リコーダー練習曲を小学校で活かす選曲と指導のコツ
「練習曲は簡単な曲から順番に教えれば大丈夫」と思っていると、子どもの上達が止まります。
リコーダー練習曲の小学校3年生向け導入曲と「シ」から始める理由
小学校でリコーダーが始まるのは3年生からです。多くの教科書では、最初に学ぶ音として「シ(B)」が指定されています。これには明確な根拠があります。「シ」の運指は左手の親指と人差し指の2本だけを使うため、初めて楽器を持つ子どもにとって最も指が安定しやすい音だからです。
「シ→ラ→ソ」の順で音を増やしていく指導順序は、教育芸術社をはじめ主要な音楽教科書すべてに共通しています。左手の指を一本ずつ増やすだけで音が変わるため、子どもは「指をひとつ足したら音が変わった!」という達成感を得やすく、学習意欲の維持につながります。
導入初期の定番曲として定着しているのが「きれいなソラシ」「坂道」などです。これらはソ・ラ・シの3音だけで演奏できるように作られており、子どもが音程の変化を体感しながら運指を習得できる構成になっています。
| ステップ | 習得音 | 代表練習曲 | 使う指の数 |
|---|---|---|---|
| STEP 1 | シ | きれいなソラシ(シだけ) | 左手2本 |
| STEP 2 | シ・ラ | きれいなソラシ | 左手2〜3本 |
| STEP 3 | シ・ラ・ソ | 坂道・夕やけこやけ | 左手3〜4本 |
| STEP 4 | 高いド・レ追加 | アチャパチャノチャ・パフ | 左手全体 |
ここで注意が必要なのが「ジャーマン式」と「バロック式」の違いです。小学校の多くで採用されているのがジャーマン式ですが、「ファ」の運指がバロック式と異なります。子どもが家に持ち帰って保護者と練習する場面では、親が昔使っていたバロック式と混在するケースがあります。保護者への連絡帳や学級通信で「お使いのリコーダーの式の確認」を一言添えておくと、家庭練習でのトラブルを減らせます。これは知っておくと得する情報です。
参考:ジャーマン式・バロック式の違いとリコーダーの選び方について詳しく解説されています。
小学校で使うリコーダーはどう選ぶ?ジャーマン式とバロック式 | ヤマハ
リコーダー練習曲の小学校4・5年生向けレベルアップ曲とサミング指導
4年生以降になると、練習曲は一段階難しくなります。特に大きなテーマとなるのが「サミング」です。サミングとは、リコーダーの裏側にある穴を左手の親指で半分だけ開ける奏法で、これを使うと1オクターブ高い音が出せます。
サミングの習得が遅れると、吹ける曲の幅が著しく制限されます。つまり「高い音が出せない=演奏できる曲が増えない」という状態が続き、子どものモチベーション低下を招きます。
4年生の教科書には「ハロー・サミング」という名前の練習曲が収録されており、その名の通りサミング習得を目的として設計されています。この曲は高いドとミを多用する構成で、サミングの動きをくり返し練習できます。
サミングの指導で現場教師がよく使うたとえが「親指でドアをちょっとだけ開けるイメージ」というものです。完全に閉じるのでも完全に開けるのでもなく、爪のつけ根あたりで穴に少しだけ隙間を作る感覚です。はがきの厚み(約0.3mm)ほどのすき間が目安といわれています。これくらい細かいコントロールが必要だということですね。
また、5年生で登場する「アフリカン・シンフォニー」は、運指が複雑なだけでなく息のスピードコントロールも要求されます。高音部では息を細く速く送り込む必要があり、初めてチャレンジする子は音がかすれやすくなります。この段階では、吹く前にリコーダーを手で温めてから演奏させる習慣をつけると、音のかすれを大幅に減らせます。楽器が冷えたまま吹くと管内で結露が起きやすく、これが音のかすれの主要因になります。
参考:サミング習得のステップと練習方法について詳しく説明されています。
「サミング」って何? 子どものリコーダー、ワンランク上の練習法 | ベネッセ
リコーダー練習曲を小学校で選ぶ際の「知っている曲」活用術
子どもたちがリコーダーを吹き続けられるかどうかは、「弾きたいかどうか」にかかっています。これが基本です。
教科書に載っている曲だけで指導すると、習熟度に個人差が出た時に「もう吹けることがない」と感じる子が現れます。そこで有効なのが、子どもがすでに知っているメロディを練習曲に取り入れることです。元小学校音楽教員の実践では、知っている曲を使うと「リズムを教えなくても、音の高ささえ分かれば演奏できる」という利点があることが報告されています。
知っている曲を使うメリットは大きく3点あります。
- 🎯 リズムの習得時間が大幅短縮:メロディが頭に入っているため、楽譜を音として認識する速度が上がります。
- 🎯 「完成形のイメージ」が持てる:仕上がりの音楽が想像できるため、途中でやめにくくなります。
- 🎯 保護者との会話が生まれる:CM曲や人気アニメ曲なら保護者にも馴染みがあるため、家での練習が自発的になりやすいです。
具体的には、ソ・ラ・シの3音だけで吹ける「明星チャルメラ」から始め、徐々に使う音を増やして「ガリガリ君のCM」「ファミリーマートの入店音」などに進む段階的な楽譜集の実践が、複数の小学校教員から好評を得ています。
