言葉の力と保育と絵本と語彙力と読み聞かせ

言葉の力と保育と絵本

言葉の力と保育と絵本
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絵本は語彙と文法の土台

日常会話では出会いにくい語彙や、格助詞を含む文が自然に入るのが絵本の強みです。

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歌はことばを身体で覚える

リズム・繰り返し・動きで、言葉と意味が結びつきやすくなります。

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保育者のことばかけが鍵

読み聞かせや歌の場面での投げかけ方次第で、理解も発話も伸び方が変わります。

言葉の力で保育の絵本と語彙力を育てる視点

 

絵本の強みは、子どもが普段の生活では出会いにくい言葉(例:空想の登場人物や非日常の出来事に関する語彙)に触れられる点です。

さらに、絵本の文は会話より構造が複雑になりやすく、話し言葉では省略されがちな格助詞(「が」「を」など)も含まれやすいと指摘されています。

この「語彙」と「文のかたち」が同時に入ることが、保育の言葉の力づくりで絵本が軸になりやすい理由です。

保育園の歌が好きな子は、耳から入る言葉の反復に強い傾向があります。そこで絵本は「同じフレーズを見つける」「同じ言い回しを口に出す」など、音声の楽しみを視覚と結びつける役割を担えます。

読み聞かせのねらいを「最後まで静かに座る」に置くと、言葉の入口が狭くなりがちです。言葉の力を狙うなら、静けさよりも、子どもが“言葉を持ち帰る瞬間”を増やす設計が効きます。

具体的には、次の観点が現場で扱いやすいです。

・語彙:新しい名詞だけでなく、動詞・形容詞・擬態語も拾う。

・文法:助詞を「正しく言わせる」より「聞いて慣れる」経験を増やす。

・表現:子どもの言い換えを歓迎し、正解を急がない。

・理解:言葉の意味を、絵・動作・状況と結びつける。

保育者側が覚えておくと便利な“意外な盲点”は、語彙の難しさは「長い言葉」より「カテゴリのズレ」で起こりやすいことです。たとえば「きょうりゅう」は短いですが、生活の中で参照できる実物がなく、概念として理解するには支えが必要になります。

だからこそ、絵本の語彙は「言い直し」ではなく「補助線(具体物・動作・別の例)」を足すと伸びます。

参考:絵本が日常会話より多様な語彙や格助詞を含むこと、NTT絵本コーパスの話(語彙・構文分析の根拠)

https://diamond.jp/articles/-/371611

言葉の力で保育の読み聞かせと言葉を増やす工夫

読み聞かせは「読む技術」だけでなく、「ことばかけ」の設計で伸びが変わります。

たとえば同じ絵本でも、保育者が“どこで止めるか”“何を聞くか”で、子どもの発話量も、語彙の定着も変わります。

ここが保育の面白いところで、読み聞かせは集団活動なのに、言葉の獲得は一人ひとりに起きるため、微調整の余地が大きいです。

現場で使える、言葉の力に直結しやすい工夫をまとめます。

✅止め方(テンポの設計)

・オノマトペや繰り返しの直前で一拍止める(次の言葉を待てる子が出る)。

・結末だけ急がない(意味の予測が言葉の回路を太くする)。

✅聞き方(質問の設計)

・「これなに?」より「どれが〜?」で指差しを促す(言葉が出ない子にも入口が作れる)。

・「どう思う?」より「どっちが〜?」で二択にする(発話の負荷が下がる)。

✅拾い方(応答の設計)

・子どもの言い間違いは即訂正より“言い換えで返す”。

例:「おっきいのいた」→「うん、おっきいきょうりゅうがいたね」。

また、読み聞かせの狙いを「語彙」だけに絞らない方が結果的に伸びます。絵本の文には助詞が含まれやすいという指摘があるため、「助詞を言わせる」より「助詞が自然に耳に残る読み方(ゆっくり・区切りを明確に)」が効きます。

子どもは“正しい文を作る”前に“正しい文をたくさん聞く”段階が必要で、絵本はその供給源になり得ます。

園で実践するなら、読み聞かせ後の「活動(制作やごっこ遊び)」に絵本の言葉を一つだけ混ぜると、定着が強くなります。たとえば絵本に出てきた動詞を、遊びの指示語にするだけで十分です。

読み聞かせを“読んで終わり”にしない設計が、言葉の力の伸びを底上げします。

参考)https://researchmap.jp/tatta1983/published_papers/44484067/attachment_file.pdf

