涙そうそう歌詞の意味と背景・保育で伝えたい深い世界
この歌を「ただの卒園ソング」だと思っているなら、歌詞の本当の意味を知らずに子どもたちに伝え続けてしまいます。
涙そうそうのタイトルの意味:沖縄方言が生んだ美しい言葉
「涙そうそう」は、読み方から解説する必要があります。これは「なみだそうそう」ではなく、「なだそうそう」と読みます。
「なだ(涙)」は沖縄方言で「なみだ」、「そうそう」は水がざあざあと流れる様子を表す沖縄の言葉です。つまり「涙がぽろぽろとあふれ落ちる」という意味になります。
標準語に直せば「涙ぽろぽろ」とも言い換えられますが、それだけでは表しきれない情感が沖縄方言特有のリズムと音に宿っています。これが基本です。
保育の現場でこの歌を子どもたちに紹介するとき、「なぜこんな読み方をするの?」と聞かれることもあるでしょう。そのときに「これは沖縄の言葉なんだよ」と伝えるだけで、子どもたちの好奇心をぐっと引き出せます。
沖縄方言(ウチナーグチ)は、日本語とは異なる独自の語彙や発音を持つ言語文化です。「涙そうそう」というタイトルの響きは、その独自性がメロディーと重なって、聴く人の心を揺さぶる大きな力を持っています。
「涙そうそう」は日本語の豊かさを教える教材にもなりますね。
涙そうそう – Wikipedia(曲の詳細な経緯・リリース情報・カバー一覧を確認できます)
涙そうそう歌詞に込められた意味:亡き兄への深い想い
「涙そうそう」の歌詞が生まれた背景には、作詞家・森山良子の実体験があります。
森山良子は、2人兄妹の年子の兄を1970年に急性心不全で突然失いました。兄は当時わずか23歳。幼い頃から一緒にメンコやベーゴマで遊び、同じ高校で同じバスケットボール部に所属していた、かけがえのない存在でした。
兄の死後、森山は「誰を見ても兄に見える」ほどの深い悲しみを抱えながら、それでも誰にもその気持ちを打ち明けられずにいたといいます。居間の棚から赤い革表紙のアルバムを取り出しては、兄の影を追ってひとり泣いていたというエピソードは、まさに「古いアルバムめくり ありがとうってつぶやいた」という歌詞と重なります。
つまり、歌詞の一字一句が実際の記憶と感情から生まれているということです。
転機が訪れたのは1990年代後半、BEGINから届いたデモテープのタイトル「涙(なだ)そうそう」という沖縄方言の意味を知ったときでした。「涙がぽろぽろこぼれ落ちる」という言葉に触れた瞬間、約30年間封印していた兄への感情があふれ出し、メロディーに乗せて一気に歌詞を書き上げることができたと森山は語っています。
「一番星に祈る それが私のくせになり」という歌詞も、森山が日々の出来事を夜空の星に向かって語りかけていた実際の習慣から生まれたものです。兄が星になったと感じながら、今も変わらず一番星に語りかけているというエピソードは、この曲が単なるフィクションではなく、生きた感情の記録だということを示しています。
保育士として子どもたちに歌の意味を伝えるとき、「大切な人を思って書かれた歌なんだよ」という説明だけで、子どもたちの表情がぐっと変わることがあります。歌詞の背景を知ることが大切です。
TAP the POP「涙そうそう」の誕生(森山良子と兄の関係、BEGINとの出会いから作詞に至る経緯が詳しく掲載されています)
涙そうそう歌詞の構成と各番の意味:空・光・別れの象徴
「涙そうそう」の歌詞には、空に関連する言葉が繰り返し登場します。これは偶然ではありません。
1番は「古いアルバムめくり ありがとうってつぶやいた」から始まります。アルバムを眺める行為は、もう会えない誰かとの記憶をたぐり寄せる行為です。そして「晴れ渡る日も 雨の日も 浮かぶあの笑顔」という表現では、「晴れ」が嬉しいとき、「雨」が悲しいときを表しています。
喜びも悲しみも、何があってもその人の笑顔が浮かぶということです。
2番では「一番星に祈る それが私のくせになり 夕暮れに見上げる空 心いっぱいあなた探す」と続きます。「人は死ぬと星になる」という民間信仰に近い感覚で、亡き兄を夜空の一番星に重ねている場面です。保育の現場でも「お星さまになったんだよ」という言い方で子どもたちに命について語ることがありますが、この歌はまさにそのような感覚で書かれています。
📌 歌詞の中で象徴的に使われている言葉と意味を整理するとこうなります。
| 歌詞の言葉 | 象徴・意味 |
|---|---|
| 古いアルバム | 過去の記憶・思い出 |
| 晴れ渡る日・雨の日 | 喜びと悲しみ、どんなときも |
| 一番星 | 亡き人への祈りの対象・天国 |
| あなたの場所から私が見えたら | 天国から見守っていてほしいという願い |
