声域平均男性保育士が知るべき子どもとの歌い方

声域の平均を男性保育士が知ると保育の歌が変わる

男性の声域は「高いほど歌が上手い」と思っていませんか?実は地声の音域が広い男性のほうが、声域の幅は女性より有利なのです。

この記事のポイント3つ
🎵

男性の声域平均はG2〜G4(約2オクターブ)

日本人男性の地声で出せる生理的声域の平均はG2(低いソ)〜A4(高いラ)。歌唱に使える声楽的声域はC3〜G4(約1.5オクターブ)が目安です。

👦

子どもの音域は男性より約1オクターブ上

幼児(4〜5歳)の歌いやすい音域はC4〜C5(1オクターブ)。男性が地声で歌うキーと比べると、約1オクターブのズレが生じます。

🎤

裏声・移調で声域のズレを補える

裏声(ヘッドボイス)を活用すれば声域はさらに1オクターブ広がります。また、移調(キー変更)を使うことで男性でも子どもに合わせた歌唱が可能になります。

声域・音域の基本と男性平均の声域をチェック

 

「声域」とは、その人が出せる声の音の高低の範囲のことで、「音域」とも呼ばれます。声域は大きく2種類に分けられます。1つは「生理的声域」で、ギリギリ出すことができる音の最低音から最高音までの範囲のこと。もう1つは「声楽的声域」で、歌として実際に使える音域のことです。この2つは別物で、両方を把握しておくことが歌唱力向上につながります。

男性の声域の平均は、次のような数値が目安とされています。

区分 声域の種類 平均的な音域
地声(チェストボイス) 声楽的声域 C3〜G4(約1.5オクターブ)
地声(チェストボイス) 生理的声域 G2〜A4(約2オクターブ)
裏声(ヘッドボイス) 声楽的声域 E4〜C5
裏声(ヘッドボイス) 生理的声域 D4〜D5

声楽的声域がC3〜G4ということは、ピアノで言えば低いドから始まり、中央のソあたりまでが男性の「歌いやすいゾーン」です。これが基本です。

一方で、日本人男性の地声の平均最低音はG2(低いソ)とされており、これはピアノの鍵盤でいうと中央より2オクターブ以上下の音になります。この低音域の豊かさが、男性の声の特徴の一つです。

トレーニングなしの一般男性では、歌唱に使える音域は平均1.5オクターブ程度に収まることが多いです。意外ですね。逆に言うと、ボイストレーニングで裏声を鍛えることで、2〜3オクターブにまで広げることも十分可能なのです。

参考:男性の声域平均と声楽的声域・生理的声域の解説(ATOボーカルスクール)

【男性の音域】男声の平均的な声域とチェック方法【音域の広げ方】
男性の平均的な音域には、声楽的と生理的があります。 なぜなら、生理的に出すことが出来る音域と、歌で使える音域は違うからです。 自分の音域を知らないで、歌っている人がいます。 全ての楽器には、それぞれ音域があります。

声域平均を踏まえた男性保育士と子どもの音域のズレ

男性保育士が歌の時間に感じやすい悩みのひとつが「自分のキーで歌うと子どもがついてこない」という現象です。これには、はっきりした理由があります。

子どもの歌いやすい音域は、年齢によって次のように異なります。

年齢 歌いやすい音域の目安
1歳ごろ ファ〜ラ(非常に狭い)
2歳ごろ レ・ミ〜ソ〜ド(個人差大)
3歳ごろ ド〜ラ(半オクターブ程度)
4〜5歳ごろ C4(ド)〜C5(高いド)・約1オクターブ

4〜5歳の子どもが無理なく歌えるのは、C4(ド)〜C5(高いド)を中心とした約1オクターブの範囲です。中央のドから高いドまで、というイメージです。

一方、男性の声楽的声域の中心はC3〜G4。子どもが歌いやすいC4〜C5と比べると、約1オクターブ低い位置に男性の「歌いやすいゾーン」があります。これが声域のズレの正体です。

つまり、男性保育士が地声でそのまま歌うと、子どもには低すぎて歌いにくいキーになってしまうのです。厳しいところですね。

この問題を放置すると、子どもが無理に高い声を出そうとして怒鳴り声につながることもあります。関東短期大学の研究(2017年)によると、埼玉県の保育所保育者82名中53名(65%)、幼稚園では40名中29名(73%)が、自分の担当する子どもが「どなり声で歌っている」と認識していたという報告があります。選曲のキーが子どもの声域に合っていないことも、どなり声の原因のひとつになると指摘されています。

参考:幼児の歌唱指導に必要な指導者の技術に関する考察(関東短期大学紀要 第59集)

https://www.kanto-gakuen.ac.jp/junir/info/pdf/bulletin_595163.pdf

声域平均から見た男性保育士が実践すべき歌い方の工夫

声域のズレが分かったところで、具体的な対応策に移ります。男性保育士が保育現場でできる工夫は大きく3つあります。

① 移調(キー変更)で子どもの音域に合わせる

最もシンプルな方法は、楽曲のキーを上げることです。男性が「ちょうど歌いやすい」と感じるキーのまま伴奏を弾くと、子どもにとっては低すぎることが多いです。電子ピアノやキーボードには「トランスポーズ機能」が搭載されているものが多く、ワンタッチでキーを変更できます。子どもの音域C4〜C5に合わせて、2〜4つほどキーを上げて伴奏することが有効です。

これは保育実技試験の指導でも取り上げられているアドバイスで、「男性の場合は1オクターブ下げたキーで歌う、もしくは移調して正しい音程で歌うように」という指摘がなされています。つまり、対策が必要なのは周知の事実です。これは使えそうです。

