リタルダンド 意味 音楽 声楽 の基本
リタルダンド 意味 音楽 声楽 の基礎とイタリア語としての由来
リタルダンド(ritardando)は、イタリア語の動詞ritardare(遅らせる・遅くする)の現在分詞形で、「だんだん遅くして」という意味を持つ音楽記号です。
楽譜上では「rit.」「ritard.」「ritardando」といった形で表記され、いずれも「テンポを徐々に落としていく」という指示を表します。
歴史的には、18世紀の音楽理論家テュルクが「リタルダンドはテンポを徐々に遅らせることである」と明確に定義しており、この「徐々に」が重要なポイントです。
声楽でリタルダンドを解釈する際には、「音を長く伸ばす」「フレーズを引き伸ばす」という感覚だけでなく、「時間そのものをゆっくりにしていく」という時間感覚を持つと、表現が自然になります。
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同じ「遅くする」でも、機械的にメトロノームを遅くするのではなく、言葉の意味や感情の流れに合わせてテンポを落とすことで、歌詞の内容が聴き手に届きやすくなります。
特にクラシック声楽では、リタルダンドはフレーズの終わりやカデンツァ前など、音楽の構造上の節目に置かれることが多く、物語の区切りや感情の転換を示す合図にもなります。
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また、19世紀以降の作曲家たちは、記号として「rit.」を書かずに、音価(音符の長さ)そのものを徐々に伸ばして「書き込みリタルダンド(ausgeschriebene Ritardando)」として表現する手法も多用しました。
このような譜面上の工夫は、歌い手に「単に遅くする」のではなく、音の長さやニュアンスまで含めたより繊細な表現を求めるサインでもあるため、スコアを読むときには音価の変化にも注意を向ける必要があります。
参考)【音楽記号】rit.の読み方と意味|演奏のコツと解釈を譜例で…
リタルダンドは、単なるスピード調整ではなく、「時間の表情」を作るための記号だと理解しておくと、声楽での解釈が一段深まります。
リタルダンド 意味 音楽 声楽 とラレンタンド・リテヌートの違い
リタルダンドとよく並べて語られるのがラレンタンド(rallentando)で、どちらも「だんだん遅く」という訳語がつけられますが、ニュアンスには違いがあります。
リタルダンドは、能動的にテンポを遅らせていくイメージが強く、「意図してテンポを落としていく」感覚が含まれるのに対し、ラレンタンドは「自然に減速していく」「疲れて眠くなるように緩む」といった印象で説明されることが多いです。
声楽では、ドラマチックなクライマックスに向けて意思的に間を引き伸ばしたいときはリタルダンド、息が抜けるようにフェードアウトしていく場面ではラレンタンドを使う、というように使い分けられることがあります。
さらに紛らわしいのが、「rit.」が必ずしもリタルダンドではない場合がある、という点です。
イタリア・オペラの古い版などでは、「rit.」が本来はリテヌート(ritenuto)の略として使われている例があり、「即座にテンポを落として、そのまま保持する」という意味で解釈すべき箇所も指摘されています。
そのため、楽譜に「rit.」と書いてあっても、常に「徐々に遅く」と決めつけるのではなく、版の違い・作曲家の時代・周囲のフレーズとの関係を見ながら、「これはritardandoか、ritenutoか」を判断する耳と感性が必要です。
この違いは、声楽のリハーサルでしばしばトラブルの原因になります。
例えば、指揮者はrit.を「リテヌート=その小節からいきなりテンポを落としてキープ」と考えているのに、歌い手は「リタルダンド=だんだん遅く」と解釈していると、合唱全体のテンポがバラバラになります。
練習の早い段階で「ここはrit.だけど、どう解釈しますか?」と確認し、歌い手同士・伴奏者と共通のイメージを持つことが、安定したアンサンブルにつながります。
参考)https://miyazaki-u.repo.nii.ac.jp/record/6109.1/files/kyoudoukiyou_2020_p151-p163.pdf
ラレンタンドやリテヌートとの違いを理解することは、リタルダンドの表現幅を狭めるのではなく、「あえてリタルダンドを選ぶ理由」を明確にすることにもつながります。