言葉の力で保育の歌と絵本をつなぐわらべうた

保育園で歌が好きな子は、「言葉+リズム」で覚える回路が強く、そこに絵本を接続すると学びが太くなります。

わらべうたには言葉遊びが多く、数や言葉が身につきやすいとされ、保育の言葉の力づくりと相性が良いです。

さらに、歌に動きが伴うことで、言葉と意味が結びつきやすい(身体化しやすい)点もメリットです。

ここでのコツは「歌→絵本」だけでなく「絵本→歌」にも往復させることです。

・絵本に出てくる擬音語や繰り返し表現を、短い節で歌にする。

・歌に出てくる単語(例:数、身体部位)を含む絵本を選び、同じ言葉を別の文で聞かせる。

わらべうたを単独の遊びにせず、絵本の“言葉の材料”として使うと、活動が一段深くなります。

参考)保育園での遊びで使えるわらべうた!おすすめのわらべうたを年齢…


たとえば「〇〇がおちた」のように差し替え可能な歌は、子どもの語彙の広がりに合わせて語彙を更新できます。​
「知っている歌が増える」こと自体より、「知っている言葉が別の場面でも出てくる」経験が、言葉の力を“使える力”に変えます。

参考)療育におけるわらべ歌の効果とは?【手遊び・歌詞・意味・乳児】…

実務的なポイントとして、歌の導入は“場を落ち着かせる”目的で選びがちですが、言葉の力を狙うなら“言葉が立つ歌”を意識すると差が出ます。

・名詞が多い歌:指差し・物探しに強い。

・動詞が多い歌:ごっこ遊びや運動遊びに接続しやすい。

・擬態語が多い歌:情景描写が上手くなりやすい。

言葉の力で保育の絵本と集中力を引き出す読み合い

絵本の読み合いは、語彙力だけでなく「絵本に集中して耳を傾ける」時間が増えた、という現場の実感も語られています。

また、絵本を繰り返し耳にすることで言葉を模倣し、やがて意味理解につながっていく、という説明もされています。

この“反復→模倣→理解”の流れを前提にすると、保育の読み聞かせは毎回新しい本でなくても成立します。

集中力を引き出す設計は、静かにさせるテクニックではなく、言葉の面白さを子ども側に渡す工夫です。

・見せ場の前で声量を落とす(「聞きたい」が集中の燃料になる)。

・同じフレーズは毎回同じ調子で読む(予測できると参加しやすい)。

・“読む担当”を子どもに少し渡す(繰り返し部分だけ一緒に言う)。

意外に効くのが、絵本の文章が会話より複雑で助詞を含みやすい、という性質を活かして、「助詞が聞こえる読み」を意識することです。

例えば「○○が」「○○を」をほんの少しだけ立てて読むと、子どもは意味のまとまりを取りやすくなります。

助詞は目立たない要素ですが、文の骨組みなので、ここが聞こえると理解が安定しやすいです。

園での運用としては、次のように“集中の条件”を整えると現実的です。

・絵本コーナーの定位置化(毎回探さない)。

・導入の歌を固定(開始合図を同じにする)。​

・終わりのひとことを固定(活動の区切りが明確になる)。

「集中力がないから短い絵本だけ」ではなく、「集中力が育つ読み合い」を積むという発想が、言葉の力と相性が良いです。

参考)301 Moved Permanently

言葉の力で保育の絵本と歌を記録する独自視点

検索上位で語られやすいのは「おすすめ絵本」「読み聞かせのコツ」「語彙力」ですが、園の成果を強くするのは“言葉の記録”です。

言葉の力はテストで測りにくい一方、保育の現場には「昨日言えなかった言葉が今日出た」という変化が毎日あります。

この変化を拾えると、保育者間の引き継ぎも、保護者への共有も、狙いがぶれにくくなります。

記録は大げさな書式である必要はありません。次の3点だけで、絵本と歌の価値が可視化しやすくなります。

・今日の“持ち帰り語彙”(子どもが繰り返した言葉を1つだけ書く)。

・今日の“言い換え”(子どもの表現を、保育者がどう返したかを1つだけ書く)。​
・今日の“歌→絵本接続”(歌の言葉が絵本のどこで出たかを1つだけ書く)。​

意外な効果として、この記録を続けると「次に読む絵本」が“流行”ではなく“今の語彙”で選べるようになります。

また、子どもの模倣が出たタイミングを追えるため、反復の価値をチームで共有しやすくなります。​
絵本と歌は単発だとイベントですが、記録とセットにすると「言葉の力を育てる連続した保育」に変わります。​

感情の海を泳ぎ、言葉と出会う