音楽形式一覧|保育士が知るべき種類と活用法

音楽形式一覧|保育士が現場で使える種類と特徴を徹底解説

保育士として毎日子どもたちと歌っているのに、「きらきら星」がモーツァルトの変奏曲形式と全く同じ仕組みで作られているのを知らずに損しています。

🎵 この記事でわかること
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音楽形式の基本一覧

一部形式・二部形式・三部形式など、楽曲の構造を分類する「楽式」の種類と違いをわかりやすく整理します。

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保育の現場との結びつき

童謡・子どもの歌に多く使われる形式のパターンと、それを活かした音楽活動・遊びの具体例を紹介します。

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知ると演奏・指導の質が変わる

音楽形式を理解することで、ピアノ演奏の表現力が上がり、子どもへの曲の説明や活動の展開にも自信がつきます。

音楽形式(楽式)とは何か|音楽形式を知る前の基本知識

 

音楽形式とは、ひとつの楽曲がどのような構造で組み立てられているかを示す「設計図」のことです。別名「楽式(がくしき)」とも呼ばれ、音楽理論の基礎となる重要な概念です。

「音楽は感性で楽しむもの」と思われがちですが、実は多くの名曲がきちんとした規則と構造に基づいて作られています。その構造こそが音楽形式であり、これを知っておくと曲の「どこが山場か」「なぜここが心に響くのか」を論理的に理解できるようになります。

音楽形式を考えるうえで欠かせないのが、楽曲の最小単位から順に積み上げていく考え方です。

  • 動機(モチーフ):音の高さ・リズム・拍子の3要素からなる最小単位で、通常2小節で構成されます。ベートーヴェンの交響曲「運命」冒頭の「タタタターン」が典型的な動機の例です。
  • 小楽節(楽句):動機が2つ連なったもので、通常4小節になります。童謡の1フレーズがこれにあたることが多いです。
  • 大楽節:小楽節が2つ組み合わさったもので、通常8小節です。童謡など短い曲はこの大楽節だけで成り立っているものも少なくありません。

大楽節が基本です。そして、この大楽節をどのように組み合わせるかによって、音楽形式の種類が決まっていきます。

保育の現場で毎日歌う「ちょうちょう」や「春が来た」も、こうした構造の上に成り立っています。形式を知ることで、子どもたちへの弾き歌い音楽活動の説明がより豊かになるでしょう。

音楽形式の基礎については、NHK高校講座でも「反復と変化」という観点からわかりやすく解説されています。

NHK高校講座|いろいろな形式 一部~三部形式/ロンド形式/ソナタ形式/変奏曲

音楽形式一覧①:一部形式・二部形式・三部形式の違いと具体例

保育で使う曲のほとんどは「一部形式」「二部形式」「三部形式」のいずれかに当てはまります。これが基本の3種類です。

🎵 一部形式(大楽節形式)

一部形式とは、「大楽節ひとつ」だけで構成された最もシンプルな形式です。アルファベットで表すと「A(a a’)」となり、前半と後半で微妙にメロディが変化するパターンが主流です。わかりやすく耳に残りやすい構造が特徴で、多くの童謡に用いられています。

曲名 形式 特徴
春が来た 一部形式 前半と後半で音が少し変化
赤とんぼ 一部形式 コンパクトで覚えやすい
ロンドン橋落ちた 一部形式 繰り返しが自然に生まれる構造

一部形式が基本です。保育士として子どもに初めて歌を教えるときは、まずこの形式の曲から始めると、子どもが早くメロディを覚えやすいという利点があります。

🎵 二部形式

二部形式は、異なる2つの大楽節(AとB)で構成される形式です。構成を図で示すと「A(a a’)→ B(b a’)」となるパターンが最も多く見られます。Bの冒頭に新しい要素が登場し、後半でAの要素が再び戻ってくる構造です。

> 代表曲:「花」「ちょうちょう」「荒城の月」

二部形式は、「変化」と「まとまり」のバランスが取れているため、聴き心地がよく、子どもたちが飽きずに聴ける点が魅力です。「ちょうちょう」を保育で使うとき、前半(A)と後半(B)で動きを変えた遊びを展開すると、形式を体で感じる活動になります。

🎵 三部形式

三部形式は「A→B→A」または「A→B→A’」という3つの大楽節で構成される形式で、音楽形式の中で最もポピュラーです。最初のテーマが最後に戻ってくることで「安定感」と「まとまり」が生まれ、聴く人に心地よい完結感を与えます。

これは使えそうです。「AメロBメロAメロ」という流れは、保育の活動にもそのまま応用できます。たとえば「A:普通に歌う」「B:動作を変える」「A:元に戻る」という活動展開は、三部形式の構造そのものです。

> 代表曲:「見よ勇者は帰る」「エリーゼのために(ベートーヴェン)」

子どもの歌は一部形式・二部形式が多いという研究報告もありますが(東海学院大学論文)、三部形式も数多く使われており、保育士として3種類すべてを把握しておくことが現場で役立ちます。

