応急手当と保育と救急
応急手当の保育 救急の初動と判断
保育園の救急対応で一番差が出るのは、「何をするか」より先に「何からやるか」を揃えておくことです。こどもの事故や急変は、発見した職員が最初に動いた数十秒で、その後の判断の迷いが大きく減ります。ここでは“現場の初動”を、園のマニュアル化に落とし込みやすい形で整理します。
まず、倒れた・反応がない・呼吸が怪しいなどの重い兆候がある場合、119番通報までの時間を短くする工夫が重要です。こども家庭庁の応急手当解説でも、救急車到着まで数分かかるため、その間の応急措置が命を救うことが明確に書かれています。さらに、通報後はハンズフリーにして指示を受けながら処置を進める流れが示されています。
参考(心肺蘇生・119番の流れの根拠):
次に、園内での「役割」を決め打ちしておくと、応急手当の質が安定します。現場では“発見者が処置を続ける”一方で、誰かが救急要請・AED手配・保護者連絡・記録・玄関誘導・他児の保育を回さないと、処置が中断されがちです。実際の園マニュアルの例でも、発見者が応急手当と容態把握、救急車要請の判断をしつつ、他児対応や連絡系の動きが別に書かれています。
参考(園のフロー例・役割分担のイメージ):
判断に迷うポイントは「救急車を呼ぶ/様子を見る」の二択に見えて、実は三択に整理すると決めやすくなります。
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①今すぐ119番(意識なし、呼吸が弱い、けいれん、窒息疑い、重いやけど等)
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②急いで受診(症状が落ち着いても危険物誤飲など)
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③園で安静・経過観察(軽い打撲など。ただし再評価のタイミングを決める)
こども家庭庁のページには、やけど・打撲・誤飲などで「救急車を呼ぶ場合」「急いで受診」「様子を見る」判断材料が具体的に並んでおり、園の基準作りに転用しやすいです。
意外と見落とされるのが「処置中断のリスク」です。たとえば「親に電話してから対応」になってしまうと、応急手当の開始が遅れます。園の運用としては、処置担当は処置をやめない、連絡担当は別の職員、という原則を徹底すると現場が回ります。特に心肺蘇生は連続性が大事で、現場の動線設計(AEDの位置、電話の場所、玄関誘導のルート)まで含めて整えておくと「慌てない」ではなく「慌てても崩れない」体制になります。
応急手当の保育 救急の心肺蘇生とAED
保育現場での一次救命処置(心肺蘇生とAED)は、知識だけでなく“迷わない型”が必要です。緊急時はアドレナリンで判断が散りやすく、手順が頭から抜けます。だからこそ、手順を短い言葉に圧縮し、誰でも同じ順番で動けるようにしておくことが現実的です。
こども家庭庁の整理は非常に実務的で、「人を呼ぶ→119番→ハンズフリー→胸骨圧迫と人工呼吸30:2を繰り返す」という骨格が明確です。胸骨圧迫は、幼児も乳児も「胸の厚さの3分の1程度沈む強さ」「1分間に100~120回」という基準が提示され、幼児と乳児の押す位置・手の使い方も分けて書かれています。
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幼児:胸骨の下半分を手のひらの根元で圧迫
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乳児:乳頭線の中央より少し足側を指2本で圧迫
この「年齢での違い」を、園内掲示や研修資料に落とすだけで、現場の迷いは減ります。
参考(圧迫回数・位置・人工呼吸・AEDの要点):
AEDについても、実際は“機械が指示してくれる”ので、やるべきは「持ってくる人を即決めする」「電源を入れる」「パッドを貼る」「音声に従う」に集約できます。こども家庭庁の説明でも、電源を入れて音声に従い、効果がない場合は胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を繰り返し、以後2分おきにAED操作、と記載されています。現場では「AEDを付けたから止める」ではなく「AEDを付けても胸骨圧迫を止めない(解析・ショックの瞬間以外)」が重要です。
さらに、意外と盲点なのが「救助者が一人のとき」の考え方です。日本医師会の救急蘇生法ページでは、異物でぐったりして反応がなくなった場合は心停止への対応を開始し、救助者が一人なら119番通報を行い、AEDが近くにあると分かっていればAEDを取りに行ってから心肺蘇生を開始する旨が書かれています。また、心肺蘇生中に異物が見えた場合は取り除くが、見えないのに指を入れて探らない(盲目的に指を入れない)こと、胸骨圧迫を中断しないことが示されています。
