ペールギュント組曲を解説して保育に活かす方法
「朝」は北欧の朝ではなく、サハラ砂漠の夜明けを描いた曲です。
ペールギュント組曲の基本解説:グリーグと原作の関係
ペールギュント組曲は、ノルウェーの作曲家エドヴァルド・グリーグが1876年に初演した劇付随音楽です。 もともとはノルウェーの劇作家ヘンリク・イプセンが自ら依頼した作品で、イプセンは当時すでにピアノ協奏曲で有名だったグリーグを指名しました。note+1
全体では26曲からなる大規模な作品ですが、そのうち4曲ずつが第1組曲(作品番号46、1888年出版)と第2組曲(作品番号55、1891年出版)としてまとめられました。 保育現場でよく耳にする「朝の気分」や「山の魔王の宮殿にて」は、この第1組曲に含まれています。
つまり、「ペールギュント組曲」と一口に言っても、第1・第2合わせて8曲あると覚えておけばOKです。
保育士として子どもに紹介するとき、「ノルウェーという国の作曲家が、お話の音楽を作ったんだよ」とひと言添えるだけで、子どもの興味がぐっと広がります。楽曲の背景を知っておくことは、そのまま保育の言葉がけのヒントになります。
ペールギュント組曲のあらすじ解説:主人公ペールの冒険とは
主人公ペール・ギュントは、落ちぶれた農家の息子で、口だけ達者なニートとして物語が始まります。 彼は母オーセとふたりで暮らしており、祖父の代まで豊かだった家を父親が財産ごとつぶしてしまったという境遇です。
参考)「ペール・ギュント」って何ですか??|アンサンブルSAKUR…
ペールはその後、山の魔王の世界へ迷い込んだり、アフリカで商人として暴利をむさぼったりと、波乱に満ちた冒険を繰り広げます。 その間も、幼なじみのソルヴェイグは故郷でひたすらペールの帰りを待ち続けています。これが感動的な「ソルヴェイグの歌」につながります。
参考)【小学生でもわかる】ペール・ギュントのあらすじを図解で解説!…
物語の核心はここです。「良い人間になる」ことを先延ばしにし続けたペールが、老いて故郷に戻ったとき、ソルヴェイグの愛に救われるというテーマです。
子どもたちに伝えるときは、「待っていてくれる人がいるって、すごいことだね」というひと言が自然な導入になります。物語のテーマが分かると、音楽の聴こえ方も変わります。
ペールギュント組曲「朝の気分」解説:保育でよく使われる理由
「朝の気分(モルゲンスティムニング)」は、ペールギュント第1組曲の第1曲目です。 穏やかなフルートの旋律から始まり、徐々にオーケストラ全体へと広がっていく構成が特徴です。
参考)https://www.tpo.or.jp/concert/pdf/201604program.pdf
意外ですね。この曲が描いているのは、ノルウェーの朝ではなくサハラ砂漠の夜明けです。 劇の第4幕への前奏曲として書かれており、舞台はモロッコ近くの北アフリカです。「北欧の爽やかな朝」というイメージは後から広まったもので、実際の情景は砂漠の静かな夜明けでした。
保育の現場では登園時のBGMや、朝の会のピアノ演奏として活用されることが多い曲です。これは問題ありません。
ただし「この曲はどんな朝をイメージした音楽か知ってる?」と問いかけると、子どもたちは驚いて「え、砂漠?」と前のめりになります。知識として持っておくだけで、音楽活動のひとつのネタになります。
東京フィルハーモニー交響楽団による「朝のすがすがしさ」を含む詳細な楽曲解説PDF(「朝の気分」の場面背景について記載あり)
ペールギュント組曲「山の魔王の宮殿にて」解説:子どもが喜ぶ使い方
「山の魔王の宮殿にて(イン・ザ・ホール・オブ・ザ・マウンテン・キング)」は、ペールギュント第1組曲の第4曲です。 低音の弦楽器から静かに始まり、繰り返すたびに速く・大きく・激しくなっていくクレッシェンドの構造が最大の特徴です。
参考)https://www.clubnagy-music.com/column/p7348/
曲の長さは演奏によって約2〜3分ほど。テンポの変化が分かりやすく、子どもが「どんどん速くなる!」と感じやすいのが特長です。保育では「鬼ごっこのBGM」「表現遊びでトロルになりきる」「運動会のおにの入場曲」として使われることが多い曲です。
これは使えそうです。
物語の場面では、ペールが山の魔王(トロル)の宮殿に迷い込み、妖怪たちに追いかけ回されるシーンを描いています。 「どんな怪物が出てきそう?」と問いかけながら聴かせると、子どもが自分でイメージを膨らませます。表現活動のきっかけとして非常に使い勝手のよい1曲です。
テンポの変化を体で感じる活動(ゆっくり歩く→速く走る)と組み合わせると、リズム感の発達にも自然につながります。
ペールギュント組曲「ソルヴェイグの歌」解説:保育士が知っておくべき背景
「ソルヴェイグの歌」はペールギュント第2組曲の第4曲(最終曲)に収録されています。 組曲版ではオーケストラのみで演奏されますが、原曲は女声のソプラノが歌う「歌曲」です。これが意外と知られていません。
歌詞の内容は、ペールの帰りをひたすら待ち続けるソルヴェイグの心情を歌ったもので、「冬が来ても、春が来ても、あなたを待っている」という純粋な愛情が表現されています。 劇の中でソルヴェイグが歌うことで、放浪し続けたペールの心に響き、物語のクライマックスを形成します。
結論は、この曲が「待つことの美しさ」を音楽で表現した名曲だということです。
保育士としてこの曲を子どもに紹介するとき、「ずっと待っていた人がいる」という場面を簡単に説明するだけで、子どもは音楽に感情移入しやすくなります。情操教育の文脈で使いやすい1曲です。また、ピアノ演奏でゆったりしたメロディを弾けると、お昼寝の時間や降園前の落ち着いた時間に活用できます。
「ソルヴェイグの歌」を含むペールギュント全体のあらすじを図解で分かりやすく解説したページ(子どもへの説明の参考に最適)
ペールギュント組曲「オーセの死」解説:保育での扱い方と注意点
「オーセの死」はペールギュント第1組曲の第2曲で、弦楽器のみで演奏される短い曲です。 「オーセ」とはペールの母親の名前で、息子が帰ってくることなく亡くなる場面を描いた葬送曲的な性格を持っています。演奏時間は約3〜4分と短く、ゆっくりとした重々しいテンポが特徴です。
厳しいところですね。「死」という言葉がタイトルに入っているため、保育現場ではそのまま子どもに紹介しにくいと感じる保育士も少なくありません。
ただし、この曲はNHK「みんなのうた」などでも使われた経験があり、悲しみを音楽で表現することは子どもの感情教育にとって重要な要素です。年長クラスでの鑑賞活動として「悲しいときってどんな音がするかな?」という問いかけとともに使う方法もあります。
場面を「お母さんが眠ってしまったシーン」と表現するなど、言葉の選び方を工夫することで自然に扱えます。年齢と発達段階に合わせた言葉がけが条件です。
「朝の気分」の曲解説と、グリーグが主人公の心理を音楽に込めた意図について詳しく解説しているページ(保育士向けの説明言葉の参考になる)

No.101 グリーグ/「ペールギュント」第1組曲 (Kleine Partitur)