子どもの歌における楽曲形式の傾向については、学術論文でも整理されています。

東海学院大学|子どもの歌唱表現に関する一考察(保育者養成校に求められるもの)

音楽形式一覧②:ソナタ形式・ロンド形式・変奏曲形式の特徴

一部・二部・三部形式より複雑なのが、ソナタ形式・ロンド形式・変奏曲形式の3つです。クラシック鑑賞や保育士試験の知識として押さえておきたい形式です。

🎹 ソナタ形式

ソナタ形式は「提示部→展開部→再現部」の3エリアで構成される、クラシック音楽の最も高度な形式です。ハイドンが確立し、モーツァルトが継承し、ベートーヴェンが完成させたと言われており、「西洋音楽の到達点」とも呼ばれています。

エリア名 内容 特徴
提示部 第1主題と第2主題を提示 対照的な2つのメロディが登場
展開部 主題を変形・発展 作曲家の技巧が光る最大の聴きどころ
再現部 提示部をほぼ再現 曲にまとまりと安定感をもたらす

ベートーヴェンの交響曲「運命」第1楽章や、ピアノ学習でよく使われる「ソナチネ」の第1楽章がソナタ形式の典型例です。なお、「ソナタ(曲)」と「ソナタ形式」は別概念で混同しやすいので注意が必要です。

🎹 ロンド形式

ロンド形式は「同じ主題(A)を繰り返しながら、間に異なるエピソード(B・C・D…)を挟む」形式です。「A→B→A→C→A→D→A」という流れが典型で、主題が何度もぐるぐると戻ってくるのが特徴です。ロンドとは「旋回」を意味する言葉に由来します。

> ベートーヴェン「エリーゼのために」→ 小ロンド形式

> メンデルスゾーン「結婚行進曲」→ 大ロンド形式

保育の場に直接応用できる形式です。「A:全員で歌う」→「B:手拍子だけ」→「A:全員で歌う」→「C:足踏みだけ」→「A:全員で歌う」という遊びは、まさにロンド形式の構造です。子どもたちが「またAが来た!」と感じる瞬間に自然と音楽形式が体感できます。

🎹 変奏曲形式

変奏曲形式は「シンプルな主題を少しずつ変化させながら発展させる」形式です。制限なく変奏を重ねていけるため、曲が進むごとに演奏技術が複雑になっていく傾向があります。

モーツァルトの「きらきら星変奏曲」(K.265)は、主題と12の変奏で構成され、演奏時間は約12分にもなります。保育でよく歌う「きらきら星」はその主題部分にあたります。保育士がこの変奏曲をピアノで弾いたとき、子どもたちが「あ、知ってる!」と反応する主題部分から始まり、少しずつ変化していく様子は、音楽の「面白さ」を感じさせる良い機会になります。

意外ですね。保育の定番曲とクラシックの名曲が、実は同じ形式でつながっていたということです。

音楽形式一覧③:複合三部形式とリトルネッロ形式|少し深めの音楽形式

基本の形式に加えて、保育士が知っておくとさらに音楽理解が深まる形式が2つあります。複合三部形式とリトルネッロ形式です。

🎼 複合三部形式

三部形式(A→B→A)の各部分が、単独の大楽節ではなく複数の楽節で構成されている形式を「複合三部形式」と呼びます。各部分がそれぞれ二部形式や三部形式になっているイメージです。

部分 役割 別名
第1部(主部) 主要テーマを提示 呈示部
第2部(中間部) 対比的なテーマを展開 トリオ
第3部(主部再現) 主要テーマに戻る 再現部

中間部は「トリオ(Trio)」とも呼ばれます。これはかつて中間部を3パート4人で演奏していた名残です。「行進曲」の形式として使われることが多く、中間部だけ別の雰囲気になる曲は複合三部形式になっているケースが多いです。

保育で使う「♩行進曲」タイプの曲や、お遊戯会の曲にも複合三部形式はよく登場します。「途中で雰囲気がガラっと変わったな」と感じる曲があれば、それが中間部(トリオ)のサインです。曲の構成を理解した上で弾くと、子どもたちへの動きの指示も自然とメリハリがつきます。

🎼 リトルネッロ形式

リトルネッロ形式は、ロンド形式に似た形式ですが、主題を繰り返す際に転調するのが特徴です。「合奏群(リトルネッロ)と独奏群が交互に演奏する」というスタイルも特徴的で、バロック時代の協奏曲で多用されました。

ヴィヴァルディの「春」(四季より)がリトルネッロ形式の代表例です。保育でオーケストラの鑑賞活動を行う際、「春」を使って「大きな音のとき(合奏群)と小さな音のとき(独奏群)を聴き分けよう」というゲームに活用できます。これはリトルネッロ形式の構造を体感できる活動です。

