流行歌 昭和 声楽 発声と歌唱解説
流行歌 昭和 声楽 歌手に受け継がれたクラシック由来の発声
昭和初期から戦前・戦後直後にかけての流行歌は、現在よりもはるかに声楽や音楽学校出身の歌手が多く、クラシックに近い発声が主流でした。
たとえば藤山一郎や淡谷のり子といった歌手は、縦に開いた母音と豊かなビブラート、ブレスをたっぷり使ったフレーズ感で、いわば「小さなオペラ」のように一曲を作り上げています。
こうした歌手が活躍していた背景には、マイクやスピーカーの性能が今ほど高くなく、声そのものに響きと遠達性が求められたという時代的要因もありました。
昭和前期の流行歌を聴くと、「オ」「ウ」といった母音が深く、喉頭をやや下げ、咽頭腔を広く保ったまま歌われていることに気づきます。
参考)昔の人と現代の人の発声のしかたの違いについて質問です。アイド…
これは典型的なクラシック声楽のポジションであり、日本語の自然なイントネーションにクラシックの発声をどう折り合わせるかという試行錯誤の産物とも言えます。
参考)論80.声楽家と役者の間で考えるヴォイストレーニング~郷ひろ…
声楽を学ぶ人にとっては、この時代の録音を模倣することで、「共鳴を保ちながら日本語を明瞭に届ける」という高度なテーマに取り組むことができます。
また、東海林太郎や伊藤久男、二葉あき子らの歌い方からは、「語る」と「歌う」の境界線を広く使う表現の豊かさも学べます。
参考)http://www5e.biglobe.ne.jp/spkmas/index.html
単に大きな声を出すのではなく、弱声部分でも響きを落とさずに言葉を届けるテクニックは、リサイタルでの日本歌曲やアンコールピースにも直結します。
クラシックの発声を基盤にしつつ、流行歌のフレーズ感や歌詞の情緒を重ねることで、より立体的な歌唱表現が可能になるでしょう。
参考)【歌謡曲の歌い方】曲をしって正しく歌おう! | ボイトレなら…
・昭和前期流行歌で意識したいポイント
- 母音を縦に保つ(特に「ア・オ・ウ」)
- ビブラートは自然に任せ、無理に速くしない
- 語尾を短く切らず、少し長めに「余韻」を残す
- ブレス位置をあらかじめ譜面上に書き込み、フレーズを大きく取る
流行歌 昭和 声楽 で学ぶ歌謡曲発声と現代ポップスの違い
昭和後期のアイドルや歌謡曲と現代のポップスを比べると、発声の傾向が大きく変化していることは、ボイストレーナーや歌唱分析でも指摘されています。
昭和のアイドル歌手は、喉を縦に開きつつ頭部共鳴を多く使うことで、明るく伸びやかな中高音を実現しており、「オ」「ウ」寄りの響きが強く聞こえるという特徴があります。
一方で、現代のアイドルやポップス歌手は、エッジボイスや息混じりの声を積極的に取り入れ、「エ」寄りのフラットな響きでマイク乗りを優先する傾向が強くなりました。
声楽を学ぶ人が昭和流行歌を練習に取り入れる際は、この違いを理解したうえで、自分が今身につけたいスキルを意識しながら曲を選ぶと効果的です。
たとえば、尾崎紀世彦「また逢う日まで」や徳永英明「レイニー ブルー」などは、クラシック的な支えを保ちながらポップス的なニュアンスも要求される、橋渡し的なレパートリーと言えます。
参考)昭和カラオケランキング -「昭和100年」特集-|JOYSO…
母音の形を壊さずにポルタメントやビブラートをコントロールする練習として、これらの楽曲は非常に実践的な教材になります。
・昭和歌謡と現代ポップスのざっくり比較
| 項目 | 昭和流行歌・歌謡曲 | 現代ポップス |
|---|---|---|
| 響きの方向 | 縦に開き頭部共鳴重視 | やや平たくマイク前提の軽めの響き |
| 息の使い方 | 長いフレーズに向けて支えを保つ | 短いフレーズでブレスを頻繁に挟む傾向 |
| 歌詞の扱い | 語りと歌い上げのメリハリが大きい | 会話的でフラットな抑揚が多い |
| ビブラート | 自然発生的でゆったりした幅 | 狙ったポイントだけに短くかけることが多い |
この違いを俯瞰したうえで、あえて昭和的な太い響きを残したまま現代曲を歌う、あるいは昭和流行歌を現代ポップス寄りにアレンジして歌うなど、表現の幅を広げる実験も有効です。
参考)懐かしの平成・昭和ヒットをカッコよく歌う!人気曲・歌い方・キ…
レッスンでは、同じフレーズを「昭和モード」と「現代モード」で歌い分けて録音し、自分の声の変化を客観的に聴き比べると、発声の癖や強みを把握しやすくなります。
