斎藤信夫 里の秋
保育で「里の秋」を歌う前に歌詞の意味を知らないと子どもへの説明で困ります。
斎藤信夫が「里の秋」を作詞した経緯と時代背景
斎藤信夫は1902年に新潟県で生まれた詩人です。東京帝国大学で英文学を学び、卒業後は文筆活動に専念しました。
「里の秋」の原型となる「星月夜」は、1941年(昭和16年)にNHKのラジオ番組「国民合唱」のために書かれました。この時期は太平洋戦争開戦直前で、多くの男性が出征していた時代です。
つまり戦時歌謡だったということですね。
当時の「星月夜」の歌詞には「しずかなしずかな里の秋/お背戸に木の実の落ちる夜は/ああ母さんとただ二人/栗の実煮てます いろりばた」という内容が含まれていました。出征した父親を待つ母子の姿が描かれていたんです。
戦後の1945年12月、NHKラジオ番組「外地引揚同胞激励の午後」で川田正子の歌唱により放送されました。この時、斎藤信夫は歌詞を平和的な内容に改作しています。
改作の理由は明確です。
戦後の日本に相応しい内容にするためでした。
「お父さんのお手紙うれしいな」という歌詞が加わり、復員を待つ家族の希望が表現されました。
NHKの公式アーカイブスには、「里の秋」が戦後に放送された経緯や当時の音源に関する貴重な資料が掲載されています。
「里の秋」の歌詞に込められた意味と保育での解説ポイント
歌詞は全3番まであり、それぞれに深い意味が込められています。
1番の「しずかなしずかな里の秋」では、秋の夜の静けさと家族の温かさが表現されています。母と子が囲炉裏端で栗を煮る情景は、昭和初期の日本の家庭を象徴する風景です。
2番では「あかるいあかるい星の夜」と続きます。ここでは父からの手紙を読む家族の喜びが描かれており、離れていても心は繋がっているというメッセージが込められています。
これは使えそうです。
3番の「さよならさよなら椰子の島」では、南方から帰還する父の視点に切り替わります。椰子の島とは南洋諸島を指し、当時多くの日本人が出征していた地域です。
保育現場で子どもたちに説明する際は、以下のポイントを押さえましょう。
- 「囲炉裏」や「栗」など昔の暮らしを具体的に説明する
- 家族が離れていても想い合う気持ちを伝える
- 秋の季節感(虫の音、落ち葉など)を実際の自然観察と結びつける
- 「お父さんの帰りを待つ」という部分は現代的に解釈し直す
年齢に応じた説明が必要です。3歳児には「家族の歌」として、5歳児には「昔の日本の暮らし」として伝えると理解しやすくなります。
斎藤信夫の他の作品と音楽教育への貢献
斎藤信夫は「里の秋」以外にも多くの童謡を作詞しています。
代表作には以下があります。
- 「かわいいかくれんぼ」(1936年)
- 「みかんの花咲く丘」(1946年、補作)
- 「お猿のかごや」(1949年)
「かわいいかくれんぼ」は保育園でも頻繁に歌われる曲です。「ひよこがね おにわでぴょこぴょこ かくれんぼ」という歌詞で、子どもたちの遊びを優しく描いています。
これらの作品に共通するのは、子どもの目線で自然や日常を描く温かい表現です。難しい言葉を使わず、リズム感のある言葉選びが特徴となっています。
斎藤信夫の作品が基本です。
彼の作品は昭和初期から中期にかけて、日本の音楽教育に大きな影響を与えました。特に「里の秋」は文部省唱歌にも選ばれ、小学校の音楽教科書に長年掲載されています。
現代の保育現場でも、斎藤信夫の作品は季節の歌や生活の歌として活用されています。言葉の美しさとメロディーの親しみやすさが、世代を超えて愛される理由です。
保育活動で「里の秋」を取り入れる具体的な方法
秋の行事で「里の秋」を歌う場合、単に歌うだけでなく総合的な活動に発展させることができます。