特にオペラ・歌曲では、言葉の意味とテンポの変化が強く結びつくため、どの記号が使われているのかを意識して読むことで、作曲家のドラマ構築の意図を感じ取りやすくなります。
リタルダンド 意味 音楽 声楽 のための呼吸と発声テクニック
声楽でリタルダンドを行うときにまず崩れやすいのが、息のコントロールです。
テンポが遅くなるとフレーズが長く感じられ、歌い手は無意識に息を節約しようとして音量が小さくなったり、逆に早めに息切れしてしまったりします。
リタルダンドの部分こそ、事前に大きく息を吸い込み、腹部と背中周りの支えを使って「一定のスピードで息を流し続ける」意識が必要です。
具体的な練習法として、まずは同じ音をロングトーンで伸ばしながら、メトロノームを使ってテンポを徐々に落としていく練習が有効です。
参考)歌の基礎練習で上達!正しい発声・リズム・表現力を鍛える方法 …
例えば、♩ = 80で4拍伸ばすところから始めて、次に♩ = 70、♩ = 60と少しずつテンポを下げながら、声の響き・音量・声帯の閉鎖感が安定しているかを確認します。
参考)音域を広げる方法おすすめ7選を紹介!逆効果になる練習法に要注…
この練習では、「テンポが遅くなっても声の支えは緩めない」「口の中の空間と共鳴は保つ」という二点を意識し、リタルダンドが来ても声の軸がぶれない身体感覚を身につけます。
言葉の処理も重要です。
日本語の歌であっても、子音と母音を分けて考え、母音を支えた上で子音を前に送ることで、テンポが遅くなっても言葉が間延びせず、聞き取りやすさを維持できます。
参考)【チェストボイス】誰でも力強い地声で歌える3つのコツ!!
特に、語尾の母音を長く引き伸ばすときには、声帯に力を入れすぎず、あくびのように喉の奥を開けて響きを保つことで、リタルダンド中のクライマックスでも無理なく歌い切れるようになります。
高音域でのリタルダンドはさらに難しくなります。
テンポが落ちて音価が長くなるほど、声帯への負荷は増えやすいため、チェストボイスやミックスボイスの切り替えを、日頃から地声と裏声を行き来する練習でスムーズにしておくと有利です。
普段の発声練習から、「伸ばしたまま徐々にテンポを落としていく」「クレッシェンドとリタルダンドを同時に行う」といった応用練習を取り入れることで、本番での表現力を高めていけます。
リタルダンド 意味 音楽 声楽 のフレーズ設計とアンサンブルのコツ
リタルダンドは、一人で歌っているときよりも、合唱やアンサンブルで真価を発揮する表現です。
しかし複数人で行う場合、「どこからどこまで、どれくらい遅くするのか」が共有されていないと、かえって音楽がバラバラに聞こえてしまいます。
そのため、まずは楽譜上で「リタルダンド開始位置」「最も遅くなるポイント」「a tempoなどで戻る位置」を書き込み、視覚的にも共通認識を作ることが大切です。
練習段階では、指揮者や伴奏者と一緒に、次のようなステップを踏むと安定しやすくなります。
- 最初にメトロノームを使って、通常テンポと「一番遅くなった状態」の二つを明確に体感しておく。
- リタルダンド部分を「3段階(開始・中間・到達)」に分けて、それぞれのテンポ感を声に出して確認する。
- 歌詞ではなく母音だけで歌い、テンポの変化と呼吸の支えに意識を集中させる。
- 最後に言葉を戻し、意味とテンポ感が一致するように微調整する。
また、フレーズの設計という視点も重要です。
リタルダンドは、多くの場合フレーズの終わりに向かって使われますが、その直前の小節で少しテンポを前に押すような「アゴーギク(微妙な揺れ)」を入れると、より自然な流れが生まれます。
一方で、常に「終わり=リタルダンド」としてしまうと音楽が単調になるため、あえてリタルダンドを入れない終わり方や、リタルダンド後に一瞬ためてからa tempoで次のフレーズに入るなど、いくつかのパターンを持っておくと表現の幅が広がります。
合唱では、特に子音の合わせ方に注意が必要です。
テンポが落ちてくると、語尾の子音がバラつきやすく、「t」「k」「s」などの破裂音や摩擦音が不必要に目立つことがあります。
各パートで「この語尾子音はこのビートでそろえる」と決めておく、あるいはあえて子音を弱めることで、リタルダンド中も音楽的なまとまりを保つことができます。
リタルダンド 意味 音楽 声楽 における隠れた応用と独自の表現アイデア
リタルダンドは、楽譜に書かれているときだけ使うものではありません。
