民族音楽 有名 声楽 世界歌唱法ホーミー合唱

民族音楽 有名 声楽 世界歌唱法

民族音楽で広がる声楽の可能性
🎤

世界の歌唱法を知る意義

ホーミーやポリフォニーなど、有名な民族音楽の声楽スタイルを知ることで、自分の発声や表現の幅をどのように広げられるのかを俯瞰します。

🌍

声楽テクニックとしての応用

倍音や共鳴、リズム感など、民族音楽の具体的なテクニックをクラシックやポップスの歌唱に応用するためのヒントを整理します。

🎼

学習プランへの取り入れ方

独学で取り入れやすい練習方法や、ワークショップ・資料の探し方を紹介し、日々の声楽練習に落とし込む具体的なイメージを持てるようにします。

民族音楽 有名 声楽 ホーミーと倍音発声の基礎

 

一度に二つ以上の音を響かせるモンゴルのホーミーは、民族音楽の中でも特に有名な声楽技法で、喉から出す低い基音に、口腔や鼻腔で作る高い倍音を重ねて歌います。

ホーミーはモンゴル西部ホブド県やロシアのトゥバ共和国などの遊牧民社会で発展し、風・水・動物など自然の音を模倣する歌として受け継がれてきたことが指摘されています。

この歌唱法は2010年にユネスコ無形文化遺産にも登録され、民族音楽としてだけでなく、人類共有の文化遺産として国際的に評価されている点も見逃せません。

声楽を学ぶ立場から見ると、ホーミーは「倍音のコントロール」の実験場のような存在で、喉頭の位置を下げ、口の形を細かく変化させながら共鳴ポイントを探す練習が不可欠とされています。

参考)https://www.osaka-geidai.ac.jp/assets/files/id/830

ホーミーの主要なスタイルとして、基音が強く鳴るグル・ホーミー、笛のように高い音色が際立つシギット(シフィト)・ホーミー、鼻腔共鳴を強調するバギンガー・ホーミー、吸気で発声するイスゲレー・ホーミーなどがあり、それぞれ舌の位置や息の流れの使い方が異なります。

クラシック声楽のブレスコントロールやチェンジングポイントの感覚を持ったうえで、まずは低く安定した基音をロングトーンで維持し、その上で口の形を少しずつ変えて倍音が「キーン」と浮き出る瞬間を探るのが、声を痛めずに学ぶための現実的なアプローチです。

知られていないポイントとして、トゥバやアルタイなど地域ごとに名称やニュアンスが異なり、トゥバでは「ホーメイ」、アルタイでは「カイ」、ハカスでは「ハイ」と呼ばれ、宗教儀礼から遊牧儀礼まで、場に応じて歌い方や曲の構造が変わることも報告されています。

近年では、日本を含む各国でホーミーのワークショップが開催され、クラシック声楽出身者が喉の余計な力みを抜くトレーニングとして取り入れるケースも増えているため、単なる民族音楽鑑賞ではなく、発声リセットの選択肢として注目する価値があります。

モンゴルの伝統的歌唱法「ホーミー」について、起源や発声技法を詳しく解説した日本語論文です。ホーミーの技術的理解を深めたいときの参考になります。

モンゴルの伝統的歌唱法「ホーミー」についての聞き取り調査と考察大阪芸術大学

民族音楽 有名 声楽 アフリカ系ポリフォニーとリズム感

アフリカの多くの地域では、複数の声部が重なり合うポリフォニーが民族音楽の基盤となっており、「みんなで織りなす声の布」とも例えられる豊かな合唱文化が育まれてきました。

特に中央・西アフリカの伝統歌唱では、リーダーが即興的なフレーズを投げかけ、コーラスが定型のフレーズで応答する「コール・アンド・レスポンス」が典型的で、リズムとハーモニーの両面で高度な集中力が必要とされます。

このスタイルは、ゴスペルやソウル、R&Bなど現代音楽にも強い影響を与えており、カラオケで耳にする「観客との掛け合い」や手拍子の感覚にも、その名残を見ることができます。

声楽のトレーニングという観点では、アフリカ系ポリフォニーは「リズムの中で音程をキープする力」を鍛えるうえで非常に有用で、シンコペーションの多いビートに乗りながらも、自分のパートを正確に歌い続ける能力が要求されます。

