活動が現場で取り入れやすいです。
- 🖌️ 音楽を聴きながらお絵描き:「この音はどんな色?どんな形?」と問いかけ、自由に描かせる
- 🌿 自然素材との組み合わせ:松ぼっくりや枝を並べながら曲を流し、「もみの木ってどんな木?」と対話する
- 🧘 身体表現(ムーブメント):穏やかな部分は「木がゆっくり揺れる動き」、中間部は「風が強くなる動き」で身体で表現
- 📝 絵本製作への活用:「もみの木」を聴いて「北欧の森の絵本」を子どもたちと一緒に作る制作活動
ポイントは「正解を求めない」ことです。シベリウスの音楽は描写的ですが、解釈の幅が広い作品です。 「こう感じなければいけない」という指導ではなく、「あなたはどう感じた?」という問いかけが、子どもの感受性を育てます。これがこの活動の条件です。
参考)#123: こんなときだから♪シベリウス〜ロマンティックな夜…
4〜5歳児クラスでは、曲を聴いた後に「この曲に出てくる木は、どんな気持ちだったと思う?」と聞くと、驚くような言葉が返ってくることがあります。「さむかったけどがんばってた」「ずっとそこにいた」といった言葉は、子どもが曲の本質を直感的に捉えている証拠です。いいことですね。
保育士自身が曲の背景(フィンランドの歴史・シスの精神)を知っておくことで、子どもの言葉を深掘りする声かけができるようになります。 知識は直接話さなくても、保育士の「問いかけの質」に自然と反映されます。
🔗 参考:シベリウス「もみの木」の詩的な解釈と北欧文化との関係(note アートな小部屋)

シベリウス:樹の組曲 Op.75-5「樅の木」

