砂漠の歌歌詞を保育士が子どもに伝える方法

砂漠の歌の歌詞を保育士が子どもに伝えるコツ

「砂漠の歌」の歌詞は、じつは駆け落ちか心中の物語かもしれません。

この記事でわかること
🎵

歌詞の全文と意味

「月の沙漠」の歌詞を1番〜4番まで確認し、難しい言葉の意味をひとつずつ解説します。

📖

隠された背景と作者の想い

作詞家・加藤まさをの生涯と、歌詞に込められた「異国への憧れ」「恋の悲劇」など複数の解釈を紹介します。

🏫

保育現場での活かし方

難しい文語体の歌詞を子どもへわかりやすく説明するコツと、情操教育・言語発達への活用ポイントをまとめています。


<% index %>

砂漠の歌「月の沙漠」の歌詞全文とふりがな

 

保育の現場でよく歌われる「砂漠の歌」といえば、童謡の名曲「月の沙漠(つきのさばく)」が代表格です。作詞は加藤まさを、作曲は佐々木すぐるで、大正12年(1923年)に雑誌『少女倶楽部』に発表されました。100年以上歌い継がれてきた、まさに日本の宝とも言える童謡です。

まずは、歌詞の全文を確認しておきましょう。

歌詞
1番 月の沙漠(さばく)をはるばると
旅の駱駝(らくだ)がゆきました
金(きん)と銀(ぎん)との鞍(くら)置いて
二つならんでゆきました
2番 金の鞍には銀の甕(かめ)
銀の鞍には金の甕
二つの甕はそれぞれに
紐(ひも)で結んでありました
3番 さきの鞍には王子様(おうじさま)
あとの鞍にはお姫様(ひめさま)
乗った二人はおそろいの
白い上着(うわぎ)を着てました
4番 曠(ひろ)い沙漠をひとすじに
二人はどこへゆくのでしょう
朧(おぼろ)にけぶる月の夜(よ)を
対(つい)の駱駝はとぼとぼと
砂丘(さきゅう)を越えてゆきました
黙って越えて行きました

歌詞を通して読むと、2頭のラクダに乗った王子とお姫様が、月の夜に広い砂漠をどこかへ向かって旅している情景が浮かびあがります。

難しい言葉が多いですね。保育士として把握しておきたいのが以下のポイントです。

  • 🐪 駱駝(らくだ):砂漠を旅する動物。背中にコブがある。
  • 🏺 鞍(くら):動物の背中に置く、乗り物のような座面。
  • 🫙 甕(かめ):水や液体を入れる、口の広いつぼ形の容器。
  • 🌙 朧(おぼろ)にけぶる:霧やもやでぼんやりとかすんでいる様子。
  • 🏜️ 砂丘(さきゅう):風で砂が積もってできた丘。

これらを事前に整理しておくと、子どもに質問されたときにスムーズに答えられます。知識は準備が命です。

砂漠の歌の歌詞に隠された作者のエピソードと背景

「月の沙漠」の歌詞は、表面的には王子とお姫様のロマンチックな旅の情景を描いています。しかし、作詞者・加藤まさをの人生を知ると、この歌がまったく違って見えてきます。

加藤まさをは明治30年(1897年)静岡県藤枝市生まれの詩人・挿絵画家です。若い頃に結核を患い、千葉県の御宿(おんじゅく)海岸で療養生活を送りました。この御宿海岸の砂浜の光景が、「月の沙漠」の舞台のひとつとされています。

注目すべきは、タイトルが「砂漠」ではなく「沙漠」であるという点です。「沙」の字には砂浜という意味が含まれており、これは乾いた内陸の砂漠ではなく、水分を含んだ海岸の砂をイメージしていたためとも言われています。これは意外ですね。

加藤自身も後年、「あれは御宿のおぼろ月がモチーフになった」と語っています。月が朧にけぶる様子は、湿度の低い砂漠ではなく、海岸の霧がかった夜の情景そのものだったのです。

さらに深い事情があります。加藤まさをには愛する恋人と子どもがいましたが、家族の反対により結婚が許されませんでした。彼の作品には「愛と死」をテーマにした詩が多く、この「月の沙漠」にも、許されぬ恋の逃避行や心中旅行を想わせる解釈が生まれています。

「黙って越えて行きました」という最後の一行が、二人の行き先を語らぬまま閉じられるのも、意味深に感じられます。結論は読み手に委ねられているのです。

同志社女子大学の吉海直人教授も、「すべては読者の想像に委ねられている」と語っています。保育士として子どもに伝える際は、こうした深い背景を知った上で、年齢に合わせて情景を伝えていくとよいでしょう。

📎 参考リンク:「月の沙漠」の誕生秘話や作者・加藤まさをのエピソード、歌詞に込められた複数の解釈について詳しく解説されています。

砂漠の歌の歌詞を子どもにわかりやすく説明する方法

「月の沙漠」の歌詞は文語体(書き言葉ベースの古い表現)が多く、現代の子どもにはなじみのない言葉がたくさんあります。そのまま歌うだけでは、意味がよくわからないまま終わってしまいます。

これが課題です。

保育士が子どもに歌詞の意味を伝えるには、「絵に描ける言葉に置き換える」アプローチが効果的です。たとえば次のように説明してみましょう。

  • 🐪 「駱駝」→「砂漠にいる、背中にコブのあるおおきな動物だよ」
  • 🏺 「鞍」→「ラクダの背中に置く、ふたり用のいすみたいなものだよ」
  • 🫙 「甕」→「水をいれる、大きなつぼだよ。旅のお水を入れて運ぶんだね」
  • 🌙 「朧にけぶる」→「月がふわ〜っとかすんでいる、きれいな夜の景色のことだよ」

