岡野貞一と保育園と童謡
岡野貞一の作曲と童謡と唱歌を保育園で整理
保育現場では「童謡」とひとまとめに呼ばれがちですが、岡野貞一の代表曲には、もともと学校教育のために作られた「文部省唱歌」として広まったものが多い点が重要です。岡野貞一は明治の終わりごろから多くの唱歌を作り、卒業後に東京音楽学校で教えながら文部省唱歌の作曲委員を務めたとされます。
この背景を踏まえると、保育園での扱いは「正確に歌わせる」よりも、生活・季節・遊びに接続して“子どもの経験として歌が残る”形に組み替えるのが効果的です。
実務で役立つ整理の観点は次のとおりです。
- ✅曲の出自:文部省唱歌(学校向け)→保育では遊び・行事・生活へ再配置
- ✅ねらい:知識としての鑑賞ではなく、情景共有(季節の空気、散歩の景色)
- ✅難しさ:語彙が古い・情景が抽象的→絵カード、実物(落ち葉、水辺)で補う
- ✅活動化:歌う+「聴く」「真似る」「探す」「描く」で体験を増やす
「唱歌は教材っぽくて難しい」と感じるときほど、導入を“説明”で始めないのがコツです。たとえば「きょうの風の音、歌の中にもあるよ」と音や景色の共有から入ると、子どもは言葉の意味が全部分からなくても参加できます。
参考:岡野貞一の経歴と、文部省唱歌の作曲委員を務めたこと・代表曲の一覧(春がきた/春の小川/もみじ/おぼろ月夜/ふるさと等)

岡野貞一の春が来たと春の小川を保育園の季節で使う
春の定番として扱いやすいのが「春が来た」「春の小川」です。教育芸術社の作曲家紹介でも、岡野貞一は高野辰之との組み合わせで「春がきた」「春の小川」などを作ったとされ、現在も教科書に取り上げられ広く歌い継がれていると説明されています。つまり“知っている大人が多い”ため、園内で共有しやすく、クラス間でも展開を揃えやすいのがメリットです。
ただし、保育園での落とし穴は「春が来た=4月に歌う曲」と固定してしまうことです。子どもにとって春は暦より体感なので、次のように“発見とセット”にすると歌が生きます。
- 🌱散歩:芽、つぼみ、やわらかい風を見つけた日に歌う
- 🧺室内:春の素材(菜の花、たんぽぽ、葉の匂い)を観察したあとに歌う
- 🎨製作:春の小川の「さらさら」を、絵の線・リズム・手拍子に置き換える
- 🎹伴奏:一定テンポで引っ張らず、子どもの呼吸に合わせて“短く区切る”
歌詞の理解を急がず、情景語(春/小川/さらさら)を「見たこと」「触ったこと」に寄せると、同じ曲でも“歌わされ感”が減ります。特に年少は、フレーズの最後だけ参加できる形(最後の1語をみんなで言う等)にすると成功しやすいです。
岡野貞一のもみじとおぼろ月夜を保育園の秋で楽しむ
秋は「もみじ」「おぼろ月夜」が強い季節です。教育芸術社の紹介では、岡野貞一は高野辰之とのコンビで「もみじ」「おぼろ月夜」などを作ったとされ、教科書にも取り上げられているとされています。保育園では“鑑賞曲”になりやすい2曲ですが、工夫すると十分に参加型にできます。
保育でのポイントは「秋=静かに歌う」だけにしないことです。
- 🍁もみじ:落ち葉を拾う→色を分類→歌の途中で色名を挟む(歌唱は崩さず合間の言葉遊びで)
- 🌕おぼろ月夜:月の形を観察→「おぼろ(ぼんやり)」を“光の見え方”として経験化
- 🥁リズム:手拍子は一定ではなく、言葉の抑揚(み・ず・い・ろ等)に合わせて強弱
- 🧺環境:窓の外の景色が見える位置で歌う(情景と音を同時に取り込む)
語彙が難しい場合は、説明を長くするより「写真1枚」「実物1つ」「短い問いかけ1つ」に絞ると集中が保てます。たとえば「この落ち葉の色、歌の中に出てくるかな?」の一言で十分です。
参考:岡野貞一が作曲した曲名の例(ふるさと/春が来た/春の小川/おぼろ月夜/もみじ等の並びが確認できる)
岡野貞一のふるさとを保育園の行事と家庭でつなぐ
「ふるさと」は卒園・お別れの時期に歌われることが多い一方、保育園では“家庭と園をつなぐ歌”としても使えます。教育芸術社の紹介では、岡野貞一は「ふるさと」を含む唱歌を多く作り、広く歌い継がれているとされています。大人にとって既知の曲であることは、保護者参加行事や家庭連携の場面で大きな強みです。
行事への落とし込み例(ねらいがブレにくい形)を示します。
- 👨👩👧家庭連携:家庭で“子どもが好きな場所”を1つ聞き取り→園で発表→歌へ
- 🏫園の生活:園庭、散歩道、給食室など「自分のふるさと=安心できる場所」を言語化
- 📷卒園制作:写真コラージュに、子どもの言葉で「○○がすき」を添える
- 🎤歌い方:強く歌い切るより、語尾をそろえて“思い出す感じ”を大切にする
意外と効くのが「ふるさと=地元」だけに限定しない視点です。転居経験のある家庭、外国ルーツの家庭もある中で、子どもが“今ここ”をふるさととして感じられる支援は、クラスづくりにも直結します。歌が行事の飾りではなく、生活の言葉になると、保護者の受け止めも深まります。
岡野貞一の保育園で童謡を音環境で育てる独自視点
検索上位の解説は「代表曲」「経歴」「歌詞の意味」に寄りやすい一方、保育園で成果が出やすいのは“歌そのもの”より「音環境」の設計です。岡野貞一はキリスト教系の学校で音楽の基礎を学び、東京音楽学校に入学したのち教えながら唱歌の作曲に関わったと紹介されています。つまり、彼の曲を「歌唱教材」としてだけ扱うのはもったいなく、園の一日全体を音で整える発想と相性がよいと考えられます。
音環境としての具体策(そのまま明日から使える形)です。
- 🔔朝の導入:登園後すぐ歌わせない。オルガン(またはピアノ)の短い前奏だけ流し、子どもが自然に口ずさむのを待つ
- 🧸コーナー遊び:歌をBGMにしない。1回だけ歌って止め、余韻の中でごっこ遊びや絵に移る
- 👂聴く活動:散歩で「さらさら」「かさかさ」「ひゅー」を探し、帰ってから曲のどこに合うか話す
- ✋身体化:拍子を教えるより、歩く・止まる・揺れるで“フレーズ”を感じる
- 📝記録:保育者の主観で「上手に歌えた」ではなく、「子どもがどんな場面で口ずさんだか」を記録する
この視点に立つと、「歌の時間」以外で童謡が立ち上がる瞬間(片付け中、着替え中、雨の日の窓辺など)が増えます。結果として、練習量に頼らずに歌が定着し、クラスの情緒の安定にもつながりやすくなります。

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