指揮者や歌い手が、作品全体の流れを見ながら「ここは少し時間を引き伸ばしたい」と判断して、譜面にはないごく短いリタルダンドを作ることもあります。
例えば、劇的な歌詞の一語(「愛」「死」「別れ」など)に向かって、直前の半拍だけわずかにテンポを緩めると、聴き手は無意識のうちにその言葉の重さを感じ取ります。
あまり知られていない応用として、「呼吸のためのリタルダンド」と「感情のためのリタルダンド」を意識的に分ける、という方法があります。
前者は、物理的に次の高音や長いフレーズに備えるため、短くテンポを緩めて呼吸の余裕を作る使い方で、特にアマチュア合唱では、実務的な目的で用いられることが多いです。
後者は、歌詞やドラマに合わせて時間を引き伸ばす使い方で、こちらを優先しすぎると過剰なテンポ変化になりやすいため、「どちらのリタルダンドなのか」を指揮者と共有しておくと、音楽の方向性が安定します。
独自の練習アイデアとして、次のような工夫も取り入れられます。
- 同じフレーズを「リタルダンドあり」「完全に一定のテンポ」の二通りで録音し、感情の伝わり方の違いを聴き比べる。
- リタルダンドの幅を「小さめ」「中くらい」「大きめ」と変えて録音し、どこまでが自然で、どこからが過剰に聞こえるかを自分の耳で確認する。
- ピアノ伴奏に合わせず、無伴奏でリタルダンドを試し、その後伴奏を入れて「どこがズレやすいか」を洗い出す。
また、音楽心理学や感情認知の研究では、テンポの変化が聴き手の感情の受け取り方に大きな影響を与えることが指摘されています。
表情・音声・音楽から感情を読み取る研究では、テンポの減速は「終わり」「安堵」「悲しみ」「感傷」といった感情と結びつきやすいことが示されており、声楽でのリタルダンドもその文脈で理解すると、なぜ特定の場面で効果的なのかが腑に落ちます。
この視点を踏まえると、「このリタルダンドは、聴き手にどんな感情を感じてほしくて行うのか?」と自分に問いかけてから歌うことで、表現に一貫性と説得力が生まれます。
リタルダンド 意味 音楽 声楽 を深めるための参考情報と今後の学び方
リタルダンドに限らず、アゴーギクやニュアンス記号を理解するには、信頼できる楽語解説や専門家のコラムに触れることが近道です。
日本語でリタルダンドの語源や歴史的な使われ方、ラレンタンドとのニュアンスの違いまで丁寧に解説している記事では、実際の楽譜例をもとに、書き込みリタルダンドやベートーヴェンの用例なども紹介されています。
こうした解説を読むと、「rit.」というたった三文字の背後にある、作曲家の細かな意図や音楽史的な背景まで見えてきます。
また、ピアノ向けの楽典サイトやレッスン記事は、リタルダンドの基本的な意味や、楽譜上での表記のバリエーションを整理するのに役立ちます。
声楽の学習者であっても、伴奏者の視点やピアノ譜の読み方を知ることで、「伴奏はどのように rit. を処理しているのか」「歌との呼吸をどう合わせるのか」といったアンサンブル上のヒントを得られます。
さらに、だんだん遅くする音楽用語をまとめて解説している動画や教材では、ritardando・rallentando・ritenutoなどの聴き比べができるため、耳でニュアンスを体感するトレーニングとしても有効です。
日々の声楽練習の中では、「今日はこの曲のリタルダンドだけを徹底的に研究する」とテーマを絞る日を作るのもおすすめです。
録音や動画を活用し、自分のリタルダンドが「意図した感情」と一致しているかを客観的にチェックすることで、「なんとなく遅くした」から「言葉と感情に裏付けられた時間のコントロール」へと一歩踏み込むことができます。
最終的には、楽譜に書かれたrit.という記号を出発点に、自分なりの表現アイデアを重ねていくことが、声楽家としての個性につながっていくでしょう。
リタルダンドの語源や歴史的な解釈、ラレンタンドとの違い、書き込みリタルダンドの譜例解説など、楽語そのものを深く知るための参考になります。
ONTOMO「リタルダンド:「遅くする」という意味の楽語、ラレンタンドとの違い …」
rit.の基本的な意味、楽譜上での表記の種類、a tempoなど関連記号との関係を整理したいときに役立ちます。
rit.(リタルダンド)とは?ピアノ楽譜の読み方と弾き方を解説!
声楽や合唱での表現づくり、感情の扱い方を考えるうえで、テンポ変化と感情認知の関係を知るヒントになります。
表情・音声・音楽からの感情認識における感情語の役割の検討

(フレームワーク)FRAME WORK リタルダンド 2折財布 0045711 (マスタード(53))