流行歌 昭和 声楽 レッスンにおすすめの代表曲と練習ポイント
声楽的な視点から昭和流行歌を選ぶなら、「メロディラインが自然で、言葉がはっきり聞き取りやすい曲」を軸にすると、基礎力の養成につながります。
たとえば「青い山脈」「上を向いて歩こう」「君といつまでも」「ブルー・ライト・ヨコハマ」といった曲は、跳躍とレガート、ブレス配分をバランスよく鍛えられる定番です。
歌詞やフレーズが比較的シンプルなため、譜読みや暗譜の負担が少なく、その分、発声や表情づけに意識を集中しやすいという利点もあります。
・レッスンで取り上げやすい昭和流行歌例
- 「青い山脈」:明るいメジャーキーで、語頭子音をはっきり出す練習に最適。
- 「上を向いて歩こう」:跳躍とレガート、長いブレスのコントロールを総合的に養える。
- 「君といつまでも」:低音から高音までのダイナミクスと感情表現を学ぶ教材。
- 「ブルー・ライト・ヨコハマ」:半音階的な動きと柔らかなビブラートのコントロールに有効。
さらに、カラオケランキングで今も若い世代に歌われている昭和曲を選ぶと、発表会や動画投稿でも聴き手に親しみを持ってもらいやすくなります。
「タッチ」「I LOVE YOU」「津軽海峡・冬景色」「時の流れに身をまかせ」「赤いスイートピー」などは、昭和らしい情感と現代にも通じるポップさを併せ持っている好例です。
これらの曲を声楽的に歌いこむ際には、原曲のニュアンスを尊重しつつ、過度なヴィブラートや極端な母音変形を避け、歌詞が伝わる範囲でクラシックのテクニックを応用するとよいでしょう。
・練習の進め方の一例
- 1曲につき「ブレス位置」「強弱」「母音の形」の3点をスコアに書き込む
- カラオケ音源で原曲シンガーの歌い方を研究し、自分の声種に合うキーを選ぶ
- ピアノのみ、アカペラのみなど伴奏パターンを変えて歌い、支えの安定を確認する
昭和流行歌のレッスンは、クラシックの練習曲とは違う「語り」と「ポップスらしさ」が加わるため、舞台での日本歌曲やクロスオーバー曲にも良い影響を与えてくれます。
若者に歌われる昭和曲ランキングや代表曲の具体的な一覧は、カラオケサービスの特集ページが整理されています(選曲の参考になります)。
JOYSOUND「昭和カラオケランキング -『昭和100年』特集」
流行歌 昭和 声楽 史から見る時代背景と歌詞・メロディの特徴
昭和流行歌の研究では、歌詞の語彙やメロディの傾向を通じて、その時代の社会状況や人々の価値観が反映されていることが指摘されています。
昭和初期の流行歌では、戦争や不況の影響もあり、「故郷」「涙」「別れ」といった言葉が頻出し、哀愁を帯びた旋律と結びついて、大衆の心情を映す役割を果たしました。
一方、昭和後半になると、都市化や消費社会の進展にともなって、恋愛や都会的なライフスタイルを描いた歌詞が増え、コード進行やリズムもジャズやロックの要素を採り入れて多様化していきます。
音程や音域に関する分析では、昭和のヒット曲は比較的広めの音域を使う傾向があり、特にサビで高音が効果的に使われることで、感情の高まりをわかりやすく表現していることがわかっています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/5fbda527e0a117f0feef2860a7bb706686f11e6e
声楽を学ぶ立場から見ると、この「高音での感情のピーク」をどのように支え、無理のないフォームで歌い切るかが、テクニックと表現の両面で重要なテーマになります。
さらに、昭和の流行歌には、今ではあまり使われない語彙や言い回しも多く、日本語の美しいリズム感やアクセントを再確認できる教材としても価値があります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/f784bfa88b37eec7071908fbf403c47605da6b05
また、放送政策やメディアの発展も、流行歌の広まり方や歌い方に影響を与えていました。
参考)http://www.kci.go.kr/kciportal/landing/article.kci?arti_id=ART002471993
