基音・倍音とは何か保育士が知るべき声の仕組み

基音・倍音とは何か:保育士が知っておきたい声の仕組みと活かし方

大きな声で話せば子どもに伝わると思っていたら、3年以内に8割の保育士が声を壊しています。

この記事の3つのポイント
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基音と倍音の違いをわかりやすく解説

基音は「出している音の中心」、倍音は「自然に重なる複数の音」。この2つがあるからこそ、声や楽器には個性と深みが生まれます。

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保育士の声と子どもへの影響

倍音が豊かな声は、子どもに安心感や落ち着きを与えます。声量よりも「響き」こそが子どもの心に届く声の正体です。

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今日からできる倍音を増やす練習法

ハミングや母音トレーニングなど、喉に負担をかけずに倍音豊かな声をつくる方法を具体的に紹介します。

基音・倍音とは何かをピアノで例えるとわかりやすい

「基音」と「倍音」という言葉を初めて聞いた人でも、ピアノを使えばすぐにイメージできます。ピアノの「ラ」の鍵盤を1つ押すと、440Hzの音が鳴ります。これが「基音」、つまりその音の根っこになる周波数です。

ところが実際には、440Hzの音だけが鳴っているわけではありません。880Hz(2倍)、1320Hz(3倍)、1760Hz(4倍)…と、基音の整数倍の周波数の音が自然に重なって鳴っています。これが「倍音」です。

つまり基音が原則です。倍音はその基音を中心に、自然に生まれる「音の家族」のようなものといえます。

用語 意味 例(440Hz基準)
基音 最も低い、主となる音 440Hz(ラ)
第2倍音 基音の2倍の周波数 880Hz(1オクターブ上のラ)
第3倍音 基音の3倍の周波数 1320Hz
第4倍音 基音の4倍の周波数 1760Hz

同じ音程を歌っても、ピアノとギターで音色が違うのはなぜか。それはそれぞれの楽器で倍音の組み合わせが異なるからです。これが「音色」の正体です。人の声も同じで、同じ音程を歌っても一人ひとり声が違うのは、各自の声帯や共鳴腔の形が異なるため、生まれる倍音のパターンがちがうためです。

保育士にとって大切なのは、この「倍音のちがい」が子どもへの印象を大きく左右するということです。倍音が豊かな声は「温かい」「落ち着く」と感じられやすく、倍音が乏しい声は「硬い」「怖い」と受け取られることがあります。

参考情報:ヤマハが解説する、基音と倍音の基礎概念について。

サクソフォンのマメ知識:倍音って? – ヤマハ株式会社

倍音の種類:整数次倍音と非整数次倍音の違いを保育士目線で理解する

倍音には大きく分けて2種類あります。「整数次倍音」と「非整数次倍音」です。名前だけ聞くと難しく感じますが、保育の現場で声を使う立場から見ると、とても実感しやすいちがいです。

整数次倍音とは、基音の周波数の「ちょうど2倍・3倍・4倍…」に当たる音です。波形が規則的で、音はクリアで明るく聞こえます。例えば、夏川りみさんや合唱団の声のように「透き通っていて、伸びやか」に感じる声は、整数次倍音が豊富です。

一方の非整数次倍音は、整数倍ではない不規則な周波数の音です。波形はざらっとしており、独特の「かすれ」や「温かみ」「太さ」を生み出します。宇多田ヒカルさんや桑田佳祐さんのような「聞いていて胸に染みる」声は、この非整数次倍音が多い傾向があります。

  • 🎼 整数次倍音が多い声:明るい・クリア・力強い・通る・合唱や児童向けの歌に向く
  • 🎶 非整数次倍音が多い声:温かい・かすれている・感情的・深みがある・語りかけや読み聞かせに向く

保育の現場で応用するなら、朝の会や歌の時間には整数次倍音を意識した明るい発声を、絵本の読み聞かせや午睡前の声がけには非整数次倍音の温かみのある発声が向いています。どちらかが優れているわけではなく、場面で使い分けることが大切です。