まず季節感を体験する活動と組み合わせましょう。散歩で落ち葉や木の実を拾い、実際に栗を観察する機会を作ります。都市部の保育園でも、スーパーで栗を購入して見せることは可能です。
音楽表現では以下の工夫が効果的です。
造形活動との連携も有効です。歌の情景を絵に描いたり、折り紙で栗や秋の虫を作ったりします。「お父さんにお手紙を書こう」という活動も、家族への感謝を育む機会になります。
場面に応じた活動選択が原則です。
保護者参加の行事では、「里の秋」を発表曲として選ぶと世代を超えて共感が得られます。祖父母世代も知っている曲なので、三世代での交流イベントにも適しています。
注意点として、歌詞の「お父さん」という表現については配慮が必要です。現代は家族形態が多様化しているため、「家族」や「大切な人」という言葉に置き換える柔軟性も求められます。
文部科学省の幼児教育ページには、童謡を活用した情操教育の指針や季節の歌の取り入れ方に関する資料が掲載されています。
「里の秋」が現代の子育てに教えてくれること
この歌から学べる現代的な価値は、家族の絆と待つことの大切さです。
現代社会はスピードを重視し、即座の結果を求める傾向があります。しかし「里の秋」が描く「父の帰りを待つ」という姿勢は、忍耐と希望を同時に教えてくれます。
子どもたちに「待つ力」を育てることは、今日の保育課題の一つです。欲しいものがすぐ手に入る環境で育つ子どもたちに、待つことで得られる喜びを伝える必要があります。
痛いところですね。
また、離れていても心は繋がっているという概念も重要です。共働き家庭が増え、親子が一緒に過ごす時間が限られる現代において、「物理的な距離と心の距離は別」というメッセージは励みになります。
保育者ができることは具体的です。お迎えを待つ時間に「里の秋」を歌い、「お父さんお母さんはお仕事頑張ってるね、もうすぐ会えるね」と声をかけることで、子どもの不安を和らげられます。
手紙や絵を描く活動も効果的です。親に向けた作品を作ることで、離れている時間も愛情で繋がっていることを実感できます。これは「里の秋」の歌詞にある「お手紙うれしいな」という表現と重なります。
さらに、季節の移り変わりを感じる感性を育てることも、この歌の大きなテーマです。「静かな秋の夜」「明るい星空」といった自然描写は、デジタル機器に囲まれた生活の中で忘れがちな感覚を呼び起こします。
戸外活動の際に「今日は『里の秋』みたいに静かな夜になるかな」と問いかけると、子どもたちは自然に関心を向けるようになります。実際に夜空を見上げる経験を家庭でも促すことで、歌の世界と現実が結びつきます。
保育現場で季節の歌を取り入れるなら、絵本との組み合わせも検討しましょう。秋をテーマにした絵本を読んだ後に「里の秋」を歌うことで、子どもたちの理解が深まります。
おすすめは『14ひきのあきまつり』(いわむらかずお作、童心社)です。この絵本には秋の自然が細かく描かれており、「里の秋」の歌詞と共通する要素が多く含まれています。読み聞かせの後に歌うと、視覚と聴覚の両方で秋を体験できます。
また、家庭との連携も重要です。園だよりで「今月は『里の秋』を歌っています」と伝え、家庭でも一緒に歌うよう促すことで、親子のコミュニケーションツールになります。
歌詞カードを配布する際は、言葉の意味や時代背景も簡単に説明しましょう。保護者自身が歌の深さを知ることで、子どもへの伝え方も変わってきます。
「里の秋」は70年以上前の作品ですが、その普遍的なメッセージは色あせません。家族への想い、季節の美しさ、そして平和の尊さ。これらは時代を超えて、子どもたちに伝えるべき価値です。
保育者として、この歌を単なる「秋の歌」として扱うのではなく、深い意味を持つ文化遺産として大切に歌い継いでいくことが求められます。


