葛原しげる 保育園 童謡 夕日 とんび たんぽぽ

葛原しげる 保育園 童謡

この記事でわかること
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童謡の「ねらい」を言語化

葛原しげるの作品が、なぜ保育園の歌として残ったのか(幼児のため/生活に根ざす言葉)を保育の視点で整理します。

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年齢別の導入と援助

0〜5歳の発達に合わせて、歌詞理解・テンポ・声量・表現遊びをどう調整するか、現場で使える形に落とし込みます。

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保育の行事・環境づくりに接続

夕方の帰り支度、秋の自然観察、散歩、生活発表会などに「歌」を自然に組み込む設計例を紹介します。

葛原しげる 保育園 童謡の人物像と教育者

 

葛原しげる(1886–1961)は、童謡詩人・童謡作詞家であると同時に教育者として活動した人物で、幼児に向けた歌を数多く残したことで知られます。

保育の現場に関係が深い点として、『大正幼年唱歌』が「実際に幼児に接する保母の意見を聞きながら創作された」という、当時としては画期的な制作姿勢が記録されています。

また葛原は、当時流行した童謡が大人目線になりすぎることを批判し、「幼児を喜ばせる」方向性を重視したとされ、ここに保育園で扱いやすい理由(生活・感覚に寄る言葉選び)が見えてきます。

保育士が押さえておきたいポイントは次の通りです。

  • 「文学作品としての難しさ」より、幼児が口に出して気持ちよい言葉とリズムを優先している。
  • “歌として成立する短い情景”を切り取るのが上手く、散歩や帰りの会など短時間にも入れやすい。
  • 教育者として、子どもに届く語彙・発声のしやすさを意識していた背景がある。

意外な話として、葛原は「家庭向きの子どもの歌」の必要性も考え、当時家庭に普及していた箏(こと)の伴奏で歌える作品づくりにも目を向けたことが記されています。

参考)葛原しげる – Wikipedia

つまり「園だけ」ではなく「家庭にも持ち帰れる歌」という発想があり、保護者支援(家庭連携)の観点でも相性が良い題材になります。

参考:葛原しげるの経歴、幼児向け唱歌の制作背景(保母の意見を取り入れた点)

葛原しげる – Wikipedia

葛原しげる 保育園 童謡 夕日 とんびの代表作

葛原しげるの代表作として「夕日」「とんび」「白兎」「キユーピーさん」「羽衣」「たんぽぽ」などが挙げられています。

保育園で取り入れやすいのは、とくに情景が明確な「夕日」「とんび」で、歌う前に“見たことのある風景”を引き出せる点が強みです。

「夕日」は1921年に室崎琴月作曲でレコード発売され全国的に有名になった、という普及の経緯も記録されており、世代を越えた共有がしやすい歌です。

また「夕日」には有名な逸話があり、もともとの詞が「きんきんきらきら」だったものを、娘の「それは朝日。夕日は『ぎんぎんぎらぎら』でしょう」という一言で修正し名作になった、と伝えられています。

この話は保育の導入で使いやすく、「子どもの気づきが大人の表現を変える」実例として、子ども主体の視点につなげやすいのが利点です。

「とんび」は作詞:葛原しげる、作曲:梁田貞として紹介されることが多く、保育の歌としても親しまれています。

現場での扱い方のコツ(歌詞の全文は載せず、活動設計の観点で)

  • 夕方の時間帯に歌う:実際の「夕日」と結びつくと、歌が“知識”ではなく“体験の言葉”になります。
  • とんびは動き遊びと相性が良い:輪を描く・空を見上げるなど、身体感覚で理解を支えやすいです。
  • 「知っている子」が中心になりやすい曲ほど、知らない子の参加導線(口ずさみOK、ハミングOK)を先に用意します。