また、多くの民族音楽が2拍子・3拍子・4拍子の単純な枠を超えて、3対2や4対3といったポリリズムを用いるため、身体でカウントしながら歌う習慣が身につくと、クラシックの難しい変拍子作品にも対応しやすくなります。

参考)世界の不思議な歌唱法|ボイストレーニングなら名古屋のボイトレ…

実践としては、簡単なコール・アンド・レスポンスのフレーズを録音し、自分の声だけで「リーダー」と「コーラス」を多重録音してみると、声の入り方やノリのズレが可視化され、合唱やアンサンブルでのタイム感向上にも直結します。

あまり知られていない点として、医療民族音楽学の分野では、アフリカなどの民族音楽に見られるポリフォニーやリズムパターンが、ストレス軽減や共同体意識の強化に影響を与える可能性があるとされ、音楽療法の文脈で研究が進められています。

参考)https://voices.no/index.php/voices/article/view/2288

声楽家にとっても、リズムとハーモニーを通じて聴衆や合唱仲間と「一体になる」感覚を体験することは、単に音程を当てる訓練以上に、舞台上でのメンタルの安定や集中力維持に役立つと考えられます。

世界各地の民謡や民族音楽の特徴をコンパクトにまとめた日本語記事です。ポリフォニーやリズムの多様性をつかむ取っ掛かりになります。

【世界の音楽】民族音楽のススメ・海外の民謡まとめ

民族音楽 有名 声楽 ブルガリアン・ヴォイスと合唱の響き

ブルガリアの女声合唱団「The Bulgarian Voices Angelite(アンジェリーテ)」に代表されるブルガリアン・ヴォイスは、民族音楽から生まれた有名な声楽スタイルとして、世界的に注目を集めています。

彼女たちの歌唱は、純正律に近いインターバルや、テンションの強い不協和音をあえて多用した独特の和声感、そして鼻腔共鳴を強く使う明るく鋭い声質によって、空間全体を震わせるような合唱サウンドを生み出します。

日本の耳にはやや「きつく」聞こえることもありますが、音程を極限まで詰めていくことで生じるビート(うなり)をあえて活かすという考え方は、合唱のイントネーションを見直すヒントにもなります。

ブルガリアン・ヴォイスのレパートリーには、農作業や婚礼、季節の祭礼などに結びついた伝統民謡が多く、リズムパターンも7拍子や11拍子など、変拍子が日常的に登場するのが特徴です。

声楽の学習者がこのスタイルを研究することで、単純な4拍子のフレーズに頼らないフレージング感覚や、アカペラで音程を維持するための耳の鍛え方を学ぶことができます。

具体的な練習として、同じ音程を2人以上でロングトーンし、わずかなピッチのズレによって生じるビートを聴き分けるトレーニングは、ブルガリアン・ヴォイスのような緊張感あるハーモニーを目指すうえで非常に有効です。

意外なトピックとして、人類進化の過程で、合唱は危険を知らせたり共同体の結束を高めたりするための重要なコミュニケーション手段だった可能性が指摘されており、一部の民族音楽学者はコーカサスやバルカンの合唱文化を例に、合唱歌唱の起源を議論しています。

ブルガリアン・ヴォイスのような強い合唱サウンドに惹かれる感覚は、人類が本来備えている「多人数の声が重なる音」に対する根源的な反応に関係しているかもしれないと考えると、合唱の稽古にも新しい意味付けができるでしょう。

合唱歌唱の起源や人類学的背景を扱った研究ページです。ブルガリアン・ヴォイスのような合唱サウンドの位置づけを考えるうえで参考になります。

人類進化過程における合唱歌唱の起源

民族音楽 有名 声楽 北朝鮮の民族声楽と教育制度

あまり語られることのない例として、北朝鮮の国立民族芸術団には「民族声楽」と「洋楽声楽」の両方の歌手が所属しており、西道民謡の名唱として知られたキム・ジンミョンや、テノールのソン・ソンジュなど、多数の民族声楽家が活動してきました。

彼らは、日本統治時代からレコード録音を行っていた歌手も含め、国の文化政策のもとで民族音楽と声楽教育を結びつける役割を担い、平壌音楽大学などで民族声楽講座の顧問を務めるなど、教育機関とも密接に関わってきたことが記録されています。