② 裏声を活用して子どもと同じ高さで歌う

男性の裏声(ヘッドボイス)の生理的声域は平均D4〜D5程度。子どもが歌いやすいC4〜C5と重なるゾーンが多く、裏声を使えば子どもと同じキーで一緒に歌うことができます。

歌い出しを裏声で高く歌い、子どもが音程をつかんだら地声でサポートするというやり方も、保育現場では有効とされています。歌い出しのサポートが原則です。

③ 1オクターブ下・またはハモリで歌う

子どもが歌い出して勢いがついてきたら、男性が得意な地声の音域(C3〜G4)でそのまま1オクターブ下を歌う方法も効果的です。合唱では「バス」パートが担うような役割で、子どもの歌声を支える土台として機能します。「一緒に歌う喜び」と「子どもへの伴走」を両立できる現実的な方法です。

保育の現場では、歌唱の技術よりも「みんなで歌う楽しさ」を共有する姿勢のほうが大切、という専門家の意見もあります。完璧な音程よりも、先生も一緒に楽しんで歌うという保育姿勢が子どもの音楽体験を豊かにするのです。

参考:子どもの音域に合わせた曲の選び方(保育ネクスト)

子どもの音域に合わせた[歌の選び方] | 保育ネクスト~次世代の保育環境について考えるメディア
さまざまな歌を歌って感性や表現力を伸ばすとき、意外と重要なのは年齢に合った曲選び。年齢ごとの音域を踏まえた曲の選び方を解説します。

声域の平均を超えるための男性向け声域の広げ方

音域は先天的なものではなく、トレーニングで広げられます。声帯は筋肉と粘膜でできた器官であり、適切に鍛えることで可動域が広がります。特に保育士にとっては、声は仕事の道具。日常的な練習が積み重なると、1年以内に声域が大幅に変わるケースも珍しくありません。

裏声(ヘッドボイス)の強化が最優先

裏声が使えるようになるだけで、声域はおよそ1オクターブ広がります。練習方法は次のとおりです。

  • 口を閉じてハミングをする。リラックスした状態で「んーーー」と鼻に響かせる感じで。これが裏声の入口です。
  • 地声から裏声へスムーズに移行する練習をする。「あーーー」と地声で発声しながら、少しずつ音を上げていき、裏声に自然につながる感覚をつかむ。
  • 毎日3〜5分でよい。継続が大切です。

男性の裏声の平均域はC4〜C5程度ですが、トレーニング次第でさらに上へ広げることができます。

ミックスボイスで高音を地声に近い感覚で出す

ミックスボイスとは、地声と裏声の中間の声です。男性のミックスボイスが使いやすい音域はF4〜A4あたりとされています。ここをマスターすると、子どもと同じキーで「地声に近い自然な声」で歌えるようになり、保育現場での歌唱に大きく役立ちます。

ストレッチと腹式呼吸が声域を支える

声域を広げる前提として、体全体をリラックスさせることが重要です。肩・首・顎のストレッチを行い、腹式呼吸で安定した息の供給を確保することが、高音や低音の出しやすさに直結します。肩甲骨を意識した腕まわし→首の前後左右ゆっくり回し→全身脱力の順で行うと効果的です。

声は「体が楽器」。朝の保育前に2〜3分のストレッチと深呼吸を習慣にするだけで、声の出方が変わってきます。

参考:声域の広げ方と裏声トレーニングの解説(椿音楽教室)

Just a moment...

声域平均を知って保育に活かす男性保育士ならではの視点

男性保育士が「声が低いから歌は苦手」と思い込んでしまうのは、もったいないことです。実は、男性の低音域は子どもにとって「安心感」を与える重要な要素でもあります。子どもにとって低い声の大人は「守ってくれる存在」として感覚的に認識されることがあり、語りかけや読み聞かせの場面では男性の声が強みになります。

歌の場面でも同様で、男性が1オクターブ下でどっしりと支えながら歌うスタイルは、合唱の「バス」パートのような役割を果たします。全員がソプラノで歌うよりも、男性の声が1つ加わることで歌の豊かさが生まれます。つまり、男性の低い声は「邪魔」ではなく「音楽的な深み」なのです。

ただし、問題になるのは「子どもが男性保育士の低いキーに引っ張られて、本来の音域より低く歌ってしまう」ことです。この現象を防ぐためには、次の点を意識しましょう。

  • 歌い出しを裏声や高めの声でリードし、子どもに「このキーで歌うんだよ」と伝える合図にする。
  • ピアノやキーボードの伴奏をC4〜C5の子どもの音域に合わせて設定し、先生の声ではなく伴奏を基準にさせる。
  • 録音した子どもの歌声を聴かせて「こんなきれいな声が出るんだね」とフィードバックする。子どもは自分の声を客観的に聞いてキーを意識しやすくなります。

また、独自の視点として注目したいのが「男性保育士の声域が、子どもの情緒安定に与える影響」です。保育現場の研究では、保育者の語りかけ・歌いかけが子どもの安心感に直結することが明らかになっています。男性特有の低めの声には「落ち着き」をもたらす効果もあり、寝かしつけや情緒が不安定なときの子どもへの関わりに、適切な低音域の声は有効に働きます。歌が「上手い・下手い」だけの問題ではなく、声域特性を保育に活かすという発想が、男性保育士ならではの強みになります。

ボイストレーニングに取り組む時間が難しい場合は、スマートフォンの無料ボイトレアプリを活用するのも一つの手です。1日3分程度の練習でも継続することで声域の変化を実感できます。現在の声域を数値で確認できる機能を持つアプリもあるので、自分の声域平均を把握するのに役立ちます。

参考:男性・女性の音域一覧と広げる方法(松陰スクール)

https://sho-in.ed.jp/column/788/

ウタの歌 ONE PIECE FILM RED