参考(盲目的な指入れNG・中断を避ける):
保育園の研修では、手技の正確さと同じくらい「声かけの型」も役立ちます。例えば、処置者が周囲にこう指示できるように決めておくと動きが揃います。
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「119番、お願いします。スピーカーにしてつないでください」
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「AEDを持ってきて。場所は玄関横です」
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「時間の記録を開始して。何時何分から胸骨圧迫」
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「他の子を別室へ。落ち着かせて保育を続けて」
言い回しは園に合わせて調整してよいですが、短く断定的な命令形に揃えると、緊急時でも伝達が崩れにくくなります。
応急手当の保育 救急の窒息と異物除去
保育園で多い緊急は、実は「心停止」よりも「窒息(誤嚥・異物詰まり)」です。食事中だけでなく、おもちゃ・工作素材・季節行事の小物でも起こり得ます。窒息は数十秒単位で状態が悪化するので、手順を知っているかどうかが結果に直結します。
こども家庭庁の応急手当では、異物が喉に詰まったときは「誰かに119番通報を頼む」ことが明記され、その上で年齢別の除去法が示されています。
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1歳以上の幼児:背部叩打法→(取れなければ)腹部突き上げ法
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1歳未満の乳児:背部叩打法と胸部突き上げ法を交互に
そして、意識がない場合は心肺蘇生を行う、という流れです。ここが重要で、「取れないから様子を見る」は選択肢に入りません。
参考(年齢別の異物除去):
窒息対応での“意外な落とし穴”は、良かれと思ってやった行為が悪化を招くことです。日本医師会のページにもある通り、見えない異物を指で探るのは避けるべきで、胸骨圧迫の中断も避けるべきだとされています。保育の現場では、子どもの口へ指を入れると、奥へ押し込んだり、咬まれて処置者が手を離してしまったりして、状況が悪化しがちです。
参考(見えない異物を探らない):
また、窒息の兆候を早く拾う視点も重要です。次のサインは、食事中の“よくある咳”と区別しにくいので、職員間で共有しておくと救急判断が早まります。
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声が出ない(泣けない)、咳が弱い/出ない
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顔色が急に悪い、唇が紫っぽい
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呼吸音がゼーゼー、ヒューヒュー(気道が狭い)
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目を見開いて苦しそう、両手で喉を押さえる
これらがあるなら、ためらわずに「通報+異物除去」を同時進行で組み立てるのが基本です。
現場オペレーションの工夫としては、「食事の前に背部叩打法の姿勢を全職員が1回確認する」だけでも差が出ます。実際にやろうとすると、子どもの体の支え方、頭の位置、叩く場所が曖昧になりやすいからです。訓練は難しく考えず、“姿勢の確認だけ”をルーチンに入れるのが継続しやすい方法です。
応急手当の保育 救急のけがと熱中症と誤飲
保育園で頻発するのは、転倒・打撲・切り傷・やけど・熱中症・誤飲といった「救命一歩手前ではないが、判断が難しい」事案です。ここで迷いが続くと、保護者連絡や受診判断が遅れたり、逆に不要な救急要請で現場が疲弊したりします。線引きを作るには、権威ある公的情報をベースに園のルールへ落とし込むのが安全です。
やけどは「とにかく冷やす」が基本で、こども家庭庁では10~20分以上冷やすこと、服の上からかかった場合は脱がさず服の上から冷やすことが書かれています。また、広範囲や顔面などは救急車、片腕・片足以上でも救急または至急受診、手のひら以上や水ぶくれも受診、と具体的です。さらに、市販の冷却シートはやけどの手当てに使えない、低温やけどは見た目より重症のことがある、という注意も載っており、これは現場で役立つ“意外と知られていない盲点”になりやすい部分です。