興味深いのは、「民族声楽」と「洋楽声楽」が並列して扱われ、同じ団体内で共存している点で、これは民族音楽を現代国家の公式な声楽体系に組み込もうとする、意図的なカリキュラム設計と見ることができます。

声楽を専門的に学ぶ視点からすると、このような制度は「伝統発声」を個人の趣味や民間の習い事にとどめず、国立レベルの教育で体系化する試みとして注目されます。

参考)国立民族芸術団 – Wikipedia

西道民謡の歌手が大学の民族声楽講座の顧問を務めている事実は、伝承歌手の実践知と、アカデミックな音楽教育とが実際に結びついていることを示しており、クラシック声楽教育の中に民謡や民族音楽をどう組み込むかを考えるヒントにもなります。

また、同じ団体にバリトンやテノールの洋楽声楽家も所属しているため、舞台上で民族声楽と西洋オペラ的な歌唱が並置される機会があり、その現場で交わされる相互影響は、外部からは見えにくいものの非常に興味深い研究対象です。

この例を手がかりに、自身の学びの中でも「クラシック」と「民族音楽」を対立させず、レッスンの一部に民謡や伝統歌唱の要素を取り入れることで、発声の柔軟性や表現の幅を広げることができるでしょう。

例えば、日本の民謡や仕事歌、各地の盆歌をレパートリーに加え、ビブラートを抑えた直線的な声や、地声寄りの強い発声をあえて磨くことは、マイクを使わない舞台や語りを伴う作品を歌う際に、大きな武器になります。

参考)http://www.clausiuspress.com/assets/default/article/2024/02/27/article_1709047072.pdf

北朝鮮の国立民族芸術団に関する情報がまとまっており、民族声楽家の名前や役割が一覧できます。制度面や人材について知りたいときの参考になります。

国立民族芸術団

民族音楽 有名 声楽 声楽学習者のための実践的取り入れ方

ここまで見てきたホーミー、アフリカ系ポリフォニー、ブルガリアン・ヴォイス、民族声楽の事例は、すべて「声をどう使うか」という観点で、声楽の学習に直接結びつけることができます。

まず、ホーミーに触れることで、喉に力を入れずに基音を安定させること、舌や口の形を微妙に変えて倍音が変化する感覚をつかむことは、クラシックの共鳴ポイントの理解を深めるうえで大いに役立ちます。

次に、アフリカ系ポリフォニーやブルガリアン・ヴォイスの録音に合わせて、簡単なフレーズをハミングで重ねてみると、リズムの「ノリ」とピッチの安定の両方を、楽しみながら鍛えることができます。

実践プランの一例として、週に1日は「民族音楽の日」を作り、以下のようなルーティンを組む方法があります。

・ウォームアップ:日本語の民謡や童謡を、ビブラートを抑えたまっすぐな声で歌い、地声と頭声のバランスを確認する。

・倍音トレーニング:低めの母音(オ、ウ)でロングトーンを出しながら、口の形や舌の位置を変えて倍音が変化するのを聴き取る。

・リズムと合唱:アフリカ系やブルガリアの合唱曲の録音に合わせて、1声部だけを追いかけて歌い、他パートに惑わされない耳を鍛える。

・表現研究:歌詞の意味や歴史的背景を調べ、どのような感情や場面で歌われてきたかをイメージしながら歌う。

もう一つのポイントは、民族音楽に触れることで「音楽を社会や文化の文脈で捉える」癖がつき、単に正しい音程や発声を追うだけでなく、曲が生まれた土地の歴史や人々の生活を想像しながら表現できるようになることです。

参考)https://journals.aiac.org.au/index.php/IJELS/article/download/7909/5188

これは、オペラや歌曲を歌う際にも、作品の時代背景や言語文化を理解する姿勢につながり、結果として説得力のある解釈へと結びついていきます。

参考)https://ccsenet.org/journal/index.php/jel/article/download/0/0/49747/53763

自分のレパートリーの中に、少しずつ民族音楽由来の曲やテクニックを組み込んでいくことで、声楽家としての個性や強みを育てていくことができるのではないでしょうか。

世界各地の民謡保存や教育に関する最新の研究をレビューした論文です。民族音楽を学習や教育にどう位置づけるか考える際の材料になります。

Folk Song Conservation Strategies from a Cross-Cultural Perspective: A Systematic Literature Review

はじめての世界音楽―諸民族の伝統音楽からポップスまで