| さみしくて 恋しくて | 胸の内に秘めた深い悲しみ |
サビ終盤の「さみしくて 恋しくて 君への想い 涙そうそう」「会いたくて 会いたくて 君への想い 涙そうそう」という部分は、感情を素直にさらけ出している場面です。歌詞の主人公は誰かに泣き言を言うのではなく、胸の中でひとり涙を流している、その静かな強さが読み取れます。
最後の「会えると信じ 生きてゆく」という言葉が、深いです。悲しみを抱えながらも前を向こうとする意志が込められていて、この一文があることで曲全体が「悲しみの歌」だけではなく「前向きに生きる歌」にもなっています。
涙そうそうが保育・卒園式に選ばれる理由:感情を育てる歌の力
「涙そうそう」は、音楽の教科書にも掲載されています。
卒園式や発表会のシーンで保育士がこの曲を選ぶとき、「子どもに歌えるかどうか」だけでなく「子どもたちに何を伝えたいか」が重要な視点になります。この曲が持つ最大の強みは、「大切な人への感謝と別れ」というテーマを、難しい言葉を使わずにメロディーとともに体感させてくれる点です。
感情を育てるのに歌は有効な手段です。
年長児が卒園式で「涙そうそう」を歌う実例も複数の保育園・幼稚園で確認されています(安松幼稚園などでの合唱事例が動画でも公開されています)。5歳の子どもたちがこの曲を歌うとき、歌詞の意味を完全に理解していなくても、メロディーが持つ感情的な温度を感じ取って、自然と表情が変わることがあります。
- 🎵 「晴れ渡る日も雨の日も」→ どんな日も誰かを思う、という感情を体験させられます
- 🎵 「ありがとうってつぶやいた」→ 感謝を言葉にする大切さを学べます
- 🎵 「会えると信じ生きてゆく」→ 別れてもつながっているという安心感を伝えられます
卒園式で親御さんが涙するのは、この曲が子どもたちの旅立ちと「もう会えない人」への思いを重ね合わせるからでもあります。保育士として歌詞の背景を子どもたちにかみ砕いて伝えることで、練習の質も、本番の表情も大きく変わります。
歌詞の意味を知ってから歌う、これが原則です。
保育士向けに歌の背景を共有するための参考として、楽曲解説が充実した音楽教育サービスや保育専門の楽譜サイトを活用するのも一手です。Piascore(ピアスコア)などのデジタル楽譜サービスでは、「涙そうそう」のピアノ伴奏楽譜も入手でき、すぐ保育で使えます。
涙そうそうが世界へ広がった背景:120万枚セールスと異文化カバーの奇跡
「涙そうそう」は夏川りみのカバーをきっかけに、国内だけでなく世界中に広がった楽曲です。
夏川りみがこの曲に出会ったのは2000年の沖縄サミット中継でした。テレビでBEGINのライブ演奏を見た彼女はサビが頭から離れなくなり、居ても立ってもいられず楽屋に押しかけてカバーを直訴したといいます。その熱意が実り、2001年3月23日に夏川りみ版シングルがリリースされました。
リリース直後は地元・沖縄のラジオ3局(エフエム沖縄・琉球放送・ラジオ沖縄)すべてで年間チャート1位を獲得。全国的な知名度が上がるまでには時間を要しましたが、2002年から約3年にわたってじわじわとヒットし続け、最終的に累計120万枚を突破するミリオンセラーとなりました。
これは使えそうです。
さらに注目すべきは海外への広がりです。ハワイ出身の音楽家ケアリイ・レイシェルは、「涙そうそう」のメロディーをハワイ語詩に乗せた「Ka Nohona Pili Kai(カ・ノホナ・ピリ・カイ)」を制作。この楽曲は2004年にハワイの権威ある音楽賞「ナ・ホク・ハノハノ・アワード」で7部門を受賞し、Song of the Yearにも輝きました。
台湾では黄品源が台湾語・北京語の2バージョンでカバー、シンガポールの蔡淳佳(ジョイ・ツァイ)は北京語でカバーして中華圏全体でヒット。さらにニュージーランド出身のクラシック歌手ヘイリー・ウェステンラは英語バージョンをアルバムに収録しています。
日本語の歌が、これだけ多言語でカバーされた例は珍しいです。
沖縄方言で「涙がぽろぽろ」という意味を持つ言葉が、ハワイ語、北京語、英語に翻訳されながらも普遍的な感動を伝え続けているという事実は、この曲が言語や文化を超えた人間の共通感情——「大切な誰かを思って流す涙」——を歌っているからこそ起きた現象といえます。
保育士として子どもたちに世界中で愛されている歌だと伝えることで、曲への誇りと関心をさらに高めることができます。オリコンの週間トップ100に合計157週ランクインという記録も、SMAPの「世界に一つだけの花」、中島みゆきの「地上の星」に次ぐ歴代3位という驚異的な数字です。