参考(冷やし方・受診目安・冷却シート注意):
打撲(特に頭部)は、見た目の傷より「様子の変化」を観察する設計が重要です。こども家庭庁の記載では、頭の打撲で出血している場合はガーゼで圧迫して安静、意識がない・出血がひどい・繰り返し嘔吐などは救急車や至急受診、元気でも1~2日は安静にして様子を見る、といった方向性が示されています。園としては「観察チェック表(何分ごとに、どの項目を見るか)」を作っておくと、担当が交代しても観察が途切れません。
熱中症も同様に、初動が型になっていると強いです。こども家庭庁では、涼しい場所へ移動、衣服を緩め安静、エアコンやうちわで冷やす、首・脇・太ももの付け根など太い血管部位を冷やす、飲めるなら水分と塩分をこまめに、という具体策が整理されています。さらに、室温28℃を目安に調整、短時間でも車内放置しない、など予防まで書かれているので、園だより・掲示物にも転用しやすい内容です。
参考(熱中症の応急手当と予防):
誤飲は「吐かせる/吐かせない」の判断が難しい領域ですが、こども家庭庁の誤飲対処早見表では、緊急性の高いもの(灯油、ベンジン等)や急いで受診すべきもの(ボタン電池、磁石、鋭利な異物、洗剤など)が列挙されています。ポイントは、基本的に吐かせず、同じものを病院に持参して受診する、必要性は相談窓口(#8000等)も活用する、という方針が示されていることです。園の倉庫にある洗剤や消毒用品は種類が多いので、「製品名と保管場所の一覧」を作っておくと、受診時に“同じものを持参”が実行しやすくなります。
応急手当の保育 救急の歌と訓練
検索上位の多くは手順解説やマニュアル紹介に寄りますが、保育現場では「覚えていても、体が動かない」問題が起きがちです。そこで独自視点として、保育園の強みである“歌”を使って、救急対応の手順を短く体に入れる方法を提案します。子ども向けというより、職員向けの「口に出す型」を歌(リズム)に乗せる発想です。
たとえば、心肺蘇生の流れは、こども家庭庁にある骨格(人を呼ぶ→119→胸骨圧迫→人工呼吸→AED)に沿って、5~7拍で回せる短いフレーズにすると、緊急時に口から出て行動が始まります。例として、次のように“声かけの順”を固定します(実際の歌詞は園内で調整してください)。
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「呼んで!通報!AED!」(周囲への指示を短縮)
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「押して、ふいて、また押す」(30:2の反復を思い出す合図)
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「見えたら取る、見えなきゃやめる」(異物で指を入れない注意を思い出す合図:日本医師会の注意を反映)
このように“歌の形”にする狙いは、暗記ではなく「緊張下の再生」を助けることです。
参考(胸骨圧迫・人工呼吸30:2、AEDの流れ):
参考(見えない異物を探らない注意):
さらに、訓練を“イベント化しない”のもポイントです。年1回の講習は大切ですが、保育の現場は入れ替わりもあり、時間が経つと手順が薄れます。そこで、月1回・5分でできる「ミニ訓練」をルーチン化します。
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AEDの場所まで歩いて触る(開け方、電源ボタン、パッドの位置を確認)
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119番のロールプレイ(住所、園名、状況、年齢、意識・呼吸の有無を言う練習)
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窒息の姿勢確認(乳児を支える角度、背中を叩く位置だけ確認)
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記録係の動き確認(開始時刻、変化、処置、引き継ぎ事項をメモする)
この「短く、何度も」が、上手い人を作るのではなく、全員が最低限できる状態を保ちます。
歌が得意な園なら、職員朝礼の最後に“救急フレーズ”を10秒だけ唱和するだけでも効果があります。緊急時は完璧さより、まず動き出すことが大切で、行動が始まれば公的な手順(こども家庭庁の内容)に沿って修正しながら進められるからです。園の文化として自然に溶け込ませれば、研修資料の棚に眠るマニュアルより、現場で役に立つ「生きた応急手当」になります。

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