たとえば戦前の大連放送局による生放送では、歌手はマイクとスタジオの音響条件に合わせて声の飛び方を調整する必要があり、その経験がのちのレコード録音やコンサートのスタイルにも影響したと考えられます。
このように、昭和流行歌を単なる「懐メロ」としてではなく、時代背景とセットで理解すると、歌詞の一つひとつ、フレーズの抑揚にも説得力が増し、演奏する側の解釈にも厚みが生まれます。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/d927b2cd40f716d86133d90eddb945292f3cfb89
昭和流行歌の時代背景や歌詞分析についてより専門的に学びたい場合は、語彙や音程の統計分析を扱った研究論文が参考になります(歌詞とメロディの傾向を学ぶのに有用です)。
流行歌 昭和 声楽 視点での独自練習法とレパートリー構成術
ここからは、検索上位ではあまり語られない「声楽専攻のレッスンに、昭和流行歌をどう組み込むか」という独自視点のアイデアを整理します。
まずおすすめしたいのは、「クラシック曲→日本歌曲→昭和流行歌→現代ポップス」という順で、1レッスン内のレパートリーを構成する方法です。
この流れをつくることで、同じ声帯・同じ身体を使いながらも、響き・言葉・リズムの使い方を少しずつ変化させる感覚が養われ、ジャンルをまたいだ柔軟な声づくりにつながります。
具体的な練習の組み立て方の一例としては、次のような流れが考えられます。
・レッスン構成アイデア
- ウォームアップ:開放母音を使った音階練習(クラシックの基礎)
- 日本歌曲:言葉の処理とレガートを確認
- 昭和流行歌:マイクを想定しつつも響きを保ち、歌詞の情感を強調
- 現代ポップス:息多めのニュアンスやリズムのしゃくりを追加
このとき、昭和流行歌のパートでは「声楽的に歌いすぎない」ことも重要です。
たとえば、「愛燦燦」や「なごり雪」などを歌う際に、オペラアリアのように大振りに歌い上げてしまうと、原曲の持つ繊細さや日本語の自然さが失われてしまいます。
あくまでクラシックの支えをベースにしながら、「声量よりも日本語のニュアンスとフレーズの流れ」を優先する、というバランス感覚が鍵になります。
さらに、YouTube などで昭和流行歌を歌うソプラノ歌手や歌謡楽団の動画を研究するのも有効です。
クラシックの訓練を受けた歌手が昭和の大衆歌謡を歌うとき、どの程度音色を軽くし、どのくらい言葉を前に出しているかを観察すると、自分の声での落としどころをイメージしやすくなります。
「一曲を完コピする」のではなく、「このフレーズは原曲寄り、このフレーズは声楽寄り」といった具合に、意図的に歌い分ける練習をしてみるのもおもしろいでしょう。
昭和歌謡と声楽の橋渡し的な考え方や、具体的なボイストレーニングのアイデアについては、声楽家やボイストレーナーによるコラムも参考になります(発声の応用例として有用です)。
「声楽家と役者の間で考えるヴォイストレーニング~郷ひろみに学ぶ昭和歌謡の発声」などの声楽・歌謡曲関連コラム
流行歌 昭和 声楽 で自分だけの表現を育てるために
最後に、声楽を学ぶ人が昭和流行歌を通じて「自分だけの表現」を育てるための視点をまとめてみます。
昭和のヒット曲は、その時代の大衆の感情を素直に映した作品であり、必ずしもクラシックの発声や理論に合わせて作られてはいません。
だからこそ、譜面上の情報だけでなく、歌手の呼吸音や言葉の揺れ、テンポの「揺らぎ」など、録音ならではのニュアンスを積極的に聴き取ることが大切です。
そのうえで、自分の声種やキャラクターに合った曲を選ぶことも、長く歌い続けるための重要なポイントです。
ソプラノなら透明感のあるバラード系やワルツ調の曲、メゾやアルトなら渋い歌謡曲やブルース寄りの曲、テノールやバリトンならドラマティックなバラードなど、声質にフィットするジャンルを選ぶことで、表現の説得力が自然と増していきます。
「昭和らしさ」に縛られすぎず、自分なりのテンポ感や感情表現を模索していく姿勢が、結果的に聴き手の心に残る歌へとつながるはずです。
昭和流行歌に関する音源や代表曲の情報は、専門チャンネルやストリーミングの特集でも体系的に紹介されています(レパートリー探しに役立ちます)。
スターデジオ「昭和流行歌(昭和初期~1969年頃)」チャンネル紹介

日本の流行歌スターたち(56) 高原の駅よ、さようなら~勘太郎月夜唄 [CD] – 小畑実

