ラモー作曲家の生涯と代表曲・和声理論の全貌

ラモー作曲家の生涯・代表曲・和声理論を徹底解説

ラモーは50歳になるまで、ほぼ無名のオルガニストでした。

ラモー作曲家・3つのポイント
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50歳でオペラデビューした遅咲きの天才

ラモーは50歳になるまで地方のオルガニストとして活動。1733年の初オペラ「イポリートとアリシー」で一躍フランス楽壇の頂点へ。

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現代の和声理論の「父」

1722年出版の『和声論』は、現代の音楽理論(コード進行・機能和声)の土台。「ハーモニー」という概念を体系化した最初の人物。

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ルイ15世に認められたフランス王室作曲家

1745年、63歳でルイ15世の宮廷作曲家に正式任命。ヴォルテールと共作した「ナヴァールの姫君」が高く評価された。

ラモー作曲家の生い立ちと波乱の前半生

 

ジャン=フィリップ・ラモー(Jean-Philippe Rameau)は、1683年9月25日にフランスのディジョンで生まれました。ディジョンはブルゴーニュ公国の首府であり、今日ではマスタードの産地としても有名な都市です。父親のジャン・ラモーはディジョン大聖堂のオルガニストを務めており、ラモーは音楽一家の中で幼いころから鍵盤楽器に親しんで育ちました。

18歳のときにイエズス会の教会学校を中退し、イタリアへ渡ります。しかし、ミラノに数か月滞在しただけで早々に帰国。その理由は謎のままですが、ラモー自身はのちに「ヴェネツィアで本場のオペラをもっと学べばよかった」と後悔していたとされています。

帰国後はオーベルニュやクレルモン=フェランといった地方都市の教会オルガニストを転々と務めました。23歳のときに初めてパリへ出て『クラヴサン曲集第1巻』(1706年)を出版しましたが、ほとんど評判にならず、故郷へ戻る羽目になります。その後も地方と都市を行き来しながら、地味な活動を続けました。

つまり、前半生は下積みの連続です。

それでも、この長い下積み期間にラモーが続けていたのは和声理論の深い研究でした。各地を転々としながらも、音楽の数学的・物理的な仕組みを解き明かすという大きな野望を持ち続けていたのです。のちに世界を変えることになる「和声理論」の種は、この時期に静かに育っていたのでした。

ラモー作曲家の和声論とその歴史的意義

1722年、ラモーは念願の音楽理論書『自然の諸原理に還元された和声論(Traité de l’harmonie)』を出版しました。このとき彼は39歳。出版の翌年、満を持してパリへ定住します。

この『和声論』は、音楽史上でも最重要クラスの理論書として知られています。音楽之友社が刊行する専門書でも「それ以降の調性音楽の理論的な支えが、この著作に多くを負っていることは疑う余地もない」と評されるほどです。

『和声論』の画期的な点は、「根音(こんおん)」と「転回形」という概念の導入にあります。今日の音楽でいう「コード(和音)」や「コード進行」のルールは、まさにラモーがここで体系化したものです。「ハーモニー」という語を和声・和音の意味で使う習慣も、ラモーに遡ると言われています。

これは保育士にとっても実感しやすい話です。ピアノで子どもたちの歌に和音をつけるとき、「ド・ミ・ソ」「ファ・ラ・ド」「ソ・シ・レ」などのコードを組み合わせますよね。あの「コード理論」の基礎を作ったのが、ラモーなのです。

現代の音楽理論が根付いています。

1726年には第2の理論書『音楽理論の新体系(Nouveau système de musique théorique)』を発表し、音楽理論家としての名声を確立。しかし同時に、多くの論敵も生み出しました。最大の論敵は、かの『社会契約論』で知られる哲学者ジャン=ジャック・ルソーでした。ルソーはイタリア・オペラを支持し、フランス・オペラを代表するラモーと激しく対立したのです。これはのちに「ブフォン論争」として音楽史に刻まれています。

出来事
1722年 『和声論』出版(39歳)
1726年 音楽理論の新体系』出版・名声確立(43歳)
1733年 初オペラ『イポリートとアリシー』初演(50歳)
1745年 ルイ15世の宮廷作曲家に任命(63歳)
1764年 パリで逝去(80歳)

音楽之友社刊行のラモー研究書では、ラモーの理論が「ヨーロッパ諸国へと波及し決定的な影響を与えた。その影響は今日のわれわれの音楽体験に及ぶ」と述べられています。

音楽之友社『自然の諸原理に還元された和声論』(ラモー著・伊藤友計訳):ラモーの和声論の初邦訳。現代コード理論の源流を直接学べる権威ある一冊です。

ラモー作曲家の代表曲とクラヴサン音楽の魅力

ラモーは前半生の大部分を「クラヴサン(チェンバロ)」のための作曲に捧げました。クラヴサンとは、ピアノの前身にあたる鍵盤楽器で、弦をはじいて音を出す仕組みを持っています。チェンバロ、ハープシコードとも呼ばれます。

ラモーのクラヴサン曲は、全部で3巻・5つの組曲にまとめられています。

  • クラヴサン曲集第1巻(1706年):組曲第1番 イ短調
  • クラヴサン曲集第2巻(クラヴサン曲集と運指法)(1724年):組曲第2番 ホ短調、組曲第3番 ニ長調
  • 新クラヴサン曲集(1728年):組曲第4番 イ短調、組曲第5番 ト短調