葛原しげる 保育園 童謡の年齢別

葛原しげるは幼児向けの唱歌づくりに関わり、幼稚園関係者にも受け入れられて版を重ねた、という流れが記録されています。

この背景から、同じ曲でも「年齢でねらいと援助を変える」発想が立てやすく、保育園での継続活動(毎年積み上がる歌)にも向きます。

ここでは、クラス運用で困りやすい“導入の壁”を年齢別にほどいていきます(園の実態で調整してください)。

  • 0〜1歳:保育者の歌声を安心の合図にする。ねらいは「模倣」より「心地よさ」。声量は小さめ、テンポは一定に。
  • 2歳:一部の語尾だけ一緒に言えるようにする。繰り返しのフレーズを“待つ”ことで参加が増えます。
  • 3歳:情景の共有を先にする。「今日の空」「今日の帰り道」など、生活経験→歌へ。
  • 4歳:歌詞の意味を短く確認し、表現(声の強弱・間)を遊ぶ。正解探しより“感じたこと”を言える場に。
  • 5歳:行事につなぐ(生活発表会、季節の会など)。「誰に届ける歌か」を考えると、歌が“作品”になります。

保育士が“歌わせる”に寄りすぎると、葛原しげるが重視した「幼児を喜ばせる」方向性から外れやすい点は注意です。

そのため、声が出ない子がいても「聴く参加」を守り、活動の中心を“子どもが面白がれる瞬間”に置く設計が向いています。

葛原しげる 保育園 童謡の行事と散歩

葛原しげるは地元(現・福山市神辺町八尋)に生家があり、代表作「夕日」の童謡碑が生家前にあることが観光案内としても紹介されています。

こうした「歌碑」「ゆかりの地」が残っている童謡は、写真・地図・地域資料と組み合わせることで、保育園の探究(調べる→歌う→表現する)に発展させやすい題材になります。

また、葛原が多くの童謡を残し、校歌の作詞も多数手がけたという情報もあり、“歌が地域や学校文化に残る”視点を持ち込めます。

園での活用例(季節・行事・散歩の導線)

  • 散歩:空を見る→鳥を見る→帰園後に「とんび」。体験→歌で再構成すると定着が良い。
  • 帰りの会:夕方の光を観察→「夕日」。毎日でなく週に数回でも“時間の合図”になります。
  • 自然物の制作:たんぽぽの観察カード、落ち葉のグラデーションづくりなど、作品に“歌の題名”を添える。
  • 生活発表会:歌だけで完結させず、短いナレーション(子どもの言葉)を挟むと“園の物語”になります。

参考:葛原しげるの生家・童謡歌碑の場所、開館情報(「夕日」童謡碑の説明)

葛原勾当旧邸&葛原しげる童謡歌碑 | 観光スポット | 福山観光コンベンション協会
福山市の観光情報とMICE・コンベンション情報を紹介する公式サイトです。福山市内で開催されるMICE・コンベンションに対して円滑な運営と支援を行うとともに、鞆の浦や福山城など個性豊かな観光情報をお届けします。

葛原しげる 保育園 童謡の独自視点

葛原しげるは、童謡が大人の視点から創作されている点を批判し、童謡は幼児を喜ばせるものでなければならないと主張した、と記録されています。

この立場に立つと、保育園での童謡は「歌唱指導」ではなく、「子どもの感覚を中心にした言葉のデザイン」と捉え直せます。

つまり、同じ曲でも“うまく歌えるか”より、“どんな気持ちが動いたか”に評価軸を置くと、クラスの安心感と自己表現を同時に育てやすくなります。

ここからは検索上位に多い「代表作紹介」だけで終わらない、現場で効く設計の工夫です。

  • 「子どもの言い換え」を集める:夕日を見て「ピカピカ」「オレンジの火」など自由に表現→翌日に歌うと、歌詞が“自分の体験”に近づきます。
  • 歌詞の理解は“説明”より“再現”:とんびの輪を、腕・歩行・布・フープで再現すると、意味が身体に入ります。
  • 保護者連携にする:家庭でも歌えるように、園だよりに「今日の空の話」「子どもの一言」を添えると、歌が会話のきっかけになります。
  • あえて「合唱」にしない日を作る:保育者が歌い、子どもは聴く/揺れる/手拍子だけ、という日があると、参加の幅が広がります。

葛原の「子どもの気づきが詞を変えた」逸話(夕日の“ぎんぎんぎらぎら”)は、まさにこの独自視点を支える実例で、保育者が子どもの観察を作品化する姿勢を学ぶ材料になります。

園で童謡を扱う意味は、“昔の歌を覚えさせる”だけでなく、“子どもが世界を言葉にする力”を支えることにある、と整理すると実践に落とし込みやすいでしょう。



又玄―葛原繁・三部作歌集2 (1980年)