さらに、4番の「二人はどこへゆくのでしょう」という歌詞は、子どもに問いかけるチャンスになります。「どこに行くと思う?」と聞いてみると、子どもは自由な発想で答えてくれます。この「想像の余白」こそが、情操教育としての童謡の力です。

言語発達の観点からも、童謡には重要な効果があります。株式会社大建工業が保育士向けに発信しているコラムでは、「童謡はわかりやすく美しい日本語でつくられているため、言語能力をスムーズに伸ばすことができ、ストーリーや情景を考えさせる歌詞は想像力を養う」と述べています。

「月の沙漠」のように難しい言葉が多い歌でも、保育士がひとことずつ補足しながら歌えば、子どもの語彙力と想像力を同時に育てることができます。これは使えそうです。

特に3〜5歳の子どもは「ラクダ」「砂漠」「王子様」「お姫様」という言葉への親しみやすさが高く、絵本やお話を組み合わせると効果的です。歌う前に「砂漠の絵」や「ラクダの写真」を見せるだけで、子どもの集中力と理解度が大きく変わります。

砂漠の歌の歌詞にまつわる朝日新聞の批判と現実との差

「月の沙漠」には、じつは歌詞の内容に対して専門家から批判が向けられたことがあります。意外なエピソードです。

昭和40年代、アラビア通で知られる朝日新聞記者・本多勝一が、歌詞の「現実的なおかしさ」を以下のように指摘しました。

  • ❌ 「遊牧民は水を運ぶのに水甕ではなく皮袋を使う。金属製の甕では、中の水が直射日光で煮立ってしまう」
  • ❌ 「王子と姫が2人だけで旅をしていたら、たちまちベドウィン(遊牧民族)に略奪される」
  • ❌ 「砂漠で月が『朧にけぶる』のは、猛烈な砂嵐が静まりかけるときに限られる」

これに対して、作詞者の加藤まさをは「沙漠どころか外国には出たことはないけれど、沙漠への憧れがありまして」と笑って答えています。

ここが面白いところです。この批判に対して世界民謡・童謡研究の観点から反論するなら、そもそも「沙漠」は「砂漠」ではなく千葉の海岸の砂浜をモチーフにしているため、水が煮立つ条件も月が朧になれない条件もあてはまりません。童謡の世界観に現実の地理知識を当てはめるのは、少々的外れとも言えます。

しかしこのエピソードは、保育現場でも活かせる「豆知識」として使えます。年長クラスや学童保育の子どもたちに「この歌の甕って、本当に水が入るかな?」という問いかけをするだけで、考える力と好奇心が刺激されます。

「なぜ王子様とお姫様は二人しかいないの?」「白い服を着てるのはなんで?」という問いも同様です。童謡の歌詞をただ暗記させるのではなく、歌詞の謎を一緒に考えることで、子どもの思考力・表現力につながります。これが原則です。

📎 参考リンク:「月の沙漠」の歌詞への批判内容の詳細や、「沙漠」と「砂漠」の違い、御宿海岸との関係について詳しく書かれています。

月の沙漠 歌詞への批判とは?砂漠のモデル・場所 ー 世界の民謡・童謡

砂漠の歌の歌詞を保育に活かす独自視点:「わからない歌詞」が子どもの語彙力を伸ばす理由

「歌詞の意味が難しい童謡は子どもには早い」と思っていませんか?それは逆効果になることがあります。

研究によれば、子どもは「知らない言葉に出会う体験」そのものが語彙力の発達を促します。西九州大学短期大学部の研究紀要「童謡・唱歌の習得に関する研究」では、保育士養成校の学生を対象にしたアンケートで、幼児期に聴いた童謡・唱歌が後の言語習得に影響していることが示されています。

「意味がわかっている歌だけを歌う」より、「少し難しい言葉があっても保育士が補足しながら歌う」方が、子どもの脳に新しい言葉の回路が生まれやすいとも言われています。

「月の沙漠」の歌詞でいえば、「朧(おぼろ)」「駱駝(らくだ)」「鞍(くら)」「甕(かめ)」といった言葉は、日常生活ではまず耳にしない語彙です。しかしだからこそ、子どもは興味を持って「それなに?」と聞いてきます。この「なに?」が重要です。

保育士はその問いに答えるだけで、語彙の説明という「ミニレッスン」が自然に生まれます。大げさな教育の仕掛けは不要です。

さらに実践的なアイデアとして、歌を歌う前に「今日の不思議な言葉はどれかな?」と子どもに探させる方法があります。カードに言葉を書いて貼っておくと、視覚的にも定着しやすくなります。

  • 📋 「今日の不思議な言葉カード」を壁に貼る
  • 🎨 「月の砂漠の絵を描いてみよう」でイメージを固める
  • 🤔 「二人はどこに行くと思う?」と問いかけて想像力を引き出す
  • 🐪 ラクダや砂漠の写真絵本を導入に使う

このように「歌詞の難しさ」を「探究のきっかけ」に変えることが、保育士の腕の見せどころです。難しい歌詞が条件です。

童謡の言葉は選び抜かれた日本語の宝庫でもあります。ひとつの曲を丁寧に扱うことで、子どもにとってかけがえない言語体験が生まれます。「月の沙漠」を歌うとき、ただ音楽として流すのではなく、言葉の世界への扉を開く時間として設計してみてください。

📎 参考リンク:保育に童謡を取り入れるねらいや年齢別のおすすめ童謡について、実践的な情報がまとめられています。


映画「 コープスパーティー Book of Shadows 」主題歌「 砂漠の雨 」【DVD付盤】