これが基本です。

代表曲として特に有名なのが以下の3曲です。まず「タンブラン(Tambourin)」は、タンバリンのリズムを模した軽快な小品で、バロック鍵盤曲の入門としても人気があります。次に「めんどり(La Poule)」は、雌鶏が鳴く様子を音楽で描写したユニークな作品。不規則なリズムが鶏の動きを見事に表現しており、子どもたちの音楽鑑賞授業でも取り上げられることがあります。そして「ガヴォットと6つのドゥーブル(Gavotte et 6 Doubles)」は、変奏曲の傑作として高く評価されており、シンプルなガヴォットの旋律が6回にわたって変奏されていく構成が見事です。

これは使えそうです。

ラモーのクラヴサン曲が現代人にとって驚くほど新鮮に聴こえる理由は、彼が和声理論の専門家でもあったからです。当時としては耳慣れない大胆な和音進行や転調が随所に仕込まれており、「バロック音楽なのに現代的」とよく形容されます。保育士として子どもたちに「いろいろな音の響き」を体験させたいときに、ラモーの小品は非常に優れた教材になり得るでしょう。

ピティナ・ピアノ曲事典「ラモー」:代表曲の楽譜情報や演奏難易度も確認できる、音楽教育者向けの参考ページです。

ラモー作曲家の代表オペラ「優雅なインドの国々」の世界観

50歳で初めてオペラを手がけてから、ラモーは80歳で亡くなるまでの30年間、オペラ作曲家としての第一線を走り続けました。その数は悲劇(トラジェディ)、喜劇、オペラ=バレエなどを合わせると30作品以上に及びます。

代表的なオペラを以下にまとめます。

作品名 ジャンル
イポリートとアリシー 1734年 抒情悲劇
優雅なインドの国々 1735年 オペラ=バレエ
カストールとポリュックス 1737年 抒情悲劇
プラテー 1745年 喜劇バレエ
レ・ボレアード 1763年 抒情悲劇

中でも「優雅なインドの国々(Les Indes galantes)」は、ラモーのオペラ作品の中で今日最も広く知られています。1735年8月23日にパリのテュイルリー宮殿広間で初演されたプロローグ付き4幕のオペラ=バレエです。「愛」をテーマに、トルコ、ペルー、ペルシャ、北アメリカという4つの異国の舞台を舞台に物語が展開するオムニバス形式が特徴的です。

壮大なスケールですね。

舞踏(バレエ)の要素が非常に大きく、管弦楽が充実している点もラモーらしさの一つです。なかでも「未開人(Les Sauvages)」の場面は、現代の演出でも非常に人気があり、2019年のパリ・オペラ座での新演出公演はSNSで世界中に拡散されて大きな話題になりました。エキゾチックな題材が18世紀のパリ市民を熱狂させた事実は、人間の「異文化への好奇心」が時代を超えて変わらないことを示しています。

ラモーのオペラには、豊かな打楽器の使用や斬新な和声進行など、のちにルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンやクロード・ドビュッシーといった後世の作曲家たちにも影響を与えた革新性が詰まっています。フランス音楽史においてリュリとドビュッシーをつなぐ重要な橋の役割を果たした人物と言えるでしょう。

Wikipedia「優雅なインドの国々」:あらすじ・各幕の詳細・初演情報などが整理された参考ページ。

ラモー作曲家を保育の音楽活動に活かす独自視点

バロック音楽というと「難しい」「子どもには退屈」と思われがちですが、ラモーのクラヴサン曲には動物や情景を描写した「標題音楽」が多く含まれています。これが保育現場での音楽鑑賞活動と非常に相性がよいのです。

たとえば「めんどり」は、雌鶏が「コッコッ」と鳴きながら歩く様子が音楽でリアルに描かれています。子どもたちに聴かせながら「これは何の動物かな?」とクイズ形式にすると、想像力を引き出す鑑賞活動になります。「タンブラン」はタンバリンのリズムを模した軽快な曲なので、実際にタンバリンを使った合奏遊びにもつなげやすい曲です。

これは使えそうです。

また、ラモーの生涯そのものが子どもたちへの「粘り強さ」「あきらめない心」を伝えるエピソードとして機能します。50歳まで下積みを続け、地方の教会を転々としながらもコツコツと研究を続け、ついにフランス一の作曲家になったというストーリーは、大人の保育士が自分自身のモチベーション維持にも活かせる話でしょう。

保育の音楽活動でバロック音楽を取り入れる際、よく問題になるのが「どの楽器で演奏するか」という点です。ラモーのクラヴサン曲はピアノでも演奏可能な作品が多く、保育士が日常業務で使っているピアノをそのまま活用できます。

楽器の心配は不要です。

具体的な活用ステップとしては、まず①BGMとして流す(おやつや製作の時間など)、次に②「この音は何に聞こえる?」と問いかける鑑賞タイムを設ける、そして③リズム打ちや身体表現に発展させる、という3段階が取り組みやすいでしょう。特に「タンブラン」のリズムは4分の2拍子の明快なリズムで構成されており、手拍子や足踏みで子どもがついていきやすい特性があります。

保育所保育指針でも「豊かな感性と表現」は育みたい資質・能力の一つとして明示されています。クラシック音楽を保育に取り入れることの効果については、脳内の血流改善や集中力・創造性の向上といったメリットが研究で指摘されており、ラモーのような変化に富んだバロック曲は特に好奇心を刺激するうえで有効です。

公益財団法人音楽文化創造「子どもの日常の中に生の音楽を届けるアウトリーチ活動」:保育施設での音楽活動の実践事例として参考にできるページです。

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