整数次倍音は共鳴腔(口腔・鼻腔・咽頭腔)をしっかり使うことで生まれ、非整数次倍音は息の成分をうまくコントロールすることで生まれます。これが原則です。

参考情報:整数次・非整数次倍音の違いを声楽の観点から専門的に解説したページ。

整数次倍音と非整数次倍音 – 日本ボイストレーナー連盟

倍音が声の「伝わりやすさ」に直結する理由:声量に頼らなくて大丈夫です

保育士の多くが「大きな声で話すほど子どもに伝わる」と思っています。これは意外ですね。実は研究によると、保育士の8割が勤務開始後3年以内に何らかの音声障害を経験しているとされています(関西短期大学紀要)。その大きな原因のひとつが、声を張り上げすぎることによる声帯への負担です。

では、なぜ大きな声が逆効果になるのでしょうか?保育者が大きな声を出すと、子どもは「興奮状態」になりやすく、むしろ騒ぎやすくなるのです。怖くてその場では静かになっても、理解して静かになったわけではないため、同じことが何度でも繰り返されます。

ここで重要なのが「倍音」の存在です。倍音が豊かな声は、音量が小さくても遠くまで届きます。これを「通る声」と呼びます。倍音が多い声は、複数の周波数が重なり合うことで空気を広く振動させるため、声量を上げなくてもすっと相手の耳に届く仕組みになっています。

  • 🔊 大声(倍音が少ない):子どもが興奮・威圧的に感じられる・声帯が疲弊しやすい
  • 倍音豊かな声(適度な音量):子どもが落ち着く・安心感を与える・喉への負担が少ない

倍音豊かな声で話す先生のクラスは、不思議と静かになりやすいです。子どもは「先生は何を言っているのかな?」と自然に耳を傾けるからです。声量ではなく、声の「質」つまり倍音のある響きが子どもの注目を引き寄せます。喉の健康と子どもへの伝わりやすさ、両方を一度に手に入れられるのが倍音です。

参考情報:保育者の音声障害の発症率と音環境の関係について。

保育者の音声障害と音環境 – 関西短期大学紀要(PDF)

倍音が生まれる場所:声帯と共鳴腔の仕組みを保育士向けにわかりやすく解説

倍音はどこで生まれるのでしょうか?声帯が振動して「基音」が作られます。ただ、倍音は声帯だけで生まれるわけではありません。声帯から生まれた音が、口・鼻腔・咽頭腔といった「共鳴腔」という空間を通ることで、倍音の量や種類が決まります。

共鳴腔はいわば「声の響きの部屋」です。部屋が広くなるほど、倍音が増えて声に豊かさが生まれます。口を縦に大きく開けたり、鼻腔を広げたりすることで、この部屋を広げることができます。

  • 👄 口腔(こうくう):口の中の空間。口の開き方や舌の位置で倍音の出方が変わる
  • 👃 鼻腔(びくう):鼻の中の空間。ハミングなどで鼻腔を使うと整数次倍音が増えやすい
  • 🗣️ 咽頭腔(いんとうくう):声帯から口腔へと続く空間。深みのある声に関わる

一方、喉だけで声を出そうとすると、共鳴腔が閉じてしまい倍音が生まれにくくなります。力を入れて叫ぶような発声は、この「喉声」になりやすく、声帯に負担がかかるばかりで倍音は増えません。

赤ちゃんの声や子守歌の声が「なぜか心地よい」と感じるのは、自然と共鳴腔を使った発声になっているからです。共鳴腔が使えると、声が壁全体に広がるように響きます。これが「倍音豊かな声」の正体です。保育士が子どもに語りかける声も、この共鳴腔を意識するだけで、驚くほど変わります。