保育者養成課程での音楽活動における楽式の活用については、以下の研究論文にも具体的な実践例が紹介されています。

青森明の星短期大学紀要|保育者養成課程の「音楽」の視点と総合的な授業展開の試み

保育士だけが得する!音楽形式一覧を現場の活動に活かす独自視点

音楽形式の知識は、保育士として子どもたちと音楽活動を行うときに、思いがけない形で「武器」になります。単なる音楽理論の暗記で終わらせてはもったいないです。

🎯 形式を使った「体で覚える音楽活動」のアイデア

保育士が音楽形式を知っていると、子どもたちが「楽しい」と感じながら自然に音楽の構造を体感できる活動を設計できます。

  • 一部形式の活用:「春が来た」を歌うとき、前半(a)と後半(a’)で手拍子の場所を変えるだけで、子どもが2つのフレーズの違いに気づき始めます。
  • 二部形式の活用:「ちょうちょう」のAパートでは蝶の羽根をイメージした手の動作、Bパートでは花に止まる動作を取り入れると、形式が動きとして体に入ります。
  • 三部形式の活用:「A:全員で歌う」「B:先生だけ歌う」「A:また全員で」という構成にすることで、ABAの形式を子どもが体験的に理解できます。

つまり「形式を教える」のではなく「形式を遊ぶ」が保育の現場では正解です。

📋 J-POPにも音楽形式が使われている

「音楽形式はクラシックだけのもの」と思っている保育士も多いですが、それは違います。実はJ-POPのほぼすべての楽曲にも形式が存在しています。

J-POPの構成 対応する形式
Aメロ→サビ 二部形式に近い
Aメロ→Bメロ→サビ→Aメロ→Bメロ→サビ→Cメロ→サビ 複合的な反復・変化
サビが何度も繰り返される構成 ロンド形式的な要素

J-POPのAメロ・Bメロ・サビという構成は、クラシックの音楽形式と根本的に同じ「反復と変化」の原理で作られています。このことを知っていると、「音楽の授業っぽくない伝え方」で子どもの保護者や同僚に音楽の話ができます。

⚠️ 保育士が陥りやすい「形式の思い込み」

「きらきら星は三部形式だろう」と思っている保育士が実は多いのですが、原曲の「きらきら星」本体は一部形式のシンプルな構成です。モーツァルトの「きらきら星変奏曲」は変奏曲形式であり、主題と12の変奏で構成される全く異なる楽曲です。

「きらきら星」だけ覚えておけばOKです、というわけにはいかず、原曲と変奏曲では形式が全く別物になっています。保育士試験の筆記や実技対策でも、曲名と形式の対応関係を正確に覚えておくことが重要です。

🔎 音楽形式の知識が「演奏の質」を変える

形式を知ると、ピアノ演奏にも具体的な変化が生まれます。たとえばBパート(中間部)では少しテンポや強弱を変え、Aパート再現時には落ち着いた表現に戻すといった「メリハリのある演奏」が自然にできるようになります。

保育士に求められるピアノのレベルは「バイエル修了程度」が目安とされることが多いですが、形式を理解した演奏は技術レベル以上の表現力を生み出します。形式が条件です。技術だけでなく構造への理解が、子どもの心に届く弾き歌いにつながります。

音楽と子どもの発達の関係、保育現場での音楽活動のあり方については、東京藝術大学のまとめ資料が参考になります。

東京藝術大学|子どもの心を育む音楽活動(PDF)

音楽形式一覧まとめ|保育士が覚えるべき形式を一気に整理

ここまで解説してきた音楽形式を、保育士の視点でまとめます。試験対策にも現場の活動設計にも使える一覧として活用してください。

形式名 構成 代表的な保育関連曲 保育での活用
一部形式 A(aa’) 春が来た・赤とんぼ 初めて覚える歌に最適
二部形式 A→B ちょうちょう・花 AとBで動きを変える遊び
三部形式 A→B→A きらきら星・エリーゼのために ABAの繰り返し遊び
複合三部形式 (AB)→(CD)→(AB) 行進曲 中間部で動作を切り替え
ソナタ形式 提示部→展開部→再現部 運命(ベートーヴェン)第1楽章 鑑賞・発表会選曲の参考
ロンド形式 A→B→A→C→A エリーゼのために・結婚行進曲 「Aが来たら〇〇する」ゲーム
変奏曲形式 主題→変奏1→変奏2… きらきら星変奏曲モーツァルト 主題部分を子どもと歌う
リトルネッロ形式 合奏群と独奏群の交互 春(ヴィヴァルディ) 音の強弱の聴き分け活動

覚える優先順位は「一部・二部・三部形式」が最初です。この3つを押さえるだけで、保育で使う童謡の9割以上はカバーできます。

音楽形式の理解を深めたい場合は、音楽理論をわかりやすく解説しているサイトの活用もおすすめです。音楽の設計図を知るほど、子どもたちとの音楽の時間がより豊かになっていきます。

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