高学年では「紅蓮華(LiSA)」「新時代(Ado)」など流行曲のサビをリコーダー用にアレンジした楽譜も有効です。ただし流行曲の場合、著作権の関係で市販の楽譜を複製することには注意が必要です。授業での使用は教育目的として認められているケースが多いですが、保護者への配布や校内掲示には改めて確認が必要です。これは知っておかないと損します。
| レベル | 使用音数 | おすすめ「知っている曲」例 |
|---|---|---|
| 入門(3音) | ソ・ラ・シ | 明星チャルメラ、ガリガリ君CM |
| 初級(4〜5音) | ファ〜ド | ファミマ入店音、お値段以上ニトリ |
| 中級(6〜8音) | レ〜高いド | この木なんの木、呼び込み君 |
| 上級(サミングあり) | 全音域 | 紅蓮華、新時代(Ado)サビ |
参考:レベル別リコーダー練習曲の楽譜と音源が公開されており、授業での活用事例も掲載されています。
小学校のリコーダー授業で使える子どもが楽しめる楽譜特集! | やまもりのくま
リコーダー練習曲で小学校の子どもがつまずく3大ポイントと対処法
実際の授業や家庭練習でリコーダーを指導していると、子どもがつまずく場面はほぼ決まっています。意外ですね。3つのポイントに絞って整理します。
① タンギングができない・わからない
息を口から出しながら舌先で「トゥ」と言う動作が、子どもには直感的に理解しにくいです。「笛のおしゃべり」と言い換えたり、リコーダーを持たない状態で「トゥトゥトゥ」と声に出す練習から始めたりすると、習得がスムーズになります。タンギングが身につくと、音と音の区切りがはっきりし、演奏全体のクオリティが一段上がります。
② 指でトーンホールを完全にふさげない
特に3年生の指が細い子は、「ミ(E)」の音孔をふさぐ際に隙間ができやすくなります。音孔の大きさはおよそ7〜8mm程度。指の腹(指先から1cmほど内側の柔らかい部分)でしっかり当てることが条件です。この問題を解決するために「指ゆびをそっとのせる」とだけ指示するよりも、「水道の蛇口を完全に閉めるように」など具体的なイメージを与える方が効果的です。
③ 息が強すぎてオーバーブロウになる
息が強すぎると、音が1オクターブ上にひっくり返る「オーバーブロウ」が起きます。これはリコーダーの構造上の特性で、適切な息の量が極めて重要です。「吹く」より「歌う」イメージを持たせることが有効で、先に曲を口で歌ってから演奏させると、自然と息が穏やかになります。息の量の目安は「ろうそくを吹き消さない程度」と伝えると分かりやすいです。
- ❌ やりがちなNG:楽譜を渡してすぐに「吹いてみよう」と言う
- ✅ 有効なアプローチ:歌う→タンギングだけ練習→指だけ練習→総合して吹く、の4ステップ
タンギング・運指・息の量は別々に練習させることが大切です。つまり「一度に全部やらせない」が原則です。
参考:リコーダー奏法の技術的な3要素(息づかい・指づかい・舌づかい)の研究論文が掲載されています。
小学校音楽科におけるリコーダー奏法の学習指導に関する提言(PDF)| 比治山大学
リコーダー練習曲の小学校での独自活用術:保育士視点からの音楽的土台づくり
保育士として日々子どもたちと音楽に触れている立場からすると、小学校のリコーダー学習を支えているのは、就学前から積み上げてきた「音楽的土台」です。これは意外と見過ごされがちです。
保育園・幼稚園で童謡や手遊び歌をたくさん経験してきた子どもは、3年生でリコーダーを始めた時に明らかな差が出ます。研究によれば、就学前に歌唱経験が豊富だった子どもは、リコーダーの音程感覚の習得が早く、音を外した時に自分で気づく「自己修正能力」が高い傾向があるとされています。
具体的に保育現場で意識しておきたいことは3点あります。
- 🎵 メロディラインを口ずさむ習慣をつける:歌詞ではなく「ドレミ」で歌わせる経験が、後のリコーダー学習における音名認識を助けます。
- 🎵 リズム打ちを遊びに取り入れる:手拍子やタンバリンを使ったリズム遊びが、タンギングのリズム感覚の前段階として機能します。
- 🎵 「高い音・低い音」を体で表現させる:音の高低を体の動き(高い音=つまさき立ち、低い音=しゃがむ)で感じさせることで、音域への感受性が育ちます。
また、保育現場にも「鍵盤ハーモニカ」という楽器があります。3〜5歳児が使うこの楽器は、実は小学校のリコーダーと音域がほぼ重なっています(ソプラノリコーダーとウクレレの音域がほぼ同じという話と同様に)。鍵盤ハーモニカで「ドレミファソラシド」をすでに体験している子どもは、リコーダーの音名学習に入る際のハードルが低くなります。
保育士が日常的に「音名を意識した歌遊び」「高低を身体で表現する活動」を取り入れておくことが、小学校以降の音楽教育への最良のプレゼントになります。すぐ実践できますね。
| 保育年齢 | おすすめ活動 | リコーダー学習への効果 |
|---|---|---|
| 3歳 | 手拍子リズム遊び | タンギングのリズム感覚の基礎 |
| 4歳 | 音の高低を体で表現する歌遊び | 音域・音程感覚の早期習得 |
| 5歳 | 鍵盤ハーモニカでドレミ体験 | 音名と音の対応の予備知識形成 |
参考:小学校3年生のリコーダー導入期における指導法の研究論文です。就学前経験との関連も言及されています。
小学校第3学年におけるリコーダー導入期の試案(PDF)| 名古屋学院大学

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