参考情報:声帯と共鳴腔の関係、倍音が生まれる仕組みについてわかりやすく解説したページ。

倍音とは?声・歌で響きを作る仕組みと出し方を初心者向けに解説 – ナユタス

保育士が今日からできる倍音を増やす声の練習方法3ステップ

倍音豊かな声は、特別な才能ではなく練習で育てられます。喉への負担が少ない順番で、3つのステップを紹介します。

ステップ1:ハミングで鼻腔共鳴を感じる

口を軽く閉じて「んー」と静かに声を出します。このとき、鼻の付け根や頬あたりにふわっと振動が来ていれば正解です。1日1〜2分でも効果があり、声帯への負担がほぼないため、声が出にくい日でも練習できます。鼻腔に響きが集まると、整数次倍音が自然に増えていきます。

ステップ2:母音を縦に開いて丁寧に伸ばす

「あ・い・う・え・お」を一つずつ丁寧に発声します。ポイントは口を「横に広げる」のではなく「縦に開く」ことです。縦方向に開くと共鳴空間が確保され、倍音が前に集まりやすくなります。「あ」と「お」は特に倍音が乗りやすく、声の厚みを感じやすいです。

ステップ3:スマホで録音して聴き比べる

声の成長は「録音してから聴く」のが最も実感しやすい方法です。ハミングや母音の練習前後の声を録音し、声の伸びや広がりを比べてみてください。自分の声は骨伝導で聞こえるため、耳で聞く印象とずれがあります。録音することで、倍音が育っているかどうかを客観的に確認できます。

これは使えそうです。毎朝の出勤前や昼休みに1〜2分取り組むだけで、少しずつ声の響きが変わってきます。難しい理論は後回しにして、まずはハミングを1週間続けることを目標にしてみてください。

声の分析ができる無料スマホアプリ(「Vocal Pitch Monitor」など)を使うと、自分の声の基音・倍音のバランスを視覚的に確認できます。保育実技試験の準備にも役立ちます。

保育士ならではの視点:倍音を「子どもの場面別」に使い分ける独自実践

倍音の知識は、楽器演奏や歌の上手さだけに役立つものではありません。保育の現場では「場面によって声の倍音特性を意識して使い分ける」ことが、子どもの反応を大きく変えます。これは他の職業にはない、保育士ならではの使い方です。

朝の会・歌の時間 → 整数次倍音を意識した「明るく通る声」

朝の挨拶や子ども向けの歌は、明るく前に飛ぶような声が向いています。口を縦に開け、鼻腔を使ったハミング感覚で発声すると、整数次倍音が増えてクリアで元気な声になります。子どもが一緒に歌いやすい環境が整います。

絵本の読み聞かせ・午睡前の声がけ → 非整数次倍音を生かした「温かく包む声」

読み聞かせや眠る前の声がけは、子どもの緊張をほぐし、安心感を作るのが目的です。息をたっぷり使い、少しだけかすれを含ませるような発声にすると、非整数次倍音が豊かになります。この「ふわっとした質感」は、子どもの副交感神経を刺激しやすく、心拍が落ち着く効果があるとされています。

注意や指示のとき → 声量よりも「低い基音+倍音」で落ち着かせる

子どもを注意するとき、ついつい声を張り上げてしまいがちです。ただし声量が上がると逆効果なことはすでに解説した通りです。低めの基音でゆっくりと、共鳴腔を使って声を出すと、倍音による「重み」が声に生まれ、威圧感なく落ち着かせることができます。

  • 🌅 朝の時間:口腔・鼻腔を使った整数次倍音で明るく元気な声
  • 📖 読み聞かせ:息をたっぷり使った非整数次倍音で温かく包む声
  • 🛑 注意・指示:低い基音+倍音で落ち着いた重みのある声

声の使い方を「場面別に意識する」習慣がつくと、喉の疲弊も減り、子どもへの伝わり方も変わります。倍音の知識は、保育士の「声の道具箱」を豊かにしてくれる実用的なスキルです。いきなりすべてを完璧にしようとせず、まずは「読み聞かせのときだけ、息を多めに使ってみる」という小さな一歩から始めるのがおすすめです。